部屋の空気は澱んでいた。
そこを満たしているのは、微かな衣擦れの音と、二人分の熱い吐息。そして湿った淫らな音。
「・・・んん・・・ふ・・・」
ちゅく、という淫らな音の合間に、小さな声が漏れる。
さゆは月の熱く固い『モノ』に手を添え、ゆっくりと舌を這わせている。
先端から根本まで、丹念に舐め回す。唾液が伝い落ちてシーツを濡らしている。
「・・・く・・・」
時折耐えきれない快感に襲われて、月が小さく呻く。その声がさゆの欲情を煽る。
兄が自分の愛撫で感じている、そう思うと興奮し、ますます熱心に舌を蠢かした。
「さゆ・・・もう・・・」
月がうわごとのように言うと、さゆの頭に手をやり、自分の体に押しつけるように力を入れる。
それに応えるように、さゆはそれまで舐め回していたモノをゆっくりと口に含む。
喉の奥まで収めると、はじめはゆっくり、徐々に激しく頭を動かし始める。
じゅく・・・じゅぽっ・・・
淫らな音が部屋中に響き渡る。互いの快感がどんどん高まってゆくのが分かる。
さゆ、という押し殺した叫びが聞こえる。それと同時に、口に含んでいたモノの先端から欲望の固まりが吐き出された。
熱く苦いものが口の中を一杯に満たしてゆく。飲み下す前に少量が口の端から溢れ、顎を伝い小さな胸に落ちる。
しばらくの間、部屋の中には、月の荒い息遣いだけが響いていた。
さゆはようやく口の中のモノを全て飲み下す。口の中や喉の奥に残る違和感はしばらく消えない。
兄のモノは欲望を吐き出してもなお萎えていない。固くそそり勃ったままだ。
「・・・さゆ、乗って」
不意に月の声が聞こえた。
まるでその声に操られるかのように、さゆは仰向けになっている月の腰の辺りに跨る。
「自分で挿れてごらん」
月の声は甘く、それでいて有無を言わせない力を込めている。
さゆは片手を兄のモノに添えて固定し、もう一方の手を自らの秘部にやり、指で花弁を押し開いた。
さゆのそこは既に十分濡れている。溢れだした透明な愛液が、月の腹部に伝わり落ちた。
そのままゆっくりと腰を下ろしてゆき、途中まで挿入したところで、完全に腰を落とす。
「んんっ・・・」
「くぅ・・・」
月のモノが完全にさゆの中に収まった瞬間、二人は同時に小さな呻き声を漏らした。
しばらくその姿勢のままじっとしている。
「自分で動いてごらん」
兄の声に応え、さゆはゆっくりと腰を動かし始める。
「あっ・・・ん・・・ふ・・・」
月は、まだ幼さを残す妹が快感に身を委ねている様をじっと見つめていた。
さゆの目は半分閉じられ、顔は上気して桜色に染まっている。長い髪は乱れ、肌に張り付いている。
時折唇を嘗める仕草が、大人の女の妖しさを感じさせてドキリとさせられる。
月がじっとしているので、自ら快感を得ようと、さゆはもどかしげに腰を動かしている。
と、不意に月の腕が伸びてきて、さゆの腰を掴んだ。そのままさゆの体を固定させ、激しく突き上げてくる。
「はあっ・・・あっ、あっ、・・・ああっ!」
息も吐かせぬほどの激しい突き上げに、さゆの理性は完全に消し飛んでいた。
あるのはただ、背徳感と背中合わせになった、見も世もないほどの快感だけ。
「あっ、お、にいちゃんっ、もっと・・・もっと、奥まで突いてえっ」
平素なら決して口には出来ないような淫らな言葉が、無意識のうちに口をついて出る。
「んっ・・・もっと突いて・・・掻き回して・・・っ・・・ああっ!」
あまりの快楽に耐えきれず、さゆは啜り泣きに近い声をあげて仰け反る。
「や・・・イっちゃうよぅ・・・」
「イってもいいよ・・・さゆ・・・僕も・・・もう・・っ」
「あ・・・あ・・・おに・・・ちゃ・・・ふああっ!」
「さゆ・・・お前の中に射精すよ・・・いいね・・・っ・・あぅっ・・・」
「あ・・・も・・・ダメ・・・イク・・・!」
頭の中が真っ白になり、さゆは絶頂に登り詰めた。その一瞬後に、体内に熱いものが放たれるのを感じる。
体の奥深くが満たされるのを感じながら、さゆはしっかりと兄の体にしがみついている。
月もまた、さゆを強く抱き締めている。二人の荒い息が不協和音となって部屋を満たしている。
心地よい疲れで体中がだるい。兄の腕に抱かれたまま、さゆはいつの間にか眠りかけていた。
おにいちゃん、だいすき。心の中でさゆが呟く。
僕もだよ。大切なさゆ。兄の声が聞こえた気がした。
もうすぐこの世界は変わる。争いのない平和な世界になる。僕はその世界の神になるんだ。
そうしたら、おまえを・・・
何を言っているんだろう?眠くてよく理解できない。
兄の声が遠くなっていく。
おにいちゃんだいすき。
もう一度心の中で呟き、さゆは眠りに落ちた。