トントンとまな板に包丁のぶつかる音がする。  
全く料理などしない松田の家の台所が今日は騒がしい。  
綺麗な黒髪が腰のあたりまで流れている。後姿だけでも充分愛らしい。  
「ごめんね、料理までさせちゃって・・」  
「ううん、楽しいですよ」  
粧裕は振り返りながら笑顔で答えた。それに松田も笑顔で答える。  
松田は家に粧裕を呼び出していた。  
捜査に追われている忙しい毎日だった。本当は家に帰っている時間などない。  
無理矢理に時間を作り家へと帰った。  
・・・・どうしても粧裕に会いたかった。  
 
――――少し前のことだ、2人は結ばれた。  
世の中を騒がすキラ事件に、操作本部長の娘という事で巻き込まれた粧裕。  
屈辱を受けた粧裕の全てを松田は受け止めた。  
元からお互いに惹かれていた二人は、お互いの愛を確かめ合ったのだ。  
「何作ってるの?」  
椅子から立ち上がり、松田は粧裕の傍まで来た。  
「何だと思います?」クスッと小悪魔っぽく粧裕が笑った。  
いい香りがした。  
トクンと胸が高鳴るのが松田にはハッキリと分かった。  
キラ事件に関わってから、女性とは無縁の生活をしてきた。  
いつ命を落とすかも分からない捜査に没頭し、それだけに人生を懸けて来た。  
それが・・・  
松田は粧裕の髪の毛を撫でた。  
「ちょっ・・松田さん」  
松田は粧裕の顎を掴み、強引に自分のほうに向かせ唇を奪った。  
口と口が触れ合う程度のキスだった。  
「もぅ・・待ちきれないんですか?」  
フフっと粧裕は笑った。そのまま台所に向き直る。  
「うん、なんかもう待ちきれない・・」  
松田の欲望は溜まりに溜まっていた。  
服の上から右手で粧裕の胸を掴む。  
「あっ!」  
粧裕の声など気にせず左手は足と足の間を摩り始める。  
後ろから松田に抱き締められるかのような体勢になった粧裕に逃げ場はなかった。  
「ちょっと・・・松田さん・・!」  
松田はやめそうにない。包丁を握る粧裕の手が止まった。  
すっと服の中に両手を滑り込ませ、下着の上から胸を触る。  
ふくらみの中心にある突起物はすでに硬くなっていた。  
 
「やめ・・やめてくださいよぉ」  
口ではそう言ってみたものの、正直やめてほしくないと粧裕は思った。  
あの日結ばれた日から、次はいつ触ってもらえるのだろうと心待ちにしていた。  
松田はブラをずらし、直接胸を揉んだ。  
「あぁ!」  
松田の荒々しい手の動きに一緒に、粧裕の胸は形を変えていく。  
右手で胸に刺激を与え続けながら、左手をスカートの中に滑り込ませた。  
ゆっくりと秘所に手を伸ばす。下着の上からでも濡れているのを感じられた。  
松田は躊躇なく下着の中に手を入れ、粧裕の秘所に指を入れた。  
「んんっ!」  
部屋の中に、二人の息遣いとグチュグチュとした淫靡な音が響く。  
松田は1度粧裕から体を離し、急いで自分のズボンのベルトを外し  
下着と一緒にいっぺんに足首まで下ろした。  
松田の刺激から逃れ、乱れた呼吸を整えようと粧裕は必死に深呼吸をしている。  
「はぁ・・・はぁ・・・」  
なかなか正常に戻らない粧裕の乱れた呼吸は松田の欲望を更に募らせた。  
強引に粧裕のパンツを引き摺り下ろした。  
「あっ・・ん・・松田さっ」  
スカートを少しめくりあげると、松田は両手で粧裕の腰を掴み少し浮かせ  
丁度いい高さまで持ち上げる。  
粧裕は倒れないように台所の淵を掴んだ。  
松田は一気に自分自身を粧裕に突き立てた。  
「あっ――――んっ」  
「はっ・・いいよ、粧裕ちゃん・・」  
もはや勝手に暴れだす腰。  
二人とも上を着たままなので、いつもより余計に出る汗の匂い。  
お互いの顔が見えないという心地よいもどかしさ。  
ガタンガタンと、台所の食器が揺れている。  
「―――くっ!」  
松田は粧裕から体を離し、勢いよく果てた。  
粧裕はまだイっていないらしく、膝がガクガク震えていた。  
ずるっと松田はその場に倒れこんだ。  
「はぁはぁ・・」  
「松田さん・・・?」  
心配そうに松田の顔を覗き込む。  
 
「あっ・・ごめん・・僕、自分勝手に・・」  
我を忘れてしまっていた松田は、粧裕の事を考えずにイッてしまった。  
酷い自己嫌悪に襲われた。  
「ごめっ・・痛かったでしょ・・ごめ・・・」  
さっきまでの強引さがなくなり、しおらしくなった松田が  
粧裕は無償に愛しくなった。  
「大丈夫ですよ・・・松田さんになら強引にされても嬉しいですから」  
しゃがみ込んで優しく微笑む粧裕。  
(こんなにいい子を、僕のものにしていいんだろうか・・・)  
松田は優しく粧裕に口付けた。  
「・・ふっ」  
唇の自由を奪われた粧裕が小さく口を開くと、その隙に松田が舌を滑り込ます。  
唾液の絡まりあう淫靡な音が響いた。  
顔を離すと、少しだけを糸をひいている。  
粧裕は大事なものを触るかのように、そっと人差し指で糸を切った。  
松田は粧裕の両足をグイッと勢いよく開くと、有無を言わさず一気に顔を埋めた。  
「ちょ!松田さん!いいですよっそれは!」  
粧裕は慌てて松田の肩に手を置き引き離そうとしたが  
すぐに快感が全身を襲い、抵抗が出来なくなった。  
「あっ・・ん・・・」  
指とは違う、生暖かい舌の感触。  
松田は器用に粧裕の感じるところを舐めまわす。  
「だめっ・・おかしくなっちゃう・・」  
自分でも、どんどんと愛液が溢れているのが分かる。  
好きな人に、一番恥ずかしい所を舐められているという羞恥心。  
「はぁ・・はぁ・・・んんっ!いっ」  
松田の優しい奉仕に粧裕は絶頂に達した。  
ぴくぴくと痙攣する粧裕の秘所から松田は顔を離した。  
「よかった?」  
「・・・よかったですよぉ・・」  
「さっき、無理矢理ヤッちゃったから、ちゃんとしてあげたくて・・」  
「さっきのも、充分感じましたよ・・?」  
「え・・」  
「松田さんが相手だと、なんでも感じちゃいます・・」  
頬を赤らめ、恥ずかしそうに粧裕は言った。  
 
松田が両手を広げ「おいで」とジェスチャーすると  
粧裕は嬉しそうに松田の胸の中に飛び込む。  
松田はしっかりと粧裕を胸に閉じ込めた。  
「・・あのさ」  
珍しく、似合わない深刻な顔で松田が喋り始める。  
粧裕には松田の顔は見えていなかったが、その声からふざけた物は感じられなかった。  
 
「キラ事件、解決するかもしれない」  
 
「―――え?」  
予期せぬ松田の言葉に粧裕は酷く動揺した。  
「僕、バカだからよく分からないんだけどね・・  
進展があるかもしれないんだ・・いや、多分・・」  
「松田さん?」  
「少し、怖くて・・さ・・・」  
松田はゆっくりと粧裕の頭を撫でていた。  
その行為は自分を落ち着かせる為にやっているようだった。  
「キラが誰なのか?キラがいなくなった後、どうなるのか?  
キラがいなくなった後、凶悪な犯罪が起きるんじゃないか?  
そのせいで、善良な人々が命を落とすんじゃないか・・・?」  
「・・松田さん・・」  
「いや、もちろんね。キラ自体が世界一の凶悪犯なんだけどね・・  
なんか、こんがらがっちゃってさ・・」  
「・・・らしくないですよ」  
粧裕は松田の胸から顔を離し、松田を真っ直ぐ見つめた。  
「いつも楽天的な松田さんでいてくれなきゃ!」  
「粧裕ちゃん・・」  
「松田さんは、松田さんが正しいと思った事をやってください。  
私は、それをずーっと傍で支えていきますから」  
「あ・・ありがと・・」  
自分には勿体無さ過ぎる程の粧裕の言葉に、胸の奥が熱くなった。  
松田は粧裕の前で右手の小指をたてた。  
「まず、キラを捕まえる。そして粧裕ちゃんと一緒になる」  
「うん!」  
粧裕が松田の小指に自分の小指を絡め“指きりげんまん”をしようとした。  
「・・後、」  
粧裕の手が止まる。松田を見上げた。  
 
 
「命を懸けて、月くんの事を守る」  
 
二人の間に、一瞬だけ沈黙が訪れた。  
「・・松田さん」  
「月くんはさ、詳しくは言えないけど・・・一番大変な立場なんだ・・。  
亡くなったお父さんの為、家族の為、世界の為、命を懸けてる」  
松田は、本当に嬉しそうな顔をしながら話した。  
「だから、僕ができることと言えばそんな月くんを  
せめて・・守ることくらいなんだ。  
それくらいしか役にたたなくてさ、情けないんだけど」  
粧裕の目にはうっすら涙が浮かんでいた。  
「松田さん、優しい・・嬉しい・・・ありがとうございます・・  
兄の事・・そんなに気遣っていてくれたんですね」  
粧裕は泣き笑いを浮かべながら、松田と小指を強く絡めた。  
「ほらっ!いつかはさ、僕の弟になる子でしょ?」  
松田はいつもの調子で明るく言った。  
「約束ですよ?」  
「もちろん!絶対に守るよ」  
二人は子供のように大げさに“指きりげんまん”をしてみせた。  
「・・じゃ、ベット行こうか?」  
「・・・・・松田さんのえっち・・」  
口ではそう言いながら、粧裕は嬉しそうに微笑んだ。  
 
 
朝。  
家に粧裕を残したまま、松田は緊張した面持ちで捜査本部へ戻った。  
そして――――YB倉庫へ向かった。  
 

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