長編エロ尻小説  
「秘密特命捜査官 NAOMI 〜DEATH NOTE事件〜」  
(ファイル12)  
 
「南空さん、血で汚れたカラダを洗い流してあげましょうか?」  
素っ裸のナオミは、震えながら首を振った。  
「遠慮しないでいいのよぉ〜」  
惣流は水の入ったバケツを、みんなと協力して持ち上げた。  
ナオミをいたぶるため、クラス中が、いや学校中がひとつになった。  
「あっ・・・やっ・・・いっ・・・」  
「ふふふ・・・こわい?」  
「・・・・・・」  
「冗談よ、冗談w」  
「・・・・・・」  
「・・・あっ、手が滑っちゃった!」  
その瞬間、大量の水が滝のように落ちてくる。  
どっぱ〜〜〜〜〜〜ん!!  
「わっぷっ・・・・・・!?」  
ナオミは頭から水を被り、長く美しい黒髪は、まるで貞子のように  
不気味に垂れ下がった。  
ざあっと水が女子トイレ全体に広がり、ガランッとバケツが床に  
転がる無機質な音を響き渡らせ、きゃあきゃあと笑いながら、  
見物人たちは逃げていく。  
幸いにも国語教師が仕掛けた盗撮カメラは、このときの水害で  
お釈迦になってしまったのだが、そんなことをナオミが知っても  
喜ぶどころか、いっそう人間不信に陥らせたことであろう。  
 
ポタポタとカラダから水滴を滴らせ、ナオミは呆然と眼を  
見開いていた。  
ふと便器の中を見ると、タンポンが浮かんでいる。  
全裸のナオミは、それを無言で見ていた。  
チャイムが聞こえた。  
しばらくすると職員室から面倒くさそうに出てきた体育教師が  
女子トイレに無神経に入ってきて、ドアを乱暴に叩いた。  
「お〜い、南空ぁ〜!あんま、みんなに迷惑かけるんじゃあないぞぉ!  
センセイたちも忙しいんだからなぁ〜!お〜い、訊いてるのかぁ〜!  
南空ぁ〜!判ったらドアを開けろ〜!」  
ドンッドンッという殴りつけるようなノックの音に、ナオミは耳を  
塞ぎながら、ズルズルとしゃがみこむ。  
そして暗いトイレの中で、いつまでも独りぼっちで震えていた。  
 
 
 
けたたましいクルマのクラクションで、ナオミは我に返った。  
「危ないなあ!どこ見てんだよ!!」  
ボンヤリとしていたナオミは赤信号の横断歩道を渡り、タクシーに  
危うく轢かれそうなった。  
「スッ、スイマセン!」  
ぺこぺこと頭を下げ、小走りでその場をあわてて離れた。  
(・・・ヤダ、わたしったら・・・ナニやっているのかしら・・・)  
肩に下げたバックをぎゅっと握り締め、独り当てもなく街中を彷徨う。  
ホテルには帰りたくなかった。  
体を動かしていないと、哀しくて淋しくて憎くて、アタマが変に  
なりそうだった。  
(・・・他に考えなくちゃいけないこと、たくさんあるのに・・・  
嫌なことばかり、なんで思い出しちゃうんだろう・・・)  
レイを失った哀しみを、殺人鬼キラへのプロファイリングに昇華  
させようとするが、全然うまくいかない。  
それどころか長い間、封印してきた記憶が後から後から湧き上がり、  
ナオミの心を少しずつ侵食していく。  
(尻デブちゃんw)  
(南空さん、今日はお漏らししないでネ)  
(誰だ!焼却炉でバスタオルを燃やした奴は!)  
ナオミは、よろめくように歩く。  
はあっ、はあっ、という自分の白い息遣いが、処女を強引に奪った  
初めてのオトコのそれと重なっていく。  
(ハア・・・ハア・・・これで南空も子供から大人に成長したわけだな)  
(ミジメねぇ・・・初体験をみんなに見られるって、どんな気分?)  
(あんたは一生、この体験を背負って生きていくんだよ)  
ヤメテ ヤメテ ヤメテ ヤメテ ヤメテ・・・・・・  
(お誕生日会、みんな来るって言ってたんでしょ?・・・遅いわねえ)  
(もういい、母さん。私たちだけで始めよう。ハッピー・バースディー  
ナオミ、7歳のお誕生日おめでとう)  
父と母の無理な笑顔が、やがて恐ろしく歪んだ顔に変わる。  
(あなた、やめてください!ナオミが・・・ナオミが・・・)  
(おまえは生まれてはイケナカッタンダ!ナンデオレタチノトコロニ)  
(ヤメテクダサイ!アナタァァァオネガイデスカラナオミガァァァ)  
オマエハヒッコンデイロコイツヲコロシテオレモアトヲ・・・・・・  
ヒトゴロシヒトゴロシヒトゴロシ・・・・・・  
・・・・・・オレハダメナオトコダダメナダメナダm  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「やめてぇぇぇ!!」  
たまらず耳を塞いで、ナオミはその場にうずくまってしまった。  
(たっ、助けて・・・レイ・・・わたしを・・・独りぼっちにしないで・・・)  
 
周りにいた人たちは何事かと顔を見合わせたが、係わり合いに  
なりたくないのか、ナオミに手を差し伸べることもなく通り過ぎて  
いった。  
レイを失ったナオミは、まるでか弱い少女のように震えていた。  
雪の冷たさが体に染みる。  
心細かった。  
日本に還ってきたことを後悔した。  
それでもやがて心臓の鼓動が少しずつ収まり、ふと眼を上げると  
歩道橋があることに気がついた。  
「・・・・・・」  
ふらりと立ち上がり、長い階段をうなだれて上っていく。  
天国への階段。  
レイも天国への階段を上ったのだろうか。  
自分は神に祝福された国へは入れないから、彼との再会は  
もう無理かもしれない。  
足を止めて、ぼんやりと夜景を眺める。  
明るい光の波が、眼下を通り過ぎていく。  
「レイが・・・死んだ・・・」  
ポツリとつぶやくナオミ。  
「いいえ・・・キラに殺された」  
その眼には憎しみと、哀しみと、孤独と、決意が複雑に入り  
混じっていた。  
冷たい風が通り過ぎ、ナオミはまた歩き始める。  
光をなくした彼女の心の闇は冷たく、重く、果てしなく深かった。  
孤独に彷徨うナオミよ、どこへ行く・・・  
 
 
(2〜3日後に続く)  
 
 

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