キラ捜査のため、と大金積んで建てた23階建てビル。実はこっそり彼女を連れ込みたいがため、とかそういうことは内緒のL。
居住区最上階の20階ワンフロアを自分用にしたものの、自分一人で寝るのには使わない。
自分だけなら、椅子の上で十分と、仕事をしながらいつも寝る。
そんな彼がようやく掴んだ幸せ。愛しの粧裕が最近彼の部屋を訪れるようになった。
とはいえ、そう頻繁には彼女に来てもらえない。何せ、玄関から監視カメラがついている。誰かに見られたら、しかもそれが総一郎や月ならとんでもないことになる。
彼女が来る日はいつも、兄・パパを含めた捜査員全員を外へ追いやり、こっそり彼女を連れ込む。無論、ワタリには外のオフィスで待機させている。
今日もそうやって、ようやく彼女との密会が成り、行為に至り、彼は幸せを噛み締めていた。
まだ汗ばんだ彼女をやんわりと抱いていると
「あ、お兄ちゃんの門限に遅れちゃう」
するりと彼の両腕から彼女が抜け出した。
―――は? 月の門限?
彼女の家に門限はなかったはず。あったとしても、まだ夕方5時半。そんな早い門限などないだろう。いや、あったとしても、『お兄ちゃんの』という言葉が妙に引っかかる。
「月くんの、ですか?」
「ん、お兄ちゃんが厳しいの」
彼女は服に袖を通しながらあっさり答える。
憎むべし、兄! キラでなくても必ず逮捕してやる。彼の心は煮えたぎった。
彼女が急いでスカートをはいている姿を名残惜しげに眺めていると、スカートのボタンを留めながら、彼女が肩越しに振り返った。
「竜崎さんって……早漏……?」
L、幸せから月発言で転落へ。そして、さらにどん底へ。
彼女の一言で真っ白になった彼の思考。
動かない彼をよそに、彼女は、またね、と走り去って行く。
ドアがパタリと閉められ、彼はようやく思考力をかき集めた。
まさか、いや、そんな。そんなことを彼女に言われるとは。
―――誰と比べて?
いや、そんなことは今はどうでもいい。むしろ、自分がそうだと思われていること自体が由々しき問題。男のプライドの問題だ。
早漏基準タイムといわれるのは、一般的に2分以下。自分のタイムを計ったことはないが、これに引っかかるのか。
いや、それよりも、標準タイムは7.3分。確かに、今日はこれより、短かった気がしないでもない。
いや、そんなことではなく! 思われていることが問題だ!!
今までの知識に全知能をめぐらせること約1.5秒。
ワタリに連絡するために、PCへ向かおうとしたが、途中で考え直した。
―――携帯電話の方が早い。今すぐ注文できるだろう。
彼は携帯電話を掴んだ。
「ワタリ、バXアグラとエビ〇スを今日中に手配」
『は? 竜崎は若いのですから、睡眠を十分に取ればそんなものは―――』
「今日中」
ぴしりと言い切り、通話を切った。
屈辱の日から数週間。
彼は悶々とした日々を送り、今日こそは雪辱を、と意気込んでいた。
前日は、体調不良を装い一日たっぷりベッドで寝た。こんなことは正直初めてだった。
エビ〇スもバXアグラも服用している。
粧裕をベッドに引き込んで、念入りに前戯を行う。
まだ膨らみきっていない彼女の胸を揉みしだき、可愛らしいピンク色の先っちょを甘噛みする。
「あふ……ン」
漏れてくる彼女の甘い声を聞きながら、彼は確信した。
―――これは……これなら……イケル!! 絶好調!!!
早漏だの、精力がないだの、今日は、いや、これからは絶対言わせない自信とみなぎる力。
彼はニヤリと笑いながら、彼女の求める箇所を攻めていく。
たっぷりと前戯し、彼女の秘所は彼を迎え入れる準備も万端である。
いざ、挿入。
―――いつもより多めに動いてます!!
入れて 抜いて
挿して 出して
突いて 押して
引いて こすって
時計を見れば、既に7.3分経過。
―――余裕。ここからが勝負。
突いて突いて突きまくる!
突くべし突くべし
貫くように刺していく!
引くとみせかけ乱打すべし!
二人の汗がシーツに飛び散る。
「竜崎、イキマス」
掛け声とともに、更に彼女を追い立て、ようやく彼は果てた。
ぐったりとした彼女を胸に抱き、背中を指の背でゆっくりと撫でながら、まどろむ彼女を見る。
―――汚名挽回
そう彼が思った瞬間
「長くて疲れちゃった……」
―――え? 長……過ぎ……?
どうすれば良いというのだろう。一方の対策を取れば、他方で崩れる。彼は困惑した。
捜査では緻密な計画もできるのに、何が悪いというのか、彼の知能をもってしても、答えが見つからない。
「あーあ、もっとお話したかったんだけど……お兄ちゃんの門限に遅れちゃうから、帰るね」
だる気に彼女が起き上がった。
―――は? やっぱり『お兄ちゃんの門限』?
これだけ頑張ったというのに、この仕打ち。
しかも、隣の部屋には山積み箱入りエビ〇スandバXアグラ。売る程ある。
がっくりうな垂れながらも、彼女の白い太股がスカートの中へと隠れていくのはしっかり見る。
―――ああ、今度あの柔らか太股に触れられるのはいつなんだろう。
遠い目をしてベッドの上で親指を神ながら考えるL。
粧裕は服を着込むともう一度ベッドの上に膝乗りしてきた。
「今度、お泊りしにくるね」
彼の頬に唇を寄せ、そう言うと、彼女は軽やかにベッドから降り、部屋を出た。
―――お泊まり!! 夜神月に勝った!
小さくガッツポーズをして彼は隣の部屋の箱入りの錠剤を蹴散らした。
長すぎだろうが、短すぎだろうが、関係ない。もう、彼にはどうでもよかった。
いくら、兄でも妹とお泊りなんてしないだろう。
彼女とのために建てた超ハイテクビルのワンフロアで、そう考えた幸せボケのLは気付いていない。
一つ屋根の下。兄と妹には、毎日が「お泊まり」。
Lが気付くまであと1.5秒。