「楽しかったー!今日は、すごく楽しかった!」  
 
夕暮れ、スペースランドを後にして月とユリはバス停へと向かっていた。  
「あぁ、良い気晴らしになったよ」  
「ふふ。こんなんで気晴らしになるんだったらいつでも誘って?」  
腕を絡めてにっこり歩くユリの足取りが遅くなっていく。  
「……疲れた?」  
「疲れてないよー。でも、」立ち止まって呟く。「ちょっと思い出しちゃった」  
バスジャックの轢かれた痕が、道路に残っていた。ユリの肩が少し震える。  
実際、かなり怖かったのだろう。  
罪悪感を感じた月は、ぐっと手を握った。  
ユリは、はっとして少し、慌てた。  
「ご、ごめん。そんなんじゃないって!私は、大丈夫、大丈夫。  
 滅多にない体験だったし?貴重だって。  
 でもライトが誘ってくれる方がもっと貴重だけどね!」  
笑っている顔が、一瞬泣いているように見えた。  
 
「ユリちゃん……もうちょっと、いいかな」  
 
帰宅途中の駅で降りて、二人はラブホにいた。  
ここまで、ほとんど無言だった。いつになく黙り込む月に連れられて  
ユリも口数少なかった。どこへ、とも聞かない。  
先にシャワー浴びて、と言われたときだけ戸惑っていたようだったが  
なにも聞かずに、月に従った。  
『何だ、ここ。』  
物珍しげにきょろきょろするリュークを流し見る。  
『リューク、しばらく散歩してこい』  
『え』  
『二、三時間だ。帰ってくるな』  
『わ、わかった…』  
シャワーの音がやむと同時に死神は壁から出て行った。  
振り返る。  
「ライト…」  
バスタオル一枚の彼女は、よけいに細く見えた。  
ベッドから腰を上げて向かう。  
「あっちで休んでて」  
月の囁きに、上気した肌がいっそう赤くなる。  
その場で抱きしめたいのを堪え、振り切って、シャワーへ向かった。  
 
「……っ…、ら、ライトぉ……」  
こんなに女の肌は柔らかいのかと驚いた。  
手首の骨はちょっと力を入れただけで折れそうだ。  
首筋からキスをして抱きかかえて肌を合わせる。  
震えながらおずおずと、その手を月の背中に回してユリが見上げて名を呼ぶ。  
「……びっくりだよ」  
無理に作ったような顔でユリは笑う。  
「何が」  
月の唇が、丁寧に首筋、喉元をたどる。  
息も絶え絶えに懸命に応える。  
「だって、……ぁ。ン……ほんとに、私でいいの…?」  
顎にキスして目を細めて視線を合わせる。  
「それは僕が言うことだよ」  
月の笑みにユリは見惚れた。  
「……や。…ゃあ。恥ずかし……は…ぁん。……んっ」  
月の息を、間近で感じる。胸が触れられる。  
包み込むようにゆっくりと揉まれ、指の谷間で乳首を撫でられ、  
ユリの躰がびくびくと震える。  
月の指を、ユリは魔法のように感じた。  
何故、月はこんなに上手いんだろう。  
比較対象はないけれど、あの月が、月が自分に触れている。  
鳥肌が立った。  
 
「ユリちゃん。……すごく、綺麗だ」  
声に我に返る。頬に更に血が上がる。  
「もー…っや…う…んん」  
小さくイヤイヤをすると、胸の谷間に顔を埋めていた月が近づいてきた。  
手を伸ばし、月の髪をかき上げ、ゆったりとユリが瞼を伏せる。  
唇が重なる。  
最初は唇だけ。  
ユリが喘ぐと、深く口づける。  
舌を絡め合う頃には月はユリの太股に手を掛け、大きく開いた。  
足が腰から掲げられる。  
「……ッ!!」  
煌々とした灯りの下、月がじっくりと自分の秘所を見つめるのに驚愕する。  
息を詰めて、ユリは顔を必死で隠した。  
 
な、なんで……こんな格好。  
しかし、そんな恥ずかしい問いは口に出せずに、ユリはただ、  
ライト…って、女の人のアソコ見たこと無いのかな…  
と、ぼんやりと考えた。  
 
「ひ!ひゃ……あああッア!!」  
陰核に指の腹が当たっている。  
まるでマークシートの穴埋めを行うような冷静沈着な動きに、ユリは恥ずかしさで泣き出したくなった。  
「ら、………ぁ……ああああん!ぁん!!」  
両膝の間に月がいるので、閉じられない。  
しかも、うっかり見ようものなら、月の下半身まで丸見えなのだ。  
それでも、見えてしまった。  
月が、自分の指を舌でぺろりとなめ、包皮を剥き出すように陰核の根元から撫で上げている。  
躰に電流が走った。  
「…ぃ……た、」  
痛いのかどうかさえ解らない。  
最初は指の腹で撫でていたのに、指先で下から上へとなぞり上げている。  
喘ぎに泣きが入った。  
「ごめん痛いかな。…でも、奥から垂れてきている」  
躰が熱くなり、痛いだけの感覚ではなくなってきた。  
逃げたい。  
必死でそう思うのに、指はシーツを掴んで離せない。  
音が聞こえない?月が言った気がした。  
ぬちゃぬちゃと音が頭の奥に響く。  
響くたびに躰が熱くて、逃げ出したいのに子宮から愛液が溢れ、躰が言うことを聞かない。  
「んっんっんっ。あ……ぁああん!あああん!!こわい、こわ…いッッ!」  
月がいなくなってしまう。  
人差し指と中指で包皮を押さえ込まれ、剥き出た小さな芯を親指先で弄られて  
ユリは一人、達して気を失った。  
 
無防備で、可愛い。  
頬付けをついて横になり、髪を撫でてユリの泣き顔を眺める。  
でも、そろそろ限界だ。  
意識を失ったユリの両足を抱えて、起きあがって月は腰を進めた。  
あんなに細いと思ったユリの躰が重い。  
おまけに入り口はどこにあるかもよくわからないほど小さく、  
月はゴム装着済みの自分の先端を、割れ目に沿って擦りつけ感触を  
楽しむくらいしかできない。  
「…ク、…」  
端正な眉を小さく寄せる。  
「……ン……ゥん」  
月の気配に、ユリが目覚める。  
弛緩して、足を大きく広げ、腕を伸ばす。  
月が瞬く。  
月を掴んで、ユリはさり気ない素振りで自らの中心へと宛がった。  
「ライト…」  
声は聞こえないが、唇の動きで誘う。  
「ユリ…!」  
早急に腰を埋めた。小さくユリがたじろいだ気がしたが、  
中の軋みが心地よく、肉の熱さは興奮を誘う。  
月の欲情は抑えきれず、何も考えずに腰を奮った。  
「あ…ん……ん……あ…ぁ……ああん」  
躰が一緒に揺れる。腰を上下しすぎて、抜けそうになるが、ユリが吸い付いて離れない。  
「………ッ!!」  
夢中になって突き上げて、心拍が一気にあがる。  
「あん…ああああん……ああん…!あああ!!っ!!」  
ぎゅぎゅっと中が収縮して一気に射精して、ベッドに沈んだ。  
 
「ぅ……ン、ライト……」  
ユリの声にびくっと震え、月がユリを覗き込む。  
「ユリちゃん」  
月の目が鋭利な光を放つ。  
「僕だけの物にしておきたいから…」  
「ライト…」  
唇が重なる。  
「君の思い出も心の中も僕だけの物にしておきたいから」  
美しい月が、ユリの顔中にキスをしている。  
「今日のこの日は、二人だけの秘密…スペースランドに行ったことも」  
惹き付けられてユリが頷く。  
純粋に慕うユリの視線に月の心は重く沈んだ。  
はじめたことをやめるつもりはない。  
だけど、せめてこの一瞬だけはユリのために。  
目を見せないように瞼を伏せて、口吻を続けた。  
 

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