只今インターハイ真っ最中。  
今日、瑞穂高校 対 優勝候補であると言われていた九工大福岡との試合が終わった。  
結果は…瑞穂の勝利。  
 
その夜、男子バスケ部のマネージャーである杏崎沙斗未は、  
興奮冷めやらず部屋で眠れないでいた。  
 
―ホントに…勝ったんだなぁ―  
 
明日の朝も早い。  
だが、試合の情景が頭から離れず、ベッドの上で何度も寝返りをうっていた。  
と、同室である監督、もとい顧問の氷室恭子が声を掛けてくる。  
「沙斗未、眠れないの?」  
その言葉にはっとする。  
「えぇ…まぁ…」  
「もう一度シャワーでも浴びてきたら?疲れてよく眠れるかもね」  
その言葉に少しばかり間を置いて、そうですね、と軽く返事をし、  
部屋に設置されている浴室に足を向けるのだった。  
 
明日の嘉手納西戦のミーティング後シャワーを一度浴びた為、  
身体も髪も既に洗い終わっている。  
覚めた頭をリラックスさせるためバスタブに湯を張り、身体を浸ける。  
ゆっくりとした空間に身を任せ、穏やかな気持ちになりつつあった。  
だが、その空間を断ち切るようにドアの開く音がし、そちらの方向に目をやる。  
と、裸の氷室がそこに立っていた。  
「セ、センセェ!?」  
突然の出来事に、思わず声が上擦ってしまう。  
「実を言うとわたしも、眠れないのよねぇ…一緒に入ってもいいかしら?」  
はにかんだ笑いを見せながら、そう答える。  
女同士であるとは言え、銭湯や温泉ではなく、この狭い浴室で一緒に入るとなると勝手が違う。  
「え…あの…先生が入るならわたし、もう出ます…けど」  
急いでバスタブから出ようとする杏崎を制するように氷室は言う。  
「あらぁ?折角なんだし、女同士裸の付き合いでもしましょうよ。  
まだ覚えたままでしょ、頭?」  
そう言うと、狭いバスタブの中に向かい合わせになるよう入ってきた。  
いっぱいまで入っていたお湯が溢れる。  
杏崎は膝を抱え込んで小さく丸まり、つい顔を逸らしてしまう。  
 
沈黙の続く、気まずい空気。  
そう感じているのは、杏崎だけのようだが。  
最初に沈黙を破ったのは、氷室だった。  
「あの子たち…ホントよくやってくれたわね。期待を裏切らないでいてくれる」  
普段と何ら変わりのない会話に、杏崎も少しばかり緊張していた身体が解れる。  
「わ、わたしもそう思います!今日の試合、とても凄かったし…  
特に石井さんのインサイドが、いつも以上に栄えてたと」  
先ほどまでとはうって変わって、顔を輝かせながら言葉を放つ。  
その言葉を聞きながら、氷室は微笑んでいた。  
「ふふ…沙斗未はホント、バスケの話になると嬉しそうね。  
けど今は、眠ることが最優先よ。逆に興奮しちゃってどうするのよ」  
静かな声で、笑顔で言われ杏崎は、自分の頭が更に覚めてしまったことを感じた。  
「す、すいません…」  
何故か謝りの言葉が口をつき、下を向き顎までお湯に浸るのだった。  
再び沈黙が訪れる。  
その様子を見つめていた氷室が舌なめずりをした。  
「…可愛い…」  
え?と思い顔を上げた瞬間、氷室は杏崎の唇を奪ったのである。  
「!?」  
突然の出来事で頭が真っ白になる。  
すぐさま、手で氷室の肩を押すのだった。  
「セ、センセェ…?な、なに…するん、ですか?」  
「なにって…あなたを眠らせるためには身体を疲れさすのが一番手っ取り早いと思って…ね」  
軽くウィンクをしながら、杏崎の常識では考えられないような言葉を言ったのだ。  
―疲れさす?何を?女同士で…?え?先生が、わたしと?なに?―  
支離滅裂な言葉が頭を駆け巡り、明らかに困惑しているであろうと思われる表情に、  
氷室の背中がゾクリと際立つ。  
「何も怖がらなくてもいいわよ。女同士だもの」  
何か少し違うような気もするが、  
混乱している杏崎にはその『女同士』と云う言葉で安心してしまうのだった。  
狭いバスタブの中で、更に身体を寄せてくる。  
ふいに杏崎の形のよい乳房に両手が伸び、下からすっと持ち上げるように、軽く包み込む。  
「若い子の身体って…いいわねぇ。弾力もあって瑞々しい…」  
そう言いながら、ゆっくりと揉み込むように胸を撫でる。  
時折、手のひらが両胸の中心にある桜色の蕾に擦れる度、ピクンと身体が反応する。  
徐々にその蕾が固く勃ち上がってきた。  
「あっ…」  
自然と身体が熱くなってきたのが分かる。  
バスタブに浸かり、最初から体温が高まっているのも手伝ったのか、反応が早い。  
抵抗しようとすれば出来るのだが、怯えた子猫のように何故か動けないでいた。  
それは…快楽を求める身体が発している無意識な反応なのだが…  
 
杏崎の少しばかり震える身体をあやすように言う。  
「わたしも裸なんだし、恥ずかしがることないわよ。  
それに…鼓動が高まってるのはあなただけじゃないしね」  
そう言って彼女の手を持ち、自らの胸にあてがう。  
大きく湯船の中で揺れ動く膨よかな胸の感触に、戸惑いの色を隠せないでいた。  
それと同時に、氷室の鼓動も感じ取られた。  
微かに速く鳴り響く鼓動。  
同じように氷室の身体も昂ぶっているのだと知ると、先ほどまでの怯えはなくなり、  
逆に何か身体の奥から湧き上がるような感覚を覚えたのだった。  
氷室は杏崎の手を自らの胸に置き去りにし、相手の肩を緩やかに握り顔を重ね、  
ゆっくりと口付けた。  
艶やかな舌が口内に入り込んでくる。  
荒々しくない、女特有のキス。  
何度も経験したものだけが持つ、口先だけでの優しい愛撫。  
舌で舌をなぞられる何とも云えない生々しい感覚に、口の端から吐息が漏れる。  
唇を重ね合わせたまま、氷室は手を再び相手の乳房に持っていき、  
そして、もう固くなっている蕾を優しく摘み上げた。  
ゾクリ、とする感覚に肩を大きく震わせる。  
下腹部に水とは明らかに違う、何かねっとりした物が流れ出るのを感じながら。  
長い長いキスが終わりを告げたかと思うと、氷室が口を開く。  
「沙斗未…そこに座って」  
そこ、とはバスタブの際のことである。  
湯気が立ち上る、酸素の薄い狭い浴室。  
頭がボーっとなり、まともな判断が出来ぬまま、云われたままに行動する。  
ゆっくりと言葉に従う杏崎を目で追い、昂ぶる自身の身体を押さえつけ、自らも立ち上がる。  
座っている杏崎の少し上から見下ろしながら、言葉を続ける。  
 
「お楽しみはこれからよ」  
 
氷室は覆いかぶさるように杏崎の肌に肌を寄せ、首筋の表面を滑らせるように、唇でなぞっていく。  
時折、ちろっと舌で翻弄しつつ。  
手を肩に乗せたまま、鎖骨辺りにまで口を這わせ、その下にある膨らんだ中心の蕾に口付ける。  
小さく固く尖らている蕾を舐め上げ、その周りの乳輪をぐるりとなぞる。  
もう片方の手は、細い腰から太股を仕切りに擦っている。  
「っん…ふっ」  
甘い声が漏れる。  
最初の困惑とは裏腹に、感情の昂ぶりはもう抑えきれるものではなかった。  
ハァハァと吐息を軽く吐きながら、己の身体を愛撫する氷室に身を委ねている。  
その気持ちを抑えようとすればするほど、反対に下腹部に熱が篭る。  
下半身が疼き、座っている際に置いてある手に力が入り、足をよがらせてしまった。  
ふくらはぎぐらいまでしか溜まっていない水が、円を描くように揺れる。  
水の振動を感じ取った氷室は、愛撫する口を離し、問いかける。  
「なぁに?もう、我慢出来ない?」  
優しい口調ではあるが、羞恥心を煽る言葉。  
その言葉に、潤んだ瞳で答える。  
表情から読み取れる、YES、と云う答え。  
瞳を薄く閉じ、唇から笑みが零れる。  
氷室は杏崎の足を大きく割り広げ、バスタブの際に両足を乗せ上げる。  
露になった、艶かしいまでの黒く光る茂み。  
水と、それとは違う粘着のある透明な液が入り混じり、いやらしく雫を滴り落としている。  
そっと指を、その茂みに沈み込ませる。  
指が茂みの中の突起に触れる。  
「っあ…はっ!!や…んん…っ」  
自身でも思いもよらないぐらいの声が響き渡った。  
「あら、意外な反応ね…沙斗未…1人で慰めた経験、あるんでしょ?」  
指の腹で溢れ出ている愛液を絡め取り、蕾に優しく塗り上げながら言う。  
その言葉に、顔がカッと紅潮する。  
1人で慰めた経験があるのとないのとでは反応が違うことを、同じ女性である氷室は知っていたのだ。  
「指での経験あるんだったら…違う方法で楽しませてあげるわ」  
言うと同時に指を離し、手の届く範囲にあったシャワーを取り上げ、栓を捻る。  
冷たい水が、熱くなり充血している蕾に容赦なく当てられた。  
「!!ぅあっ…ん、はぁっ!!」  
指とは全く違う、強烈なほどの細かい刺激。  
即座に閉じようとする両足を、空いている手と氷室の身体とで押さえつけられる。  
「どう?気持ちいいでしょ?」  
その顔付きは、いつもの彼女とは違う、女豹の顔をしていた。  
 
冷たい刺激が下腹部を中心に、身体全体にじんじんと伝染していく。  
だが、自身の熱は上がる一方である。  
途切れることのない刺激の中で、杏崎は悶え苦しむ。  
もちろんそれは、快楽の所為であるのだが。  
ふるふると震える足を閉ざさせてくれはしない。  
その様子を楽しむかのように、氷室は行為を続けている。  
その後、身体をぎゅっと硬くし、肩がビクビクと小さく震えるのが見えた。  
軽くイってしまったのだろうか、喘ぐ息が一瞬止まり、小さくハッっと呼吸が吐き出された。  
じわり、と氷室自身からも熱く込み上げてくる何かを感じながら。  
長いこと浴びせていたシャワーを外し、栓を締め元にあった場所に置く。  
ぽちゃんと際に乗せていた両足が、湯船の中に沈み込む音がする。  
横目でこちらを見ながら、まだ物足りなそうな火照った顔をしている杏崎が目に飛び込んでくる。  
軽くイっただけでは満足する快楽を得られないのは、当たり前のことだ。  
「ふふ…まだ欲しそうな顔してるわね。そろそろ、わたしも気持ちよくなりたいんだけど?」  
そうは言うものの、男女間の性行為にすらまだ及んだことがないだろうと思われる杏崎に、  
同性の下腹部を口で舐めろ、とは流石に気が咎める。  
 
―指で我慢する…か―  
 
口で奉仕させたい感情を抑えつつ、氷室は杏崎の腕を手に取り、  
そっと自身の箇所に持っていくのだった。  
初めて触れる、同性の秘所に一瞬戸惑い、手を引っ込めようとする。  
が、しっかり握られている氷室の手にその行動も無駄な努力だ。  
「いつも自分で慰めているように、触ってみて…」  
その言葉に、杏崎は躊躇する。  
自分の慰め方が相手に知られてしまうのだから、仕方のないことだが。  
早く、と云う風に氷室は掴んでいる腕をぎゅっと強く握る。  
観念したのか少しの間を空け、杏崎は目の前に見える黒く艶かしく光る薄い茂みの中に、  
股の間からそっと指を潜り込ませる。  
触りやすいようにと、バスタブの中で立っている氷室は、範囲の許す限り足を広げる。  
自分のモノとは勝手が違うが、持つものは同じ。  
探るように、膨らんでいる突起を探し当てる。  
「っぅ、ん…」  
鼻にかかったような吐息を漏らす氷室を下から覗き見、  
自分と同じようにねっとり濡れている部分を中指で啜り上げる。  
初めは表面を擦るように、それから突起の辺りをなぞるように。  
人差し指と中指で少し強く挟み込み、小さく円を描くように揺さぶりをかける。  
「あっ…んふぅ…うっ」  
感じているのだろうか、吐息とも呻きとも取れる声が聞こえる。  
立ちながらも、倒れこむのを我慢するかの如く、下半身が細かく震えているのが分かる。  
先ほどまで自身を翻弄させていたこの女が、自らの手によって快楽に溺れゆく姿を前に、  
杏崎は足先から震えるような感覚が昇りあがってくるのを感じた。  
同時に、疼く自身の箇所からも触れて欲しいと云わんばかりの、  
暖かな…いや、熱いまでもの愛液が湧き出すのを知らずにはいられなかった。  
 
指の動きが段々と激しくなる。  
そのリズムに合わるように、喘ぎながらも自らの腰を小さく振り始めた。  
杏崎は抑えきれなくなり、もう片方の手で自身の蕾を慰め始める。  
互いの息が、喘ぎが合わさり、浴室内に響き渡り、反響する。  
自分の知る限りでは、絶頂まではすぐそこに迫っている。  
が、杏崎は知らなかった。  
何度も経験を積んだ大人の女は、外からの刺激だけで絶頂を迎えることがないことを。  
ましてや自慰の経験ですら浅い杏崎の指の動きだけで、満足することがないと云うことを。  
その初々しいまでの自慰行為で絶頂を迎えようとしている杏崎の肩に、ふいに手が乗せられた。  
そして声が聞こえる。  
「ん…ふふっ、ありがと…十分気持ちよかったわ」  
そう云うと同時に指から腰が引かれ、即座に足を広げられ、しゃがみ込み、  
顔を自身の手で慰めている箇所に埋めてきた。  
バシャっと云う、水の波立つ音が聞こえる。  
え?と思うが、もう遅い。  
愛液で濡れている手を退かされ、固く尖らせた舌で、  
弾け飛びそうなほど紅く大きく充血した蕾を舐め上げてきたのだった。  
「やっ!!ふ…っあぁぁ…ん、あっ!!」  
これほどまでにない声を張り上げ、予期せぬ出来事に脳から溶けてしまいそうになる。  
絶頂を迎えるすぐそこまで来ている感覚に新しい刺激が加えられたことにより、  
より一層強い快楽に押し上げられる。  
指では出来ない、滑らかな動き。  
吸い付くように唇で摘み上げられ、ぬめっとしたような、ザラっとしたような舌で弄ばれる。  
恥ずかしいまでの淫らな声を抑えることが出来ない。  
女の舌で、狂ったように喘ぎ悶える。  
行為はそのままで、自身の舌でよがる女を抑えるように手を取り、指と指を絡めるように握る。  
抵抗は、もちろんしてこない。  
逆にその手を強く握り締めてきた。  
そして、唇で強く吸い付きながら、舌でちろちろと舐めあげる動作に、  
下腹部の奥から何かが弾け飛ぶ。  
全身に電流を流されたかのごとく、最高潮の快楽のきざはしを一気に駆け上がったのだ。  
悲鳴ともとられるぐらいの声を上げ、杏崎の身体がビクンビクンと大きく跳ね上がる。  
 
ひくつく部分をそのままに氷室は口を離し、  
倒れ込むように前のめりになる彼女の身体を支える。  
「お疲れ様…」  
そう言って、軽く頬にキスをした。  
 
意識が朦朧としたまま氷室に肩を抱かれ、よろよろとした足取りで自身のベッドに辿り着く。  
スプリングに身体が沈み込むと同時に、意識は深い眠りの中に堕ちていった。  
それを見届けると、氷室はバスタオルでしか隠されていない杏崎の身体に布団をかぶせる。  
「今度はわたしの番ね…」  
そう小さく1人ごちて、下着を着けずにキャミソールとスカートを穿き、部屋を後にするのだった。  
 
 
場所は会議室。  
 
氷室はある人物とそこにいた。  
「…センセ〜…オレ、今日疲れてるんっすけど…  
こんなとこにいきなり呼び出して、なんっすかぁ?」  
大きなあくびをしながら、疲れた顔でしゃべる男。  
男子バスケ部唯一の2年生である、高階トウヤであった。  
「分かってる癖に…疲れてるのはもちろん知ってるわよ。  
けど、ちょっとね。身体が疼いて眠れないのよ。疲れてても、トーヤだけはまだ出来るわよねぇ?」  
ふふっと笑いながら核心の言葉を言わずに答える。  
「ひっで〜…オレだけは、って…今日は真面目にちゃんと働いたっすよぉ〜。  
でも、出来るってのは当たってるっすけどね」  
眉尻を下げながら、けれども顔は笑っている。  
出来る、とはもちろんSEXのことである。  
特定の彼氏を持っていない氷室は、ことあるごとに生徒である部員に手を出していた。  
だがある程度の罪悪感も持ち合わせているため、彼女のいる部員には手を出してはいなかった。  
笑いながら、出来る、とは言うものの、  
いつものように即座に手を出してこない男に不敵な笑みを見せ、氷室は続ける。  
「実はね、さっきまで眠れない沙斗未を可愛がってあげてたのよ。  
で、結局わたしが眠れくなったってわけ。あなた、沙斗未のこと好きでしょ?」  
相手の心理を読むかのように、淡々と話していく氷室の唐突な言葉にギョっとする顔を見せる。  
「げっ…なんで知ってるんすか…オレってバレバレー?」  
「バレバレ、わたしには、ね。そうゆうことで、今日は間接的に沙斗未を感じられるってこと。  
いい話じゃない?」  
身体をずいっと押し寄せながら、笑顔で言う。  
「トホホ…まぁそれも悪い話じゃないっすけどね…」  
困ったような嬉しそうな表情を見せ、そう答える高階だった。  
商談成立、とでも言うように、にっこり笑顔を見せる氷室。  
ゆっくりと男の首に腕を回し、唇を重ねる。  
「でも、センセー?あんまり杏崎を調教しないでくださいよ〜?  
あの初心なとこが、かわいーんすから」  
えぇもちろん、とにこやかな顔でそう答え、互いに肌を抱き合わせていくのであった。  
 
男女共に性対象である、氷室恭子 2X歳。  
恐るべき女である。  
 
 
 
終わり。  
 

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