夜11時、捜査に区切りを付けて月はホテルの自室に戻った。カードキーを差し込みドアを開ける。
「ただいま…」
つぶやいてみていやに部屋が静かなことに気付く。いつもならミサが飛び出してくるはずだった。
不審に思いながらその場でネクタイをゆるめていると、ぺたぺたと裸足の足音がした。
ミサが寝室からいやにゆっくりと歩いてくるのだった。
「ミサ…その格好どうしたんだ」
ミサはパンツと薄く透ける丈の短いスリップしかつけておらず、
スリップの肩紐は片方落ち、髪もくしゃくしゃに乱れていた。
「ライト、ライ、ト」
1mほどの距離で顔をあげた彼女の目を何故か見られなかった。――怖いのか?
「あのねミサ、月にもうわがままいわないよ、だからね」
小さな唇をむすぶ。噛んだのか、端に少し血がにじんでいた。
「ねえもう飽きちゃった?ミサの体さわって、月のあそこ硬くして好きなことしてよ」
なにも言えずにいる月の前で、ミサはもう片方の肩紐も外し、胸を左手で隠してスリップは落ちるにまかせた。
「座って」
「ミ…サ」
「座って!」
叫ぶ声に気おされ、月はその場に膝をつく。
ミサは左手を下ろした。小ぶりな乳房がこぼれる。何度も触れたはずのそれを月は見上げていた。
「おっぱいちっちゃくてごめんね、月に見られてると先の方がじんじんする」
みずみずしく張った乳房は少し外向きに突き出している。淡い色の乳首ははっきりと硬く立ち上がっていた。
呼吸するたび、微かに揺れる。
「月が見てくれてるだけでミサ、エッチしてるみたいだよ、ねえミサのあそこ見たい?体があついよ…」
両脇でリボンを結ぶ小さなピンクのパンツは生々しくぴったりと張り付いて、凹凸の形をはっきり伝える。
真ん中にはじっとりとにじみが出来ていた。
ミサは体を曲げ、自分の内腿を手で撫で上下させる。呼吸が大きくなり、しなやかな腹や背が動く。
「…っ」
月はあまり生地の余らないスーツを押し上げる自分の性器に気付いた。
――僕はこの子のことを何も知らない。潤んでいるのに虚ろな、カラーコンタクトの目。
いつも笑顔で抱きついてくる小さな体を僕は何も感じもせずにただ受け止めた。
いや本当に?気づいてたんじゃないか?
愛されることに縋るようにためらいなく肌を見せる彼女は、僕を選んだ。
――僕はミサが怖くて仕方ない。初めから。
決して理解し得ない心を持ったひとが目の前で痴女のように息を荒くしている。
それはなんて孤独で卑猥だろう。
月は膝をついたままにじり寄り、ミサの足の付け根に顔を近づけた。
そんなことを自らするのは初めてのことだった。
「つんとした匂いがするよミサ、一人でそんなに濡れてるんだね」
「あ…っ……恥ずかしいよ…」
太腿に息を掛けるようにして月は話す。
「じゃあ見ないよ」
「やだ…っ、もっと見て、ミサのこと見てて…はあっ」
互いに手さえ触れはしない。
下着とスーツが邪魔をし性器が押しとどめられていることも、今の月にとっては快感だった。