長編エロ尻小説  
「秘密特命捜査官 NAOMI 〜DEATH NOTE事件〜」  
(ファイル21)  
 
埃にまみれた教室には、『秘密基地』の主、渚薫を含め男子生徒が  
30名ほどいた。  
「・・・約束どおり連れてきたわよ」  
「・・・惣流さん・・・?」  
惣流はナオミの肩をぎゅっと掴み、その長い髪に顔を埋めながら  
口を動かした。  
「ふふふ、ゴメンなさいね。全部ウソなのよ。  
ねっ!日香里?」  
洞木はなんとなくバツが悪そうに俯いた。  
「わたしたち、もう卒業じゃない?  
だからみんなであなたのお別れパーティーをしようと思うの。  
一生忘れられない想い出を作って・あ・げ・る♪」  
「・・・そんな」  
ナオミは眼を潤ませながら言った。  
「マックで一緒に・・・」  
「うるさい!誰があんたなんかと・・・!!」  
ヒステリックに惣流は怒鳴った。  
「ここでバカな男子たちにストリップでも拝ませてやりな!  
あとでビデオテープも郵送してやるよ!!あははは・・・」  
ナオミはあらためて男子生徒たちを見る。  
男子たちはニヤニヤしながらナオミを見ていた。  
その後ろで、メガネをかけた少年が、スポーツバッグから  
ビデオカメラを取り出している。  
「・・・いっ、いやあ!!」  
絶望的な状況に、ナオミは泣き出した。  
 
惣流の体にしがみつくようにカラダを寄せ  
「ウッ、ウソよ!だってわたしたち・・・」  
「あたしに触るんじゃねぇよ!!」  
惣流はナオミを足で突き飛ばした。  
どたんっ、と床に這いつくばるナオミのスカートがめくれ、  
白く細長い脚があらわになる。  
うおおっ、と興奮する男子を尻目にナオミは  
「マックに・・・マックに・・・」  
と、まるで子供が母親にねだるかのように、しゃくりあげながら  
同じ言葉を繰り返している。  
「マックじゃなくて、マクドやっちゅーねん・・・」  
ぼそっとつぶやく大阪訛りの少年に、渚は語りかけた。  
「ほら、キミ。南空さんを歓迎してあげなきゃ」  
見た目からすれば、渚より大阪訛りの少年の方が体格がよく、  
この場の主導権を握ってもおかしくはない風格もある。  
しかし笑顔を浮かべ、色白の優男にしか見えない渚に、彼は  
黙って従った。  
いや、彼だけではなく、他の男子たちも渚の言葉に反応している。  
 
「堪忍やで、ナオミちゃん」  
とても本心とは思えないような心のこもっていない言葉を吐くと、  
少年たちはナオミの周りを取り囲んだ。  
「・・・イッ、イヤ!」  
恐怖に歪む顔で、ナオミは自分を見下ろす男たちに叫んだ。  
惣流に視線を移すと、彼女は傍らにいる洞木にしなだれかかり、  
「ふふふ、こっち見てるわw」  
と甘えるような声を出すのだった。  
 
さて、卒業記念としてナオミに二度と忘れられない忌まわしい  
記憶をプレゼントする役目を担わされた男子生徒たちではあるが、  
しょせんは中学生である。  
なにをしていいのか判らない。  
ナオミと男子たちは、無言で顔を見合わせている。  
「あんたら、なにしてんのよ!だらしないわね!!」  
惣流は叫んだ。  
「犯っちまいな!!」  
しかし誰も動かない。  
むしろしらけたムードが漂い始める。  
男たちが集う場で、我が物顔で仕切る女ほど煙たがられるものだ。  
そのとき教壇の上から見下ろしている渚が口を開いた。  
「とりあえず南空さんのアソコでも見たら?」  
かつてほのかな恋愛感情を抱いていた少年の冷酷な言葉に、ナオミは  
「やっ、やめて・・・イヤ・・・イヤよ・・・」  
と顔面蒼白なまま後退りし、うわ言のようにかすれた声を絞り出す。  
目標を与えられた男子たちは、ナオミの細い体を押さえ込んだ。  
「いやあああ・・・・・・!!」  
 
さすがに武道で体を鍛えているだけあって、ナオミも一筋縄では  
いかない。体つきに似合わないものすごい力で、両腕を押さえている  
少年を跳ね除け、ばたつく足首を持とうとしていた別の少年は、  
鼻をぶつけてうずくまった。  
その隙を見逃さず、起き上がるとドアに向かって走り出す。  
しかし、ナオミとドアの間にすばやく割って入った白い影。  
渚薫であった。  
瞬間、スパッという風が巻き起こる。  
「・・・あっ!?」  
上半身を反射的に捻り、渚の足蹴りをかろうじて避けたナオミ  
だったが、しかしかわしたはずの爪先が角度を変えて再び  
襲ってきた。  
「あうっ・・・!!」  
カラダが軽い少女は、そのまま2mほど吹っ飛ばされる。  
「出たで!双龍脚や!!」  
鼻血をティッシュで押さえ込みながら、大阪弁の男子は言った。  
「アレや!アレでみんな、やられてしもうたんや!!」  
苦い思い出でもあるのか、彼は興奮気味に叫んだ。  
そんな彼にメガネをかけた少年は  
「なに言ってんの。冬二なんて最初の一撃で気絶したじゃないか」  
とツッコミを入れる。  
「そういえばなんでナオミちゃん、避けられたんやろな?」  
「・・・一回目を避けられるなんて、男でもあまりいないよなあ」  
だが、本当に驚いたのはこのあとのことだった。  
 
吹っ飛ばされたように見えたナオミは、瞬時に体を一回転させて  
衝撃を和らげ、体の向きを渚に向けた状態で着地していた。  
しかも不可視領域からの二度目の蹴りを左腕でガードしている。  
いままで無抵抗で苛められるだけの少女だと思っていただけに、  
この中学校で裏番として君臨している渚薫に、健気にも抵抗する  
ナオミの姿を、みんなが唖然として見ていた。  
もっともナオミ本人も必死なのだろう。  
カラダ中を這い回る、あの男子たちの厭らしい目つきに本能的な  
恐怖を覚えた。  
性的なことに鈍感なナオミでも、いままでの苛めとはちがう、  
異常な空気を敏感に読み取っていたのだ。  
ここから逃げ出さないとハダカにされ、大切なトコロもすべて  
見られてしまう。  
そうなったらもう、お嫁にはいけない。  
父親との約束も果たせなくなってしまう。  
「すごい動体視力だねぇ・・・  
南空さん、なんかやってるでしょ?  
拳法とか空手とか・・・?」  
渚薫は癖なのか、口の端をキュウッと上げて笑った。  
 
「でも避けているばかりじゃ、苦しみが増すばかりだよ?  
一応手は抜いたつもりだけど、ボクは体質上、手加減ができないんだ。  
なにしろ痛みを感じない特異なカラダだからねぇ・・・」  
眼を細め、そして再びキュウッと笑うのだ。  
爬虫類を連想させる凶悪な表情だった。  
(ちがう・・・わたしが好きになったのは、このヒトじゃない・・・)  
ヒュッと風が渦巻き、黒い稲妻が宙を斬る。  
「これが昇龍脚・・・」  
地から立ち昇る龍に例えられた戦慄の一撃。  
先ほどのものよりスピードの速い蹴りだった。  
非情にもナオミのアゴを狙ったものか、だが、ナオミもアゴを  
とっさに引いてやり過ごす。  
風圧で長い黒髪が舞った。  
「転じて飛龍脚・・・」  
ヒュンッと足がムチのようにしなり、かわしたはずの右足が視界から  
消えていく。  
右足は軽く弧を描き、ナオミの首筋に狙いをつけた。  
ビシッという音とともに、とっさにガードした腕の感覚がびりびりと  
脳天に痺れ渡る。  
(・・・渚・・・くん・・・)  
 
『はい、これ』と床に落ちたシャーペンを拾ってくれた優しいヒト。  
渚薫の第一印象は、そんな感じだった。  
彼と初めて言葉を交わしたのは、中学2年の春。  
ナオミの苛めが酷くなってきた時期だけに、彼女に優しく接してくれる  
ヒトなどクラスでは皆無だった。  
彼女が触ったものはエンガチョにされる暗黙の掟を破り、無言のナオミ  
の手に、シャーペンをそっと手渡してくれた。  
その日の夜は、嬉しくてなかなか寝付けなかった。  
明日には素晴らしいなにかが始まる予感に、胸を高鳴らせたあの日。  
「・・・そして逆昇龍脚」  
ポケットに入れたままだった手を出すと、渚は放った右足を戻す  
反動を利用して、左足を地に這わせ、第三の龍を宙に舞わせた。  
上半身がバネのようにしなり、体を行き交う力のベクトルをうまく  
使い、休むことなく連続コンボが炸裂し、しかも次第にパワーが  
膨れ上がっていく。  
必殺の第三撃もかわされたと判断した瞬間、その外れた蹴りの  
力を再利用し、渚はそのまま宙返りする。そのリズミカルな体重  
移動は、まさにダンスでも踊っているかのようだった。  
たとえかわされても、さらなる力を秘めた凶器が休む間もなく  
連続で襲いかかってくる。  
双龍脚、恐るべし!  
 
教室内のギャラリーたちは、なにが起こっているのかも判らず、  
ただ固唾を飲んで見守っていた。  
空中から繰り出された、両足の蹴りが4発。  
「四位の浮龍脚・・・」  
ガガガガッ・・・と顔面をガードした両腕に激痛が走った。  
(ううっ・・・渚・・・くん)  
渚はこの衝撃をも吸収し、そのままバク転で教室の隅まで飛ぶと、  
壁を蹴り上げ、再度空中に舞い上がった。  
防ぐことにしか使っていなかったナオミの両腕は痙攣し、蓄積された  
痛みで徐々にガードが下がってきている。  
「あかん!体重差がありすぎるんや!!」  
大阪弁の少年、鈴原冬二は相棒のメガネの少年に掴みかかった。  
「なんで、ナオミちゃんは反撃せぇへんのや!剣介!」  
「ボ、ボクに言われても知らないよ!」  
相田剣介も困惑気味に答える。  
 
ナオミの腕はもう限界だった。  
次の衝撃には耐えられまい。  
空中を舞う残酷な天使は、サディスティックな笑顔を浮かべる。  
「キミが負けたら、素っ裸になってみんなに見せるんだよ!」  
はあっはあっ、と肩で息を切るナオミの眼は絶望に彩られていた。  
『もう帰るの?気をつけてね』  
放課後、気さくに話しかけてくれたのに、何も答えることができず、  
顔を赤くして逃げるように帰ってしまったことがあった。  
体育の時間、互いにふと目が合い、優しく微笑んでくれたことがあった。  
文化祭の色男コンテストで、こっそり票を入れたことがあった。  
会話らしい会話もロクに交わしたことがないのに、彼を想うだけで  
胸がドキドキした。  
だからオッパイを弄るよう提案した彼のことを、どうしても憎む気には  
なれなかった。  
アレはなにかの間違いにちがいない。  
そう想いたかった。  
だがいまとなっては、なにもかも夢のような、空虚な想い出だ。  
憧れていた女の子には卑劣な罠にはめられ、大好きだった男の子  
からは酷い暴力を受ける。  
それがナオミの中学時代の真実だった。  
夢や希望は、もうどこにもない。  
いや、最初からなかったのかもしれない。  
 
「いっ・・・!!」  
腕に衝撃が走り、堪らずガードを解く。  
痛みをこらえ、視線を空中にいる渚に向けるが、姿が消えている。  
(・・・フェイント!?)  
下に顔を向けるが、すでに手遅れだった。彼は床に着地し、落下の  
衝撃をその身を回転させながら足先に集め、攻撃力に転化していく。  
「・・・最後に弧龍脚、と」  
ガッという鈍い音とともに、ナオミは足を払われて、受身も取れない  
状態で床に打ちつけられた。  
あまりにも無慈悲な展開に、洞木日香里は顔を覆った。  
傍らにいる惣流明日香ですら、残酷な渚薫を睨みつけている。  
「ふふふ・・・怖いなあw」  
射るような惣流の視線を軽く受け流すと、床に崩れ落ちているナオミを  
起こすように、手下に成り下がっている男子たちに命じた。  
眉毛のところで前髪が切りそろえられ、白い肌と切れ長の瞳を持つ  
この美しい少女は、どことなく日本人形のような印象を与える。  
両脇を抱えられ、無理やり立たされている様は、まさに糸の切れた  
マリオネットそのものだ。  
 
このか細いカラダのどこに、あのようなチカラが秘められているのか。  
しかし渚の前に引き出されたナオミは、床にひっくり返ったときに  
アタマでも打ったようで、朦朧としていた。  
渚はポケットに手を入れたまま、片足を高く上げている。  
この少年のバランス感覚は、天賦の才の域に達しているようだ。  
鋭い足先が、ナオミの形のよいアゴを軽く撫でた。  
「ボクはボクに逆らう奴には容赦しないよ。  
敗北した人間は、処刑されるのが世の中のルールだ、ははは・・・」  
無邪気な笑顔の少年は、屈託のない明るい声を出す。  
そして容赦ないという言葉どおり、渚はナオミの鳩尾に鋭い一撃を  
食らわせた。  
「・・・ぐっ!」  
両脇の少年たちごと後ろに吹っ飛ばされる。  
意識が遠のいていく寸前、誰かの叫び声が聞こえたような気がした。  
(・・・惣流・・・さ・・・ん・・・・・・)  
惣流の怒鳴り声と渚のへらへらした笑い声がぼんやりと聞こえる。  
暗黒の世界に落ちていくナオミは、明るい陽光に満たされたマックの  
店内で、惣流や渚たちと楽しくお喋りをしている夢を見た。  
 

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