氷室恭子は腕時計をのぞき小さくため息をつく。中間テストが終わり山のようにある採点がまだ残っている。  
持ち帰りになった大量のテスト用紙を抱えなおすと足早に家路をたどった。  
 鍵を開け中に入ると一人暮らしのはずの部屋に明かりがついている。  
「もう、この時期は来るなって言ったでしょ」  
きつい物言いとはうらはらに頬が自然に緩んでくる。誰かが待っていてくれるというのはやはりうれしい。  
「おかえりなさい、恭子さん」  
 鮮やかな微笑で恭子を迎えたのは――三浦蘭丸だった。  
ダイニングのテーブルの上に参考書を広げ勉強をしていたらしい。  
「お腹すいてない? ラタトゥーユをつくったから食べる?」  
シャーペンを置いて立ち上がると、なれた仕草で鍋に火をいれる。  
 
 本当にこの子って綺麗よね。  
 恭子はズッキーニを口に運びながら目の前にいる教え子をしみじみと眺める。  
 色素が薄く絹糸のような髪、長く濃い睫毛に縁取られた切れ長の瞳。女性的で繊細な美しさは少し冷たい印象を与えるが、性格はバスケ部の中で誰よりも熱いところがある。  
 石井努と土橋健二を見慣れているせいかひどく華奢で小柄に思えるが、実際はスポーツをやっているだけあってその少年ぽさを残した肢体はしっかりとしているし身長だって低いというわけでもない。  
「蘭丸みたいなお嫁さんがほしいな」  
「なんで僕が嫁なの?」  
「美人で料理上手で家事もパーフェクト、理想的じゃない」  
 実際に今食べているラタトゥーユも作り方自体は簡単だが、恭子じゃあこんな風に野菜の甘味をうまく引き出せない。  
「おまけに床上手だし」  
「そうそ・・・」  
 蘭丸の言葉に恭子はうなずきかけるが、一瞬の間の後激しく咳き込んだ。  
「はい、水」  
 意地悪な微笑を浮かべて蘭丸がコップを差し出す。  
 教師と生徒、大人と子供のはずなのに二人でいるときはいつも蘭丸にからかわれてしまう。  
 
 むせる恭子をくすりと笑って蘭丸は食器をシンクへと運ぶ。  
「お風呂入ってきたら? お湯入れておいたから」  
 キャリアウーマンの母と二人暮しなだけあって蘭丸はすごく気が利く。働く女のツボを心得ている。  
 湯船につかると恭子は手足を思いっきり伸ばした。ぷかりと湯に大きな乳房が浮かび肩が重力から開放される。  
「気持ちいい」  
暖かな湯に凝り固まっていた体がほぐれていく。温まった指先で顔にクレンジングを馴染ませ化粧を落とすとやっと素の自分に戻る。お気に入りの薔薇の入浴剤の香に包まれながら恭子は小さな幸せの時間を過ごす。  
 ほてった素肌にバスローブを羽織ると恭子はキッチンへ戻った。  
「はい、アセロラジュース」  
冷たいグラスが手渡される。見ると蘭丸はすでに帰り支度をすませており、大きなスポーツバッグを肩にかけていた。  
「じゃあ、帰ります」  
「え、帰るの?」  
 思わず残念そうな声が出てしまった。  
「……帰らないで欲しいんですか?」  
なんて返したらいいのか言葉が見つからず恭子は黙ってうなずいた。  
 一瞬の沈黙のあと蘭丸は長いため息を吐く。  
「恭子さん疲れているみたいだから今日はおとなしく帰るつもりだったのに……」  
 バッグを肩からはずすと蘭丸は恭子を引き寄せキスをした。  
 
 蘭丸の細く長い指が恭子の黒髪をなぜる。柔らかな唇から舌が進入し口腔をさぐり、舌が絡み合う。  
髪をなぜていた指がうなじをくすぐり、恭子はぞくりとあわだつ。指はなめらかにうなじから鎖骨へ移り、そっとなぜられる。  
 腰にまわっていた右手がバスローブの結び目を解く。  
「待って……ベッドにいきましょ」  
 恭子は蘭丸の耳元にささやき、やんわりと右手を握る。一旦体を離し解かれた結び目を再び結ぶ。蘭丸がお預けをくらった子犬みたいな表情をする。  
「意地悪だな」  
「だってこんなに明るいと恥ずかしいじゃないの」  
「……恭子さんがそんなこと思うんだ。こんなにきれいな体しているのに」  
 また紐の端を引っ張り解く。はらりと前がはだけて恭子の豊満な胸や、小さなおへそ、その下の茂みがあらわになる。  
 恭子が掻き合わせるより早く蘭丸は肩からバスローブを脱がせる。  
「や……だめ」  
 胸を隠すように腕を交差させ恭子が後ろを向くと、背中から蘭丸が抱きしめる。強引に腕を解かせるとその両手からこぼれ落ちる柔らかな乳房を手のひらで揉みしだく。  
手の平に擦られ恭子の乳首が硬く熱くなる。うなじを唇と舌で愛撫され、背筋を快感が上ってくる。  
 硬くなった乳首を人差し指と中指の間に挟み手のひらはその乳房の重みとやわらかさを楽しんでいる。蘭丸の左手が腰のくびれをなぞり下へと伸びる。  
 そしてその手は茂みをなぜた後恭子の期待した場所には触れず、なめらかな内腿をへと移動する。うなじをくすぐっていた唇は一度肩にキスすると、背骨にそって降りていく。  
 柔らかな愛撫にこみ上げてくる快感と、核心に触れてこないもどかしさに恭子は足の力が抜けテーブルに手をつく。  
 すっと蘭丸の指が秘裂に滑り込み恭子の花芽をとらえた。指の腹でなぜられびくりと恭子は体を震わせる。  
 指は恭子のあふれ出る蜜を掬い取り花芽に塗ると小刻みに振動を与える。  
「あ……」  
 波のように訪れる快感に恭子の脚は崩れ落ちまいと突っ張る。びくり、びくりと大きな波が恭子を襲う。  
「恭子さん脚を開いて」  
 座り込まないように必死で耐えていた恭子は、両手で体を体を支えながら脚を開く。  
 すると後ろから一気に蘭丸が恭子を貫いた。  
「はああん」  
 すでに迎える準備はできていたがその衝撃に恭子は思わず声をあげる。  
 
 恭子の腰に両手を添え、蘭丸は恭子の中をかき混ぜるように動く。無意識に恭子は腰を突き出していく。  
 ゆっくりと抜かれていく蘭丸を追いかけるように腰を突き出した瞬間また強く突かれる。息が詰まるような怖いような甘美な衝撃が恭子を貫く。  
 緩急つけられた抽出がだんだん早くなっていく。どんどん恭子の体は熱くなっていく。  
「恭子さん……」  
「蘭丸……きて」  
 大きな衝撃が来て蘭丸が動きを止める。恭子のなかで何かがはじけると同時に、蘭丸が体を振るわせた。そして恭子の背中に蘭丸が体を預ける。  
 しばらくは二人の激しい息遣いだけが部屋を支配した。  
  恭子に体を預けていた蘭丸は恭子の髪にキスするとゆっくり起き上がり、己を引き抜く。恭子が官能の名残に息を吐く。  
 ぐったりとしている恭子に背後から蘭丸が耳元でささやく。  
「恭子さん、まだ第1クオーターだからね」  
「……第4クオーターまであるの?」  
 ちらりと恭子が視線を上げると蘭丸が艶然と微笑んだ。  
「もちろん」   
 
〜〜〜〜〜〜END〜〜〜〜〜〜〜  

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