長編エロ尻小説  
「秘密特命捜査官 NAOMI 〜DEATH NOTE事件〜」  
(ファイル34)  
 
ベッドの上でぼんやりしている南空ナオミに、タオルが投げられた。  
「これを使いな」  
山口久美子が無表情で言った。  
「そしてここには、もう来るんじゃないよ。判ったね・・・?」  
聞いているのかいないのか、ぼうっとしているナオミは、床にへたり  
込んでいる惣流明日香と眼が合った。  
疲れきった惣流は、寂しそうな微笑を浮かべながら呟いた。  
「・・・がんばってね、南空さん」  
身勝手な言葉を送る彼女は、もう生きていく目的など存在せず、  
あとは腐ったこの世界をみんなナオミに押し付けて、消えていく  
ことに開放感と寂しさで胸が一杯だった。  
鬼塚英吉は苛立ちながら服を身につけている。  
「ねぇ・・・もう8時過ぎよ?どうするつもり?」  
「・・・・・・」  
山口になにも返答せず、鬼塚はシャツに腕を通した。  
「卒業式のお別れ会の準備で遅くなったって、家に電話して  
おこうか?校長とも口裏合わせておいたほうがいいかもね」  
「・・・・・・」  
鬼塚はなにも答えず、ひとりでイライラしていた。  
 
暗い廊下を進む6人の男女。  
彼らの足取りは重く、口を開くものは誰もいない。  
渚薫も相変わらず、ずっと黙り込んだままだ。  
碇真嗣はそんな渚をどう扱っていいのか判らず、困り果てていた。  
ふいに山口の鋭い声が響く。  
「・・・誰だ!?」  
ライトの光に浮かび上がる人影。  
「・・・日香里!?」  
惣流は洞木日香里の姿を見て、眼を見開いた。  
「・・・待ってて・・・くれたの?」  
「・・・うん・・・明日香、一緒に帰ろう・・・」  
涙を思い切り流しながら、惣流は洞木に抱きついた。  
「・・・ゴメンね!・・・ゴメンね!」  
「・・・あたしのほうこそ、ごめんなさい・・・」  
泣きながら抱き合っている少女たちを見ながら、ナオミは顔面蒼白  
になり、その眼は震えている。  
そんなナオミを痛々しそうに見る鬼塚。  
そしてそれを憎々しげに見つめる山口。  
碇はなにも見たくないかのように眼を背け、渚は無言を貫いた。  
 
「あの女の子が、いつもナオミが言っていた惣流さんだね?」  
ベンツを運転するナオミの父親は、上機嫌で言った。  
「とても礼儀正しくて、いい子じゃないか?  
ああいう友達ができるんだから、やはり私立じゃなくて公立の  
中学校を選んで正解だったな」  
「・・・帰りが遅くなって、申し訳ありません」  
「気にすることはないよ、ナオミ。  
卒業式のパーティーの打ち合わせだったんだろ?  
ナオミはいつも真面目だったから、むしろ心配だったんだ。  
たまには友達とハメを外した方がいい。  
世の中、勉強だけじゃないからな。  
人間関係を学ぶのも、ときには大切なことだ。  
もちろん勉強もスポーツも、それ以上に大切だがな」  
「・・・・・・」  
「食事はどうする?  
ママと一緒に、これからレストランにでも行くか?」  
「・・・いえ、もう済ませました」  
「そうか。じゃあお風呂にはいってゆっくり疲れを取りなさい」  
「・・・はい」  
 
広くて清潔感のある浴室で、全裸のナオミは立ちすくんでいる。  
股間に異物感があるような気がして、お腹をギュッと押さえた。  
急に吐き気を催し、タイルに座り込む。  
ビチャビチャビチャッ・・・・・・  
吐瀉物が真っ白なタイルの上に広がっていく。  
「・・・きっ、汚い・・・汚い汚い汚い汚い・・・」  
呪文のように呟き続け、シャワーで何度もカラダを擦りつける。  
鬼塚が自分の中に吐き出した精液を思い出す。  
「・・・あっ、赤ちゃんが・・・いやっ・・・やだあぁぁ・・・」  
涙ぐみながら、シャワーのお湯を膣の中に流し込む。  
『ミジメねぇ・・・初体験をみんなに見られるって、どんな気分?』  
『これで南空も子供から大人に成長したわけだな』  
『あんたは一生、この体験を背負って生きていくんだよ』  
はあっ、はあっ、と息遣いが荒くなる。  
別れ際に鬼塚が言った言葉を思い出す。  
『明日もここに来いよな』  
「ひっ、ひいいいっ・・・!!」  
ナオミは狂ったように、シャワーでカラダを洗い流し続けた。  
 
真っ暗な部屋の中で、ナオミは膝を抱え、じっと闇を見据えていた。  
父親との約束が守れず、それが無念でしかたがない。  
(・・・お父様、申し訳ありません・・・)  
絶対的な存在に捨てられる恐怖心から、歯がカチカチと鳴る。  
泣きながら抱き合う少女たち。  
(・・・どうしてそうなるの・・・被害者は、わたしなのに・・・)  
暗く小さな炎が、胸の中で瞬いた。  
夜が明けたら、またあの悪夢のようなことが始まる。  
(・・・どうしよう・・・どうしよう・・・)  
『殺しちゃえば、いいんじゃない?』  
ふいにそんな声が聞こえたような気がした。  
(・・・誰?)  
暗闇に、かつて憧れた少女の面影があるモノがいた。  
『あなたの処女を奪った、あの男を殺すのよ!』  
(・・・ダメよ・・・お父様が、そんなこと許さないわ・・・)  
『大丈夫よ。お父様はなにがあっても、あなたの味方に  
決まってるじゃない!』  
(・・・で、でも・・・)  
『じゃあ、あの男と一緒になるつもりなの?』  
改めてそう問われると、不思議なことに拒絶する気持ちが  
薄らいでいる自分に気がつく。  
 
鬼塚は、思っていたほど嫌な人間ではなかった。  
悪ぶってはいるが、根が善人のように感じた。  
父親とはちがう種類のやさしさを持ったオトコ。  
(あのヒト、わたしのことを愛してくれているのかな・・・)  
素朴な疑問だった。  
ナオミは両親に我がままを言ったことがない。  
物欲が乏しいということもあるが、それ以上に彼らに嫌われるのが  
怖かったのだ。  
学校での居場所がない彼女は、ココしか逃げ場がない。  
広い世界を知らずに生きてきた籠の中の鳥。  
愛されてはいるが、それが本当の愛なのか、いつも不安だった。  
とくに自分が他の人間とちがうらしいという事実に、強烈な  
劣等感を持っている。  
(鬼塚先生なら、我がままを言っても大丈夫なような気がする・・・)  
愛を確かめるために無茶苦茶な要求をしても、きちんと逃げずに  
接してくれるかもしれない。  
そういう甘え方を、一度でもいいからしてみたい。  
ナオミの胸が温かくなってる。  
『・・・あなた正気?お父様を裏切るつもりなの!?』  
再び声が聞こえた。  
(そっ、そんなこと・・・!)  
『じゃあ殺しなさい。お父様が気がつく前に、殺すしかないのよ。  
ほらっ、これを持ってきたわ。これで邪魔者は、みんな消すのよ!』  
机の上に、台所にあるはずの柳刃包丁が置いてあった。  
 
「なっ、なんでこんなものが・・・!」  
思わず、声が出た。  
『・・・さあ、これであのオトコを殺しなさい!  
そうすれば、あなたはもう自由なのよ!』  
ナオミは囁き続ける少女に向かっていく。  
「・・・あっ、あなたは・・・誰なの!?」  
震えながら、ナオミはその少女を見た。  
鏡に映る自分がいた。  
鏡の世界のナオミは、凶悪な笑顔を浮かべて言った。  
「あいつらを殺せば、わたしは自由になれる!  
もうわたしは、誰にも縛られない!」  
純粋な精神を持つナオミは、その思考法もオンとオフしかない。  
白か黒か。  
殺すべきか、愛するべきか。  
曖昧な生き方ができない、孤独で不器用な少女は呟いた。  
「・・・殺すべきか・・・愛するべきか・・・」  
無表情になったナオミは、月明かりに照らされ輝く包丁を見つめ  
ながら、いつまでも考え込んでいた。  
 
 
(3〜4日後に続く)  
 

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