長編エロ尻小説
「秘密特命捜査官 NAOMI 〜DEATH NOTE事件〜」
(ファイル27)
その男は禍々しいオーラを発していた。
普通の筋トレではけっして作り上げられない、実戦的で攻撃的な
筋肉がビキビキッと膨れ上がっている。
硬く噛みしめられた口元には、鉄をも砕く凶悪な牙が見え隠れした。
彼を一言で言い表すのならば、野獣。
そう、まさに野獣のような男である。
渚薫が笑いながら、その野獣に語りかけた。
「鬼塚センセ〜、ドアには鍵なんてかけてませんでしたよ?
・・・いいんですか?かりにも学校の教師たる人が、大切な備品を
壊しちゃってw」
「なぁぎぃさぁ〜〜!!」
鬼塚が口を開いた。
「てぇめぇ〜〜!オレが南空、狙ってること知って、わざと手ぇ出し
やがったなぁ〜〜!!」
「はははっ、大丈夫ですってば。南空さん、まだ処女だし」
「そういう問題じゃあ、ねぇ〜〜〜んだよ、ゴラァ!!」
丸太のようにゴツイ腕が、渚に向かって飛んでいくが、ヒョイと
軽やかにかわし、外れた拳は教卓を粉々に砕く。
「・・・なっ、なんで、あのヤクザ教師がここに・・・」
唖然とする男子たちの眼は、砕け散った入り口に向かった。
薄暗い暗闇の中から、メガネをかけた女性がのっそりと現れる。
手にはこの旧校舎の鍵の束が握られていた。
「げっ・・・ヤンクミ・・・!?」
数学教師の山口久美子だった。
しんっと静まり返る教室の中、鈴原冬二は放置されたナオミに
駆け寄り、口のガムテープをはがした。
「しっかりせい、ナオミちゃん!」
鈴原に抱きかかえられたナオミは、ぼんやり周囲を見ている。
と、突然顔色が変わり、鈴原を押しのけると、口の中のモノを
吐き出した。
床に広がるパンティーの成れの果てと、生々しい嘔吐物。
いままでこんなモノをずっと口の中に含まされていた、というのが
ショックだったのか、体が震え、眼が見開かれる。
そして可愛い顔に似合わず、さらにげえげえと吐き続けた。
男子たちはそんなナオミをほったらかし、こっそりともうひとつの
ドアから逃げ出そうとしている。
「・・・あんたたち、ここであった話は、誰にもするんじゃないよ?」
山口の冷ややかな声に、彼らはドキリとする。
「アタシの実家、なんだか判ってんだろ?」
彼女の実家がヤクザだという噂は、みんな知っていた。
「・・・噂が本当かどうか、教えてやろうか?」
ギロリと鋭い視線を投げつける彼女に答えるかのように、男子たちは
恥も外聞もなく、いっせいに逃げ出していく。
「・・・ナッ、ナオミちゃん・・・?」
吐き続けるナオミの肩を抱き、立ち上がらせようとする鈴原。
「・・・ひいっ!?」
ナオミはビックリしたように体を飛び上がらせた。
「ナッ、ナオ・・・」
「ひいいいっ・・・!!!!」
鈴原を恐れるかのように悲鳴を上げ、ナオミは首を振りながら
後退りする。腰が抜けているのか、下半身を引きずるように
彼女は出口へと向かった。
助けようとしたにもかかわらず、暴行犯の一味として見られている
ことにショックを受ける鈴原だった。
「・・・ナオミちゃん・・・」
ガックリと肩を落とす鈴原に、相田が声をかけた。
「・・・しょうがないよ、冬二。もともと冬二だって、最初は南空さんを
辱めようとしていたわけだしネ。
お礼の言葉なんか、期待しちゃダメだよ」
「ワイはそんなこと、期待してたわけやないで」
寂しそうな顔で、鈴原は床を這いずるナオミを見ている。
「・・・ただなあ、ナオミちゃん、このまま大人になったら人間不信で、
辛い人生をずっと歩むことになるんやないかなあ・・・」
「・・・それは、彼女自身の問題じゃないの?
冬二が抱えることでもないし、当事者だけど、ボクもゴメンだな。
早く忘れちゃおうよ。自分と関係ない他人に憐れみを持つと辛いよ?
・・・人生なんて、忘れたもの勝ちだからねぇ・・・」
鈴原は相田の頭を拳骨ではたいた。
「あいてっ!!」
「アホ!ガキのクセに、えらそなことぬかすな!」
ナオミは床を這い蹲りながら、出口に向かっていた。
(助けて!助けて!助けて!助けて!助けて!)
声なき声を出しながら、逃げる男子たちに追いすがろうとする。
その目の前に、ダンッと白い足が立ちふさがった。
ニヤリと笑みを浮かべた惣流明日香だった。
鬼塚英吉は、教室でまだ暴れていた。
「卒業式に南空の処女をいただく計画を立てていたのに、よくも
ぶち壊してくれたなあ!!」
「・・・だから、まだ処女ですってば」
「るっせぇーーー!!」
ドカンッという音が教室に響き渡った。
またなにかを粉々にしたらしい。
「まったく、たかがオンナのひとりやふたりに・・・(苦笑)
ボクには理解に苦しむことですよ、鬼塚センセ。
そんなに南空さんが好きなんですかぁ?」
「汚されてない少女を犯すために、クソ面白くもねぇ教師を
ずっと続けてるんだ!
あいつは、オレ様のメインディッシュだったんだ!
いいか、渚ぁ!!いまどきのオンナつーもんはなあ、高校生になると
肉体的にも精神的にも汚れちまうんだ!
だから高校生以上は、ババアなんだ、ババア!!
オレはババアなんかにゃ、はなから興味、ねぇんだぁ!!」
ドカンッと壁をぶち壊す音を聞きながら、山口は憮然としていた。
「・・・よくもアタシの前で、そういうことを・・・」
こめかみに血管を浮き出しながら、彼女はタバコに火をつける。
「おらぁ!今日こそ、ぶっ殺してやるぜ!クソ餓鬼が!!」
渚はひょいひょいと、出口に殺到する男子たちの波に身を隠す。
「逃がすかよ!・・・どけぃ!小僧ども!!」
鬼塚の腕の一振りで、逃げ遅れた何人かの男子たちが宙を舞う。
その瞬間、背後から衝撃が走った。
男子たちの体を蹴り上げて空中を飛び上がった渚が、一回転しながら、
踵を鬼塚の後頭部に炸裂させたのだ。
さすがの鬼塚も、そのまま男子たちの人波の中に吹っ飛ばされる。
唯一残ったドアへ男子たちが殺到していただけに、分厚い筋肉だらけの
鬼塚がそこに突っ込むのは、悲惨な状況を生んだ。
埃が舞い上がり、呻き声が聞こえる肉の塊たちを、無表情で見つめる渚。
しかしその表情が、はっとなる。
倒れこんでいる人間ごと、なにかがムクッと起き上がった。
「・・・きさまの技など、人間凶器と呼ばれる、このオレ様には通用せん。
グレートティーチャーを舐めるなよ!?」
首と指をゴキゴキと捻りながら、肩に乗っている男子生徒を振り落とす。
「・・・ホントにセンセは、タフですねぇ」
ビシッと指を指しポーズを決める鬼塚に、呆れたように渚は言った。
「普通なら、死んでもおかしくないんだけどなあ・・・」
「ガハハハ・・・面白くなってきやがったぜ!」
口の中の血を、ぺっと床に吐きながら鬼塚は壮絶に笑った。