「旦那様はお疲れの様子。またいずれ…か」
おハル…と、湯殿に独り残されたロッドが、文を片手に胸を高鳴らせた
そんな朝のまた後日の話である。
(暗転:ピチチと小鳥がさえずる音。地を耕す農民。)
「えー、本日は女技の講義を致します。」
正座したまま、ぽかんとおハルを見上げた。
「体を契り、油断した敵を暗殺…」
張り型をぱしぱしと手にし、おハルは続ける。
「くの一のみが使える、最強の忍術です。」
「……いやいやいや、」
そんなおハルを前にジェバンニはげんなりと片手を上げた。
「どう考えても無理があります。」
広い肩、無駄のないすっきりとした胸板。きりりと凛々しい眉。
どう贔屓目に見ても自分は女じゃない。
ていうか正真正銘生涯かけて男だ。なのに女技、阿呆か。
「お黙りなさい!二人を待つ人がいるのよ!!」
男ならにんにん言うな!とおハルはジェバンニの膝にどさりと跨る。
「あ、あーれー!!」
さくさく身包みを剥がされ、ジェバンニはそう叫ぶしかなかった。
「…んッ…は…」
ぴちゃりと音を立て、赤い舌が己の分身に這いまわる。
細い指が艶かしく何度も上下し、おハルの唾液と自分の体液が混じり
てらてら黒びかるそれは硬く聳え立っていた。
「いい子ね…」
温かい口に含まれて吸い上げられれば、くっと喉が鳴る。
あまりの情景にジェバンニは目を閉じて顔を背けた。
「あん、駄目よ…ちゃんと見て?」
ふにふにとした感覚に恐る恐る目を開ければ、丸く白い双璧が己が包んでいる。
収まりきらなかった先端に唇をあて、おハルがくすりと笑っていた。
頭部をちろちろ見せ付けるように舐め、柔らかい乳房で茎を扱くその淫猥な姿。
わざわざ殺されなくても快楽に解けて死んでしまいそうだ。
「お顔が真っ赤…かわいいのね。」
悩殺という言葉が頭に浮かび、成る程、文字通りだ。とジェバンニは思った。
「失礼…」
身を起こしたおハルが、肉付きのいい太ももを広げ再びジェバンニの上に跨る。
彼の肩に手をかけ、ず、ず…とゆっくり腰を落とすおハルの中心は
すでに酷く濡れそぼり、難なくジェバンニを飲み込んでいった。
「ジェバンニ…ここからが本番よ」
は、と一つ息を吐くと両手で彼の頬を包み、揺れる瞳を覗き込んでそっと口付ける。
伸びてきたジェバンニの舌に少し驚きつつも、こっそりおハルは微笑み
まずは毒殺…と舌を絡ませた。
そのままゆっくり腰を浮かし、またずぶずぶとジェバンニを体の奥へ沈めていく。
互いの息が荒く口内に響くのを楽しみながら、茂みの奥にある自分の芽に触れた。
ぬるぬると滑る指の快楽に眉を寄せ、針金があれば急所切断ね、とまた物騒なことを考える。
ジェバンニの手が、おハルの背筋を撫で上げ細い腰にかかった。
生ぬるい刺激に耐えられないと言わんばかりに下から強く腰を打ちつけられれば
おハルの唇は糸を引いて離れ、甘く細切れな嬌声を上げ始める。
「あ…ッは、ん!ジェバンニ…」
駄目ね、女の色香に惑わされちゃ。
ぺろりと自分の指をつたう蜜を舐め、おハルも彼に合わせて腰を振るう。
もっと、もっと…とジェバンニの髪をかき乱すおハルの手が掴まれ
彼女のしなる体はどさりと地に付き組み敷かれた。
「もう…限界?」
くすりと笑いジェバンニの頬に指を滑らせているおハルの息も酷く荒い。
限界が近いのは彼女も同じだ。それでも何となく彼女は強がってしまう。
腰に、胸に、わき腹に、たまらないと鳴くすべすべと滑らかな肌を辿り、
ジェバンニの筋張った指はやがて、おハルの鎖骨を撫で、細い首にかかる。
「!!」
瞬間、おハルの目が驚愕に見開いた。
「女技、やぶれたり。」
ジェバンニの声と共に白い喉が締め付けられる。やられた。
「ジェ…バンニ…!」
隙をつかれたのは己か。
くっと喉が反りかえり、苦しげに歯を食しばるおハルを見下ろし
その細い顎に唾液が伝うと、ジェバンニはゆっくり指の力を緩めていく。
「唇から毒殺、背中からの刺殺、そして今の絞殺」
男を見くびらないで下さい。と牽制し、にっこり笑った後
滴る唾液を親指で拭ってやり、満足したとばかりに彼がその手を引いた…その時。
「へっ?…!」
ジェバンニの腕をつかみ、おハルの眼がぎらっと鋭く光る。
「いい度胸、ね…」
そのもう片手ににぎられたものを見て、ジェバンニの肝は震え上がった。
「え、ちょ、張り型…何、やめktkr!くwせあdfplふじこ!!!!!」
巻物を手に、半紙へ筆を滑らすレスターがぽきりと首を鳴らす。
忍の里はすべからく平穏、響くは非力な小鳥の声ばかり…。
本日も、一人を除いて一件落着である。