ロレンツォが手ずから作り上げたダニエラの肢体には
釉薬じみた陶器人形(ビクスドール)のような
冷たく瓏たけた美しさがあったが、フィオナのそれは
生命の輝きがもっとも瑞々しく表れた、芽ぐんだ
ばかりの若草のような健やかさを持っていた。
細身に似合わずたわわに実ったミルク色の乳房が呼吸に合わせて
上下する。
かつての力を取り戻したアルケミストは至極満足げな表情を浮かべ、
指先を温かいフィオナの素肌に滑らせた。既に彼女はなんら体に纏っ
ていない。これから行う施術に衣服など不要だからだ。
「素晴らしい・・・」
首筋を撫でた手は鎖骨のくぼみを通り、豊かな胸の谷間を抜け、
なだらかな横腹を過ぎて下腹部へと
辿りついた。へその下、あえかな金色の茂りとの狭間に
置かれた手はさも愛しげに皮膚を、その下に在る脂肪と肉と
骨の奥に秘された、女性の持ちうる臓器の一つを撫でた
・・・ゆっくりと、丁重に。
既に愛撫といっても良いその手の動きに、意識を失っている
フィオナの睫毛がかすかに動いた。恐らくは
掌を通し、元始で繋がりを持っている二つのアゾートの、
共鳴した内なる響きに深遠を揺さぶられ
たのだろう。
事実アウレオス・ロレンツォ・ベリの深部においても、
水面に小石を投じたが如き力の波紋がいくつも沸き立っていた。
この娘の中にアゾートは確かに存在していた。彼が全てを得るために
作り出した複製よりも遙かに最良の形を伴って、
手元へと還ってきたのだ。
「アゾート・・・私の永遠」