「ニア、お疲れ様です」
朝六時。いつもより早くハルがSPKへ出勤すると、モニター室にはニア一人しかいなかった。こちらに背を向けしゃがみこんでいるが、どうやらレールの模型に玩具の電車を走らせているようだ。
ニアは思考に耽る時、よくこういう事をする。
「お早うございます」
ハルが挨拶すると、模型を遊ばせていた手を止めてニアはこちらを振り返った。
「…本当に早いですね。何かあったんですか?」
「いえ…特に」
ニアは一瞬不審そうな顔をしたがあえては突っ込まず、また背を向けて玩具をいじりだした。
ハルは静寂の中でゴクリと唾を飲んだ。
あときっと二時間は誰も来ないだろう。
「……」
無言でニアに近づくと、模型のレールを股越し自分も輪の中に入った。
「……、ハル、やはり何か……、」
気配に気付いて顔を上げ、再び振り向いたニアを、ハルは後ろから抱き締めながら口付けた。
「………!」
触れているだけの軽いキスだが、ハルは離そうとしない。
ニアはあまりの驚きで暫く呼吸すら忘れ、その場に静止していた。
やがて唇が離れると、ニアは漸く言葉というものを思い出す。
「…っ、ハル、一体何を…――…っ!」
が、それは更なる口付けで途切れる。今度はさっきと打って変わって、深く、貪るようなキス。
ニアは不覚にも、全身の力が抜けていく。
甘ったるいキスを何度も繰り返しながら、ハルはニアの下半身へと手を伸ばした。
服の中へ手を入れて竿を直接触り、緩くしごく。
「…っ!ハル、…やめて下さ…い、人が来ます……」
ビクッと反応し、後ろから伸ばされたハルの腕を掴む。
だが言葉とは裏腹にニア自身はどんどん膨らんでいくのを、掌からハルは感じた。
器用にニアのズボンを下げると、それが視覚で明らかになる。
「いい加減にっ…、して…下さ…い…」
ハルの腕を掴む力が強くなる。竿の先端から透明な液が伝った。
「ニア、我慢せず力を抜いて下さい…その方が楽です」
「ク…ッ…」
限界を感じ取り、ニアは小さい呻き声をあげた。
次の瞬間には、ハルの掌に射精していた。
「…ハァッ、…ハァ…」
息を荒げるニアの後ろで、ハルは白い液体がべっとりとついた自分の掌を眺めた。
そして、満足そうに笑むと、ニアの正面へ回りこみ床に座って、その掌を舐めてみせる。
「っ…」
ニアは思わず目を逸らした。首筋にほんのり汗をかいたニアが、ハルにはひどく扇状的に映る。銀の猫毛が張りついている。
「ニア、そんな風にしても、誘っているだけですから…」
妖しい笑みを浮かべ、ハルはニアの首筋に吸い付いた。
「ハル…っ、…ぅ…」
その時、ハルの肩越しに見えるモニターの一つが、レスター指揮官からの連絡を示した。
『ピピッ…ザ――…
…ニア、応答願います』
「レスター指揮官…」
手を伸ばしはするが、マイクまで届くはずもない。
ハルは気にせずニアを押し倒した。
「…出ないで下さい…お願いします」
言いながら、シャツのボタンを一つずつ外していくハル。
「リドナー、…あなたは何がしたいんですか」
「あなたが…、ニアが欲しい」
「…!」
「ただそれだけです…」
いつもそう想って見つめていたのに――全く気付いていなかっただなんて。
ハルは心の中で嘆きながらブラのホックを外した。
パンツを脱ぐと、ニアの股間部に座った。
もう、濡れている。
『ニア、いないのですか?』
モニターの音声はまだ響いている。だがもうニアに、それに応対する気はなかった。
「ハル、…しましょう」
「はい…」
ハルは小さく頷くと、ニアのペニスを手で支えて、腰を沈めていった。
ニアのモノが、膣内でピクピクと動いている。
「はぁっ…」
全て飲み込まれた時、ハルは力なく吐息をもらした。
ずっと求めていたもの。
…やっと、手に入る。
腰を上げては下げ、下げては上げて。ゆっくりと抽出を繰り返す。
「あ、ぁ…ニア…気持ちいい…ですっ……」
「…私も…」
ニアは、私もです、と言おうとしたが、途中で気恥ずかしくなり言葉を飲みこむ。
代わりにハルの乳房へと右手を伸ばし鷲掴んだ。
「んぁっ…あぁん…っ…」 更に左手で愛芽を摘んでやると、ハルは無意識に腰の振りを早くした。
きつい位にハルの下半身は、ニアを離すまいと収縮する。いやらしい水音が激しさを増していく。
もう無理だ、
そう感じた時には既にニアはハルの中に精を放っていた。「はあぁぁんっ……!」
ほぼ同時にハルも達したらしく、搾り取るように膣内をきつく締め上げた後、体を反らせてイッてしまった。
「はぁ…っ、はぁ……」
ニアの上にそのままぐったりと倒れこむハル。
ニアの胸にあてた掌から、彼の早い鼓動が伝わってくる。
なんだかすごく熱い。
ハルは自分からニアを引き抜いて身を起こした。
「床…、私が拭いておきますから」
「……ありがとうございます」
まだ整わない呼吸で、ニアは寝転んだまま近くにあった電車模型を手に取る。
「もうすぐ皆が来るでしょう。…私は着替えてきます。この服ではまずい」
ニアの服は、ハルが精液まみれの手で触ったせいで、目に見えて明らかに汚れていた。
ハルはクスリと笑うと、「はい」とだけ呟いた。
その日出勤したレスターは、ニアの首筋の跡を見て、全てを悟ったらしい……。
終