長編エロ尻小説  
「秘密特命捜査官 NAOMI 〜DEATH NOTE事件〜」  
(ファイル18)  
 
夕日に染まる校舎の渡り廊下に、ナオミはぼんやりと立っていた。  
校舎に物悲しく響き渡る鐘の音が聴こえる。  
(・・・これは・・・夢?)  
その自覚もやがて夢の世界に霧散していき、ナオミは中学3年生の  
自分と同化していく。  
そしてオドオドとしながら校内を散策し始めた。  
卑屈に背を丸めて歩くのが、当時の彼女のクセだった。  
習い事や武道の先生には、そのことをいつも注意されていた。  
だが顔を上げることができない。  
人と視線を合わせるのが怖い。  
人に話し掛けられるのが怖い。  
人に会うのが怖くて、人がいないと安心できる。  
クラスメイトたちの長年にわたる調教で、ナオミはすっかり  
マイナス思考をその身に植えつけられていた。  
もっとも家での彼女は、よくしゃべるし、笑いもした。  
今日学校であった楽しい出来事とかトモダチの噂話などを、  
母親や夕食を共にとるために会社から駆けつけた父親に明るく  
話すのが、ナオミの日課であった。  
ナオミの語る学校の話題は、まったくのウソなのであるが、  
両親はそれを信じていた。  
いや、信じたかったのかもしれない。  
だから可愛いひとり娘がよく話題にする、姉御肌の活発な親友が  
家に遊びに来ることがなくても、またほかのクラスメイトたちから  
まったく電話がかかってこなくても、両親たちはあまり気にする  
ことはなかった。  
 
悲惨なことにナオミも、彼女自身が話す妄想を現実のものとして  
信じるようになっていた。  
習い事がない日に、無人の校舎をこっそりと探索するナオミは、  
独りで歩く傍らに仲の良いトモダチの姿が見えるし、誰もいない  
教室には、彼女の帰りを待つクラスメイトたちがいる。  
静まり返った廊下をすれちがう先生から、先日のテストを褒められる。  
この世界では、彼女は寂しくなかった。  
幼少の頃からの話し相手だったクマちゃんバスタオルを失った  
ナオミは、いつしか空想世界に逃げ込むことで孤独を癒すように  
なっていた。  
(・・・今度ウチに遊びにおいでよ。お父さまにみんなを紹介したいの)  
(ええっ、喜んで遊びに行くわ)  
(きっとお父さまが、美味しいケーキ屋さんに連れてってくれるわ)  
(ナオミさんのお父さんって素敵な人なのね)  
(うらやましいわ)  
うつろな眼でブツブツと独り言を言っているナオミは、傍目から  
見ればキチガイそのものだった。  
クラスメイトたちが残していった心の傷は、彼らの望みどおりに  
この聡明で美しい少女を確実に壊していた。  
(・・・ブザマねぇ・・・)  
ふいにナオミの心の中に、ザラッとする嫌な声が響いた。  
(寂しさを紛らわすために、妄想のトモダチを作るなんて最低)  
(・・・!!)  
(たとえ妄想でも、あんたなんかと仲良くなりたくないわ!)  
(・・・・・・)  
その声の主は、同級生の惣流によく似ていた。  
 
(あんたって、武道とか習ってんでしょ?  
人間なんて簡単に壊せることも知っているんでしょ?  
だったらいっそのこと、現実のあたしを殺してみるぅ?)  
(・・・あっ・・・ああっ)  
武術と武道は似ているようで、根本的にちがう。  
武術とは人体を破壊し、殺傷することを追及した様々な技法と  
同時にそれらを総合的に研究する学問のことを言う。  
武道とは危険な技を極力廃し、主として心の健全化を目的とした  
競技のことを指す。  
平和な日本社会では、武術は消え去り武道が主流となっている。  
素手や凶器を使って、殺傷する術を教えることは禁じられていた。  
ナオミも護身術として、柔道や合気道を学んでいる。  
もちろん身を守るという限定的な技しか教えてもらっていない。  
だがナオミには、その先が判る。  
どのくらいの角度とスピードで骨を曲げれば、容易に折れるのか、  
またどこの肉の筋を切れば、体の自由を奪えるのか。  
一番少ない労力で生命を停止させるには、どう動けば可能なのか。  
もともと武術・武道とは、大きなダメージを与えるための学術・  
学問であって、いま現在伝えられている技法は「対象者の絶対的な  
死」に至る流れの一部である。  
極端に言うならば、体系化された技法の一部を知れば、その先にある  
到達点をおのずと理解することも可能なのだ。  
古来より達人とは「見取り稽古」、つまり見ただけで相手の技の本質を  
理解し、習得してしまう能力を持った人間たちのことを言った。  
ナオミには、それができた。  
彼女には本来、ヒトを傷つけることへのためらいや禁忌という  
感情がなかったからだ。  
 
鳥や魚、そして獣をさばくことに躊躇するのが現代人である。  
もっとも加工された食材しか知らない人間でも、経験を積み  
努力さえすれば内臓を取り除いたり、骨を外したりすることに  
嫌悪感を持つことはなくなっていく。  
しかしナオミは、そういうことがいきなりできる。  
なぜなら通常の人間と比べ、感情が希薄だからだ。  
人間としてなにかが欠落しているナオミは、それゆえに雑念に  
囚われることなく、与えられた課題を機械的に処理していく。  
そして尋常離れした記憶力と応用力は、一定の情報さえ与えれば  
あとは他者を必要とせず、自分でなんでもこなしていってしまう  
能力を開花する下地を作っていた。  
イチを聞いて十を知ることができるからこそ、彼女は優秀なのだ。  
習い事の教室や武道の稽古、そして塾などはきちんとした目標が  
あるため、それを容易にこなしてしまうナオミは、周囲から  
好かれはしなかったが、ひどいイジメにも遭わなかった。  
しかし学校はちがう。  
学校は集団生活を学ぶ場であり、協調性が重視される。  
そういう世界では、ナオミの異質性が容赦なく暴かれてしまう。  
その結果、ナオミは仲間の輪に入れてもらえず、まるで野生の  
トラが非力な小鳥たちにその身を啄ばまれるかのように少しずつ  
肉をえぐられ、長い年月のすえ、立って歩くこともままならぬほど  
衰弱してしまう要因となっていた。  
 
(あたしのことが嫌いなんでしょ?あたしもあんたが大嫌い。  
空想でもトモダチごっことかやめて頂戴よ、気持ち悪い!)  
(・・・どうして・・・どうしてそんなこと言うの・・・)  
(うるさい!気持ち悪いんだよ、おまえ!!)  
ナオミは幻のトモダチたちに助けを求めた。  
しかし−  
(気持ち悪いんだよ!)  
(死ね!)  
(尻デブ!)  
現実と同じように空想のクラスメイトたちは口々に  
ナオミを責め立てた。  
(あんたは、もう死ねぇ!死ねぇ!死ねぇ!  
死にたくなかったら、現実のあたしを殺せ!!)  
(・・・イヤ!そ、そんなことしたらお父さまに・・・)  
(殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!)  
(イヤ!イヤ!イヤ!イヤ!)  
心の中で葛藤するナオミの眼は焦点が合っておらず、顔面蒼白  
状態で、人通りの絶えた廊下をふらふらと彷徨い続ける。  
心の奥底から溢れ出る自己嫌悪が、ナオミが必死で作ってきた  
逃げ場所にまで広がっていき、狂気に染められていく。  
いくら優れた能力を持っていても、しょせんは子供だ。  
孤独に耐えられるはずもない。  
そして聡明な少女は、妄想の中ですら現実から遠ざかることを  
許されず、自分自身を責め続けていた。  
このままでは狂ってしまう。  
ナオミはもう限界だった。  
 
 
(3〜4日後に続く) 

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