時計の針が、深夜一時を指していた。
目がさすがに疲れてきて、ハルは首を回した。
すでにジェバンニとレスターは自室に戻っている。
意外とあの二人は規則正しく生活を行うので、ハルもいつしかそういった生活に
体が馴染んでいた。
「そろそろ部屋に戻ったらどうですか?」
ニアに尋ねられ、ハルは椅子を動かし、ニアを見る。
ニアはいつものようにおもちゃで遊んでいる。
今日のおもちゃはジェンガ。一人で抜いては積み重ねている。
「ニアももう眠ってください」
そう言うと、ニアが振り返った。一瞬少し微笑んだように見えたので、ハルは瞬きをした。
いつもの顔でニアは言う。
「寝ますよ。……あと少ししたら」
ハルは立ち上がってニアの背後に立つ。なんとなく、ニアの頭に手をやった。
お疲れ様です、という気持ちで柔らかい銀髪をなでる。
ニアは身じろぎもしない。
「……リドナー。どうしましたか」
「人は疲れると、癒しを求めるものです」
「私は小動物ではないですよ」
ニアはそう言って、ジェンガから手を離しハルの方へ身体を向けた。
じっと、正面から黒い瞳で見つめられ、ハルは惹かれるようにニアに口付けた。
一瞬ニアの唇が強張るのが分かったが、すぐにその緊張はほぐれる。
ゆっくり唇を離すと、少し驚いた表情でニアが見ていた。
ハルは自分の顔が紅くなっていくのを感じた。
年下の、二十歳近いといっても外見的にはまだ幼い少年に、なにをしているのだろうか。
思わず顔を逸らすと、ニアの指があごに触れた。そして、そのまま顔を寄せられ口付けられる。
今度はハルが呆然とする番だった。唇が離れると、そこには悪戯をして楽しむような顔のニアがいた。
「リドナー、私でよければ癒してあげます」
再び口付けられる。今度はさっきよりも強いキス。何度も何度も繰り返される。
ハルはいつしかぼんやりとした顔でニアを見ていた。
「いい表情ですね。普段のリドナーからは想像もつかない」
ニアは床に座り込んでしまったハルの前に椅子から降りて座った。
唇を奪われながら、ゆっくりと体重をかけられ、ハルは床に倒れる。
ニアがおもちゃで遊ぶときの布がひいてあり、思ったよりも冷たくなかった。
ニアの指がシャツの上から胸に触れた。
幼い少年、と思っていたが、その指の感じから、華奢ではあるがやはり年相応の男性であると気づく。
ブラジャーの上から焦らすように触られ、ハルは頬が上気してくる。
「ニア、」
名前を呼ぶと、ニアはじっとハルを見つめてきた。
いつも冷静にキラを追うニアと今自分がこんなことをしていると思うとどうにかなりそうだった。
シャツのボタンが丁寧に外され、ブラジャーが外される。
「すてきですよ。リドナー」
羞恥心からハルはニアから顔を逸らした。その隙に、ニアはハルの胸へいたずらを開始する。
ネコのように胸の先端を舐めると、ハルの体がびくりと反応した。
「二、ニア……」
その反応を楽しむかのようにニアは何度も刺激を繰り返す。もう片方へは手で優しく触れる。
「あ、ヤ……。ニア」
顔をニアのほうへ向けると、ニアと目が合った。
「気持ち良さそうですね。表情がとてもいやらしい感じです。もっとしたくなりますね」
ニアはそういいながら、ぺロリと舐める。ハルはまた思わず声を上げた。
ニアがくすくすと笑う。
ニアはハルの足に触れ、ゆっくりとなで上げた。
「は……あ」
それだけで、ハルはどうにかなってしまいそうだった。
ニアはハルの足のすべらかな感触を楽しむように撫でる。
「リドナー、あなたがこんな風に私に触れられているとは、誰も思ってもみないでしょうね」
……意地悪だ、そう思いながらもハルはもう何も言うことができない。
ニアはハルの足を舐めた。ふともも、膝、ふくらはぎ。そして足の指。
ぞくりと快感が背中を走り、ハルはだめ、とニアに訴えた。
しかし、ニアが止めてくれるはずもなく何度も何度も快感を与え続けられた。
「さてと」
ぐったりしていると、そう言ってニアは、華奢な指で下着の上からハルの秘部に触れた。
すでにすっかりと濡れており、ハルは恥ずかしさから、足を閉じようとした。
ニアはそれを制し、指を動かす。
「すごく濡れてますね。これだけ感じてくれるなんて嬉しい限りです。そんなに気持ちいいですか?」
真正面から問われ、ハルは恥ずかしさを堪えて、小さく頷いた。
「もっと気持ちよくしましょう」
そう言ってニアは小さな芽の辺りで指を小刻みに動かした。
その刺激にハルは身をよじらせうる。
「だ、駄目です。ニア! いや、あ」
「駄目じゃないです。気持ちいいなら正直になるべきです」
ニアは動かす指を止めない。
「あ、……あ!」
ハルの力が一気に全身から抜け、ニアはふふ、と微笑む
「リドナー、好きですよ」
その言葉にハルは胸の奥が締め付けられた。
本気で言っているのか。いや、これは戯れの上の言葉。遊びの一環だ。
しかしなぜか涙がこみ上げてきた。
それは嬉しいからか、何か他の感情なのか。
ニアはハルの金色の髪を撫でる。
感情が落ち着いて目を開けると、真剣な表情のニアがハルを見ていた。
「リドナー……」
心配そうに名前を呼ばれ、ハルは思わず、ごめんなさい、と謝る。
ニアはぎゅっとハルを抱きしめた。
暖かいニアの体温を感じ、ハルもニアを抱きしめる。
思っていたよりもずっとしっかりとした身体だと思った。
もう一度見つめあい、静かにキスをする。
無言のうちに、ニアの服を剥ぎ取り、身体をあわせた。
耳元でニアの口から漏れる声と息遣いを感じる。さっきまでとは違い、少年らしい実直な抱き方。
ハルは自然ともっと、とニアを求めていた。
ニアはそれに答える。
汗と、部屋の灯りで光る銀髪がきれいだ、と思った。
「リドナー、もう、眠いです。……今日は一緒に眠ってもいいですか?」
ニアがハルの肩に頭をあずけて、半分まぶたが閉じた状態で言う。
ハルはうなづいて微笑んだ。いいですよ、そう告げる前にニアは眠りに落ちていた。