「兄さんの……ばか……」
「音夢ちゃん……」
半分泣きそうに目を潤ませながら、私はそんな言葉をつぶやいた。
朝の登校時間……私とさくらは今、ちょうど学校の目の前に止まるバスに乗っていた。
お客のほとんどが風見学園の生徒で埋め尽くされていて、ほとんど学生専用といえる車内。
その人でごったがえしている車内の一番後ろ……あまり人の目に触れにくい場所に、私達は寄り添うように立っていた。
いつもなら……この隣には兄さんもいて……三人で仲良く話でもしてるはずなのに……。
毎日三人で学園に登校している、私とさくらと兄さん。
しかし、今日はその場に私達ふたりしか一緒に乗っていなかった。
「でも、ボク音夢ちゃんもひどいと思うにゃあ……いきなりあんなことするんだもん」
「う……そ、そりゃあ私だって悪かったとは思うけど?でも……だからって、あんなふうに怒ることないじゃない……」
今朝もいつものように、いつまでたっても部屋から出てこない兄さんを起こしに行ったんだけど。
どうせ、声をかけるくらいじゃ起きるわけがないと思い……私は、その辺に落ちている辞典を手に取り、その寝ている頭にぶつけてあげた。
いつもの兄さんならそんなことをしても、軽い冗談として受け止めてくれると思ったから。
しかし、たまたま今朝の彼はひどく機嫌が悪かったようで、私のことを大声で怒鳴りつけてきたのだ。
口うるさい女だとか、外づらばかりいいとか……女の子が言われたら、間違いなく傷つくような言葉を。
しかも、そこで私も素直に謝っていればよかったのに、ついムキになって言い返してしまった。
その結果……私たちはそのままケンカ別れをして、別々に登校することになってしまったのだ。
「口うるさいのは……全部兄さんのためなのに……」
「元気出して音夢ちゃん、ボクからもお兄ちゃんに謝ってあげる……そうすればきっと……」
「……うん……ありがとうさくら……」
さくらに慰めらて、私の心の不安が少しだけ軽くなったような気がした。
やっぱりこういう時、幼馴染がいてくれると嬉しい。
兄さんのことも私のこともよく分かってくれている、さくらがいてくれれば……きっと仲直りできるよね。
「………きゃ!」
ようやく少し安心できたと思ったとき、何かにふとももを撫でられたような感じを受けて、私はおもわず悲鳴をあげてしまった。
「うにゃ?……どうしたの?」
「う、うん……いま何かが……」
さわさわと撫で回すような感じだった……まさか痴漢?でも……周りには生徒しかいないし。
その正体を確かめるためにグルッと周りを見回すが、たしかに風見学園の生徒しかいない。
ただ……その光景を見て、私はもう一つ気づいたことがあった。
私達の周囲には女の子は一人もおらず、学ランを着ている男子しかいなかったということを。
「うにゅ……なんか、男の子ばっかりだねぇ」
「うん……どうしてこんなに、私達の周りだ……け……ぇ!」
そう口に出した直後、私の体がゾクゾクほどの悪寒に包まれた。
さきほどとは違い、はっきりと「触られている」とわかる感覚……それが体中を駆け巡っていたのだ。
「え……えぇ!な、なに……」
あらゆる方向から伸びてきている手……制服越しの胸を鷲づかみにし、その大きさを確かめるようにグニグニと揉みこんでくる。
おまけに、似たような手つきでパンティごしのお尻までモミモミと揉まれていた。
「へぇ……ちょっと小ぶりだけど、思ったより感触いいじゃん♪」
「お尻はけっこう大きい……このパンティごしのケツ、たまんねぇよ……」
「女の子のわきの下、一度でいいから触ってみたかったんだよねぇ俺♪」
私の周りのあらゆる方向から、知らない男子の下卑た声がしてきた。
5、6人……いや、それ以上はいると思われる彼らの無数の手が、私の胸やお尻、ふとももやわきの下までをもいやらしい手つきで触っていた。
「な、何して……!あ、あなた達……こんなことして、どうなるかわかっているんで……むぅぅ!」
彼らを止めようと大声を出そうとしたが、無常にもその声は口を押さえられた手のひらにかき消される。
「おっと……少し静かにしててよ……」
「お得意の風紀の乱れがどうとかか?風紀委員さんよぉ……」
「普段は割と冷静な朝倉さんも……こんなことされたらやっぱり慌てるんだね♪」
そんなふざけたことを口にしながら、彼らの痴漢行為は更にエスカレートしていく。
上着のボタンが外されてしまい、その隙間から一人の男子の手が差し込まれブラごとその胸を揉まれる。
「んん!……んぅぅぅぅぅ!」
「あぁ……女の子のおっぱいって、こんな感触なんだ」
「お、俺にも触らせろよ!」
「朝倉さん……ずっと憧れてた朝倉さんのおっぱい……ハァハァ」
一人が触りだすと、他の男の子達も次々と手を伸ばしてくる。
二つしかない私の乳房に、いくつもの手のひらが這い回り、めちゃくちゃに揉みしだかれる。
「むぅぅぅ!うぅぅ!うぅ!」
兄さんにすら触られたことのないおっぱいが、男子達のおもちゃにされていく。
私はすぐ近くにいるさくらに助けを求めようと、顔を横に向ける。
「……うぅぅ……ね、音夢ちゃぁん……」
泣きそうな声を出して、助けをこうような目を向けている女の子がそこにいた。
私と同じようにその小さな体を震わせて、別の男子達の痴漢行為を受けている……さくらが。
「近くで見ると、ちっちゃくてほんとに……か、可愛いなぁ」
「さ、さくらたんのおっぱい……ツルツルのぺったんこだ……」
「お尻も小さくて、すごくいい匂いがする……さささくらたんのお尻の匂い……ハァハァハァ」
その子供のように薄い胸が、目を覆いたくなるほど痛そうにグチャグチャと揉まれ、おまけに彼女のお尻に顔をうずめてハァハァと匂いを嗅いでいる男子までいる。
幼い容姿のさくらに群がる彼らは、まさに「そういう性癖」の人たちのようだった。
「うう、やだ……は、離せぇ……ボクに触っていいのはお兄ちゃんだ……け」
口調は反抗的ではあるが、その声にまるで力はなく体もブルブルと震えている。
こんなに多くの男の子に囲まれていたら、いくら気の強いさくらといえども、怯えることしかできないようだった。
「怖がるさくらたんも……か、かわいいなぁ……」
「も、もう我慢できない!……さくらたんのお尻の穴、舐めていいよね?ね?ね?」
お尻に顔を埋めている男子は、そのままさくらの可愛いらしいパンティを一気に膝下まで下ろしてしまった。
そして、目の前にあらわになった小さなお尻をグッと手で割り開き、小さな窄まりをペロペロと舐めまわしはじめる。
「ひゃあ!ダ、ダメぇ、!ダメだよぉ……うにゃあぁぁ……そんなところ舐めるなぁ……」
「ハァハァ……あぁ、さ、さくらたんのお尻の穴……ピ、ピンク色だぁ……ピチャピチャ」
変質者のように興奮した彼は、嫌がるさくらも無視して、そのお尻の穴にむしゃぶりついていた。
肛門のしわ一本一本に舌を這わせ、まるでおいしい物でも食べるように、ピチャピチャと卑猥な音を立てながら……。
「こ、こんなに可愛いさくらたんでも……毎日きたないウンチを、この小さな穴からひねり出してるんだよね……ぼ、僕すごく興奮するよ……ハァハァハァ」
「うぅ……き、きもちわるいよぉ……音夢ちゃんたすけてぇ……」
お尻の穴を舐められ、激しい嫌悪感を感じているさくらが助けを求めるように片手を伸ばしてくる。
大事な幼馴染が凌辱されているのに、黙って見ていられるわけがない。
けど……そのさくらの小さな手を握り返してあげることは、今の私にはできなかった。
「ま、待っててさくら!今……助けてあげるから!」
「おいおい……あっちを気にしてる場合かぁ?」
「おまえも同じようなことされてんだろうが……こうやってよぉ!」
さくらを助けようとよそ見をしていた私の顔が、すぐ隣の男子の手によって乱暴に引き寄せられる。
そして、すぐ目の前にその人の顔が迫ってきたと思った瞬間。
「う!うぅ!むぅぅぅ!……い!……やぁぁ!」
頭をむりやりに引き寄せられ、ピンク色の唇が簡単にその男の子に奪われていた。
兄さんとするはずだった……初めてのキスが。
「へへへ……この初々しい唇……たまんねぇ」
「んぅぅ……ひや、ひやぁ……ひもひわるいぃ……やめへぇ」
キスをしている最中、私の初めての唇は、その人が口から出した舌によって執拗に嘗め回されていた。
まるで、いまさっきさくらのお尻を舐めていた男子の舌のように下品に、汚らしく。
こんな……こんな最低のキスが……私のファーストキスなんて……。