長編エロ尻小説
「秘密特命捜査官 NAOMI 〜DEATH NOTE事件〜」
(ファイル02)
キラと呼ばれる、正体不明の殺人鬼が現れたのは2003年11月28日
と公式ファイルには記されている。以来、国籍・人種を問わず、
世界各国で数百名の人間が、キラによって殺害されたという。
この史上最悪の犯罪者が、どのような方法でこれだけの数に及ぶ
殺人を重ねたのかは、今もって不明だ。
しかしキラの犯行には、ある種の規則性があった。
それはすなわち、『犯罪者しか殺さない』という点だ。
神を気取る偽善者。
そう批判する者も多い。
だがキラを英雄視する者が、それ以上に多かったのも事実である。
キラの殺人は、人通りの多い道端であろうと、警備が厳重な監獄の
中であろうと、おかまいなく続けられた。
悪い奴は容赦なく殺す。
その行為に、人は神の姿を見たのだ。
「・・・まったく、よくもまあ、これだけの人間を殺す気になれたものだ」
分厚い資料をテーブルの上に投げ出して、レイ・ペンバーは
肩をすくめた。
「超能力者が殺人鬼とは、世も末だな」
頭が固い、と上層部から評されてきた保守主義者の口から、超能力と
いう単語が出てくるほど、キラという人間は恐ろしかった。
指一本触れることなく、対象者を殺害できる能力。
それはトリックといったレベルではなく、まさに事実なのだ。
最初、懐疑的だった者たちも今では、キラが人智を超えるチカラを
持った化け物である、と誰もが認めざるを得ない状況下にある。
そのきっかけを作ったのが、キラを挑発する実況放送だった。
衆人環視の中、人を遠距離から殺す場面を世界中の人々が目の
当たりにした。
「今のところ、犯罪者しか殺していないが、それがいつまで続くか。
いずれにしても、あの殺人鬼をこのまま野放しにするわけにはいかないな」
「私たちにはLがいるわ。彼はすでに動いている・・・」
南空ナオミの言葉に、レイは眉をひそめた。
婚約者であるレイは、愛するナオミを危険な目に遭わせたくない
一心で、彼女が仕事に対して口を出してくることを好まなかった。
男は女を守るもの、という保守的な教育を受けてきたこともあるが、
優秀な捜査官だったナオミに対する嫉妬も多少はあった。
しかし表向きはFBIに属していたが、実はナオミが大統領直属
捜査班「POINTER」の秘密特命捜査官だったことを彼は知らない。
知ってしまえば、レイの小さなプライドは脆くも崩れ去ってしまうだろう。
そしてたぶんレイは、ナオミの元から去っていくにちがいない。
それが判っているので、ナオミも自分の過去を話す気はなかった。
「Lか・・・」
なんとなく熱っぽく語ったナオミに対し、レイはそっけなく応じた。
「あいつのおかげで、キラの恐ろしさが理解できたけど、しかし
世界中に妙な影響力を広めてしまったのも事実だ」
テーブルの上に無造作に置かれた資料を再び手に取り、目を通しながら
「・・・日本のみならず、世界中で凶悪犯罪が激減している」
「でもそれは良いことじゃない、レイ?」
「良いことなもんか!」
資料を床に叩きつけながら、レイは叫んだ。
「これがどういうことを意味するのか、キミにだって判っているはずだ!
キラは神の座を手に入れつつあるんだ!世界中が、キラという一個人に
よって価値観や道徳観を左右されている!これは神に対する冒涜だ!!
人間は神にはなれない!
いや、はっきり言おう、人間は神になってはいけないんだ!!」
レイが興奮気味に怒りをあらわにしているのは、キリスト教という
独善的な一神教の教えに反するからという理由だけではなく、Lに
必要以上の共感を示しているナオミに腹立たしさを覚えたからだ。
そのことを直感したナオミは素直に謝った。
「そうね、レイ。あなたの言う通りだわ。それにキラの話はしないと
いう約束だったわね。・・・ごめんなさい」
その言葉を聞くと、レイの体中を駆け巡っていた怒りが、さあっと波の
ように引き、後悔という苦い後味だけが残った。
FBI時代に、そのクールな立ち振る舞いから「氷のオンナ」と揶揄
されていた南空ナオミが、まるで親に叱られた少女のようにオドオドと
自分を見ている。
そんなナオミが急に愛しくなって、レイは彼女を抱きしめた。
「謝るのはボクの方だ。すまない。またキミに嫌な想いをさせてしまった。
ボクはただ・・・」
弁解交じりの謝罪をする口に、ナオミはそっと唇を重ねた。
男女の仲を修復するのに、言葉は不要だった。
シンッと静まり返った部屋の中に、やがて激しい息遣いが満ちていく。
物静かな普段のナオミからは想像も付かないような、悩ましいほど
大胆に蠢く舌がレイの口の中を犯した。
レイは彼女に負けじと、激しく舌を動かそうとするが、そんな彼を
弄ぶかの如く、ナオミは機先を制し、刺激のツボを的確にポイント
していった。口の中に広がる快楽に、レイはあっけなく流されて
しまい、抵抗する気も次第に失せてしまった。
そしてついに、彼はナオミの成すがままになる。
自分がリードしていることを理解した彼女の舌は、さらに速く、
激しく、妖しく身をくねらせ、悦びの音色を奏でた。
ナオミの唇が離れたのは、それからたっぷり5分ほど経って
からだった。
「この続きは、ベットで・・・」
惚けた表情のレイは、息絶え絶えに言った。
上気する火照った顔を上げたナオミの口から、白い輝きを放つ糸が
しなやかに宙を舞う。
この淫靡で悩ましげなメスに、レイが逆らうことは不可能だった。
(2〜3日後に続く)