「あ〜…やりてぇ…」  
 
ここは東京、宿舎である日本青年館のとある一室で、  
湘南大相模の2年生バスケ部員である小原充は呟いた。  
インターハイの3回戦で瑞穂と戦い、本日負けを喫した。  
負けたとは云えど、湘南部員たちに穏やかな空気が流れていることは確かである。  
 
同室であり、同じバスケ部所属の2年生でありながらエースを務める布施歩が答える。  
「やりてぇ…って、バスケか?」  
相変わらずバスケ馬鹿の返答だ。  
「…歩ちゃ〜ん?ホント、おもしろいねぇ…SEXのことに決まってんじゃん」  
見るからに童貞だと思われる布施の顔が見る見る赤まっていき、  
口をぱくぱくさせながら何か言いたげそうにしている。  
女好きな小原ではあるが、大規模な大会が決まってからは何か問題が起こっても困ると、  
遊びを一応は自粛していたのだ。  
その自粛も、今日で晴れて解禁される。  
「ばっ、馬鹿やろう!そんなこと思っても口に出すな!!」  
 
―とんちんかんな返答するから、ハッキリ言っただけだっつーの―  
 
明らかに動揺しているのだろう。  
顔を真っ赤にさせながらも、挙動不審に陥っている。  
 
―この言葉だけでここまで動揺する奴も、このご時世貴重だよな…―  
 
「相変わらず、かわいいねぇ歩ちゃんは」  
からかうように小原は言う。  
「う、うるせぇ!!てゆーか、そんなことは大会終わってからにしろよな!!  
まだ明日も試合はあんだからよっ!!」  
 
―試合あるっつっても…オレらただ観るだけじゃん…―  
 
口から零れそうになるが、敢えて言わず。  
「はいはい、分かりましたよ。…んじゃオレ、ちょっと下で飲みもん買ってくるわ」  
財布から小銭を抜き取り、部屋を出ようとする小原に布施が声を掛ける。  
ベッドに転がりながら、何やら不貞腐れたように。  
「明日は瑞穂戦見るんだからな!絶対寝坊すんなよ!!」  
「…へいへい」  
 
―ホント、瑞穂好きだねぇ。結局惨敗したってのに…  
―オレは歩みたく、バスケだけで生きてんじゃないっての。  
 
自販機で何を買うか迷いながらそう思う。  
と、廊下の曲がり角から足音が聞こえた。  
大浴場にでも行っていたのだろうか、湯上りの濡れたタオルを抱えた女の姿が目に映る。  
その顔には見覚えがあった。  
 
―この女…確か瑞穂の…?―  
 
そう、瑞穂男子バスケ部のマネージャーである杏崎沙斗未であったのだ。  
向こうもこちらに気付いたのか、ハタと足を止めてこちらを見る。  
突然の出逢いに少しばかり動揺しているのか、顔を伏せるようにペコっと頭を下げ、  
急ぎ足でこの場を去ろうとした。  
隣を通り過ぎる際、ほのかに湯上りのいい匂いが鼻を付く。  
その匂いに、何事もなく過ぎ行くだろうと思っていた小原の心に何かが芽生えた。  
何か、とは決していい意味ではないのだが。  
去り行く後姿に腕組みしながら声を掛ける。  
「ちょっと、瑞穂のマネージャー。今日戦った相手に対してその態度はないんじゃない?」  
唐突の言葉に、杏崎の肩がピクリと上がり、足が止まる。  
「ましてやオレら、あんたたちに負けてるんだけど?もっと何か言うことないわけ?」  
ゆっくりとこちらを振り向きながら  
「…今日はお疲れ様でした。お互い、いい試合をしたと思います」  
少し敵意とも取れる淡々とした口調で答える。  
普段、バスケで戦う相手だとしても敵意を剥き出しにすることがない杏崎であるが、  
そんな態度にさせたのは云うまでもない、小原の言葉だ。  
だが、それも思惑通りである。  
かかった、と思わんばかりに表情には出さずに口の端を持ち上げながら近づく。  
「なにそれ?オレらのこと馬鹿にしてんの?結局、最後はあんたらに手も足も出なかったのに、  
それでもいい試合って言えるわけ?すげー自信なのな」  
相手を逆撫でさせることは得意である。  
じりじりと壁際に押し迫る。  
「そ、そんなこと思ってない…ただ、わたしは本当に…」  
先ほどとは態度が違う。  
迫り往く長身の男に少し怯えているのだろうか。  
ドン、と壁に背中をぶつけ、  
ビクっと身体を震わせる杏崎に逃げられないようにと、顔の両端に手を置く。  
 
「まぁ要は、スタミナ切れのオレらが敗因なわけだけどね。  
結局哀川さんは止められなかったけど…  
高階が退場したときはすっげー爽快だったな」  
その言葉に、顔を下に向けたまま微かに反応を示す。  
言葉を休めぬまま、小原は揺さぶり続ける。  
「けどやっぱ、ムカつくわけ。県大会で瑞穂に勝ったのに、本番で負けるってことが。  
女と遊ぶのも我慢してやってきたオレは特に、ね。  
歩やトドロッキー君に釣られてマジで試合に臨んだ結果、腕も顔も…心も傷ついたわけだし…」  
負けたことが悔しいとは、確かに少し思う。  
だが一番悔しいのは、今年で引退する3年だろう。  
脚色を付けて話す小原の魂胆をつゆ知らず、  
少し前まで怯えていた態度を今では微塵も感じさせずに杏崎が口を開く。  
「何が言いたいんですか?お互いベストを尽くした結果なんですから、それでいいじゃないですか?」  
言葉遣いは丁寧だが、苛立ちを隠せていない。  
強い口調に、小原の背中にゾクリとする快感が走り抜ける。  
 
―強気な女をヤるのって、オレ好きなんだよね―  
 
「要するに…負けた心の傷を癒してくんない?ってこと。  
インハイの為に、女との禁欲生活送らされてたオレは今やりたい気分でね。  
その相手をあんたにお願いしたいんだけど?  
決死の覚悟して戦って負けた相手を、ちょっとは慰めてやろうとかって思わない?同情心でさ」  
唐突な言葉に意味が理解出来ないでいる。  
何言ってるの?  
そんな言葉が浮かんでいるのが、表情から読み取れる。  
「あんたも頭悪いねー。簡単なことじゃんよ」  
と、壁から片手が離れ杏崎の胸を服の上から強く掴む。  
「!?」  
いきなりの出来事に驚き、相手の手を即座に払い退ける。  
その動作で濡れたタオルが床に落ちた。  
「下着着けてねーじゃん。ま、当たり前か…風呂上がりだし?  
けど、思ったよりでかくないのな。でかい方が好みなんだけど…」  
相手の反応はどこへやら、小原はぶつくさ言い始める。  
 
困惑と同時に怒りが込み上げてくる。  
「あ、あなたに関係ないでしょ!わたし、戻りますから!!」  
憤慨した様子で床に落ちたタオルを拾い上げようと屈んだ瞬間、  
上から体重を乗せられ床に押し倒された。  
抵抗できないよう、腕を押さえつけられ、足の間に身体を割り入れてきた。  
「ちょ…離して!!大声出すわよ!?」  
もがくものの、強く押さえつけられた両手はピクリとも動かない。  
「ホント理解してないね、あんた。大声出して事になったら、今後の試合に影響するんじゃない?  
オレらは終わったから、さほど問題ないわけだけど…3年の大事な試合ぶち壊したいわけ?」  
言ってることは明らかに間違っている。  
小原が今しようとしている行為は、ただの強姦と云う犯罪行為なのだ。  
が、3年生の大事な試合、その言葉に言葉を失ってしまった。  
学校的には被害者なのだから問題はない。  
だがきっと、自分の気持ちを煩い、部員の精神面に何か引っかかるものが残るはずだ。  
試合だけに集中することが出来ないかもしれない。  
そうなれば、きっと結果に影響が出る。  
そんな思いが瞬時にして過ぎったのだ。  
 
―…意外に単純な奴だな、こいつ―  
 
杏崎は唇をきつく噛み締めながら、相手の目を睨み付ける。  
だがその顔つきに小原は戸惑う様子はない。  
むしろ嘲笑うかのように、顔には笑みが浮かんでいる。  
「そうそう、大人しくしてれば悪いようにはさせないし…  
って言っても、優しくするつもりもないけど。  
オレの欲望のはけ口になってもらうだけだから」  
恐ろしい言葉をさらりと言ってのける小原に、自身が知りうる限りの罵倒を浴びせかけたい。  
しかし、その言葉も小原に取っては唯の褒め言葉になるだけだろう。  
多分…この人はそうゆう人間だ。  
それを感じた杏崎は口を閉ざし、ただ睨み付けることしか出来なかった。  
絶対に屈するもんか、その強い思いだけが今の杏崎を支えていた。  
 
首筋に舌を這わせようと、触れるか触れないかぐらいの寸前で行動が止まる。  
「…ま、ここじゃやっぱマズイ、か…」  
今は夜中とは云えど、ロビーに近い廊下ではいつ誰が現れるか分からない。  
見つかれば試合が終わった湘南だとしても、軽くて年内出場停止になることは明らかである。  
ましてやバスケ名門校の不祥事ともなれば、更に事は大きくなるだろう。  
すくっと立ち上がり、相手の腕を痛いほどにきつく握り、  
災害時にしか使われないであろう非常階段へと連れて行く。  
もう片方の手には、杏崎が拾い上げようとしたタオルが握られていた。  
 
重い扉を開け、その場所に着くやいなや乱暴に杏崎を放り投げる。  
ダンっと強く壁に背中を打ち付ける音がすると同時に、呼吸が一瞬苦しそうに吐かれた。  
特に気にする様子もなく小原は近づいてくる。  
ゆっくりと歩み寄る隙を見て、杏崎はとっさに逃げようとした。  
だが、それも無駄な抵抗だった。  
すぐさま腕を掴まれ、先ほどと同じく押し倒されたのだ。  
「まじウザイよ…いい加減大人しくしろっての」  
少し苛立っている態度で、濡れたタオルを後ろ手に縛り付ける。  
男の力で縛り付けられるタオルは、簡単に取れるはずもない。  
濡れているのも相してか、きつく手首に食い込んでくる。  
マウントポジションのような体制で両足に乗られ、腕の自由も利かない。  
完全に逃げ場は無くなったのである。  
 
「じゃ、楽しませてもらいますか」  
 
杏崎の着ている服は、簡単に脱がしやすいTシャツとジャージ。  
誰にも逢うことはないと踏んで、下着を着けていない。  
着けていても結果は同じことなのだが。  
勢い良く上着を鎖骨辺りまでたくし上げる。  
瑞々しい程に白く、見るからに弾力のありそうな露になった上半身を、  
じっくり舐め回すように視線を這わす。  
優しくしない、とは云えど流石に濡れてもいない局部に無理やり捻じ込むのは、心が痛む。  
ある程度の愛撫は、自身を挿れ易くする為にも必要な行為だ。  
それに…この舐めた目つき。  
こうゆう強気な顔が快楽に溺れていく様子を見届けるのも、嫌いじゃない。  
 
細い腰骨から指で撫で上げるように身体を擦り、小さいながらも形の良い乳房まで持っていく。  
触れるか触れないかの、微かな感触。  
両手で揉み込むように愛撫しながら、親指人差し指でしきりに桃色の突起とその同じ色の輪を撫で回す。  
杏崎は微動だにせず、ただ相手を睨み付けているだけだった。  
だが身体は反応には敏感である。  
そう云った意識はないのに、蕾は硬く勃ち上がってくる。  
身体の条件反射、とでも云うのだろうか。  
「身体は正直ってやつかね?」  
自らの手で愛撫する反応を確かめるかのごとく、  
徐々に硬さを帯びてゆく蕾を摘み、弾き、捻りあげる。  
反応しそうになる身体を抑え付けるように、杏崎は目を細め、先ほどよりも唇を強く噛む。  
その顔を見ながら、小原は薄笑いを浮かべた。  
「この程度で感じてるとか言わないでよ?こっちもおもしろくねーじゃん」  
愛撫の手を休めることなく、覆いかぶさるように顔を近づける。  
反射的に杏崎は顔を背けるが、特に問題は無い、  
そんな風に相手の顎辺りから耳までを舌で舐めあげた。  
耳朶を唇で持ち上げ、際をなぞり、ゆっくりと穴に舌を捻じ込む。  
吐息と共に、言葉が吐かれる。  
「キスでもされるかと思った?…残念。舌でも噛まれたら、たまったもんじゃないからね…」  
嫌悪感を抱きながらも、耳元で囁かれる低い声と振動、熱い吐息に、  
自身の身体が熱を帯びてくるのを感じられずにはいられなかった。  
 
ねっとりとした舌で耳を犯されながら、手は執拗に胸を揉みしだいている。  
自身の耳を舐める音が、否応無しに鼓膜に響く。  
だが、絶対に表立って感じてる様子を知られてはならない。  
漏れそうになる吐息をかみ殺す。  
小原はそのまま首筋から鎖骨、そして指で弄んでいた蕾に口付け、  
指でしていたような同じ動作を繰り返す。  
ザラリとした、生暖かい感触に肩を震わす。  
もちろん声は出さずに。  
固く尖らせた舌先で蕾の先端を突付かれる度、じわりと下腹部から暖かい液が溢れ出るのを感じるが。  
 
思いとは裏腹に、身体は着実に熱を帯びてくる。  
口を蕾から外し、肌上を滑らせヘソの辺りまで降り、  
舌の広い面積で大きく舐め上げ、わき腹を強く吸い上げた。  
「これ、オレの癖なんだよね。ここにキスマーク付けるの」  
何度も何度も肌を吸われ、その度に赤い印が増えていく。  
合意の元ならば、その印が嬉しいだろう。  
抱き合った形跡が、形となって残るのだから。  
しかし、今は状況が違う。  
その印が消えるまで、確実に忘れることが出来ない。  
悔しい思いで泣きそうになるが、涙を見せると相手の思う壺である。  
ジッと、その屈辱に耐えていた。  
微かな快感を覚えながら…  
 
幾らほど印を付けられたのだろうか。  
数えるのもおぞましい。  
そう思っていた最中、手がスルリと下半身の中に潜り込まされた。  
下着の中に手を入れられ、感情とは別に溢れていた愛液の泉に指が触れる。  
「っ…!!」  
いきなりの仕草に、身体が捩れる。  
既にくちゅっと音が鳴りそうなぐらい、濡れているのが感じ取られた。  
不本意ながらも、目の前の憎いこの男の指の感触によって。  
濡れているのを自身と、愛液の出所の本体となる杏崎に確認させるように、  
指に絡め取り目の前に掲げて見せる。  
「なんだ…すげー濡れてんのな。あんた、初めてじゃないね?」  
その言葉に目が大きく見開く。  
「ははっ…なんで分かったの?って顔に大きく書いてあるぜ。答えは簡単。  
初めての時は、こんなに濡れない。  
よっぽどの好きもんか、もしくは1人でモノを入れてヤったことがあるか…  
きっと、あんたはどっちにも当てはまらない。  
てことは誰かとの経験があるから、身体が本能的に反応する。  
近いところで…メンバーの誰か…バカ階ぐらいか?」  
バカ階とは、もちろん高階トウヤのことである。  
反応しなければ分からないものの、杏崎は表情に出してしまった。  
「図星…か。ま、あいつなら手ぇ早そうだけど。  
なに、あんた?あいつと付き合ってんの?」  
確かに高階とは数えるほどだが、身体を重ね合わせたことはある。  
だが面と向かって好きだとか、付き合って欲しいだとか言われた覚えはないのだった。  
 
高階が何を考えて自分を抱くのか分からない。  
その苛立ちも相してか、つい言葉が口をつく。  
「付き合ってない!!それに、あたなに関係ないじゃない!!」  
言ってしまった後で後悔するが、もう遅い。  
「付き合ってないのに、ヤることはヤってるんだ…へぇ意外。  
純情そうな顔してんのに、セフレとはねぇ…なかなかやるもんだね、あんたも。  
まぁ高階のやつもオレと同じく、好きでもなんでもない女を抱くなんて造作も無いことだろうけど。  
ただの性欲処理に使われてるなんて、ご愁傷様」  
相変わらず、頭にくる言い草だ。  
ましてや思っていても、敢えて考えないようにしていた言葉をさらりと言い放つ。  
 
―ただの性欲処理―  
 
高階が自身を抱く意図が分からないのを改めて思い知らされ、  
好きでもない男に犯されようとしている屈辱とが入り混じり、抑えていた涙が溢れ出た。  
「あらら…泣いちゃったよ…もっと強気な顔見せてくれると思ったけど?  
でもまぁ、オレ的には初めてじゃないって分かって好都合。  
痛い痛いって泣き叫ばれたら、さすがのオレも萎えるしね」  
うるさいほどによくしゃべる。  
「つーか、あんたをダッチワイフみたいに扱ってる高階に好意持ってるわけ?  
だからあいつが退場した時、爽快だったって言葉にムカついたわけだ?正解?」  
相手の微かな反応をもよく見ている。  
その言葉に、涙を見せながらもキッと強く睨み付ける。  
「いいねぇその表情。そうでなくっちゃオレも崩しがいがないって…ね」  
最後の言葉を言うのが早いか、杏崎の下着をジャージと共に瞬時にして脱がしたのだった。  
一瞬、自身と下着の間に透明な液が伸びる。  
それほどまでに杏崎の部分は濡れていたのだ。  
この男の愛撫によって。  
羞恥心が湧き上がるものの、それ以上に自身を濡らしている自分に腹が立つ。  
だが、感じてしまっているのは紛れも無い事実であるのだ。  
「はっ…ぐっしょぐしょ。結構望んでんじゃないのー?こうゆうことされるってことに」  
精神的苦痛を与えることも忘れない。  
「だっ、誰が望んで…っあ!!」  
反論しようとした矢先、小原の指が溢れ出る泉から指で大きく蜜を拭い取り、  
少し上にある、まだ小さな蕾に塗り上げてきたのだった。  
 
腰が宙に浮く。  
足を閉じようとしても、遅すぎた。  
腕は既に股の間に割り込んである。  
それでも懸命に閉じようとする小さな抵抗ですら、男の力によって捻じ伏せられたのだ。  
身体を再び足の間に入れ、片方の手は曲げてある膝上に置かれ、動けないようにされている。  
防御する壁は無い。  
「っん…」  
執拗な蕾に対する愛撫に、硬く口を閉ざしているものの、声が漏れ出てしまった。  
「いいねぇ…その顔…たまんねぇ」  
脊髄から湧き出るゾクリとする感覚を抑えるかのように、上唇を舌でゆっくりと舐め上げる。  
膣口の両筋を撫でるように指を這わせ、  
蕾に被ってある少しばかりの包皮を広げ、露になった突起を突付く。  
その度、身体がピクリと反応を示す。  
指先で小さく円を描きながら、それを細かく撫で回す。  
「っ…ふ…」  
声が甘みを帯びているのが自身でも感じられた。  
「いい声出すねーあんた。我慢してるのバレバレ」  
何度も愛液を絡め、執拗に蕾に塗りたくる。  
潤滑油としては、もう十分すぎる程に。  
蕾を叩くように指が弾かれ、離れる度にくちゅっとした淫猥な水音が立つ。  
下半身の奥から、疼くような感覚を覚える度、止め処なく溢れ出る淫らな液体。  
同時にピクっと自身が脈打ち、次第に熱く大きくなっていくのが分かる。  
杏崎の全神経がそこに集中しているだろう。  
だが、まだある程度の理性を保っているのが、抑えている声で分かる。  
「まだまだ我慢します、って感じの顔してるねー。いつまで持つかな?」  
そう言って、次第に弄ぶ指を大きく上下に擦り上げてきた。  
「ぅ…んぁ……っ」  
先ほどよりも声が大きく漏れ出した。  
身体が勝手に疼く…  
快楽に溺れてしまいそうになるが、そうしてしまえばジ・エンドだ。  
欲望と理性とに挟まれながらも、漏らす吐息を噛み殺すかのごとく唇を強く噛む。  
その態度を嘲笑うかのように、指は執拗に激しく動く。  
蕾を抑えられ、振動だけの刺激。  
と思うと開放し、大きく跳ね上げ上下左右に揺り動かす。  
まるで生き物のように指が蕾を弄ぶ。  
理性とは逆に、ソレは大きく弾け飛びそうなほど熱を帯び、赤く充血し、  
ピクピクと呼吸をしているかのように脈打っている。  
 
―っ…絶対…溺れない…―  
 
そう思った矢先、体内に感じる新たな感触が杏崎を襲った。  
「あっ…んあぁ!!」  
上下の唇が離れ、快楽の象徴とも取られる声が出る。  
小原が指を膣内に入れて来たのだ。  
「おっと…まだ我慢しててよ?」  
身体は待ち望んでいた感覚だが、理性では真逆である。  
「んー!!ぃ…っや!ぃやだ!!」  
欲望をかき消すかのように、頭を左右に振りながら声を上げる。  
が、小原はその声を待ってましたとばかりに、指を肉壁に擦り付ける。  
だが秘所は、もっともっとと欲するように、蜜を滴り落としている。  
「身体って、ホント分かり易いねぇ…オレの手、もうべとべとだよ?」  
指は膣内を掻き出すように前後する。  
ある一定の場所が擦られる度、狭い肉壁が指をぎゅうっと締め付ける。  
「ぃやぁ…ヤダ…ィヤだ…」  
涙を流しながら同じ言葉を繰り返すが、相手に取ってそれがより深く快楽へと導くことを知らなかった。  
「いいね、それでこそ崩しがいがあるよ、あんた…」  
少しばかり膨らみのある突起に狙いを定め、指で細かく振動させるように刺激する。  
その部分から全身に痺れるような鋭い感覚が広がっていく。  
「やぁ!!あっ…はっ…ぁんぅうっ」  
もう声を抑えようとも、出来ない。  
保っていた理性も、その刺激によって瞬時にかき消されようとしている。  
しつこいまでもの、反復する容赦ない刺激。  
恥ずかしいまでもの吹き出す愛液は、留まることを知らない。  
痙攣しているかのように、肉壁は小原の指をぎゅうぎゅう締め付けてくる。  
よがる様に、悶え続ける身体。  
「あぁ…んっはあぁ…んんっ」  
少し前までの、頑ななまでに抑え付けていた声とは想像も付かないほど、淫らに喘ぐ声。  
絶頂までの快楽を登りつめている様子が手に取るように分かる。  
擦るように、撫で上げるように、その場所に一定の圧迫する刺激が加えられる。  
ひくつく膣内は、既に欲している。  
男の、硬く太く熱を帯びているモノ。  
理性も、微塵の欠片も残っていないのだろう。  
声のトーンがそれを表している。  
と、ちゅるっとする滑らかな音と共に、突如小原は指を引き抜いた。  
 
「あっ!!」  
愁いを含んだ声が出る。  
その顔は、熱を帯びているかのように火照っている。  
「なに?イきそうだった?」  
杏崎の瞳からは先ほどから涙が溢れている。  
が、今ではその涙が誰も嫌悪感や拒絶感からとは思わないだろう。  
杏崎自身にとっても、そうである。  
 
―イきたい…イきたい…イきたい―  
 
その思いだけが、今の杏崎を取り囲んでいる。  
ハァハァと全身で息を絶え絶えにしながら、涙で溢れた目で懇願しているかのようにも見える。  
「もう、あれだね。雌って顔してるよ?そっちのほうがかわいーじゃん、あんた。  
さっきまでの頑なな姿勢もどこにやら…やらしー女」  
言葉の攻めも、今の杏崎には届いてないかもしれない。  
小原もこれほどまでにないぐらい興奮しているのが、下半身の膨らみからでも見て取れた。  
「欲しい?これ…」  
そう言いながら、ハーフパンツと下着を脱ぎ捨てる。  
天を仰ぎながら硬く大きくそびえ立つ男のモノの先端からは、透明な液が浮かんでいる。  
「欲しいなら欲しいって、その口で言えば?」  
呼吸が止まないまま杏崎の潤んだ瞳は、貪欲なまでに男のモノをジッと見つめている。  
小原は、自身のモノを手で掴み  
「ん?いる?いらない?」  
そのモノがしゃべっているかの如く、問いかける。  
荒く呼吸を吐きながら、杏崎は小さく答える。  
「欲しい…」  
「なに?聞こえないよ?」  
一瞬息を飲み込み、大きく声を放つ。  
「挿れて欲しい…お願い」  
その言葉に口の端を持ち上げながら、小原は杏崎を拘束していたタオルを外した。  
うっすらと縛られていた腕が赤くなっているのが分かる。  
「欲しいなら、自分から挿れな」  
仰向けに寝転がった小原の上に股を大きく広げ、被さる。  
間から見える瑞々しい内腿に、艶かしい程の一筋の愛液が滴り落ちているのが見えた。  
「すっげーエロい…オレを楽しませてよ?」  
 
杏崎は小原のモノを掴み、自身に押し当てる。  
入り口を探るように数度擦り、その度にくちゃっとした淫らな音が響く。  
探り当てた途端、ゆっくりとモノが膣内に入り込んでくる。  
押し進めるように、杏崎は腰を落としていく。  
「ふぁ…んはっぁ…あぁ…」  
男を誘うかのような、艶やかしい程に甘く高く響く声。  
今の杏崎の身体と頭が支配しているものは、欲望に忠実なまでの快楽そのもの。  
咥え込むかのように、奥まで挿れ込んだ杏崎の自身はぴったり吸い付つき、モノを締め付ける。  
「っは…すげぇ…まだそんなに使い込んでないって感じか…」  
待ち望んでいたモノを挿れ込んだことで、震える身体を抑えながら、上下にゆっくり動いていく。  
モノが抜けそうなほど腰を浮かせ、そのまま下まで腰を降ろす。  
ゆっくりとだが、膣内を擦られる感覚に身体を委ね、  
ぐちゅっと互いの淫らな液の入り混じる音が、感覚を更に鋭くさせる。  
少し腰の位置を変え、また同じ上下の運動を繰り返す。  
その動きが段々と激しくなってきた。  
「あっは…ん…ぁん…あぁ…ぁ」  
腰を細かく刻むように、ある場所を擦りあげる。  
「つぅ…はっ、そこが、イイトコロ?ホント…あんた、んっ…分かり易いねぇ…っ」  
小原も十分に感じているのだろうか、言葉に鋭さが無くなってきていた。  
不意に小原の手がシャツの中に伸び、胸を掴むように揉んできた。  
硬く尖らせている突起を摘まみ上げ、胸全体を揉み込むように激しく揺する。  
「ゃっああん!」  
自身の身体を支えきれなくなったのか、杏崎の身体が前のめりになり、小原の厚い胸板に手が乗せられた。  
だが、腰の動きは止まらない。  
しきりにモノが中を擦りあげる。  
が、胸を掴んでいた手が激しく揺する腰を掴み、その動きを制する。  
「っやぁ…なんでぇ…」  
潤んだ瞳で覗き込むように。  
「ん…ストップ…今度はオレの番…」  
そう言って太腿の付け根辺りを両手で強く掴み、下から腰を突き上げた。  
 
ズンっと云う音が鳴りそうなほど、激しく奥まで叩き込む。  
「あああっ!!!」  
泣きそうな程、声を甲高く上げる。  
ぐちゃぐちゃと腰を振る度に、どちらとも分からない愛液が迸る。  
手でも支えきれなくなり、杏崎は小原の胸に身体を委ねた。  
互いの鼓動が激しく脈打っているのが分かる。  
小原は弾力のある小さな桃尻を掴み、目の前に迫る卑しい女の顔を覗き見ながら問いかける。  
「はっ…キス…する?」  
言葉を発せずに火照った顔を上げ、口を寄せる。  
小さな口から漏れる、甘い息遣いを防ぐかのように舌を捻じ込み、貪り食う。  
「んふっ…んっ…っ」  
思うように声が出せないのだろう。  
鼻にかかった声をしきりに出している。  
唾液を交換し、飲み込むように激しく絡め合う舌と舌。  
噛み付くように舌を吸い上げ、なぞるように裏筋を舐め上げる。  
くちゃっと音を立て、惜しむかのようにお互いの舌の間に一筋の糸が伸びる。  
まだ激しく、小原は腰を打ち続けている。  
唇が開放されたことにより、淫らな声が響き渡る。  
不意に腰の動きが止まったかと思うと、  
自身の胸に身体を委ねている上半身を持ち上げ、体制を変える。  
四つんばいになった杏崎を、後ろから再び貫く。  
「あっ…はっ!んっん…ぅ」  
体制が変わったことにより、新たなイイトコロにモノが打ち付けられる。  
ぱんぱんと、肉と肉が弾かれる音と、汗と愛液とが混じり合う、生々しいまでの水音。  
お互いの欲望が乱れあい、絶頂までは迫っている。  
狂ったように喘ぎ声を上げる杏崎の背に覆いかぶさり、耳元で呟く。  
「っん、ハァハァ…ねぇ、あんた…高階とオレ…どっちのがいい?」  
人によって持つモノの形は違う。  
身体の相性は、そのモノによって変わってくるのだ。  
答えは返ってこない。  
「ふっ…ねぇ…ん…どっちがいいの?答えて、よ…ねぇ?」  
喘ぐ声の隙間に、微かに聞こえる声。  
 
―トーヤ君よりいい―  
 
その声が聞こえ、小原は嘲笑する。  
そして前から手が回され、疎かにされていた蕾に指が触れ、擦り上げてくる。  
「っ!!あっ、あぁああぁぁ!!」  
狂ったように激しく悶絶する。  
容赦なく打ち付けてくるモノと、敏感になりすぎている大きく膨れ上がった蕾に対する刺激。  
二つ同時の痛いほどの感覚に頭が真っ白になる。  
ぎゅうっと離すまいとするかのように、膣内はソレをきつく締め付けている。  
締め付ける度に、蕾は大きく呼吸をする。  
更に激しく叩きつけるモノと、細かく振動する指。  
「ハァ…ハァ、はっ…そろそろ、イこうか…」  
と同時に蕾を強く捻り上げた。  
「っ…ゃんああぁあ、ィ、くっ…っああぁぁあ!!」  
「くぅっ…出る…っ」  
小原は最後にひとしきり激しく腰を打ちつけた。  
滴り落ちる汗が浮かんでいる背中に欲望の象徴である液体を吐き出し、  
白濁色の水溜りを作る。  
互いの自身がビクビクと脈打ち、大きく肩で息をしている。  
 
「ハァハァ…ははっ、あんた最高。かなり楽しませて貰ったよ。  
心の傷も、これで少しは癒えたって感じ?」  
少しの休息を取った後服を拾い上げ、じゃあね、と一言言って去っていった。  
 
疲れきった杏崎は、身体を横たえたまま動けないでいた。  
無理やり身体を奪われたと云うのに、最終的に快楽に身を委ねてしまった自身が情けない。  
だが、心の奥から湧き上がる、何とも言えない感情があるのは否めなかった。  
 
インターハイも終わりを遂げ、数日経ったある日。  
 
普段通りの練習を終えた湘南レギュラーメンバーは、体育館を出たところで足を止めた。  
「ん?誰かいるぞ…?」  
後ろを向いて立っている女の姿がそこにあった。  
最初に見つけた布施が言う。  
「どっかで見たことある制服だな…」  
通り過ぎるときに顔を少しばかり見ると、声を大きく張り上げた。  
「あっ!あんた瑞穂の!?なんでこんなとこにいるんだ!?」  
そうである。  
杏崎が何故か湘南まで足を運んでいたのだった。  
その声にビクっと怯えたように肩を震わせた。  
「あー…ちょっとオレがこの人に用あんだわ。悪いね、先帰っててよ」  
何かを察したように小原が言う。  
「なんでチャーが瑞穂の女に用があんだよ!?」  
混乱を隠せないまま、布施は食い下がってきた。  
が、他の3人はその意味を把握した。  
「相変わらずだな…程ほどにしとけよ、チャー」  
「よりによって、瑞穂とはねぇ…」  
「…」  
誰が誰とも云わず布施の肩を掴み、去るように帰って行った。  
何だよお前ら、どーゆうことだよ!?  
そんな布施の声だけが、去っていく集団から聞こえてきたのだった。  
 
「…で、わざわざ夕方にここまで来てるってのは、期待してもいいってこと?」  
少しの間を置いて小原が問いかける。  
下を向いたまま、答えは返ってこない。  
「夏休みだっつっても、明日も部活はあるんでしょ?サボる気?」  
次の質問にも答えようとはしない。  
「…オレん家の両親は誰が居ようと居まいと関心ないけど、  
オレは朝から練習出るから、その時間には出てって貰うけどね。  
サボったら歩ちゃんがうるさいからねぇ…それでもいい?」  
その問いかけに、返事の代わりに小さく頷く。  
答えを確認した後、小原は歩き始めながら言葉を吐く。  
「じゃあ行きますか」  
その後を追うように、杏崎は着いて行くのであった。  
 
―女なんてチョロいもんだな―  
 
 
 
終わり。  
 

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