委員会の会議が終わり部屋から出た時には、既に窓から夕陽が差し込んでいた。  
 会議がだいぶ長引いてしまったからだ。せっかく、見たかったドラマももう終わってしまうだろう。  
 あーあ、と短く溜め息をついた。仕方がないと言ったら仕方がないのだが。  
 とにかく、これでは走って帰っても仕方ないので、のんびりと帰る事にした。  
 外はまだ運動部の喧騒で賑やかであるが、校舎の中はうって変わって静かである。  
 気味が悪いというよりは、むしろ神秘的。夕陽が雰囲気を更にそういうものだと高揚している。  
 下駄箱に行こうと歩いていたら、何か音が聞こえた。誰かの声。歌ってる。  
 最初は音楽部かと思ったけど、楽器の音は聞こえない。  
 綺麗な声だった。何処か惹きつけられる様な声で、いつの間にか音夢も声のする方に足を運んでいた。  
 最上階の方まで来たけど、声はもっと上。屋上。音夢は屋上へと続く階段を上っていって、  
扉を開けた。  
 風が吹いた。音夢は驚いて、一瞬眼を閉じた。再び眼を開けると、そこには一人の女性がいた。  
 ことり。歌っていた。オレンジ色の空に向かって歌いかけている。  
 歌よりも、ことり自身のその歌ってる姿が余りに綺麗で、音夢は傍に寄りしばらく見とれてしまっていた。  
 音夢が歌っても、ここまで綺麗には歌えない。それは、ことりだから綺麗なんだろうな、と思った。  
 しばらく歌が続いて、ようやく終わるとことりは静かに音夢の方を振り向こうとした。  
「・・・ん?んげっ!?」  
「うわぁ!!」  
 ことりが音夢の顔を見るなり急に驚いて、さっきまでの神秘的なんて言葉とはかけ離れた様な  
謎の奇声を上げる。音夢も突然大声を出されたもんで驚いてしまった。  
「・・・・なんだ、音夢じゃないですか。脅かさないで欲しいっすなぁ〜」  
「って、それはこっちの台詞よっ!!」  
 音夢が怒鳴ると、ことりは苦笑した。  
 どうやら、音夢が近づいていた事に気が付いていなかったらしい。  
「音夢は・・・・えっと、風紀委員か何か?」  
 ことりは口に指を当てて考える仕草をしながら尋ねてくる。音夢は頷いた。  
 
「ええ。ちょっと会議が長引いちゃってね。ことりは・・・・歌の練習?」  
「はい♪今の時間なら人も少ないだろうと思いまして。ここでこっそり歌ってたんすよ」  
 何故かVサインを出してノリノリなことりを見て、苦笑する音夢。  
 相変わらず容姿と行動のギャップが激しいなと思った。  
 初めて出会った時は、あの学園のアイドル白河ことりと聞いたものだから、まるで女優にでも  
出会った様な感じで緊張して、つい言葉を詰まらせてしまったものだった。音夢も見かけによらず、  
だいぶあがり症な面もあった。  
 外見も噂通りの美少女。平凡な自分とは、どこか掛け離れた存在なんだと思ってしまった。  
 ただ、数度に渡って言葉を交わしていく内に、段々とその認識が間違っていた事に気付いてきた。  
 別に、どこの娘ともさして変わらない、極々普通の女の子だった。  
 最近では、どうして周りは彼女の事を特別扱いするのか、いつの頃からか不思議に思えてきた。  
 確かに、それはとても美人だというのは頷けるけど。周りの人間はことりの事を知らない。  
だから特別扱いしてしまうんだろうな、と思った。  
 そう思える様になってからは、ことりとも自然と話せる様になっていた。  
「それより・・・・・音夢。その・・・・み、見てたんですか」  
 ことりが恥ずかしそうに尋ねてきた。  
 直ぐに歌を歌っていた事だと気付いて、音夢は笑って頷いた。  
「勿論♪ことり、歌ってる姿がすっごい綺麗だったなぁ。私惚れ惚れしちゃったよ」  
「そ、そんなー意地悪だなー、恥ずかしいの分かってるくせに」  
 彼女は歌っている姿を見られるのが恥ずかしいらしい。以前、本人が言っていたのを音夢も覚えていた。  
「えぇー、いいじゃない。ことり歌上手なんだしさ、別に恥ずかしがる事なんてないよ」  
「そ、そんな・・・・全然大した事なんてないよ」  
 顔を赤らめながら苦笑することり。  
「あの・・・・ところで、音夢はこれからお帰りですか」  
「あ、うん。帰ろうとしたらさ、声が聞こえてきたもんで、何かなーって思って、ここに」  
「そうだったんですか。じゃあ、よろしかったら一緒に帰りませんか。私も、そろそろ帰ろうと思って  
いた所ですし」  
 
「あ、うん。勿論いいよ」  
 こうしてことりと一緒に帰る事は、あまりなかった。  
 最近はようやく気軽にことりと話せる様になったけれど。  
 要は一緒にいる機会がなかった。クラスも違うので、中々会う事もなかった。  
 だから、こうして一緒に帰るのが新鮮に思えた。  
 それでも、会話は結構気軽に弾んだ。日常の話題。勉強やテレビの話、休みの日の話と。  
歩きながら話題は多々に渡った。ことりも楽しそうに、話は盛り上がる。  
 校門に差し掛かかった頃には、辺りはだいぶ薄暗くなってきていた。  
 丁度、料理の話題に入っていた。以前ことりに教えてもらったクッキーの作り方。  
上手くできたか尋ねられて、音夢は苦い顔をした。  
「焼く所までは上手くできた(音夢の主観的に)んだけど・・・・」  
「ふむふむ」  
「焼き加減がイマイチだったのか・・・・・真っ黒焦げになっちゃって・・・」  
あちゃーっと言って苦笑いを浮かべることり。  
「兄さんに見せたら、何だこれ、碁石?とか言うもんだから・・・私つい・・・」  
「つい・・・何ですか・・」  
「ふふふ・・・聞きたい?」  
「・・・・いえ、遠慮しときます」  
 ちぇっと舌打ちをする音夢。以前と同じくオチの場面で話を反らされてしまう。  
 こうして、ことりと話している時が、最近楽しいと思えてきた。  
 勿論、美春や眞子と話をしている時も楽しいけれど。ことりはことりで、別の楽しさみたいなのを  
感じられた。  
 ずっと話をしていたいけれど、暗闇は更に深まっていく。暗闇が深まる程、別れの時が近づいてくる。  
 音夢は何処か哀愁を感じてしまう。また明日お話すればいい。それだけのはずなのに、やはり  
少し物悲しかった。  
 
 ことりも何だか俯いて見える。  
 それは、音夢の思い込みである。実際には、そう思ってるかどうかなんて分からないけれど、  
音夢にはそんな風に思えてしまった。  
 突き当りまで辿り着いた。この突き当りで、ことりとは道が違うのでお別れ。  
「じゃあ、またねことり」  
 手を振って、笑顔でそう言う音夢。  
 ことりもはっと気付いて、すぐさま笑顔で返してきた。  
 音夢はことりに背中を向けて歩いて行こうとした。  
「・・・・音夢!!」  
 突然、ことりが音夢の名前を呼んだ。  
「ど、どうしたの」  
 音夢は大きな声で自分の名前を呼ばれて、驚いて振り向いた。  
「あ、いや・・・・」  
 ことりは少し戸惑った様な表情をしたが、直ぐに笑顔に戻って音夢に提案してきた。  
「音夢。よければ、これからちょっと寄り道しませんか」  
 
 
 何故音夢を呼び止めたのか、ことり自身でもよく分からなかった。気が付いたら、声を掛けていた。  
 何だか、音夢の背中がとても寂しそうに見えてならなかったから。  
 寄り道もするつもりはなかったのだけれど、もう少し音夢と話をしていたい。そう思って誘った。  
 そういえば、こうして音夢と何処か一緒に行くというのも、あまりない事だった。  
 音夢は何処か私を避けている。初めての頃、ことりはそう思えて、だから中々誘いたくても  
誘いづらかった。最近はだいぶそういう感じはなくなってきたけど。  
 無理をして付き合っているんじゃないかと、たまに不安になる。  
 桜公園を歩いていた。最初、何処に行こうか迷ったけど、ここに来た時にあの大きな桜の木の  
場所へ行こうと思い、こうして歩いていた。  
 音夢が何処に行くのか度々尋ねてきたが、ことりは笑顔で内緒、と言うだけだった。  
 ことりが先頭で、その後ろを音夢がてくてく付いてくる格好だった。  
 その音夢の歩く仕草が可愛くて、つい笑ってしまった。  
「な、何がオカシイのよ、ことり」  
「ふふ、ヒミツです♪」  
「むー・・・・」  
 音夢が頬を膨らませて怒っていた。  
 そうこうしている内に。あの桜の木に到着。相変わらず大きな桜の木であった。  
「ことりも、この木の事知ってたんだ」  
「うん、小さい頃から・・・・じゃあ、音夢も知ってたの?」  
「ええ。子供の頃は、よくここで遊んでいたなぁ。兄さんと、美春と一緒に」  
 音夢が、何処か遠い所を眺めながら語っていた。  
「そうなんだ。私も、この桜の木の下でよく歌っていたんです・・・・」  
 木の幹に近づいて、手を触れた。  
 ここだけは、何も変わらない。昔と同じ。まるで、ここだけ時が流れていないみたい。  
 じゃあ、何が変わったのか考えてみたけど、何も思いつかなかった。  
 
「音夢と」  
「ん?」  
「音夢と、もっと小さな頃から友達になっていたらなぁ、って。そしたら、私たちももっと仲の良い  
友達になれたかもしれないのにね」  
 風が吹いた。桜がひらひらと散ってゆく。  
 何を物語っているというのだろうか。時間は戻らないと。それとも、友達になんかなれっこないって。  
 考えたら、何だか切なくなってしまった。  
「そうね」  
 音夢が呟く。えっ、とことりは驚いた表情をして振り向いた。  
 心の中で思っていた事を、肯定されてしまったのかと思って、驚いた。実際は違った。  
「私も、もっと前からことりをと友達になっていればよかったな、って思うよ。でも」  
 音夢は一際大きな笑顔を作ってことりに見せた。  
「でも、足りない分の想い出は、これから作っていけばいいんだと思うよ。楽しい想い出、  
嬉しい想い出、時には悲しい想い出、辛い想い出も、まとめて全部♪」  
「音夢・・・・・」  
 ふと、ことりの顔を見て音夢は我に返り、あははと苦笑した。  
「さ、さぁ帰りましょことり。もうだいぶ暗くなってきたしね」  
 音夢はことりに近づいて手を取って引いていこうとする。ことりは突然の事で、バランスを崩してしまう。  
「わわ!!ね、音夢、ちょっと待っt」  
「えっ・・・きゃあ!!」  
 そのまま木の下に二人とも倒れこんでしまった。  
「いたた・・・・ゴ、ゴメンねことり・・・大丈夫?」  
「へ、平気だよー・・・」  
 本当は少し痛かったけど。ことりは顔を起こしたら、すぐ目の前に音夢の顔が間近にあった。  
 瞬間、ことりは音夢の顔を呆然と見つめていた。  
 
 端整の取れた顔立ち、つまりは美人だった。  
 ことりも周りからは美人だの何だのと言われていたが、音夢の方がずっと可愛いと思えた。  
 何で、こんな事を思うのか。もしかすると、一瞬で音夢の事を見惚れてしまったのだろうか。  
 自分の事なのに、ことりは自分の気持ちがよく分からなかった。  
「あ、あの・・・・・・ことりさん?」  
 音夢が不思議な顔でことりを見てくる。  
 ことりが音夢の上に覆いかぶさっている状態で、ことりがどかないと音夢も起き上がれなかった。  
 分かっている。分かっているつもりなのに、何故だか離したくない。  
 抱きしめてしまいたくなるくらいの衝撃が体の中を駆け抜ける。音夢の愛しい姿を見て、自分を  
抑えきれる事ができそうになかった。  
 気付いたときには、音夢に口付けをしていた。  
 あまりに突然で、それがあまりに自然だったので、何の抵抗もなくすんなりとできた。  
 音夢は、すぐさま我に返り、顔を逸らそうとする。  
 だけど、それだけであまり強い抵抗ではなかった。  
 だからことりも音夢を離さなかった。  
「・・・・ん・・・はむ・・・・・ん・・・・こ、ことり」  
 しばらくの間、静かな時が流れていた。二人の吐息だけが、いやによく聞こえる。  
 何も考えられない。今何をしているのかも、よく分からない。  
 だけど、体は熱い。何でだろうとことりは考えて、興奮しているから、熱いんだと思った。  
 まるで、自分のとめどなき興奮を音夢に全てぶつけるかの様に、激しく口付けを交わす。  
 舌を絡ませては、味わって、握り合っている手に力を入れて、時には音夢の声が聞きたいからと、  
口元に僅かな隙間を開けて喘ぎ声を出させる。  
「ふぁ・・・・ん・・・・んん・・・・」  
 そんな行為をしばし堪能して、名残をしそうに口を離す。  
 音夢はほんのりと頬が火照っていて、眼が甘く泳いでいた。  
 
「・・・・・あ・・・・・その、私・・・・ご、ご免なさい!!私・・・・何を・・・・」  
 ことりは、まるで何かに取り付かれていたかの様に正気に戻ると、すぐに音夢に向かって謝った。  
 決して、音夢が嫌いなわけじゃない。嫌がる事をしようと思ってたわけじゃない。  
 ただ、彼女にはもっと笑顔でいて欲しくて、もっと幸せでいて欲しくて。  
 そんな事を思っていたら。頭の中がごっちゃになってしまっていた。  
「ことり・・・・」  
「え、は、はい!?」  
 何故だか、声が裏返ってしまっている。音夢は優しい眼でくすくすと笑う。  
「寂しかったんだね、ことりも」  
「えっ・・・・?」  
「眼が、何だかそんな感じに見えて」  
 音夢に寂しかったと言われて、ことりは驚いた。  
 この体の熱さは、寂しさだったのだろうか。ただ熱くて。  
 そして奥底に残るのは、やはり寂しさ何だろうか。  
 誰かに気付いて欲しくて歌っているけど、誰にも気付いてもらえない。喜びの歌にも、楽しい歌にも、  
嬉しい歌にも、最後に残るのは、やはり寂しさ。  
 誰にも気付かないから歌に乗せる。それでも、誰かに気付いて欲しくて歌っていた。  
 音夢が、今日気付いてくれた。あれは偶然だったのだろうか。偶然あそこを通っただけで。  
 でも、気付いてくれた。誰にも気付かなかった歌に気付いてくれた。  
 それは同じ寂しさを抱いていたからなのだろうか。  
「私、ことりと・・・キスしたいな」  
 音夢が顔を赤らめて微笑んだ。  
 ことりももう押えきれずに、音夢を押し倒した。優しく、そっと。  
 口付けを交わしながら、音夢の服に手を入れて胸を触りだす。  
「きゃっ・・・・あん・・・・・」  
 音夢が可愛らしい声を上げる。ことりは嬉しくなって微笑んだ。  
 
「こ、ことりって・・・・意外にも大胆だったのね・・・・」  
「ふふ、さーてっ♪」  
「も、もう、ことりのエッチ」  
 音夢も笑っていた。ただ、今はこの笑顔が好きだった。  
 再び口付けを交わしながら、体をぎゅっと抱きしめる。  
 思っていたよりも、ずっと小さな音夢の体。でも、柔らかくて、いい匂いがして、暖かい。  
 鼓動が、普段より早く聞こえた。  
「ことり、そこに立って」  
「えっ?」  
「いいから、早く」  
「あ、はい」  
 ことりは音夢に言われるがまま、木の幹を背に立たされた。  
 音夢はそれに満足するとことりの前でしゃがんでスカートを履いたまま、ことりの下着を  
脱がし始め様とする。  
「ね、音夢!?」  
「いいから、任せてことり♪」  
 恥ずかしがることりをよそに、下着を脱がせる。ことりの大切な部分が露となる。  
 音夢は、顔をスカートの中に潜り込ませると、その部分を舌で舐め始めた。  
「ひゃう!!んあ・・・・・ね、音夢」  
 ことりは顔を真っ赤にさせた。とても恥ずかしかった。  
 音夢は舌の動きを止めようとさせずに、どんどん中に入れて、舐めていく。  
 そのあまりの刺激に、喘ぎでそうな声を必死に抑えた。  
 気持ちよさに、背筋がぞくぞくしてきて、足が震えたきた。  
「ふぁ・・・・・ん・・・・ん・・・・あ・・・・・や、やだ・・・・・音夢」  
 音夢の頭を押さえて、ただなすがされるままにすることり。  
「あ・・・・んあ・・・・んん・・・・だめぇ・・・・あぅぅ!ああああ!!  
 ことりは我慢しきれずに、イってしまう。あまりの心地よさに、その場に足を折って座り込んでしまった。  
   
「はぁ・・・・はぁ・・・・」  
「ふふ、ことりかわいーなー・・・・♪」  
 音夢が笑顔で言ってくる。その笑顔が、今のことりの眼には可愛いらしい  
小悪魔に見えてならなかった。  
「・・・・ね、音夢だって・・・・だいぶエッチじゃないですか」  
「ふふ・・・さーて、ね♪」  
 すると、今度は音夢がことりを押し倒して、覆いかぶさってきた。  
 ことりは起き上がろうとするものの、先ほどイッたばかりで足腰に力が入らなかった。  
 だけど、これでもいいかな、と思った。  
「・・・・ことり・・・・大好きだよ」  
「・・・・私もですよ、音夢・・・」  
 お互いに体を寄せ合って、抱き始める。  
 二人の大事な場所を合わせて、腰を前後に動かし始める。  
 途方もない快感に見舞われて、二人は更に快楽を得る為に腰を振る。  
「あん!!ああん!!!んあ!!」  
 桜がひらひらと舞っている。大きな声を出してしまっているけど、もう周りの事なんて考えられない。  
 ただ、音夢を感じたかった。  
「こ、ことり、ああ!!」  
「あん!!ね、音夢・・・・・んあああ!!!」  
 音夢の名前を叫んだ時点で、頭が真っ白になった。  
 
 
 
「・・・・あぅぅ・・・・ことり激しすぎ・・・・」  
 音夢が後ろからじと眼で見てくるが、ことりは苦笑しながら先を歩いているだけだった。  
 というより、腰に上手く力が入らないのはことりも同じだったりする。  
「あ、あはは・・・・だから、ゴメンナサイですってばぁ〜」  
 ことりは両手を合わせて頭を下げる。  
 音夢はしばらくジロリと見ていたが、ようやく顔を崩して笑みを浮かべた。  
「ま、しょうがないなぁー・・・・許してあげようっかな」  
 街灯がもうついている。だいぶ時間が過ぎてしまったのだろうか。  
 住宅街を歩いていると、辺りからいい匂いが漂ってきている。もうお夕飯時だった。  
 まだ体は火照っているけど、もう熱は冷めた。冷めて、なんだか寒い。  
 別れは、いつだって寒いものだった。でも、悲しさはもうなかったから、大丈夫だと思えた。  
 突き当りまできて、別れの挨拶を言おうと思っていたのに。  
「ことり、これからうちでお夕飯食べて行かない?って言っても店屋物しかないけどね」  
 苦笑いを浮かべる音夢をきょとんとした顔で見ていたことり。やがて笑みを溢した。  
「やっと熱がひいたっていうのに、また熱くさせてどうするんですか」  
「あら、何だったらお泊りもしていく?その方がずっと暖かいしね♪」  
「・・・・ふふ、じゃあ今日は、私が腕によりをかけてご飯作ってあげますよ♪」  
「本当!?兄さんきっと喜ぶよー」  
 二人はそう言って、ぷっと笑い出してしまった。  
 たまには、こんな暖かな夜もいいかなと思えた  
 
 
 

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