夜神月はまいったな、と心の中でため息をついた。あまり遅くなると母親や妹が心配するんだがな。  
 彼女を駅の近くまで、送っていく。そのように言って家を出た。もちろん本心からで  
なんら下心があったわけでも、何かをたくらんでいたというわけでもない。まあ、  
家族に芝居を打っていたのだから、そのような言い方をすると語弊があるかもしれないが。  
送っていく、という言葉は芝居などではなくごくごく自然に出てきた。もしかしたら無意識に自分ですらも  
騙しているのかもしれない。月はふいにそんなことを考える。  
 駅へ行く途中の夜の公園だった。空は曇り空で、辺りを照らしているのはまばらにたっている  
街灯だけ。その青白い街灯に、彼女の白い裸体は浮かんでいた。彼女の名前は「ミサ」と言った。  
 公園の茂みに誘いこまれたとき、月は彼女がどのようなつもりなのか、すぐに分かった。  
予想通り、彼女は耳元で「抱いて欲しいの、お願い」と囁いてきた。月は何も言わず、しかし  
拒絶はしなかった。拒む理由はないし、断ったら断ったで彼女が逆上しないとも限らない。  
黙って彼女が服を脱いでいくのを見ていた。上着を脱ぎ、スカートのホックをはずし、上のブラジャーもはずした。  
白い、それこそ病的なまでに白い体が、露になる。しかし、黒いパンティははいたままで、  
その色が白い肌の上でより際立って見える。やや小ぶりだが、形のよい胸。胴から腰にかけてのラインが、  
妙になまめかしく月は思わず息を呑んだ。  
 いや、と月は思う。この女の体、並以上であることは認めるが、所詮、並だ。そのはずなのに、なぜ自分はここまで昂ぶっている? そういえば外でやるのは初めてだったように思う。それのせいだろうか。  
 
 ミサは月の肩を両手で抱くと、そのまま仰向けに倒れこんだ。自然、月が押し倒したような形になる。  
月はそのままの体勢で、ミサの唇にキスを落とした。んっ、と彼女は目をつぶってそれを受け入れる。  
唇の次は、首筋。そこが弱いのか、先程よりもやや大きな声で、んんっ、と身をよじる。頬が、体が、先程よりも上気してピンク色の染まっていくのがわかる。それを見て、さらに昂ぶる月がいた。下半身もそれに比例する。ズボンに収まりきれず痛いくらいだ。  
 それを目ざとく見つけたミサは上半身を起こし、悪魔的な微笑を浮かべ、月のズボンを下ろしてくる。そしてされるがままに、トランクスも取り払われる。月のモノが外気にさらされ、よりいっそうの存在感を見せ付ける。  
「ねえ、フェラしたげよっか」  
 月のモノを擦りながら、ミサはそう囁く。月はこのとき初めて発言した。  
「いや、いい」  
「そお? 残念。私結構テクニシャンなのに」  
 あてが外れたようにミサはそう言ってモノを擦るのをやめた。そして、体位をさっきまでとは逆に、  
今度はミサが押し倒すような形にする。  
「まあ、ここまで立ってれば要らない、か」  
 ミサはパンティを脱ぎ、無造作に放り投げる。それはすでに彼女の愛液でぐしょぐしょに濡れていた。  
そしておそらく、彼女の秘所も同じように性欲に犯されていることだろう。  
「ん、んんっ。いいっ。すごく感じるっ」  
 
 十分に潤ったそこを月のモノと交え、たまらなそうに身をよじりながら、ミサは抑えた声でそう言った。  
激しく自らの腰を動かし、喘ぎ声を上げるさまは、とても妖艶で、それだけで射精感が湧き上がってくる。  
彼女は、快感を得るための手段を心得ているようだった。  
 ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ……  
 淫らな水音が辺りを支配している。もしかしたら近くを通りかかった誰かに聞かれたかもしれない。  
「あっ、あっ、う、んんっ」  
 抑えた嬌声。月は、もっと激しくこの女を啼かせてみたい、と思った。それは本能から来るものか、衝動としか言いようの無い  
感情だった。モノを抜き、再び体位を入れ替える。いまだ快感の虜のミサは、はあはあと肩で息をしながら月に促されるとそのまま地面に崩れ落ちる。  
「やだぁ、ぬいちゃぁ……。まだ、まだなのぉ」  
 腰をくねらせ、足りない、まだ足りないとアピールする。月はそれに応じ、いまだ衰えぬソレをミサの秘所に突っ込んだ。  
焦らされた分、欲求不満になっていたミサは自制を忘れて大声で啼く。  
「ああああっ、いいっ、すごくいいっ。もっと、奥。もっとおくぅ、にぃっ」  
 言われるままに、彼女を何度も何度も突き上げる。そのたびにミサは右に左にと体をよじり一際大きい嬌声を上げる。  
 雲が水分をためきらなくなり、雨を降らすように、じわじわと射精感が近づいてくる。  
月はラストスパートと、動きをスピードアップさせる。  
「もうだめぇ、くる、くるっ、いっちゃうぅぅっ」  
 だらしなく開かれた口。ろれつも回っていない。意識があるのかどうか怪しいところだ。  
 
「ひんじゃうっ、あたしぃ、ひんじゃうぅぅうっ」  
 ビクン、とミサの体が一度大きくはね、その後に三度小刻みに震えた。果ててしまったようだ。  
月はいまだいきり立ったままで反り返っている自分の物を取り出し、彼女めがけて一気に射精した。  
 精液にまみれたミサはしばらくの間、仰向けになったまま肩で息をしていたが、ふいに上体を立ち上げ四つんばいのようになって月の股間に顔をうずめた。  
「きれいにしてあげる」  
 月は拒まずモノを口に含むミサをぼんやりと見ていた。淫乱女。そんな言葉が脳裏に浮かんだ。  
 精液をなめとり、ミサは上目遣いに月を見ながら舌なめずりした。彼女の顔や体だけでなく、その長い金髪にも精液は飛び散っていた。その姿は、淫らで――それ以外の何者でもなかった。  
 
 たった今知り合ったばかりの赤の他人である男と女が信頼関係を築くには、セックスをするのが一番手っ取り早い。しかしそれは時がたてば必ず壊れるまやかしの関係。割れやすいガラス、傷のつきやすいCD-ROM。  
 構わないさ、そんなに多くの時間をかけるつもりは無いからね。脱ぎ捨ててあった服を身にまとおうとしているミサを見ながら、月はひそかにそう呟いたのだった。  
 

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