粧裕は自分の部屋に帰ると、鞄を放り出した。
学校帰りに寄った本屋の紙袋をいそいそと開ける。
中に入っているのは三冊の音楽雑誌。
すべて本日発売のもので、どれも同じ青年が表紙を飾っている。
「ふふっ」
粧裕は弾んだ声で笑って雑誌を見つめた。
着替えもせずにベッドに転がって目当てのページを探す。
他の記事には興味はない。
用があるのは旱樹だけ。
どの雑誌も同じようなインタビュー内容で、ほとんどが知っていることだ。
目新しいのは新曲の話だけ。
けれども、すべての写真が欲しかったし、綴じ込みのポスターがついているものもある。
「旱樹…」
うっとりした表情で粧裕は雑誌をめくる。
頭の中で、記事が旱樹の声に変換される。
ラジオも毎週聴いているし、テレビに出ると必ず録画している。
言葉を切るタイミングも、息をつく瞬間も完全に分かっているつもりだ。
三冊あわせても数ページしかない記事をたっぷり時間をかけて読み終えた。
粧裕は目を閉じると彼が自分の名を呼ぶところを考えてみた。
『粧裕ちゃん』
胸の奥が、キュンとうずいた
粧裕は起き上がると、部屋の鍵をかけに行った。
「しわになるといけないもんね」
言い訳するようにスカートを脱いでハンガーにかける。
再びベッドに転がり、目を閉じた。
制服の上着をまくりあげて、ブラジャーのホックをはずし、それも上に押し上げる。
成長途中のふくらみを小さな手がなでる。
「やだ、恥ずかしいよぅ…」
想像上の旱樹は、テレビでは見たこともないような優しい顔で粧裕を見ている。
『すごく可愛いよ、粧裕ちゃん』
そう言って、さらに指を這わせてくるのだ。
立ち上がりかけていた淡い色の蕾に軽く指で触れる。
「ひゃんっ」
その刺激だけで固くなってしまった部分を人差し指と親指ではさんで転がす。
空いたほうの手の指を唾液でぬらして、もう一方の先端を擦る。
「んっ…旱樹ぃ……」
胸だけでは物足りなくなって腰を揺らすと、
『粧裕ちゃんはエッチだね』
「ち、違うよぉ…」
そう言いながらもやはり優しい表情で下半身に触れてくれる。
下着の上からそこに触れると、染みた愛液ですでに湿っているのがわかる。
割れ目に沿って指を動かすと充血した突起に指があたり、身体がはねる。
「あっ…」
今までより強い快感が背中をかける。
そして、執拗に同じ部分を弄り続ける。
甘い吐息がだんだん荒い息遣いに変わり、抑えていた声が漏れはじめる。
「んあっ…はぁっ……」
下着越しではじれったくなってきて、パンティから片足だけを抜く。
直接触れると痛みにも似た快感に襲われる。
「やぁん……旱樹っ…」
これまで固く閉じていた瞳を開くと、壁に貼っているポスターと目が合う。
「きゃっ…やだ、見ないでぇ…」
言葉とは裏腹に、そちらに向けて脚を開く。
指の動きも激しくなる。
「ひゃっ…駄目っ……旱樹っ、ヒデキ…!」
幼さを残す身体が大きく震える。
はあはあと全身で息をしている。
しばらく同じ体勢のままで粧裕は絶頂の余韻に浸っていた。
呼吸が落ち着いてくるとともに、頭の中も冷静になってくる。
そうすると確かに充足感はあるものの、
もっと大きな感情として虚しさや罪悪感などがこみあげてくる。
ポスターからの視線(とはいえないだろうが)が痛い。
「う〜、…でも旱樹が悪いんだからね」
バツの悪さを隠すように頬を膨らませて粧裕は言った。
自分自身の今の姿をあらためて見てみる。
「ぎゃっ、べちゃべちゃじゃん」
垂れた液体で太股の辺りまで汚れている。
「これだったらシャワー浴びたほうが早いよね」
適当に着衣を整えた後、軽やかに彼女は階下に向かった。