キラ事件捜査本部。  
沈みかけた日の光が微かに差し込む室内で、二人の男が特設の機器類のモニターを見つめている。  
画面の中の少女は既に殆ど衰弱状態に入っており、こちらからの質問に反応を見せなくなっていた。  
 
「…これではキリがありませんね…」  
膝を立てて画面を凝視していた竜崎が、ぽつりとこぼす。  
 
「そうですね、もう悪態すらついてこなくなりましたし…」  
「このままでは、拘束してまで尋問している意味がない」  
「では解放するんですか?」  
意外そうに聞き返す松田に、竜崎はぴしゃりと返した。  
「出来る訳がないでしょう」  
「…ですよね。」  
「強行手段に出るしか無いようですね」  
「…と、いうと…?」  
 
強行手段。  
自分から見れば現在の拘束状態も充分にその枠内なのだが、一体これ以上なにをするというのだろうか。  
…まさか…  
松田は、一瞬自分の頭をよぎった不吉な予感を拭い去った。  
まさか、そんなことは。  
 
「松田さん。」  
「っは…はい」  
突然名前を呼ばれ、自分の思考を見透かされたような錯覚に陥った彼は、慌てて姿勢を正した。  
「彼女は女性ですね」  
「…ええ」  
「では、どのような状況に陥ることが彼女にとって一番のダメージになるか、わかりますか?」  
「……!!」  
松田は弾かれたように立ち上がった。  
ガタン、と椅子の倒れる音。  
竜崎がゆっくりと彼の方へ首を回す。  
「そんな…どうしてそこまでする必要があるんです!?」  
「どうしてとはまた、愚問ですね…彼女はキラ事件唯一の重要参考人です。…それに」  
竜崎はテーブルの上に置いてあった冷めた紅茶に手をのばした。  
「あなただって、強行手段と聞いて真っ先にそれを思い浮かべた。私が何も言わないうちに勝手に激昂したことがいい証明です」  
「…っ……」  
 

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