長編エロ尻小説
「秘密特命捜査官 NAOMI 〜DEATH NOTE事件〜」
(ファイル08)
南空ナオミには友達が皆無だった。
普通、どんな人間でも友達のひとりくらいできて当然である。
ナオミには、それがなかった。
「ナオミちゃんは怖い」
幼稚園の頃、自分が覚えている最初の言葉がこれだ。
なぜ自分は避けられてしまうのか。
なにがいけないのか。
ナオミには判らない。
子供は理性より本能で行動するので、ナオミの正体をなんとなく
見抜いていたかもしれない。
もっとも両親、とくに父親には、こうなることは判っていたようだ。
ナオミは難産の末、この世に生まれてきた。
生まれた赤ん坊は泣かなかった。
慌てて看護婦が尻を叩き、産声を出させようとした。
そのときギロッと大きな瞳で、その赤ん坊は看護婦を見た。
いや、「見た」というよりは「視た」。
それはまさに、観察されているような不快感をもたらした。
あまりの気味悪さに、その看護婦は悲鳴を上げて、危うく赤ん坊を
床に落とすところだった。
彼女はその後、ノイローゼになり、病院をやめてしまう。
ナオミを取り上げた看護婦から、出産時の話を聞き、父親は頭を
抱えた。
「本家の血が、オレのところに現れたのか・・・」
ナオミの父親は、親の遺産と会社を相続したので金はあったが
平凡な男で、際立った才の片鱗さえもない。
母親は父親から、彼ら血族の話しは聞いていたが、もとから
のんびりとした女性だったので、よく理解できなかった。
「オレが何とかしなければ・・・」
父親が危惧していたのは、ナオミの存在を本家に知られてしまう
ことだった。
可愛いひとり娘が、何かに利用されることを恐れていた。
虫や人形を平然と引きちぎり、笑うことも泣くこともせず、
たまに部屋の隅や窓の外をじっと見ている。
もちろんそこには何もいない。
父親は人外の力を持つであろうナオミを、普通の女性として生きる
術を持たせようと、厳格な育て方をした。
お茶にお花といった習い事から、果ては正しい精神を持つようにと
禅や柔道、合気道にまで通わせた。
その教育パパぶりを見ながら母親は、
「この調子じゃ、将来この子が結婚する相手は、あなたみたいな人
でしょうね」
と明るく笑いながら言うのだった。
ナオミは優秀な生徒で、父親が紹介する道場や塾のプログラムを
黙々と消化していった。
それが多少影響したのか、幼い頃に見られた奇妙な行動は、
成長するにしたがい表に出なくなった。
それを彼女の父親はとても喜んだ。
喜ぶ父親の顔を見ると、ナオミも嬉しくなった。
だからなおさら勉学や武道、教養作法などをがんばって学んだ。
しかしそのことがナオミを、別の意味で孤独にさせていく。
彼女は学校や習い事の場でも、あいかわらず浮いていた。
あまりにも優秀すぎたのだ。
また異常な能力が減退するにしたがって、内向的な性格が形成されて
いくようになる。
それは本来、そういう性格を持った人間として生まれてくるはず
だったのか、父親が望む理想の子供像を無意識に作り上げてきた
のかは定かではないものの、大人しく従順な子供は、イジメられる
のが相場と昔から決まっていた。
小学校では物がなくなったり、無視されたりと、まだそれほど陰湿な
ものではなかったが、中学に上がる頃からイジメに性的暴力が
付け加えられるようになる。
美しい少女に育ち、やがて中学生になったナオミは、周囲から
いろんな意味で注目を浴びていた。
男子生徒たちからは欲情と苛虐を、女子生徒たちからは嫉妬と
憎悪をかきたてる「なにか」が、ナオミにはあった。
生まれて間もない頃のような、近寄りがたい不気味さが薄れて
いくのに比例して、クラスメイトのイジメがひどくなってきた。
人間以外の化け物に対する本能的な拒絶なのかもしれない。
いや、男に限って言うならば、拒絶というよりも性的な好奇心も
ある程度、関係しているのだろう。
小学生時代とは違って、男子生徒たちのナオミを見る眼は、服を
透視するかのように粘っこい光を留め、夜のオナペットとして
何度も何度も、彼らの頭の中でナオミは弄ばれていた。
こうした現象はクラスメイトだけでなく教師たちにも及んだ。
しょせん13〜15歳の中学生たちでは性的に未熟なので、ナオミの
いやらしい肉体にイジメという形でしか抗えないが、そのぶん
大人たちの反応は、狡猾的かつ大胆だ。
中学生にしてすでに色香を感じさせるナオミは、大人たちを
狂わせるのには十分だった。
とくに体育教師はナオミに粘着的なセクハラを続けた。
スラリとした細い足とまだ小さいながらも形の整った胸と尻を
持つナオミのブルマ姿は、体育教師の股間を常に刺激した。
目鼻立ちが整い、肌が透き通るように白く、長い黒髪は風に
なびくとリンスの香りが鼻をくすぐる。
気品のある物腰と物憂げな表情、そして純朴な性格。
男なら誰しも望んで止まない理想的なオンナが、無防備な状態で
目の前にあった。
体育教師はナオミの尻をよく触った。
「もっと速く!」
グランドで走っているナオミの尻を、ぱ〜んといういい音を
させながら叩く。あまりの勢いに、足がもつれそうになるナオミの
後姿を見て、彼はニヤついていた。
またあるときは鉄棒の見本ということでナオミを指名。
鉄棒におなかを載せた状態で、10分以上おなじ格好を強要された。
尻が生徒たちの前に晒されたまま、叩かれたり撫でられたりする。
「ハハハ・・・南空はケツがでかいなあ〜。
いったい何を喰ったら、こんなデブになるんだあ~?」
それを訊いて生徒たちがいっせいに笑った。
ナオミは恥ずかしさのあまり、ポロポロと涙を流した。
以降、彼女のあだ名は「尻デブちゃん」となる。
これは主に女子生徒たちが好んで使った。
傷つきやすい自我を持っている思春期に、こうした残酷な言葉を
叩きつけられると、確実にトラウマとして残る。
しかしナオミの精神に深い傷が残ることは、みんなが望んでいた
ことでもあった。
人間には美しいものを汚したいという本能が備わっているのだ。
(2〜3日後に続く)