パソコンを買い換えた音夢から、お下がりを譲ってもらった頼子は、偶然見つけた「ギコネット」なる掲示板サイトにはまっていた。  
ギコネットはものすごく大規模な掲示板サイトで、それ故様々な種の様々な情報が入り乱れている。  
それらは「板」で区別されているのだが、頼子がその中で特に(というより、唯一)入り浸っていたのは、全国の自分と同じ職種「メイド」の人たちが集まる、「メイド板」であった。  
「メイド板」に集まるのは、大抵頼子と同じような個人宅で働いている人たちであったが、中にはもの凄く大きなお屋敷で働いていた、という人や、ご主人様と結婚した、という人たちまでいる。  
頼子はそこで、おいしい料理の作り方とか、家事の上手なこなし方などを教わっていた。  
 
昼間、おおよその家事を終えた頼子は、パソコンのスイッチを入れ、前に美春にインストールしてもらったギコネットビューアを起動させた。見るのはもちろんメイド板である。  
ギコネットビューアは、既得スレッドに多量の新着レスがついていることを頼子に伝える。  
「あ、今日もいっぱい、書きこまれてる…」  
メイド板に数多あるスレッドの中でも、頼子が特に気に入っていたのが、『全世界のメイドの中で自分が一番幸せだと思う香具師の数→』というスレッドであった。  
これはメイド板の中でも人気のスレッドである。頼子はこのスレッドの、ギコネットで言うところの『マターリ』としたふいんき(←何故か変換できない…というのが定石らしい)が好きだった。  
 
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全世界のメイドの中で自分が一番幸せだと思う香具師の数29000+→  
 
1 名前;名無し家のメイド 投稿日:04/09/30 14:21 ID:???  
今のお宅で働けて、今のご主人様に出会えて、本当によかった…。  
という幸福なメイド達がマターリ語り合うスレッドです。  
 
※荒らしは放置。構う暇があったらご主人様の為にお茶でも淹れましょう。  
前スレ  
全世界のメイドの中で自分が一番幸せだと思う香具師の数28000+→  
http://gikonet.com/test/read.cgi/maid/1077978923/  
以下過去スレやスレの細かいローカルルールは>>2〜>>5辺り  
 
113 名前;名無し家のメイド 投稿日:04/10/01 00:02 ID:???  
お茶をお出しするとき、少しカップを温めておいたら  
そのことにご主人様は気づかれると『ありがとう』と言ってくださいました。  
 
家事に最善を尽くすのはメイドの当然の努めであると思い今日までこの職に生きてきましたが  
『ありがとう』と言ってくださったのは今のご主人様が初めてでした。  
今、私は、無性に嬉しい思いでいっぱいです。  
こちらこそありがとうございますご主人様。私はあなたにお仕えできて幸せです。  
 
114 名前;メイドの土産屋@初代スレ1◆uKi4Z6MAiD 投稿日:04/10/01 00:14 ID:???  
>>113さん  
当然と思ってした仕事にお礼を言われるのって、凄く嬉しいですよね。  
多分、私達のような「メイド」という人種じゃなくてもそうだと思うんです。  
>>113さんにはその気持ちをいつまでも大事にして、これからも頑張って欲しいです。  
 
115 名前;名無し家のメイド 投稿日:04/10/01 00:20 ID:???  
みやげやさんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!  
>>75の続きキボンヌ!  
その後、ご主人さんにきちんと気持ちを言えました?  
 
116 名前;メイドの土産屋@初代スレ1◆uKi4Z6MAiD 投稿日:04/10/01 00:31 ID:???  
>>115  
いや何か、いざこの気持ちを言おうとすると…尻込みしちゃうんですよね。  
やっぱり、身分違いじゃないのかなあ(´・ω・`)って…。  
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「くすくす…」  
頼子は微笑し、安堵感に包まれる。  
自分自身が今、朝倉家のメイドとして忙しくも充実した日々を過ごす中、全国に自分と同じようなことを感じ、同じような想いを抱きながら暮らすメイド達がいるということが、とても嬉しかった。  
 
そんな感じでレスを読んでいくと、ふと、気になることが書きこまれていた。  
 
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185 名前;名無し家のメイド 投稿日:04/10/01 12:25 ID:???  
スレ違いとは思うのですか、少し質問しても宜しいでしょうか?  
 
遠方の私の友人もメイドでして、その子とはメールで色々メイド話などをしあってるのですが  
昨夜もメールしあってたところ「明日は私がMFの日だから早めに寝るね」といったんです。  
そのMFとはいったい何なんでしょうか?  
大きめのお屋敷で同僚もたくさんいるところで彼女は働いているのですが  
どうも彼女はその日を心待ちにしてたようでして…  
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「…?」  
頼子にもわからない言葉であった。  
下を見ると、答えはすぐに返されていた。  
 
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186 名前;名無し家のメイド 投稿日:04/10/01 12:31 ID:???  
>>185  
「モーニング・フェラ」の略。  
起き抜けに、所謂「朝立ち」してるご主人様のを…わかるでしょ?w  
 
しかし「心待ちにしてた」なんて、立派にこのスレの趣旨に合致したメイドじゃないか。  
 
187 名前;名無し家のメイド 投稿日:04/10/01 12:34 ID:???  
工工エエェ(´д`)ェエエ工工  
────────────────────────────────  
 
「!!」  
知らなかった。  
しかし、それはそういう結構大きなお屋敷とかの話だろう、と頼子が思っていると、なにやらスレッドはその話で盛り上がりを見せ始めていた。  
 
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188 名前;名無し家のメイド 投稿日:04/10/01 12:40 ID:???  
大きめのお屋敷だけの話かと思いきや、案外そうでもないらしいんですよね>MF  
私の家政婦科の先輩メイドさんは、個人宅仕えでもそれをやってるそうですよ。  
朝の日課として、もうそのお宅では普通の光景とかw  
 
189 名前;名無し家のメイド 投稿日:04/10/01 12:47 ID:???  
私のご主人様はそんなことは申しつけてくれない( ;ω;)  
 
190 名前;名無し家のメイド 投稿日:04/10/01 12:50 ID:???  
》189  
誘惑しる!w  
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頼子は、心の臓が激しく脈打つのを沈められずにいた。  
「知らなかった…メイドという仕事は奥が深いのね…」  
 
話はどんどん進んでいく。  
 
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191 名前;名無し家のメイド 投稿日:04/10/01 13:04 ID:???  
思うのですが、これはメイドとしてごく普通の仕事の一環なのでしょうか?  
いや私、こんなことはしたことも、命じられたこともないもので(;^^)  
私は今のご主人様のことは十分お慕いしておりますが、いざこのようなことを命じられた時、  
全うできる自信はなくて(´・ω・`)  
 
192 名前;名無し家のメイド 投稿日:04/10/01 13:10 ID:???  
何はともあれ言われたことはこなすのがメイドの仕事だべや  
 
193 名前;メイドの土産屋@初代スレ1◆uKi4Z6MAiD 投稿日:04/10/01 13:25 ID:???  
お昼休みをいただけましたのでこんな時間ですがカキコ  
 
>>191さん  
個人的にはメイドの仕事は家事などを通してお仕えしているお宅の円満に奉仕するものだと思ってます。  
で、そのMFも、そのご家庭の円満に必要なものであるとすれば、私もアリだと思ってます。  
でもただ単に我々にそれだけを求められるようなことはあってはならないんです。  
そうなら始めから住み込みの淫売を雇えばいいだけなのですから。  
 
194 名前;名無し家のメイド 投稿日:04/10/01 13:33 ID:???  
で、みやげやさんはしたことがありますか>MF  
 
195 名前;メイドの土産屋@初代スレ1◆uKi4Z6MAiD 投稿日:04/10/01 13:40 ID:???  
>>194  
ノーコメントで(`・ω・´)  
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なにやら話の流れは、結局「それはアリ」というところらしい。  
「……」  
 
 
翌朝。時は午前5時。まだ外は少し暗い。  
「はぁ…ふー、はぁ…ふー、…」  
頼子は深呼吸を何度も繰り返して高鳴り続ける胸を必死に押さえつけつつ、純一の部屋の前にいた。  
 
今日、頼子は午前3時に飛び起きると、昨日から未だ引きずる胸の動悸を抑えられぬまま、朝方にこなす家事をいつもの何倍ものスピードで済ませ、その「えむえふ」とやらに挑む決意を固めた。  
練習をしようと、買い置きのバナナをひとつ取りそれを純一の「あれ」に見立て、その真似事をしてみる。しかし、中途半端な知恵しかない頼子には、どうすればいいのか、皆目見当がつかない。  
「確か…前に純一さんの部屋のベッドの下にあった本にでてた女の人は…」  
その内容を、頼子は必死に思い出す。肝心の本はいっしょに掃除してた音夢が捨ててしまった為、それを見に行くわけにはいかない。  
「確かその人は、その実を傍目にも優しく、喉の奥まで呑み込むようにくわえていたっけ…」  
早速真似てみた。  
「あ、あむ…ん……ん……」  
喉の奥に、バナナの先端を感じる。苦しい。  
「……」  
頼子はあることに気づいた。くわえてから、いったいどうすればいいのだろう。そのまま舌でそれを嘗めればいいのか。それとも唇で労ればいいのか。  
「あ、ん、は……はわっ!」  
頼子はむせる。くわえていたバナナを、思わず噛み切ってしまったのである。頼子は焦った。もしこんなことを実践でやってしまったら、純一に激怒されるだろう。それこそメイド失格だ。  
結局、バナナではどうしようもないことを、頼子は悟る。  
「……と、兎も角あ、後は、後は実践あるのみだ…!」  
何事も実際にやらなければ始まらない。そのことは、家から出られなかった時期のある頼子はよく知っていることだった。  
あのときは純一が家から引きずり出す形とはいえ、実際に頼子を家の外に出してくれたからこそ、今の頼子は、街に買い物にも行けるようになった。  
いわば恩人である。そんな純一を慕うからこそ、頼子はあのスレッドを愛読し、そして今こうやって奉仕に向かおうとするのだ。  
 
そうして今、純一の部屋の前にいる頼子は、その2時間前からのことをしかと脳裏に刻むと、覚悟を決めた。  
「…よし!」  
頼子は純一の部屋のドアノブに手をかけ、ゆっくりとその戸を開けた。  
 
中では純一が、その身をベッドにだらしなく横たえながら、寝息を漏らしていた。布団は下に蹴り飛ばしてある。  
「あぁ、あぁ…」  
これはいけない と布団をかけ直そうとして、頼子ははっとした。  
「あ、結局お布団はとらなくちゃいけないんだっけ…」  
頼子はその手の中の布団を丹念に畳むと、ベッドの下に置いた。  
「さ、さて、と」  
頼子は純一の下半身に目をやった。純一の一物は、高々と天を仰いでいる。  
「……」  
頼子は硬直する。全身が汗ばみ、手が震える。喉はからからに干上がり、耳は緊張の余り、ぴん! と、少し触られただけで失禁してしまいそうなほどに張り立つ。  
しかしもう後には引けない。それにこれは純一さんのためなのだ と頼子は自分を鼓舞し、純一の下半身近くにかがみ込むと、純一の下着に手をかけた。  
悟られまいとし、ゆっくりと下着を降ろすと、頼子の目には、生まれて初めて見る男性器がしっかりと入り込む。  
「!!」  
こういうのなのか と、頼子はますます動悸を荒くする。しかし、これしきでもたついててはいけない。自分は今からこれを口にくわえ、ご奉仕しなければならないのだ。  
頼子は恐る恐る、それに顔を近づける。  
「あ…、だめだってえ、もう〜」  
「ひいぃっ!!」  
純一が突然漏らした寝言に、頼子は思わず声を出してしまい、慌てて口を押さえる。  
「……!?」  
その声で起こしてしまったかと頼子は困惑するが、肝心の純一のほうは  
「もう、ことりも、眞子も、焦るなって〜。順番だからあ…んん〜」  
と、寝言の続きを言った。別段起きあがる気配もなく、未だ夢を貪っているようである。  
「ほ…」  
頼子は息を整え、今一度純一の一物をその目に捉える。  
「……」  
そうして今一度意を決すると、目を閉じ純一のモノをその口に頬張るべく、顔を近づけていった。  
 
「!!」  
突如、頼子の後頭部に激痛が走り、その意識に稲光のような衝撃が訪れる。そうしてその衝撃に揺られ、頼子の意識は抗することも出来ぬまま霧散していった。  
純一の真上に倒れ込もうとしていたその体は、即座に後ろから受け止められ、そのまま何もない方角に投げ飛ばされた。  
 
やがて頼子は目を覚ました。しかし、体が動かない。見ればその身は子供が使う縄跳びやら新聞雑誌をまとめるビニール紐やらで、無造作に緊縛されていた。  
「あれ、あれ…?」  
戸惑う頼子に後ろから  
「おはよう、よ・り・こ・さんっ」  
と、やけに明るい声がかかる。音夢だった。  
「ね、音夢さん?わ、私…」  
困惑する頼子には答えずに、音夢は明るく呟いた。  
「何か昨日から、様子がおかしいと思ってたんですよね。ちらちら兄さんのほうを見ては、恥ずかしそうに俯いて」  
頼子は困惑の色を深めるが、音夢は構わず続ける。  
「私としたことが、飼い猫の躾を怠ってしまったんですね、ホントに。泥棒“猫”とは、よく言ったものです」  
そう言われて、頼子ははっとした。  
「違います、違いますよ。ね、音夢さん、違います、私、私は…」  
「あ、大丈夫ですよ。さっき頼子さんが兄さんにしようとしてたこと、私がちゃんと続きをしておきましたからね」  
「私、泥棒なんて、そんなつもりは」  
「さあて、後は頼子さん、あなたのお仕置きの時間ですよ」  
音夢は屈託のない笑顔で、頼子に近づく。頼子は底知れぬ恐怖に震えた。  
「馬鹿な飼い猫には躾をしないと…見境なしに盛られたりでもしたら、ご近所に迷惑になりますからね」  
「ゆ、許してください、許してください、お願いします、お願いします…」  
「それもこれも、飼い猫風情が変な気を起こすからですよ、よ・り・こ・さんっ」  
 
刹那、頼子はメイド板で見かけたある書き込みを思い出す。  
ご主人様と懇ろになったのが奥様にばれて、その身に何時間も何時間も煮え湯のような責め苦を浴びせ続けられた、というのを…  
 
了  
 

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