第一夜  
 
 
「ハル=リドナーだな」  
自宅の玄関のドアを開けた途端のことだった。  
後頭部に押し付けられた金属の感触に、  
ハルは一寸驚くが動揺はせず、返事をした。  
「ええ、そうだけど」  
「おとなしく言う事を聞け。そうすれば手荒な真似はしない…」  
そう言うと、男は板チョコをパキッとかじった。  
ハルはその物騒な訪問者に抵抗することなく、彼をやすやすと迎え入れ、ドアを閉めた。  
 
「あなた…メロね?」  
姿は見ていないが、女の勘と、先ほどのチョコの音でハルは確信していた。  
言い当てられた本人、メロは、  
「分かっているなら話は早い」とでも言いたげに、ふんと鼻で笑った。  
「SPKの持っている情報、ニアの考え、これからの動き…全て話してもらおうか」  
「そうね…条件次第では、いいわ。でも、その前にシャワーくらい浴びさせてくれない?」  
 
ハルは靴を脱ぐと、玄関に隣接したバスルームに入り、  
メロの目の前でするするとコートや衣服を脱ぎだした。  
下着まで全て、躊躇うことなく外した。メロにとってその行動は少し意外だった。  
マフィアに居る娼婦なんかは別として、女というのは、  
こうもたやすく初対面の男に全裸をさらすものだろうか。  
ましてやこんな、銃を構えた殺人犯の目の前で。  
 
「…条件次第だと?」  
「タダってわけにはいかないでしょう?」  
「報酬…か…ふん、言ってみろ」  
「わからないの?」  
ハルは初めてメロを真正面から見つめた。  
ほんの数秒、沈黙の中で見つめ合う二人。  
銃を持つメロの左手に、ハルはそっと自分の右手を沿わせ、  
それをゆっくりと外側へと開かせる。その間も目線は外さない。  
ハルは空いている左手でメロの右ほほを撫ぜた。  
ここまで来ると、メロもハルのこの後の行動が読めてくる。  
 
次の瞬間、ふ、と目を閉じながら、ハルは唇をメロのそれに重ねた。  
ちゅっ、ちゅと表面を吸いながら角度を変え、擦り続ける。  
ハルはそう安物の口紅を着けていたわけではないが、その執拗な摩擦に、  
メロの口の周りが紅く汚されていく。  
「ん、…」  
薄く開いたメロの口の中へ、ハルは舌を滑り込ませ、  
ご挨拶程度に一周その中を舐め、少量の唾液を送り込みながら、唇を離した。  
すると、二人の唾液の混合した銀の糸がとろりと一瞬、形を作って消えた。  
 
「そういうことか…」  
情報や何かの代償に体を求められることは、これまでに何度もあった。  
さすがに、ニアの部下までもがそんな要求をしてくるとは少し意外だったが。  
「さ、あなたも服を脱いで、こっちへ来て」  
「…いいだろう」  
メロは銃を下げ、乱暴な手つきで服を脱いだ。  
全裸になると、ハルをバスルームの壁に押し付け、下から睨みながら迫る。  
 
「さっさと始めるぞ。奉仕するのは俺の方だ…どうされたいのか、言ってみろ」  
「ふふふ、そんなに怖い顔しなくても…そうねぇ、優しく、キスしてもらおうかしら?」  
メロにとっては、何もかも乱暴にするほうが性に合っていてやりやすかったのだが、  
生憎ハルはそれと反対のものを求めてきた。  
しかし、できないと言うのもメロのプライドが許さない。  
「わかった。…目をつぶれ」  
「はいはい…」  
優しいキスなんて、したこともされたこともない。  
いや、さっきハルにされたキスは、そう言えば優しかったかもしれない…。  
メロは、ついさっきされたのと同じようなキスを心がけ、ハルに優しくキスをした。  
ちゅっちゅと吸って、擦り合わせて、舌を入れて、唾液を送って、唇を離した後、  
もう一度春の唇の表面を一回り舐めてやった。  
「…これでいいのか」  
「ん…いいわ」  
 
ハルはメロの手を掴み、その手の平を自分の乳房の上に乗せて揉ませた。  
更に、片方の脚をメロの脚に絡ませ、性器と性器を密着させる。  
「このまま揉んでいて」  
ハルは手を離すが、メロは言われたとおりに乳房を揉み続けた。  
その乳房は力を込めると指の股から肉が溢れ、  
更にそのまま押し付けると、強い弾力で跳ね返してくる。  
 
その頂点にはピンク色の飾りが凛と艶めいていた。  
ハルは腰をゆっくり上下に動かして、密着した性器を擦り合わせた。  
メロの陰茎が少しずつ起き始めたのを確認し、くすっと笑う。  
メロもそれを自覚し、少し悔しそうに、恥ずかしそうに、下を向く。  
しかしその顎を掴まれ、上を向かせられると、メロは再びハルに唇を奪われた。  
「んっ…!」  
思わず、乳房を揉む手に力が入り、強く握った状態でその動きが止まった。  
メロはハルに口と股間を同時に刺激され、陰茎は見る見る天を向き、  
乳房を揉む手もやがて動き出し、体中が熱くなった。  
 
いつしかメロはのけぞるような体勢で唇をいいようにされていた。  
男女の逆転した身長差が、この行為の主導権をハルに与えたのだ。  
ハルはメロの背中を支えながら、もう一方の手でメロの睾丸をころころともてあそび始めた。  
「あっ…!んっ…」  
「ん、いい子ね…」  
ハルはメロの唇を解放し、息を荒げたその表情を見てにっこりと微笑んだ。  
互いに乳房と睾丸を揉みながら、しばらく体を絡めあい、何度もキスを繰り返す。  
 
「いいわ、メロ…ね、こっちも…」  
ハルは、メロの空いている方の手を掴んで、今度は膣口へとそれを導いた。  
更に中指を立たせ、中へ入れさせた。メロは抵抗せず、ハルの中で中指を屈伸させる。  
「ん、ん、いいわ、もっと入れて…」  
メロは人差し指も挿入して、更に奥へと潜り、ヌプヌプと音を立ててしごいた。  
その音と感触に、ハルの股がそこそこ濡れ始めていることに気づく。  
もっと濡れさせてやる、とメロは更に激しくハルを攻め、唇も奪った。  
互いにむさぼり合うような口付け、そして互いの性器を手でいじりまわす。  
 
「あ、は…メロ、ん、…」  
「どうした?さっさと次の段階に行くぞ」  
「ん…」  
「前と後ろ、どちらか選べ」  
「あなたは、どっちから入れたいの?」  
「…?!」  
濡れた目をしながらもからかうような口調でそう言ったハルに、メロは目を丸くした。  
「…これは報酬としての行為だ、お前の…」  
「あなたの好きなやり方で、してほしいのよ」  
そう言って、ハルはちゅっとキスをして、小悪魔のような笑みを浮かべた。  
メロは、困ってしまった。こんなことを言われたのは初めてだし、  
どの体位が好きだとか意識したことは無かった。  
けど、そう言われて考えてみると、メロは上に乗って犯すのが好きなような気がした。  
あの体勢が一番支配欲を満たしてくれるのではと思ったのだ。  
しかし、この場所はバスルーム。横になるわけにもいかない。  
さて、どうするか…。  
 
…と、じっくり考えてみたかったが、そんな余裕は無かった。  
メロは、とにかく早く入れたかったし、黙ったメロの唇に、  
ハルはいたずらのように絶えずキスをして急かすのだ。  
「…面倒だ。このまま入れるぞ、脚を開け」  
「ふふ、せっかちね」  
「なっ…そ、そんなんじゃない!」  
待ちきれないのを悟られたと思い、メロは顔を赤らめて反論した。  
ハルは言われた通りに脚を開いて、めくれあがったヒダを露にした。  
愛液で光をてかてかと反射するその入り口を見下ろし、メロは気づかれないように生唾を飲み込んだ。  
陰茎の先端を押し付ける。が、そのとき。  
 
「あ、待って」  
「…なんだ?」  
「入れる前に、舐めてくれるかしら」  
「…ちっ、まったく…」  
メロは早く入れたかったが、渋々しゃがんでハルの股間に顔を近づける。  
舌先を潜らせてクリトリスを探し出し、それを徹底的にかわいがってやる。  
「あ、あ、あん、すごいっ…上手…」  
メロは更に激しく奉仕する。クンニもマフィアの女によくさせられた。  
転がして、吸って、舐めて、弾いて…それを速い周期で何度も何度も繰り返す。  
「ちょ、もう、あ、いいわぁっ…あん、だめっ…」  
想像以上の快楽に、ハルはもう我を忘れそうだった。  
やめて、と言いながら腰を揺らし、メロの奉仕を存分に愉しむ。  
セックスがご無沙汰だったハルは、たまらずゴボ、ゴボっと液を放った。  
メロはそれを指で拭い取ると、自分の陰茎にそれを塗りたくる。  
更にその指を、ハルの目の前で舐めてから、ハルの膣口に挿入し、更に馴らした。  
 
「入れるぞ、いいな」  
「ん、あ…その前に一つだけ…」  
「なんだ、言ってみろ」  
ハルは再び小悪魔の笑みを浮かべて、耳元で囁いた。  
「…中に出したら、ダメよ…」  
「…!!」  
「いいわね?」  
「…そ、そんなこと、言われなくともっ…出すか!」  
メロはかぁっと耳まで赤くなり、何だか分からないいらつきを  
ごまかしたくて、すぐに陰茎を挿入した。  
 
「ん、ぁぁあ、あ、ぁあん…」  
「ふっ、ふっ、…」  
メロは腰を上下に揺らし、ぱちゅん、ぱちゅんと音を立ててピストン運動を始めた。  
盛りの付いた年頃のメロの陰茎は、ビンビンに熱く硬く猛り、  
ご無沙汰のために狭まっていたハルの膣をぐいぐいと犯した。  
「ああん、あん、おっきぃい…すごい、すごいわ、メロ、あ、もっと…!」  
「ん、ふ、ふ、はぁっ、ふ、ふ、ふっ…」  
結合は、かなりいい塩梅だった。  
二人とも、これまでにしたどのセックスをも上回る快楽を得ていた。  
二人の体の相性はこの上ないほどに、良かったのだ。  
まさかこんな出会い方をした相手が、最高のセックスの相手だとは、皮肉なものだ。  
程よい摩擦に濡れ具合、温度、におい、加速する腰の振り…。  
二人の体と頭は絶頂へ向かってまっしぐらだった。  
いつしか二人とも言葉は失い、吐息と喘ぎ声だけしか発さなくなった。  
 
キラのことも、ニアのことも、  
相手が誰であるかさえも忘れて、ただこのセックスに夢中になる。  
ただその性器と性器が、至上の愛で結ばれている。  
一生このまま腰を振っていたくなるほどの快楽だった。  
「んっ…!あっ」  
メロは、ふと我に返った。  
 
まずい…―――出る!  
 
「ぅあっ…!」  
次の瞬間、メロはハルの膣の中に、ドクっ、ドクドクっ…と射精した。  
「あぁんっ…!」  
大量の精液を中に放たれたハルは、ほぼ同時に自身も絶頂を迎えた。  
 
射精と共に二人は腰を止めて、しばらく息を整えた。  
力が抜けて、ハルは背中の壁に寄りかかり、メロはそのハルに寄りかかった。  
その胸元をハルの柔らかな乳房が受け止める。  
しばらくの沈黙の後、先に口を開いたのは、ハルだった。  
「うふふ…ダメって言ったのに」  
「…う…」  
「ほんと、悪い子ね…」  
「…、すまない…」  
メロは下を向いて膨れた。  
その様子に、ハルは母性本能をくすぐられる。  
「あら、かわいい顔するじゃない。子供みたい」  
「こっ、子供扱いするな!」  
「ふふ、そうね、あなたはもう立派なオトナだったわ…」  
ハルは結ばれたままの下半身を僅かに揺らした。  
ずっぷりと根元までメロの陰茎が挿し込まれたハルの膣。  
互いにその結合を解こうとはせず、キスやら何やらしているうちに、  
結局そのままもう一発メロが射精するに至った。  
 
更にシャワーを浴びて互いの体を洗いながら、  
その流れで今度は後ろから犯した。  
バスルームを出たら、衣服は愚か下着をまとうこともなくそのままベッドへ直行し、  
様々な体位でセックスをし続けた。  
その間、メロは更に何回かの中出しをしてしまった。  
 
 
そして、とうとう朝になってしまった。  
ハルはいつもより肌が艶々としているように見える。  
痛む股間もそうとは悟らせまいとする颯爽とした振る舞いで、  
SPK本部へ出かける支度を済ませた。  
「それじゃあ、行ってくるからいい子にしているのよ」  
「おい!情報は…」  
「もう時間だから、帰ったらたっぷりと…ね」  
ハルはメロにチュっと軽いキスをして、踊るような足取りで玄関へ向かった。  
情報をお預けにしていれば、帰りまでメロはここから出てはいかない。  
もちろん、ハルは今夜もメロとセックスをするつもりだ。  
 
「…結局子供扱いしているな、あの女…」  
メロはハルがいなくなった途端、ようやく眠気に襲われた。  
汗ばんだ自分の体、痛む腰。皺だらけの湿ったシーツをじっと見た。  
「…くそ、こんなはずでは…」  
と言いながらも、メロは満更ではなかった。  
後ろ頭を掻いて欠伸をして、いつしかメロは眠りについた。  
 
=END=  
 

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