静かな部室に流れる、淫らな水音と甘く漏れる吐息。  
「・・・や。ちょっと・・・待ってトーヤく・・・っあ」  
「ここまで来て、待ったはないでしょ?」  
そう言って深く口付けを交わし、濡れた下着越しに愛撫を続ける。  
 
―遡ること数十分前―  
 
(先生に頼まれた用事で遅くなっちゃったな・・・)  
 
―ガチャ―  
 
勢いよく部室の扉を開けたのは、  
瑞穂高校バスケ部マネージャー杏崎沙斗未であった。  
「っ!?哀川さん?」  
驚いたのも無理はない。  
いつも部活に一番乗りで来ている彼、  
瑞穂バスケ部のエース哀川和彦がまだ部室で着替えている最中なのだった。  
「あっれ、沙斗未ちゃん?どーしたのー今日遅いじゃん」  
「そ、それを言うのはこっちのほうです。  
哀川さんこそ、今日は随分遅いじゃないですか。  
じゃなくて、着替えの最中にすいません!!」  
半身全裸の哀川を前に、少し動揺を隠せないでいた。  
急いで外に出ようとする杏崎を引き止め哀川が続く。  
「今日ねー日直だったんだ。  
いつもはサクっと終わらせちゃうんだけど、  
先生がやたら用事押し付けてきてこんな時間になっちゃった」  
エヘヘと屈託のない笑顔で答える。  
「横学戦まで後数日しかないのに、日直なんてツイてないよねホント」  
そう言い終わると同時に着替えを済ませ終え、  
先行くね、と告げ扉を開ける。  
それまで、哀川の鍛え抜かれた筋肉に見惚れてしまっていた杏崎であったが、  
扉の音で我に返った。  
「あ、そう言えば今日、トーヤ君も日直なんで少し遅れるって。  
先輩たちに伝えといてくれって頼まれました」  
一瞬振り返って、トーヤもツイてないね、  
と笑顔を浮かべ急ぎ足で体育館に向かう哀川だった。  
 
・・・哀川さん・・・  
 
1人部室に残った杏崎は、いけないとは思いつつも哀川のロッカーに手を伸ばす。  
―哀川さんの制服―  
彼、哀川には同じバスケ部に彼女がいる。  
相思相愛だと知りつつも、彼に対する気持ちは抑えきれるものではない。  
 
―好きになってはいけない人―  
 
分かってる。  
けど、伝えさえしなければ・・・・  
 
その想いを強く押さえ込もうとすればするほど、身体の熱が上がっていくのが分かる。  
杏崎は、先ほど脱がれたYシャツに手をかける。  
(これぐらいなら罪にはならない・・・よね)  
誰に問いかけるでもなく、己の中で小さくつぶやく。  
 
「ん・・・」  
いくら身体の小さい男だとしても、そこはスポーツマン。  
普通の女子高生よりは体格がいいはずである。  
制服の上からでもすっぽり身体が収まってしまうYシャツを羽織り、  
ベンチに腰掛け淫らな行為を始める。  
服の上から胸を揉み込み、下着越しに局部をさする。  
シャツから漂う、ほのかな香り。  
哀川和彦の香り。  
彼のシャツを羽織ってるだけなのに、杏崎は哀川に抱かれているといる妄想を抱いている。  
そう思うだけで体温が上昇し、下着がしっとり濡れてくる。  
我慢できず下着の中に手を潜り込ませ、直接茂みの奥の穴に触る。  
―濡れてる・・・―  
自覚せざるを得ないほど、杏崎の部分は濡れていた。  
その穴から溢れる蜜を指に絡めとり、最も敏感に感じる箇所に指を這わせる。  
ゆっくりと、そしてその指が彼だと思い込み。  
「はっ・・・哀川さ・・・ん」  
少し膨らみかけた蕾を徐々に強く上下に摩る。  
まだ男女間の性行為に励んだことのない杏崎は、指を入れる行為までには及ばない。  
だが、時折くちゅっといやらしい音がする度に、彼女の妄想を更に掻き立てているのであった。  
「好き・・・哀川さん・・・好・・・」  
 
―ギィィ―  
「!?」  
 
その時であった。  
今はみんな、部活の練習中。  
誰も入ってくることのない部室の扉がゆっくりと開いたのである。  
一瞬にして杏崎の背中に緊張が走る。  
扉に背中を向けていたため、誰が入って来たのか確認が出来ない。  
振り向けない。  
両者の間に少しの間、沈黙が訪れた。  
先に口を開いたのは、扉を開けた人物である。  
「杏崎・・・見ちゃった」  
その声は、杏崎と同じクラスの高階トーヤであった。  
そう、自ら伝言を告げた日直中の高階が、まだ部活に顔を出していないことを忘れていたのだ。  
「トー・・・ヤ、君・・・?」  
震える声を押さえ、相手を確認するように名前を呼ぶのが精一杯であった。  
「杏崎って・・・結構大胆なんだねー意外意外」  
ケタケタと嬉しそうに言葉を放つ。  
それでもまだ振り向けない。  
自分の淫らな行為を見られたと同時に、哀川のシャツを羽織ってるこの姿に弁論の余地もない。  
恥ずかしさと混乱とで、泣きそうだ。  
パタンと扉を閉め、ゆっくりと高階が近づいてくるのが分かる。  
今すぐにでもこの場から逃げ去りたい。  
けれど、逃げたところでどうすることも出来ない。  
見られてしまったのは事実であるのだから。  
後ろから両肩に手を置かれ、耳元で呟く。  
「やっぱり哀川さんが好きだったんだ」  
身体がビクンと反応する。  
やっぱり!?  
その言葉にやっとの思いで振り返ろうとした瞬間、杏崎は高階に唇を奪われたのであった。  
「!?」  
突然の出来事で訳が分からず身体が硬直する。  
ちゅっと軽く音を立て、唇を離しすぐさま高階が言う。  
「前も杏崎1人でやってたよね?実はオレ、そん時も偶然見ちゃったんだ」  
この行為に及んだのは、これが初めてではないのだ。  
前も見られていた・・・  
もう頭の中が真っ白で何も考えられない。  
「まぁ哀川さんを好きなのかなって、それ以前から薄々気付いてはいたんだけどね。  
ほら、オレって洞察力鋭いからー」  
いつものように、ヘラヘラとした顔で言葉を続ける。  
言葉が出てこない。  
けれど、言わなければいけない。  
「・・・願い」  
「ん?」  
「お願いだから、哀川さんにだけは絶対言わないで!!」  
今出来る限りの声を振り絞って、泣きそうな顔で高階に懇願した。  
高階は驚いた様子もなく  
「言わないよ」  
そう答えたのだ。  
その代わり、と口元に笑みを浮かべ小さく呟き、再び杏崎の耳元に顔を近づけ  
「オレと、しよ?」  
確かにそう言ったのだった。  
 
 
「ん・・・ふ・・・っ」  
どれぐらい長い間、キスをされていたのだろうか。  
時間の感覚が分からない。  
優しく、時には激しく口内を犯され続ける。  
舌を絡め、裏側をなぞられ、唇を吸われ。  
上手い下手を認識出来るほどキスをしたことがない杏崎であるが、分かる。  
 
―上手い―  
 
嫌悪感を感じさせない、キス。  
時折出るちゅくっと粘液の合わさった音が、静かな部室には大きすぎる。  
酸素が足りない。  
頭がクラクラする。  
そして、やっと唇を解放されたかと思うと今度は首筋、  
うなじ、耳裏、感じるところ全てを丁寧になぞっていく。  
脊髄から湧き上がるような鋭い感覚。  
「んん!!っや…ま、待って!!」  
このまま甘い快楽に溺れてしまっていいのだろうか。  
瞬時にして言葉がこぼれた。  
「嫌?でもさっきOKしたっしょ?オレとやろって言ったとき」  
「そ、そうだけど…でも…」  
言葉が続かない。  
「止めてもいいけど…言わないって約束守れるかわかんねーよ?」  
その言葉に目を見張る。  
「そ、んな…」  
「オレ、その代わりって言ったよね?代わりが無くなれば約束なんてする必要も無くなるしね」  
無垢な笑顔を見せてはいるが、言葉は強烈だ。  
杏崎に逃げ場は、ない。  
今、後ろから軽く抱きしめるようにいるこの男の言葉に従うしかないのだ。  
一度唇を強く噛み締めてから、口を開く。  
「ひ、卑怯よ…人の弱みに…付け込んで…」  
声は震えているが、冷静に。  
きっと、嬉しそうに笑うのだろう。  
そう思っていた杏崎だが、高階は意外にも真面目な顔つきで  
「卑怯だとか汚いだとか言われようと、欲しい『モノ』を手に入れる為なら何でもするから」  
 
その顔に、言葉にドキリとする。  
―欲しいモノ?―  
言葉の意味を考える暇を与えず、高階は再び舌を這わせた。  
そして、上着の隙間から手を滑り込ませ、ブラジャーをずり降ろされる。  
決して大きいとは言えない杏崎の胸だが、形はいい。  
高階の手中にすっぽりと納まってしまうその乳房を、優しく揉み始める。  
真ん中にある突起を摘まれ、音こそはしないが感覚的にコリっとつねられ。  
「嫌とか言ってるけど、身体は正直だよね?乳首立ってんじゃん」  
胸を愛撫しつつ、片手をスカートに伸ばす。  
手のひらを太ももにあてがい、ゆっくりと滑らせるように擦る。  
付け根辺りまでいくと、また膝まで戻り。  
幾度かそれの繰り返し。  
「杏崎って、キレーな肌してんね。オレ、足フェチだからたまんね…」  
ハァっと、吐息が聞こえる。  
 
―もどかしい―  
 
止めてとは言ってみたものの、快楽には逆らいがたいものがあるのが人間だ。  
逃げられないのであるのならば、このまま早く溺れたい。  
そう思っていた矢先、念願の部分に指が潜り込んできた。  
「…っあ!!」  
布越しだが、今まで誰にも触らせたことのない部分に他人の指がある。  
高階は下着が湿っているのを確認するように、その部分を撫であげる。  
そして、下着を膝まで降ろし、直接茂みに中指を潜り込ませた。  
一連の動作のように素早く愛液を絡めとり、先ほどまで杏崎自身で慰めていた蕾に塗りあげた。  
「っう…あっ!!」  
全身に微弱電流を流されたように、身体がビクビクっと震える。  
ある程度予想はしていたものの、  
他人の指に触れられることがこれほどまでの感覚だとは思いもよらなかった。  
自分の指とは違う、角張った、太い男の指。  
「すっげ濡れてるね…オレの前戯の賜物?それとも…一人でヤってたときのもの?」  
相変わらず、言葉で羞恥心を煽ることも忘れない。  
くちゅくちゅと愛液が溢れ出る音をわざと聞かせるように、蕾を弄ぶ。  
「聞こえるでしょ?杏崎のやらしい音」  
言葉で犯される度、自身から止め処なく溢れ出る蜜を自覚するしかないのであった。  
 
十分に膨れ上がった蕾を指の腹で撫で上げ、擦られ、押し込め。  
指で出来る限りのありとあらゆる動作で、杏崎を快楽の波に飲み込ませる。  
身体の心から湧き上がる、痺れるようななんとも言えない感覚。  
「ん…っは…ぁあ」  
その感覚がもうすぐ浮上する、というところまで来ていたのだが、その時不意に高階が指を離す。  
「えっ!?」  
なんで!?という意味を含んだ言葉がつい出てしまった。  
「あはは、杏崎むっちゃ残念そうだね。このままイカせてくれると思った?」  
その言葉に顔が紅くなる。  
「まだまだこれからだって。もっとキモチイイことしたげるから。  
その前に、オレももう我慢出来ないんだよね」  
そう言って、杏崎を後ろから弄んでいた高階は立ち上がり、カチャカチャとベルトを外し始めた。  
ズボンと一緒にトランクスを脱ぎ、杏崎を振り向かせる。  
「オレの、口でして」  
初めて見る、男の性器。  
杏崎に大きい小さいと判断出来はしないが、大きい部類に入る程立派なモノであった。  
ソレは十分に勃ち上がり、先走りと呼ばれる透明の液が溢れ出ている。  
 
―これが…男の人の…―  
 
ゾクリ、と嫌悪感とは違う衝撃が背筋を走る。  
―これが…わたしの中に…―  
上昇していた体温が更に上がる。  
最初は理性が勝っていた杏崎であるが、一度火照った身体はそうそう落ち着くものではない。  
今、杏崎の疼く身体が欲しているのは、最高潮の快楽。  
その為にも、高階の自身を口に含まなければいけないのだ。  
恐る恐る、手に取る。  
触れた瞬間、硬くそそり立つソレはビクっと反応を示した。  
「ごめんごめん。ちょっと過敏になってるみたい。  
杏崎のやりたいようにやってみて。歯さえ立てなければなんでもこいだから」  
ははっと照れ笑いを浮かべながらしゃべる高階の言葉が、頭に入ったのかどうか定かではないが、  
杏崎はゆっくりと口を付ける。  
先走りの液を舌で舐めとり、亀頭を口に含む。  
そのまま、小さい口で咥えられる範囲まで咥え込み、静かにスライドさせていく。  
無意識なのだろうが、ぴちゃぴちゃと音を立てながら啜りあげる。  
生々しい水音が辺りを包み込む。  
行為に慣れた女とは違い、その初々しいやり方が高階をより一層興奮させる。  
「ハァ…たまんねぇ…」  
吐息と共にボソっと呟いた言葉に、モノを含んだまま不用意に潤んだ瞳をした杏崎が顔を上げたのだった。  
「!?…それ…まじヤバイ…」  
先ほどまで優勢を保っていた高階だが、額にじっとり汗を掻き、苦笑いを浮かべる。  
自分自身を咥えられたまま、上目遣いに見上げられる顔に男は弱い。  
刺激こそ少々物足りないが、快楽を押し上げることには十分すぎた。  
 
―ヤベェ―  
 
その言葉が脳裏を過ぎり、即座に高階は自ら腰を引いて含まれていたモノを抜き取る。  
が、少しばかり遅かった。  
「きゃ」  
抜き取った瞬間、先端を自分の手で押さえたものの、  
吐き出された精液が杏崎の顔に少々かかってしまったのだ。  
大きく肩で呼吸を整えている高階を見て、杏崎は何がどうなっているのか把握できないでいた。  
「…顔射になちゃった…悪りぃ…」  
部室に備え付けられているティッシュで手の中の液体をふき取りつつ、バツの悪そうな顔で謝る。  
そして、杏崎の顔に付いた自らの液を指で拭い取り、  
潤んだ瞳で見つめる赤みを差した彼女の頬を両手で包み込み、続ける。  
「杏崎…あんな顔で見るなんて、卑怯」  
そう言って、浅く口付けを交わす。  
そのままベンチに仰向けに寝転がらせ、膝までしか降ろしてなかった下着を剥ぎ取る。  
「ちょっと計画とズレちゃったけど、今度こそイカせてあげる」  
高階は杏崎の足を大きく広げ、まだまだ乾いていない局部に顔を潜り込ませた。  
ぬめっと光る茂みを舌で掻き分け、紅く膨れ上がっている蕾を大きく舐め上げた。  
「ぅ…はっ…んん」  
間隔が空いたとはいえ、待ち望んでいた痺れるようなこの感じ。  
指とはまた違うザラついた舌の感覚に、少しばかり失っていた熱情が再び全身を焦がす。  
無意識とは異なり、わざとらしく淫らな音を立て、  
蕾をねっとり舐め上げ、吸い付き、甘噛みされる度に身をよじる。  
全ての感覚が研ぎ澄まされる。  
かなり解れてきた身体に、今まで自分で慰めていた感覚でも味わったことのない衝撃が脊髄を走る。  
「んはっ!!や…あっ…ん」  
「指なら、痛くないっしょ?」  
そう、高階が今舐めあげている少し下の、溢れ出る愛液の源に指を侵入させてきたのだ。  
探るように指を動かし、ある一定の場所までくると細かく刻み始めた。  
云わずと知れた、快楽のポイントである。  
身体がビクンと跳ね上がる。  
「な、に?…んあっ…ぃや…あっ…」  
狭い肉壁が高階の指を締め付ける。  
指で弄ばれていた以上の、痛いぐらいの快楽。  
普段自ら慰めている蕾と、初めて味わされる体内からとの二つの刺激。  
大きく身をよじらせ、呼吸もかなり乱れている。  
知らず知らず、杏崎の手は高階の髪を絡めるように掴んでいた。  
「キモチイ?」  
「は…やぁ…んっああぁ…トー…ヤく…ん」  
自らの名前を呼ばれた高階はピクリと反応し、聞こえるか聞こえないぐらいの小さな声で  
「オレが、哀川さんを忘れさせてやる」  
そう言ったのだった。  
ここまでくると、追い上げは急速であった。  
芯の奥から、波のような速さで全身に電撃が走る。  
「ぃ…んあっ…っはぁあぁ!!!!」  
 
薄れゆく意識の中で、杏崎は高階の声を聞いた。  
聞こえはしたが確認する気力も残っておらず、意識は闇の中に消えたのであった。  
 
 
「遅れてすぃまっしぇ〜ん」  
いつものヘラヘラした顔で、軽快に体育館に足を踏み入れた高階だった。  
「おっせーよ、お前。日直ってこんなに時間かかるもんなんかー!?」  
最初に声を上げたのはバンダナが印象的な一つ上の先輩、石井である。  
「お互いツイてないよねー、県大会中に日直がかぶるなんてさ」  
あははと笑いながら、かなり遅れてきたことを咎めもしない哀川。  
「いやぁ、ホントっすよねー。  
しかも哀川さんと同じ日に日直なんて、オレら運命共同体?なんつってー」  
普段と変わらず、冗談交じりでみんなを笑わせる高階だった。  
「っと、そうそう」  
そう言って、女子バスケの指導をしていたバスケ部男女共の顧問である氷室の所に走っていった。  
「ん?どうした、トーヤ?」  
「杏崎なんっすけど、ちょっと今日体調不良っぽかったんでオレが無理やり帰らせといたっす」  
「あらぁ。大丈夫かしら?」  
「無理にでも帰らせないと、部活に顔出しそうだったんで。  
いざ横学戦ん時に、敏腕マネージャーがいないと話になんないっすからね」  
いつもの口調で話す高階に、よく言うわね、分かったわ、と笑顔で返す氷室であった。  
そして男子バスケ部コートに戻ってきた高階は  
「いきなりなんすけど、哀川さん」  
真面目な顔をして言う。  
 
「オレと1on1勝負して下さい」  
 
 
一方、部室に一人残された杏崎は、何分ほど眠っていたのだろうか。  
寝返りを打った時に、何か物が落ちる音で目が覚めた。  
気だるい身体を起こしふと見ると、  
ベンチに横になって眠っていた自身の身体にYシャツがかけられていた。  
―これは…―  
恐る恐る、自分のしてしまった行為を振り返り、哀川のロッカーを開ける。  
―ちゃんとかかってる?―  
そう、その身体にかけられたシャツは、先ほどまで行為を共にしていた高階のものだったのだ。  
トーヤ君…  
高階のロッカーを開け、シャツをかけ直す。  
コツン。  
何かが足に当たる。  
先ほど落としたと思われる物が転がっていた。  
―トマトジュース?…なんでここに?―  
疑問はあるが、とりあえず拾い上げようとした時に、  
メモも一緒に落ちているのを発見した。  
 
―お疲れちゃーん、よく眠った?  
―寝起きにトマトジュースはいかが(笑)  
―今日はそのまま帰りなね。  
―みんなにはオレから言っとくからさ。  
―そんで、約束は守るから。  
―結局最後まで出来んかったけど(笑)約束は約束だかんね。  
―あ、ちなみにこのメモは数秒後に爆発しまーす。  
―ドッカーン!!なんつってー(さぶっ  
―高階トーヤより愛を込めて  
 
殴り書きで、メモにはそう書かれていた。  
ふふっと顔に笑みがこぼれる。  
―トーヤ君らしいな、ホント―  
恥ずかしい行為を見られ、淫らな行為を共にした杏崎だったが、何故か後悔はなかった。  
その時、ふっと最後の高階の言葉を思い出したのだった。  
 
―いつか、オレを好きになってね  
―そん時までお預けしとくから  
 
最後までやらなかったのは予想外の出来事でもなんでもなく、  
最初からするつもりはなかったのだろう。  
高階なりの誠意の見せ方だったのかもしれない。  
 
 
終わり。  
 

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