捜査本部にしているホテル部屋のエアコンが壊れた。  
まぁ壊れたと言っても、相沢が暇つぶしのジャイアントスイングをかけた  
総一郎が突き刺さっただけで、大した事はない。  
剥き出しになった配線から白煙やら火花やらがバシュウバシュウと  
小気味の良い音を立てているから、電気は通っているらしい。  
そこに首を突っ込む形になっている総一郎も、「老いてますます健在さ!」とばかりに  
手足をブルンブルンと不規則に痙攣させているから、多分大丈夫だろう。  
 
「さて、黒電話頭のせいでやけに蒸し暑いわけですが、どうしたものでしょうね」  
Lがボリボリと背中を掻きながら呟く。黒電話頭とは相沢のコトを指しているらしい。  
そして思いっきり重そうなガラスの灰皿を総一郎に投げつける。みぞおちに当たった。  
「ゲーハッハッハッハ!」  
模木が笑った。確かに髪の部分がダイヤル式の黒電話の受話器に見えなくもない。  
それとは無関係に、手にしている百科事典が面白いらしく、思いっきり総一郎に投げつけた。  
「ハ! だからチョークスリープで決めろつったろうがよォォォ〜ッ! モミアゲはコードだろテメぇはー」  
松田が相沢に詰め寄りながら、次々とイスやらソファーやらワタリやらを総一郎に投げつける。  
ワタリもその勢いを殺さずに、見事なドロップキックを総一郎にお見舞いだ!  
ゴキっ! ゴキゴキっ! 肋骨が砕ける爽快な音が響き、ワタリと松田は拳を突き合わせた。  
総一郎の動きが、糸の切れた操り人形のように止まったのは、その13秒後のコトだ。  
 
「ワーォ! 局長が死ーにましたー!」  
大学時代に留学していたオーストラリア仕込みの訛りで、相沢が肩をすくめる。  
「どうせキラが暇つぶしにやってるだけでしょう。それよりムヒだ。ムヒ買ってこい黒電話頭。  
蒸し暑くて体が痒いんだよ。こちとら痒くて痒くて痒くて痒くて痒くて狂いそうなんだよぉ〜〜〜っ! ハゲ!」  
「そうだムヒ買いやがれスットコドッコイ! 買ってこなきゃ二度とこの家の敷居はまたがせねーからな!」  
Lとワタリに詰め寄られ、相沢は暴君ハバネロを買いに夜の繁華街へと走っていった。  
「ゲーハッハッハッハ!」  
模木の哄笑が響きわたる。  
2004年、初夏。  
彼らの長い旅も、いよいよ終着に近づいていた……  

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