「兄さん…。だめ……もう……」  
電気アンマされている音夢が甘い声で悶えている。息は荒く、上下する胸の隆起。  
柔らかいブラウンの髪には可愛いリボンが結わえられてるが、純一が足の踏み込みを強く  
するたびに、それは切なげに揺れる。  
 
「もう…? どうしたの? やめて欲しい?」  
「ち、違う…! た、耐えられないの…切なくて…」  
ストッキングの様に長いオーバーニーソックスに包まれた太股がプルプルと震えている。  
制服は着ているが、スカートは穿いていない。さっき、ドアを開けた時、音夢はまだ  
着替え中で、制服の上を着てニーソックスを穿いたところだった。薄いピンク色の  
ショーツ姿に欲情を覚えた純一が、登校前の朝だという状況を忘れ、音夢をベッドに  
押し倒すのには時間は掛からなかった。そして、そのまま音夢の足を割り、電気アンマを  
始めたのだ。既に音夢は10分間、されっぱなしである。  
 
「はぁ…はぁ……。に、兄さん……学校に遅れちゃうよ……」  
「大丈夫、すぐにイかせてあげるから」  
「そう言いながら、焦らしてるくせに……意地悪……うっ…くっ…!」  
純一からすればそれは仕方が無い事だった。意地悪するのは音夢が可愛く悶えるから。  
そもそも電気アンマしだしたのも音夢が下着姿を見せつけるから…。  
悪いのはいつも音夢なのだ。あの時だって……。  
 
 
一ヶ月前……。  
 
 
その日は初音島が百年に一度という異常気象に見舞われ、猛烈な寒波が島の上空を覆い、  
大雪を降らせていた。年中春のような気候の初音島住民にとっては、雪に対する警戒が  
甘く、人々はプチパニック状態で仕事や授業を放棄し、家路に急いでいた。  
純一と音夢の義兄妹も例外ではなかった。  
 
「兄さん、早く、早く! 寒いです〜!!」  
「ちょ、ちょっと待って……わっ!!」  
「だ、大丈夫ですか? きゃっ!!」  
雪道に純一が滑って転ぶと、助けようとした音夢まで尻餅をついた。  
純一も音夢も雪塗れに。本当に急に押し寄せた寒波で、二人とも出かけにはコートを  
羽織っていなかった。  
「さっぶぅ〜〜!!」  
純一は震える体をさすりながら、まだ起き上がれない音夢に手を貸そうとして動きが  
止まった。  
「あいたた、お尻打っちゃった……兄さん、どうしたんですか?」  
純一の視線に気がつき、自分の姿を確認する。そして下の方を見て恥ずかしい現状に  
気がついた。  
「あっ……!」  
慌てて内股になり、捲くれ上がったスカートを押さえる。この寒さの中だが、恥ずか  
しさで顔は真っ赤だ。純一は助けようとした手を所在無げにぶらぶらさせながらそっぽを  
向く……が、こちらも恥ずかしそうに頬を染めている。音夢はゆっくりと純一の手を掴んで  
立ち上がった。暫く物も言わず、雪を落としていたが……。  
 
 
「……えっち……」  
 
 
聞こえるか聞こえないか、ギリギリの小さな声。しかし、純一にはこれ以上なくはっきりと  
聞こえた。つん、と横を向く音夢。  
「わ・わ・わ…わざとじゃないだろ! ね・ね・ね・ね・むが…!」  
両手を大きく振って、音夢の『誤解』を解こうとする純一。そのあまりの動揺ぶりに一瞬  
きょとんとした音夢だが、すぐに噴出してしまった。「アハハ!」と軽やかな笑い声が  
雪の街に響き渡る。  
「嘘ですよ、兄さん。……早く帰りましょ。ここにいると凍えちゃいます!」  
そう言いながら楽しそうに雪の中を駆け出す音夢。また転ぶぞ?、と思いながら純一も  
追いかけた。雪は段々吹雪に変わってきている。このままじゃ雪に埋もれて凍死しかねない。  
 
10分後、家に着いたときは二人ともさっきのはしゃぎ様が嘘の様にガチガチに凍えていた。  
雪はあっという間に吹雪に変わり、全身雪塗れ状態だ。  
「風呂〜〜、風呂〜〜!!」  
靴を脱ぐのももどかしく、パネルを操作して湯を張る。バスタオルを取ってきて音夢の  
体に張り付いた雪を落としてやり、自分も上着を脱ぐ。  
「音夢、先に風呂に入れ。唇が真っ青だぞ」  
「兄さんこそ、先にどうぞ。手がすっごく冷たいよ」  
家中の暖房器具を操作するが、初音島では滅多に使わないので、起動が遅い。  
「いいから入れ。このままじゃ二人とも風邪引くぞ」  
兄貴風を吹かす純一だが、音夢の答はちょっと驚くものだった。  
 
「だったら、一緒に入りましょう。暖房効くまで時間が掛かりそうだよ」  
音夢がトレードマークのチョーカーを外しながら言う。  
「一緒にってお前……」  
「大丈夫、ちゃんとタオル巻きます。勿論、兄さんもだよ」  
純一の動揺を見透かすように悪戯っぽく舌を出す音夢。こいつ、と思いつつも、我に返って  
みると確かに暖房はまだ効いていない。ここで四の五の譲り合ってるよりさっさと入った方が  
賢明に思えた。  
「し、しょうがないか……」  
仕方なさそうにそっぽを向きながら音夢の手を取り風呂場に移動する純一。音夢はクスクスと  
笑っていた。どうして手をつなぐ必要があるのですか? と、心の中で問いかける。  
 
「見ちゃダメですよ、兄さん」  
楽しげにいちいちチェックする音夢。反対方向を見て服を脱いでいる純一にとっては言い  
がかりもいい所だが、何故か悪い気はしない。  
(恋人同士って、こういう楽しい気分で風呂に入るのかな……)  
と、そんな思いが純一の脳裏をかすめたが、自分ですぐにそれを打ち消した。  
自分と音夢は恋人ではない。義理の兄妹なのだ。何故か必要以上にそれを強く感じていた。  
 
「はぁ〜〜〜……気持ちいい〜〜!!」  
「生き返るなぁ……」  
音夢は胸まで、純一は腰にタオルを巻いた状態で風呂に入った二人。凍えていた体が  
あっという間に温まり、固まっていた表情が見る見るうちに生気を取り戻す。  
なりふり構わず、さっさと風呂に入って正解だった……とこの時は思っていた。  
 
「兄さん……」  
音夢が上目遣いで瞳を潤ませる。その表情に一瞬ドキッとなる純一。  
「どうした? お湯、熱すぎたか?」  
「ううん……そうじゃなくて。お風呂……狭いね」  
「あ、ああ……そうだな」  
さっきまでは凍えていたので気づかなかったが、人心地つくと、今の状況が意識できる  
ようになった。もともと一人用のバスで、二人は入れない事はないが、ゆったりと入る  
わけにはいかない。純一と音夢の体もぴっとりと引っついている。そして、二人とも  
バスタオルを巻いているとは言え裸なのだ……。  
 
「お、俺……出るよ。もう温まったし」  
純一が立ち上がろうとするが、音夢の手がそれを止めた。  
「もっと体の芯まで温まらなきゃ……風邪引きますよ」  
恥ずかしそうに微笑む音夢。その表情にドギマギしながら再び純一は腰を下ろす。  
すると音夢は純一の手を握った。しっかりと、まるで逃がさないかのように。  
「ちゃんと温まるまで離しませんからね、兄さん」  
上気した顔で笑顔を向ける音夢。  
 
更に1分が経った。純一にはその時間が1時間にも感じられた。音夢はどう思っている  
のだろう。純一の手をしっかりと握りながら、一度も純一の方を見ない。  
 
そして。  
 
「キス……して」  
 
聞き違いかと思った。「なに?」と聞こうとして音夢を見ると、音夢は潤んだ瞳で  
純一を見つめていた。情熱的、とは少し違う、音夢らしく、落ち着いた、それでいて  
しっかりと純一を捉えて離さない視線。その魅惑の表情に釘付けになる純一。  
 
「ダメ……ですか?」  
純一がアクションを起こさないので、音夢が先に口を開いた。詰め寄るでもなく、  
悲しむでもなく、自分を保った言葉……それだけに、純一には胸に突き刺さる。  
自分の不甲斐なさを思い知らされるのだ。  
逃げていてはダメだ。今日だけではない。これまでにして来たように、音夢が自分に  
向けてくれる好意……これに対していつまでも曖昧な態度でいるのは、彼女に酷であった。  
ましてやこの状況である。その言葉を発するのにどのぐらい勇気が必要だった事だろう。  
 
「ダメなわけ、あるものか……」  
音夢の肩を優しく抱く。そして、瞳を閉じる音夢の唇にそっと口づけした。  
 
 
10分後。  
 
風呂から上がって、二人は音夢の部屋に一緒にいた。音夢は湯上りのバスタオルを  
巻いたままの格好、純一もバスローブを羽織っただけである。お互い、自分の部屋に  
行けば良いのに、一緒にいる。服を着ればいいのに、裸のまま。暖房は漸く効力を  
発揮して裸のままでも大丈夫ではあったのだが。  
 
バスルームでは音夢にキスをして、抱きしめた。柔らかな胸を揉みしだき、腰に  
手を回して滑らかなお尻を撫でた。音夢は時折声を喘がせながら、純一のされるが  
ままになっていた。音夢の健気さと情熱をを感じ、やがて純一の雄の器官も屹立して  
ゆく。音夢はそれをいとおしげに撫でてくれたが、そこで、純一は手を止めさせた。  
「部屋に行こう」  
このままでは最後まで突っ走ってしまう。自分が暴走して止められなくなる前に、  
考える時間が欲しかった。音夢は暫く純一を見つめていたが、コクリと頷いた。  
 
 
そして、再び音夢の部屋での事。  
 
(こいつ、こんなに綺麗だったっけ?)  
純一は初めて合う女の子の様に音夢を見つめていた。  
音夢はベッドに腰掛け、椅子に座っている純一を見つめている。いつもと少し違う、  
優しさ以上の暖かい表情。純一に受け入れられた喜びに溢れ、ほんの少しの不満を  
アクセントに輝かんばかりの美しさだ。  
 
 
「……電気アンマ……」  
 
 
へっ……? と言う表情で純一は音夢を見る。今言ったのは音夢なのか? それも  
「電気アンマ」と。確かに音夢の声だったが……?  
 
 
「電気アンマなら、してくれますか……兄さん?」  
 
 
頬を染めて恥ずかしそうに、でも、はっきりと純一を見て言う。  
「私達、義理とは言え兄妹だから……。だから、その……」  
そこで顔を真っ赤にして言葉を濁すが、思い切ったように再び口にした。  
「さ、最後までするのは、まだ躊躇いがあるかもって……わ、私はいつでもOKなん  
だけど……って! な、なにを言ってるんだろう……!?」  
オロオロあたふたと自分の言葉に目を白黒させながら何かを伝えようとする音夢。  
純一はポカンと見ていたが、音夢がうろたえる事で自分の気持ちが落ち着いてくる  
ような気がした。  
 
「だ、だからですね……その、まずは、エッチな悪戯から始めればどうかな?   
……なんて思ったんだけど……わ、私ってバカ?」  
恥ずかしさのあまり、枕で顔を隠してしまう。  
純一はたまらなく音夢がいとおしくなり、音夢の肩を優しく抱く。  
 
「やっぱり馬鹿だよね、私……?」  
「どうして」  
「だって……言うに事欠いて、男の人に……」  
「『電気アンマして欲しい』って?」  
「い、言わないで下さい!」  
音夢は、からかう純一の視線を避けるように枕で顔を隠し、下からちらりと覗く。  
 
「電気アンマ、された事あるの?」  
「う……うん。女の子同士で。時々、流行ったりするの……」  
「誰に? された時、どんな感じだった?」  
「よくされたのは眞子ちゃんとか……な、なんかくすぐったくて、ちょっと痛い時も  
あるんだけど、されているうちに気持ちよくなることもあって……って、恥ずかしい!  
聞きすぎだよ、兄さん〜!」  
自分で告白しながら恥ずかしがる音夢。純一がわざと詳細を聞いてるのが分かった  
ようで、ちょっと拗ねた表情になる。  
 
「で、でも……男の人にされるのは初めてなの。だからちょっと怖いけど……。  
兄さんは誰かにしたことがあるの?」  
「え? あ、あるもんか、そんなの」  
「なんか今、少し返事が遅かった」  
枕から顔を上げ、じぃ〜〜〜、っと探るような視線を純一に向ける。  
「き、気のせいだよ。……うん」  
「……まあ、電気アンマは女の子なら誰でも経験する悪戯だし、別の子にしたって  
浮気とかじゃないけど……」  
「そ、そうなの? それはよかった……。……!!」  
ほっと一息つく純一をジト目で見つめる音夢。その視線は明らかに追求する視線だ。  
 
「私以外に電気アンマしたい子がいるんですか?」  
「い、いや……そんな……」  
ぱっと、白河ことりの顔が浮かんでしまったが、すぐに打ち消す。悟られると大変な  
事になりそうな気がしたからだ。  
 
「……もしかして、眞子ちゃん?」  
音夢の探りの入れ方が露骨になっている。冷や汗をたらしながら、すぐに首を振った。  
「じゃあ、萌先輩?」  
同じく首を振る。  
「美春?」  
「あのなぁ……誰彼なしにあてずっぽうを並べても……」  
「さくらちゃん」  
「あいつが先にボディプレスを掛けてくるからだよ! 自衛のために仕方なく……  
あっ!!」  
思わず口を押さえたがもう遅い。音夢のプレッシャーに負けて白状してしまった。  
音夢の顔には勝ち誇った表情と怒りを滲ませた表情がミックスされて出てきている。  
 
「……ま、まあいいですけど。…お、お子ちゃまに相手に嫉妬したりなんか、み、  
み、みっともないですものね……」  
拳が震えてる。それに、ゆらり……と空気が歪んだ気がしたのは気のせいか?  
「えっと……怒ってる……?」  
「怒ってなんかいません!!!」  
速攻で物凄い迫力のカウンターが返ってきて、純一は逃げ出しそうになった。  
ちょっと聞いただけなのに……。  
 
「……で、何分したんですか?」  
「何分って?」  
聞き返した純一をジロッと音夢が睨む。純一は泣きたくなってきた。  
「……だいたい、3分です……」  
小さくなって答える純一に音夢が溜息をつく。  
「そうしたら、私には10分はしてくださいね。予定の2倍ですけど、最後まで  
ちゃんとやってもらいますから。いいですね!?」  
何が『予定』だったのだろう?、と思いながらも、唯々諾々と了解する純一であった。  
 
「は……恥ずかしい……」  
純一に両足を持たれたまま、開かれた股間を両手で隠す音夢。バスタオル一枚、  
と言う事は下は裸……つまり純一の位置からは丸見えなのだ。  
「ぱんつ、穿く?」  
純一が聞くと、音夢は目を瞑って首を振った。  
「今日は兄さんを肌で感じたいから……」  
お互いに風呂上りの綺麗な状態なので、生の電気アンマをされるのには抵抗は  
なかった(むしろ初めてはそうして欲しいと頼んだのは音夢の方だった)が、  
この恥ずかしさだけは耐え切れない。  
 
「じゃあ、俺が目を瞑るよ」  
「それもだめ……」  
「どうして?」  
「だって……初めて兄さんにされるんだもん。一番いいやり方でしっかりと  
されたいよ……」  
どういう状態が電気アンマをするのに一番いいやり方なのかは知らないが、  
音夢の気持ちはなんとなく分かる気もする。  
 
「そうだな……そしたら……」  
純一はゆっくりと足を割りいれる。内股を足の裏で触られ、ビクリ!と音夢の体が  
跳ねる。純一の足は音夢が股間を守っている手の所で止まった。  
「この状態で手を抜いて。そうすれば俺からは見えないよ」  
ニッコリと安心させるように音夢に微笑みかける。  
「あ、ありがとう…」  
嬉しそうに礼を言う音夢。純一が自分に気を使ってくれた事がたまらなく嬉しい  
のだ。もうためらわず手を股間から外すと、純一の土踏まずが音夢の大事なところに  
宛がわれた。  
「あ……うっ!」  
思わず仰け反る音夢に純一が優しく声を掛ける。  
「大丈夫? 痛くないか?」  
「だ、大丈夫……気にしないで、思いっきりして。痛くされてもいいの……」  
 
私ってMなのかな? と音夢は思う。何故か純一には痛くされてみたかった。  
(この状態で蹴られたりしたら……どうなるんだろう……?)  
そう考えると背筋がゾクゾクしてくる。寒気ではなく期待と興奮でだ。  
不意に、ちょっと前にソフトボールの授業でキャッチャーをしていて、眞子の速球を  
股間に受けた時の事を思い出した。あの時は痛いだけだったはずなのに、何回も  
思い出す事がある…。眞子の手当てを受けながら股間を押さえて苦しむ気持ちを……。  
 
そう言えば、あれ以来、眞子の態度も少し変わったような気がする。  
わざと音夢にキャッチャーをやらせてワンバンドボールを投げたり、電気アンマを  
流行らせて音夢を狙ったりしてきた。その時は、偶然かと思っていたが、もしかしたら  
そうでないのかもしれない……。  
 
「どうしたの?」  
純一の声を聞いてハッと我に返る音夢。眞子のサディスティックな微笑が脳裏から  
消え、代わりに純一の優しい笑顔が目の前に現れる。  
「う、ううん……なんでもない。兄さんにされると思うとなんか頭の中が一杯に  
なってきて……」  
「それでいいさ。あせらなくても、ね。ゆっくりと気持ちよくさせてあげる。俺の  
出来る範囲でだけど」  
純一は笑顔を見せ、必死で集中しようとする音夢を優しくなだめる。  
「うん……初めてを兄さんにしてもらって本当によかった」  
音夢は心の底からそう思った。その思いが音夢の体にも伝わり、体が受け入れる準備を  
始めていた。音夢の大事な所は汗よりも濃い湿り気を帯び、痛覚を和らげ、性感を  
高めていく。  
 
「準備OKだね。それじゃあ、始めるよ……」  
純一もゆっくりとしたリズムで音夢の股間に宛がった土踏まずを振動させる。ぶるぶる……  
ぶるぶるぶる……と、一定のリズムでなく、不規則な振動は音夢の性感を波状的に  
刺激した。  
 
「はうん……! ああ……!!」  
白いおとがいを仰け反らせ、声を上げる音夢。もともと感度は悪いほうではなく、  
しかも愛する人にされているのだ。高まりは一気にヒートアップし、最初の震えが、  
太股から爪先に走り抜けた。純一に引っ張られた足を更に爪先までピンと伸ばして  
押し寄せる波に耐えている。  
 
「イきたかったら、イってもいいぞ。あんまり我慢すると辛いだろう?」  
意地悪な電気アンマの方法として、わざとイかさないように力を抜いて長時間いたぶる  
事も出来たが、純一はそうはせず、音夢が気持ち良くイけるように、リズムを一定に  
して責めていった。  
「うん……でも……」  
音夢としては気持ちよくされるのは嬉しいが、だからこそ逆にすぐにはイきたくは  
なかった。眞子にされて泣き叫んだあの地獄の電気アンマ。生かさず殺さず、生殺し  
状態を一時間近くされたあの体験を音夢は夢の中で何度も思い出した事がある。  
それを今一度、進んで思い出しながら、純一の愛を長くじっくりと受け入れる。  
音夢はこの倒錯的な電気アンマのされ方を楽しんでいた。  
 
しかし、そんな邪な楽しみ方も純一の優しさの前には長くは続かなかった。  
邪悪な喜びは愛情の波に押し流され、音夢の中に純一の思いが溢れかえった。  
「にいさん……あああ……ううう……」  
シーツを掴んで賢明に耐える音夢。激しい動きでバスタオルは体から滑り落ち、  
大きくはないが、形のいい乳房が揺れているのが見える。既に全身は汗びっしょりだ。  
「音夢……これで……!!」  
最後の止めとばかり、純一は十分に濡れた音夢の秘所に踵を宛がい、力一杯グリグリと  
振動と捻りの力を与えた。  
 
「にいさん……! にぃさぁん……!!」  
ここまでになかった力強い責めに音夢はあっという間に昇りつめ、やがて、失墜した。  
 
 
そして、現在……。  
 
 
「音夢! 急げ! 遅刻するぞ!!」  
「に、兄さん、待って! はぁ……! はぁ……! だから朝はダメだって言ったの  
にぃ〜!!」  
「仕方ないだろ!! お前がスカートを穿き忘れるから…」  
「お、大きな声で言わないでよ! それに穿き忘れたんじゃないです!!」  
自分の方がよほど大きい声を出しているのだけど?、と純一は音夢の顔を見て微笑む。  
「何笑ってるんですか?」  
息を弾ませながら音夢が不振そうに聞く。  
「別に。ただ……」  
「ただ……?」  
「今日は早く帰って続きをしたいなぁ、なんてさ」  
「に、兄さんのエッチ! ……べ、別にいいですけど」  
頬を染めながら承諾する音夢の頬にキスをすると、再び駆け出す純一。突然の奇襲に  
一瞬、呆然とする音夢。  
 
「さ、急がないと本当に遅刻だぞ!」  
「わ、わかってます! ……もう」  
風がそよぎ、散り初めた桜が二人に吹雪となって降りそそぐ、そんな季節の事だった。  
 
(PART−1:おわり)  
 

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