「お買い物はこれでよしっ、と。」
買い物袋の中には、ミンチ、カボチャ、お豆、そして何よりバナナ。
今日は、朝倉先輩のため、美春がんばります!
「えっと、まずお夕飯作って、二人でお話しながら食べて、そして、その後は‥‥。」
って違う違う!
これじゃ、朝倉先輩みたいです!恥ずかしい…。
―それにしても、いつ以来だろう…。朝倉先輩に料理を作るのは…。
「朝倉先輩、喜んでくれるかな…」
料理の味には自信はあるけど…。
きっと、いえ、絶対に先輩は「あの子」が作った料理を食べている。やっぱり好きな人に作ってもらった物が、一番良いに決まってるんだから、自分では到底かなわない…。
そんなことを考えながら歩いていたら、だんだん朝倉先輩のお家に近づいてきました。
先輩は美春のことをどう思っているのだろうか。姿は全く同じ、でも、「あの子」とは違う、「天枷美春」を…。
私を見ている先輩の目には、「あの子」の幻影が見えているのかもしれない。
「天枷美春」は写っていないかもしれない。
でも、例えそうでも、いつか先輩が「あの子」ではなく、美春のことを見てくれるまで、美春は先輩にアタックを続けていこう。まだまだ先は長いから。だから今は…
―キンコーン、キンコンキンコン、キコキコキコキコキーン。キコーン。
「朝倉せんぱーい!美春ただいま到着でーす!お邪魔しまーす。」
今は、心を込めたお料理を。