レンが夜中にトギを仕掛けて止まないので、タケヤは菜月たちの住むマンションへ一時非難した。
『わーい!お兄ちゃんが帰ってきたァ』
とはしゃぐ菜月。
『夜分にスンマセン…』
タケヤは、晴海に謝る。
『何言ってるの、自分の家じゃない』
と晴海。
『ホラ、菜月は先にお風呂入ってきちゃいなさい』
『え〜〜〜』
『心配しなくても、タケヤ君ゆっくりしてくわよ』
『わかった!じゃあ、入ってくるぅ』
『あわてて出てこないのよ』
『ハーイ』
パタパタ……と菜月は風呂場へ向かった。
『さーて』
晴海は、お茶を注ぎながら
『どんな痴話ゲンカをしてきたのやら?』
とタケヤに言った。
『べっ、別にそんな…』
『ふふっ…ま、野暮な詮索をする気はないけどね。いつだって帰って来ていいのよ?菜月だってあんなに喜んでるんだし』
『……』
『家族なんだから…』
その時、晴海の携帯が鳴った。
『もしもし……はい……はい……分かりました』
と晴海は携帯を切った。
『?』
『ごめん、タケヤくん。仕事先がトラブル起こしたみたいで、すぐに会社に行かないとダメみたいだから、菜月と一緒に留守番よろしくね』
『…うす』
タケヤは頷いた。
『…あれっ、ママは?』
風呂場から出てきた菜月。
『なんか、仕事に行ったみたいだな』
『ふーん。こんな夜から』
その時、菜月の目が一瞬光ったように見えた。
『お兄ちゃんも、お風呂入ってきなよ』
『…あ、ああ』
『ニヒヒ…』
(菜月の奴、なにあんなに喜んでるんだ?)
タケヤは疑問に思いつつも風呂場に向かった。
『フハァー、やっぱり落ち着くなぁ』
と、浴槽でリラックスするタケヤ。
(…レンの奴、今頃どうしてるかな)
その時、
『お兄ちゃん!』
『!?』
バスタオルだけ羽織っている菜月が浴室に入ってきた。
『な、菜月!?お、お前、さっき風呂入ったばっかりじゃ…』
『せっかくだから、お兄ちゃんの背中でも流そうかな…って』
『遠慮しときます…』
とタケヤが背をむけると、
『なんでよ〜?前はよく一緒に入ってたじゃん!…いいから、いいから』
菜月は、タケヤを湯舟から無理やり引っ張り出す。
『…はい、お兄ちゃん。じっとしててね』
菜月はボディシャンプーをタオルにつけると、シゴシとタケヤの背中を擦りはじめた。