放課後の学校。無人の教室。その中から卑猥な水音が聞こえてきている。  
「ちゅっ、くちゅっ、くちゅっ、んちゅっ、じゅるっ、ちゅるっ、」  
私は今、無人の教室内で、男のモノをくわえこんでいる。  
「んっ、ちゅっ、くちゅっ、ちゅっ、じゅるっ、んっ、工藤君、気持ちいい?」  
上目遣いに顔を見上げながら問いかける。  
相手は兄さん。つまり私の現在の恋人ではない。  
「あぅ、あ、朝倉さん、き、気持ちいいよ、あっ、あぐっ!」  
しかし、なぜこんなことになっているのだろうか。  
今まではかなり順調に付き合っていた。幸せな日々が続いていたが、約一ヶ月前に兄さんは、「俺、バイト始めるから。」  
と、突然私に言った。理由を聞いても笑ってはぐらかしてしまった。少し気になったが、  
私はうれしかった。普段はかったるいといってなにもしたがらない  
兄さんが自分からバイトを始めるなんて思ってもみなかったからだ。  
けれど、さびしいと感じるのも確かだった。デートの回数も減ったし、夜の回数も・・・。  
 
私は学園で溜息をつくのが多くなった。眞子や美春が心配してくれたけど  
「大丈夫だから心配しなくてもいいよ」と言い張っていた。  
そんなある日、兄さんの働いている喫茶店でことりも働いている事を知った。  
私はまたすこし気が重くなった。ことりならそんなことはないと思うけど、  
なんだか兄さんをとられているような感じがしたからだ。  
その気持ちを大きくするように2週間ほど前から噂が立ちはじめた。  
兄さんとことりが浮気しているのではないかという。  
私は兄さんに愛されているのか不安になり、兄さんに聞いてみたが、  
「そんなわけあるか、お前が俺の恋人なのに。ことりとはただ仲がいいだけだよ。」  
と言って笑った。ちょっと安心したが、それでも寂しさは拭い去れなかった。  
その頃に工藤君と知り合った。同じクラスだったけど、  
話したのは初めてで、気さくでいい人だった。  
ある時、私は兄さんとあまり一緒にいれなくて寂しいということを話した。  
「大丈夫だって、困った事があったら俺に相談してよ」  
工藤君はやさしくそう言ってくれた。  
それからしばらくして、私は工藤君に惹かれていることに気付いてしまった。  
私には兄さんがいるのに。一番愛している大切な恋人がいるのに。  
しかし、いくらそう考えていても日に日に工藤君が好きだという想いは強くなっていった。  
とても寂しくて、本当に兄さんに愛されているのかという不安で心を侵されていた私は慰めてくれる人がほしかった。  
そして、今日の放課後に工藤君を教室に呼び出し、それから・・・・  
 
工藤君のモノは私の唾液でぐしょぐしょになり、泡立っていた。  
「くちゅっ、くちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、じゅるっ、ちゅるっ、」  
「あ、朝倉さんっ、なんで、こんなことをっ、」  
彼は驚愕していた。それはそうだろう。今まで友達として付き合っていた  
少女に呼び出され、放課後の教室で突然こんなことをされるなんて。  
「んっ、ちゅっ、いいの、私は工藤君が好きだから、だから、ちゅっ、  
んっ、もっと、気持ちよくなって、ちゅっ、んちゅっ、」  
「そ、そんなっ、こんなことしちゃいけないよっ!うっ、うぁっ!」  
口では否定しているものの、もう快楽に抗うことはできないようだ。  
工藤君の足が震えてきた。ぐらぐらする机の上に座っているので不安定に揺れる。  
どうやら限界が近いようだ。だんだんスピードを上げていく。  
「んんっ、じゅるっ、じゅるるぅっ、んっ!、んっ!、んっ!」  
モノを根本まで咥えこみ、全体をしごき上げる。  
「あっ、ああっ、も、もう俺、イ、イっちゃうよっ!」  
「んんっ!いいよ、このまま、じゅるっ!口の中に出して!」  
「あぅっ、あっ、ああああああぁぁっっっ!」  
 
ビュッ、ビュッ、ビュッ、ビュッ、ビュッ、ビュッ!  
絶叫と共に大量の精液が吐き出される。  
「んんっ!んくっ、んくっ、んくっ」  
彼が出した精液を飲み込んでいく。やがて射精が止まり、ちゅぽんと音をたてて口から解放する。  
「んっ、おいしいよ、工藤君」口の周りに飛び散ったものも舐めとる。  
「朝倉・・さん・・・・」恍惚とした表情で彼はつぶやいた。  
兄さんのやさしい笑顔がちらついて胸がちくりとしたが、  
「これは、二人だけの秘密ね。だれにも言っちゃだめだよ。」  
私はこの行為を二人の秘密にすることにした。  
しかし、工藤君は私のほうを見ていなかった。  
言った事も聞いていなかったかもしれない。ついさっきの恍惚とした表情は消え去り、ただ口をぽかんと開けて戸口のほうを見ていた。そして開いた口から呟きが漏れる。  
「朝倉・・・・・」  
私はバッと振り返った。そして驚愕した。ドアの前に兄さんがいる・・・。  
「なに、やってんだよ・・・・」  
呆然とした表情で兄さんは言った。  
夢だと思いたかった。これは現実ではないと。  
しかし、そんな事があるはずがない。これは現実だ。  
そして、もう・・・遅い。  
「なに・・・・やってんだよ・・・・・・・!」  
再びそう言いった兄さんの顔がくしゃりと歪み、頬を涙が流れる・・・・  
そのまま、踵をかえし兄さんは走り去った。  
 
窓の外は夜の闇に包まれている。  
俺は自分の部屋のベッドに寝転がり、呟いた。  
「どうしてなんだろうな・・・」  
ついさっき、教室で見た事を思い出しながら考えていた。  
音夢はなぜあんな事をしていたのだろうかと。  
俺は音夢を愛していたし、音夢も俺を愛してくれていると思っていた。  
しかし、それは間違いだったのだろうか?俺は本当は愛されていなかったのだろうか?  
音夢は工藤とでもよかったのだろうか?  
俺と一緒に居るときはとても幸せそうに笑っていた音夢が、あの音夢が俺を捨てたのだろうか?工藤のほうがよかったのだろうか?  
そう考えると目に熱いものがこみ上げてきて、俺は目頭を押さえた。  
いくら考えても、答えは出てこなかった。  
開けっぱなしの窓からひらり、ひらりと桜の花びらが入ってきた。  
 
私は、夜の道を歩いていた。もう8時を回っており、本当は家に帰らなければいけないけど、それは躊躇われた。  
どんな顔をして兄さんに会えばいいのか。なんと言えばいいのか。どうすればいいのか。  
それを考えるものの、頭の中は真っ白で、何も思いつかない。  
気が付くと、桜公園に来ていた。そこでふと思いつき、枯れない桜に行ってみる事にした。  
 
かつて秘密基地と呼び、三人でよく遊んだ場所。  
その中心にはこの島で一番大きく、一番古い桜の木が植えられている。  
辺りは穏やかな風が吹き、桜の花びらたちがゆっくりと舞いながら月光を反射している。  
そんな幻想的な雰囲気の中、一人の少女が背を向けて立っていた。黄金のツインテールが風に揺れている。  
「さくらちゃん?」  
少女はゆっくりと振り返り、言った。  
「道を間違えたね、音夢ちゃん。」  
彼女は冷え切った声と視線で私を貫いた。普段の彼女からは想像もできないような。  
時間が止まったかのようにふたりの少女は見つめ合っていた。  
「道を・・・間違えた?」私がそう切り出した。  
「音夢ちゃん、君は今日、何をした?」さくらは私の問いかけに問い返した。  
「いや、やっぱり言わなくてもいいよ。ボクは全部知ってるから。」そして自問自答する。  
「さくらちゃん、私は・・・」  
「どうすればいいのかって?」私の心を読んだようにいうさくら。  
「すこし、お話しない?音夢ちゃん。話したいことがあるんだ。」  
私はすこし迷ったが、頷いた。  
 
「音夢ちゃん。君の存在する意味ってなに?」さくらは唐突に質問してきた。  
「存在する意味?」困惑して聞き返す。  
「そう。簡単に言うと何の為に存在するのか。何をするために生きているのか。」  
すこし考え、私は言った。  
「兄さんと一緒に生きる事。ずっと一緒にいること。それが私の存在する意味だと私は思う。」  
「そう。やっぱりそうだよね。」さくらは無表情で呟いた。  
「なら、お兄ちゃんの存在する意味って何だと思う?」さくらはさらに質問する。  
「兄さんの?」  
「そう」  
考えてみたが、私は兄さんではないし人の考えている事なんて分かるはずもない。  
「私にはわからいないよ」  
 
さくらは静かに私を見つめていた。そして吐息とともに言葉を紡ぐ。  
「お兄ちゃんには三つの意味があった。ひとつめは人々に笑顔を与える事。  
音夢ちゃんも知ってるよね。お兄ちゃんが手から和菓子を出す魔法。それを使って  
笑いを与える事。」  
「そうなんだ・・・・」  
確かにその魔法は知っている。  
辺りは静かに風が吹いている。ゆっくりと桜の花も舞い続けている。  
 
「ふたつめは守る事。音夢ちゃん、君をね。」  
「私を?」  
「そう。覚えてる?ボクが6年前アメリカに行った日の事。」  
私はうなずいた。さくらはこの木の下で兄さんとみっつ約束を交わしたっけ。  
「この桜の木の下でお兄ちゃんが音夢ちゃんを見つけたとき。そのときお兄ちゃんは  
誓ったんだよ。音夢ちゃんを守るって。」  
「そう・・・だったんだ・・・」  
「でも、これは少し変わったんだ。音夢ちゃんと恋人同士になってから。」  
「変わった?」さくらはうなずいた。  
「なにがあろうとも守るという約束。それに音夢ちゃんを放さないっていう事が  
プラスされた。一生放さない。一生音夢ちゃんだけを愛すっていう事がね。」  
沈黙が訪れた。長い沈黙が。私は罪悪感でいっぱいだった。  
兄さんはそんなに私を愛してくれていたんだ。一生放さないというほどに。  
私はそんな兄さんの気持ちを裏切った。寂しいからといって  
ほかの男の人に惹かれてしまった。工藤君に慰めを求めた。  
胸が張り裂けそうだった。嗚咽がのどから漏れる。  
「うっ、うぅっ、うっ、えぐっ」  
私には泣く資格なんて無いと思う。だけど我慢できなかった。  
なぜ、あんな事をしてしまったのだろう。信じなかったのだろう。  
私の頬を流れた涙が、雫となって落ち、地面に吸い込まれていった。  
 
「それで終わりじゃないんだよ。」  
泣いていた私を無表情に見つめながらさくらは言った。  
「音夢ちゃんはさっき言ったよね。兄さんと一緒に生きる事。ずっと一緒にいること。  
それが存在する意味だって」  
「そうだよ!だけど私にはそんなこと言う資格なんてない!私は兄さんの気持ちを裏切った!」私の叫びが夜の闇に吸い込まれていった。  
「じゃあ、存在する意味がなくなったらどうなると思う?」  
彼女の表情が変わるような兆しを見せた。  
「え?」  
困惑する私に対し、冷たく喋り続けるさくら。  
「存在する意味の無くなった人たちがどうなると思う?」  
突如私の中で嫌な予感が膨れ上がった。  
 
「まさか・・・・」  
さくらの顔を見つめる私にむかって彼女は。  
嗤った。血の凍るような笑みとはこういうことを言うのだろう。  
「そう、人はなにかしら自分なりの存在する意味を持っている。存在する意味とは裏を返せば生きる目的。それを失った者は・・・消えるしかない。」私のした行為を嘲笑うように嗤い続けるさくら。  
「この初音島ではそう。存在する意味を失った者達は存在自体が消える。みんなの記憶からも消え、痕跡すらなくなる。」  
さくらは嗤いながら語り続ける。  
「音夢ちゃんはついさっき意味を失ったからね。もう、消えるしか道は残ってないんだよ。それに、時間はあと少ししかない。」  
「そんな・・・・」  
呆然と呟く。風が、一際強く吹いた。それに応じて桜の花びらたちも高く舞いあがる。  
「最期にお兄ちゃんのみっつめの意味を教えてあげるよ。」  
私はもう、ほとんど聞いていなかった。耳鳴りがする。頭の中は思考でパンクしそうだ。  
本当に私は消えてしまうのか?みんなの記憶からも、一番大切だった兄さんの記憶からも。  
私が居たという痕跡も消え、何も残らない。  
ナニモ・・・ノコラナイ・・・・・  
「みっつめは人を支える事だったんだよ。能力を失った人たちをね・・・」  
なぜ、なぜあんなことをしてしまったんだろう。  
どうして兄さんを信じなかったのだろう。  
「たとえば白河さんだね。彼女には人の心を読む能力があった。音夢ちゃんも知らない  
だろうけど、それを失って不安定になっていた頃お兄ちゃんに支えてもらったんだよ。  
他にも何人か支えてあげていたね。」  
私は・・・・・・私は・・・・・・・  
なんて・・・・醜い人間なんだろう・・・・・・  
 
「もう、本当に時間が少ししかないね。」みっつめの意味を喋り終わったさくらが言った。  
「私は、消えるとどうなるの?」か細い声しかでなかった。  
「わからない。多分、死ぬのと同じじゃないかな。」彼女はもう嗤っていなかった。  
「そう」  
それきり黙りこんだ。静かに時が流れる。  
やがてさくらがポツリと言った。  
「・・・時間だね・・・」言うと同時に大きな風が吹き、桜の花が吹雪のように乱舞する。  
ふと体を見下ろすとだんだんと透き通ってきていた。視界ももやがかかったようになり、五感も曖昧になる。  
もう、どうにもならないようだ。  
私の頬を涙が流れる。そんな感覚がなんとなくわかった。  
私は、結局自分勝手だった。すこしすれ違ったからといって、愛されていないと勝手に思い込み、やさしさと慰めを求めた。  
兄さん、ごめんなさい。今頃言ったとしても遅すぎるかもしれない、いや、遅すぎるけど。  
兄さんは私を愛してくれていたのに、私はその気持ちを裏切りました。  
けど・・・・・・・こんなこといっても・・・・・・・・もう信じてくれないし、届かないと思うけど・・・  
・・・わたしは・・・・・・・ワタシハ・・・・・ニイサンノコトヲ・・・・・・  
そこで意識は途切れた・・・・・・・・・。  
 
 
ついさっきまでふたりの少女がいた桜の木の下には今、ひとりしかいない。  
数多の星達が輝いている夜空を見上げ、ひとりの魔法使いは呟いた。  
「さようなら、音夢ちゃん。」  
 
 
ジリリリリリリリリリ!  
バン!  
けたたましく鳴っていた目覚まし時計を叩く。  
「ん・・・・んん・・・ふぁ〜あ・・・朝か」  
大きなあくびをひとつ放ちながら起き上がる。  
「さて、さっさと着替えて飯食うか」  
手早く制服に着替えてリビングに降りてきた俺は、ふと違和感を覚える。  
「・・・・あれ?」  
なにかが足りないような気がする。  
確かに見慣れた我が家のはずだが・・・・・?  
「・・・・・ま、いいか」  
俺の気のせいだろう。  
「さてと、メシメシっと」  
手際よく用意したトーストとコーヒーをあっという間に消費した俺は  
いつもより早く家を出た。  
 
「であるからして、ここは・・・・」  
いつもの長ったらしい和久井の授業。  
俺は窓の外をぼーっと眺めながら聞き流していた。  
「・・・・・・・・なんかなぁ・・・・」  
誰にも聞こえないような小声で呟く。  
いつも通り代わり映えのしない学園。  
なのになぜか物足りないような気がする。  
そういえば朝もこんな違和感あったな・・・  
例えて言うなら大切なものを忘れたような。  
大切なのに、それを思い出せないもどかしさのようなものが俺の心を支配していた。  
「どうしたのだ、朝倉?」  
「おわっ!」  
気が付くと俺の眼前30cmに杉並の顔があった。  
「おお!そんなに喜んでくれるとはうれしいぞ!」  
「・・・・今のを喜んでいると脳内変換できるお前の頭が甚だ不思議だ」  
「あれ?というか、授業は?」  
「とっくに終わったぞ。しかし、お前が難しい顔して考え事をしているなどとは  
珍しい事もあるものだな。」  
まるで珍獣を観察するように俺をじろじろ見てくる。  
「俺だって考え事ぐらいするけどな・・・」  
「もしや、恋煩いか?」  
ニヤニヤしながら聞いてくる杉並。  
「んなわけねぇだろ」  
まったく、この馬鹿は・・・・頭いいくせにくだらん事聞くなっての。  
 
「朝倉君、どうしたんですか?なんだか授業中難しい顔してましたよ?」  
「ん?ことりか」  
いつの間にかことりがすぐ横に現れていた。  
「これはこれは白河嬢。どうやらこの男は恋煩いのようですぞ」  
ニヤニヤしながらほざく杉並。  
「恋煩い?」  
すこし驚いたような顔で聞いてくることり。  
ハァ・・・・・・・仕方ないな・・・・・・  
「いやぁ、朝倉にもやっと春が近づいてき・・・ごふっ!!」  
席から立ち上がりつつ勝手な事をベラベラ喋ろうとしていた杉並の  
腹部に掌底をめりこませ、首に手刀を振り下ろす。  
「かはっ!・・・・」  
 
「・・・まぁ、すこし考え事してただけだよ」  
うつ伏せに倒れた杉並の頭を足蹴にしながらことりに説明する。  
「なんか足りないような・・・いや、なにか忘れてるような気がするんだよな。  
うまく説明できないけど」  
「・・・・そうですか」  
「まぁたぶん俺の気のせいだと思うんだけどな」  
ニヘヘと苦笑いしながら言う。  
「・・・朝倉君」  
「ん?」  
「私でよければ、いつでも相談に乗るからね?」  
ことりがいつにない真摯な目をして俺を見つめてくる。  
「あ、ああ」  
すこしドキッとしてしまった。  
俺はドキドキする鼓動をどうにか抑えながらなるべく平静を装って頷く。  
「わかった、本当に困ったら相談するよ、ありがとう」  
「ううん、いいんだよ・・・・・・・・・・だから」  
「ん?なにか言った?」  
最後のほうが聞き取れなかった。  
「ううん、なんでもないっす♪」  
そう言ってことりは微笑んだ。  
 
 
今日は寄り道をせずにまっすぐ家に帰ってきた。  
「ふう、なんだか疲れたな」  
ドサッと鞄を放り出すとベッドに倒れこむ。  
ぼーっと天井を見つめながら考える。  
いったいなんなんだろう。  
俺はなにを忘れてしまったんだろう?  
朝から考えているものの、全く思い出す事ができない。  
・・・・そういえば、俺は昨日、なにをしていた?  
思い出そうとするものの、もやがかかっているように思い出せない。  
まるで、思い出す事を拒んでいるような。  
「・・・そんなわけないよな」  
忘れたいと思っても、一日やそこらで忘れる事なんてできないに決まってる。  
しかし、昨日の夕飯の献立でさえでてこない。  
たったひとつ思い出せるのは、悲しみ。  
なぜかはわからないが、漠然と悲しいという感情だけが  
湧き上がってくる。  
「なんだ?これは・・・・」  
なぜ悲しいんだろう?俺は昨日、なにを悲しんでいたんだ?  
なにか悲しい出来事でもあったのか?  
 
ふと彷徨わせた視線が机の上に置いてある小さな箱を捕らえる。  
「なんだあれ?あんなもの買ったっけ?」  
机の上から取り上げ、まじまじと見つめてみる。  
箱は掌に乗るぐらい小さく、包装もされている。  
その小さな箱にきれいにされた包装を解き、箱を開けてみる。  
中に入っていたのは・・・  
「指輪?」  
そんなに高くはないだろう、しかしとてもきれいな指輪が入っていた。  
「そうだ、思い出した・・・」  
俺はこの指輪を買うためにバイトを始めたんだった。だが、  
「でも、誰に・・・・?」  
そう、誰にプレゼントするつもりだったのだろうか?  
それもまたもやがかかったように思い出す事ができない。  
俺は溜息をひとつつくと、指輪を元通り箱に戻し、今度は机の奥深くにしまった。  
そしてよろよろとベッドに歩き、ドサリと倒れこむ。  
そのまま目を閉じ、突如襲ってきた睡魔に抗うことなく、眠りに落ちていった。  
 
朝倉家の隣、芳野家の屋根の上に、彼女はいた。  
「きれいな月だね〜。うたまる」  
彼女は隣に座っている猫に向かい、話しかける。  
「にゃぁ〜」  
そうですな。と隣にいる猫も答える。  
「それにしても」  
どこか自嘲気味に笑うさくら。  
「お兄ちゃんは完全に忘れていないみたいだね。やっぱり一番親しかった  
人の記憶は完全に消せないか。」  
「にゃぁ〜」  
「でも、思い出そうとしても曖昧にしか思い出せない。それに他の人に記憶は残っていない。けど、もしかしたら思い出す可能性もまだある。もしかしたら。だけどね」  
すこし悲しげに笑いながら空に浮かぶ青白い月を見上げるさくら。  
「お兄ちゃんはこれからどんな道を行くんだろう?  
失ってしまった大切な人を必死に追い続けるのか、それとも・・・」  
頭を振りつつ、続ける。  
「けど、どちらにしても最終的に決めるのはボクじゃない。いくら魔法使いだからといって、人の意志は決めることはできない・・・人の意志っていうのはそれだけ強いからね」  
すこしの間俯いた後、再び空を見上げながら歌うようにその唇で言葉を紡ぐ。  
「強く繋がっていたはずのふたつの道が別れ、ひとつは消えた。残されたもうひとつは  
どの道と繋がるのだろう?それとも再び失った道を創るのだろうか?」  
「願わくば、繋がったふたつの道が、二度と離れませんように・・・・」  
目を閉じて祈るように呟くひとりの魔法使いの隣で、同じく一匹の桜の使い魔が何かを願うように、鳴いた。  
 
 
何日が経っただろうか。  
 
フェンス越しに沈んでゆく夕陽を見つめながら想う。  
結局、あれからあの事について考えるのはやめてしまった。  
情けないが、俺にはあの悲しさの原因を知り、真っ向から受け止める勇気が無いようだ。  
いや、だからこそ俺は忘れてしまったのだろうか。  
信じたくなかったから。  
拒絶し、忘れてしまいたかったから。  
そうかもしれない・・・・。  
だが、もういい。  
俺が忘れてしまった大切なもの。  
俺はそれを自分の心の中に仕舞うことにした。  
過去の事だと自らに言い聞かせて。  
 
 
「それにしても、まだ来ないのか・・・・」  
辺りを見まわすものの、当然のごとく俺以外の人影は無い。  
まぁ放課後の屋上なんて用事がなけりゃ来る奴なんていないか・・・  
「で、俺にはその用事がある訳だが、待ち人が来ないんじゃなぁ・・・ハァ・・・」  
溜息をつきながらひとり愚痴る。  
 
ふと空を見上げると燃えるように紅く染まる空が目の前に広がっていた。  
その中を千切れた雲たちがもの凄い速さで走ってゆく。  
「凄い空だな・・・・・・」自然に呟きが漏れる。  
そして想う。どこかで見たような景色だと。  
 
「朝倉君」  
「ん?」  
重い扉が音を立てて開く音と共に待ち人が現れた。  
「やっと来たか・・・」  
待ち人、ことりは申し訳なさそうにペコリと謝る。  
「ごめんなさい。ちょっと用事があって抜けられなかったんです」  
「来ないかと思ったよ」  
「さすがに呼び出しておいて来ないってことはないですよ〜」  
苦笑しながら言うことり。  
「そうだよな」俺もつられて笑う。  
今日ことりに呼び出された理由。  
内容は教えてくれなかったが、俺に話したいことがあるとかないとか。  
 
「それで、話ってなに?」  
結構待たされたのでさっさと本題に入ることにする。  
「うーんとね・・・」  
俺と同じようにフェンスに手を当てながら夕陽を眺めることり。  
その横顔が心なしか赤くなっているような・・・・  
いや、夕陽のせいか?  
ことりはなにやら真剣な顔をしてぶつぶつ呟いている。  
 
 
「・・・・・・よしっ」  
やがて自分を鼓舞するかのように呟いたことりは俺と向き合った。  
「これは真剣な話です」  
まっすぐ俺を見つめながら言うことり。  
「あ、ああ・・・」  
慌てて俺もすこし姿勢を正す。  
深呼吸したことりは一気に言った。  
 
「わたしは、朝倉君のことが好きです!」  
 
その言葉の意味を知覚するのに数秒かかった。  
ことりが・・・・俺のことを・・・・好き?  
目の前で顔を真っ赤にして俯いていることり。  
 
 
俺は・・・・・・俺はどうなのだろう?  
ことりとは学園のアイドルだとかそんなことは気にせずに、普通の友達として  
付き合っていた。  
そういえば何時だかことりも  
「わたしのこと、普通の女の子として付き合ってくれたのは、朝倉君が初めてなんです」  
そう言って嬉しそうに微笑んでいた。  
一緒に居るだけで安心する。居心地がいい。  
ことりは今までになかったタイプの友達だった。  
 
 
「・・・・・・・・・」  
けど、それだけか?  
俺は心のどこかでことりに惹かれていたんじゃないか?  
一緒に歩いたり、他愛の無い事を話したりするだけで楽しかった。  
いつも一緒に居たいと思った事も何度かあったはずだ。  
 
もう、陽が沈む。  
その前に、ことりの想いに答えなければならない。  
 
だから俺は、ことりに向かい、言った。  
難しい言葉じゃない、俺なりの率直な気持ち。  
「俺は・・・・・・・俺も、ことりのことが好きだ」  
「朝倉・・・・君・・・・」  
顔を上げ、潤んだ瞳で俺のことを見つめてくる。  
ことりの顔を真正面から見据えて俺はもう一度はっきりと言った。  
 
「俺もことりのことが好きだ」  
そして、ぶつかるように飛び込んできたことりをやさしく抱きとめる。  
ふわっと立ち上った甘い匂いが俺の鼻腔をくすぐる。  
ことりの体は見た感じよりもずいぶん華奢に思えた。  
「うぅっ・・・・ぐすっ・・・・・」  
かすかに肩を震わせて泣いていることりを抱きしめたまま、  
しばらくその長くきれいな髪を撫でてやる。  
「うぅっ・・・・・うれ・・・しい・・・・」  
やがて顔を上げたことりと無言で見つめ合う。  
言葉は、要らない。  
 
これ以上無いというほどに紅く染まった空の下で。  
 
恋人同士になった俺達は。  
 
静かに、キスを交わした。  
 
「あぅ・・・・・緊張するね・・・・・」  
「はは、そうみたいだな」  
俺の部屋のベッドの上。  
目の前には不安そうに俺のことを見上げることりがいる。  
「それにしても、ことりから誘ってくるとはな・・・ついさっき告白したばかりなのに」  
「えと、そ、それは・・・・」  
「それは?」  
「あの・・・・それだけ朝倉君の事を想ってたってことだよ・・・」  
恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしてボソボソ言うことり。  
 
・・・・・・・・可愛い・・・  
「きゃっ」  
不意を衝いてことりを抱きしめる。  
「やっぱり可愛いな、ことりは」  
「そ、そうかな?」  
戸惑ったような顔も可愛さが滲み出してくるようだ。  
「・・・・ことり」  
「うん・・・・」  
俺の意図を悟ったのか目を閉じて身を委ねてくれる。  
そのまま顔を近づけ、ことりの紅い唇に俺のそれを重ねた。  
「んっ」  
ことりの唇は柔らかく、温かかった。  
 
なぜか安心する。  
彼女がここにいるということを実感させてくれる。  
そのままその柔らかな感触を楽しむように擦りあわせる。  
「んんっ、んぅっ・・・・」  
「ふむぅ・・・・・んんっ」  
やがて重ねるだけでは物足りなくて、俺は舌をことりの口内に挿し込んだ。  
「んんっ!?」  
突然の出来事に驚いていることりの舌を絡めとると、ゆっくりと愛撫していく。  
「んんぅ、んんっ、んっ、んっ、ちゅっ、」  
「はむっ、んんっ、ちゅっ、ちゅるっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ」  
最初はおずおずといった感じで動いていた舌も、要領を得てきたのかスムーズに絡み合う。  
「ちゅっ、くちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、んっ、んふぅっ」  
「んむぅっ、ちゅっ、ちゅくっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅうっ」  
お互いの口から溢れ出た唾液が滴り落ち、シーツを汚していく。  
「んんっ、んっ、ちゅっ、ちゅるっ、ちゅっ、ちゅぅっ、んんっ、ぷはぁっ!」  
「はあっ、はあっ、はあっ、んっ、キスって、こんなに気持ちいいんだね。」  
とろんと欲情した瞳で見つめてくる。  
「ああ・・・・」  
 
「じゃあ、次は・・・・」  
もう一度ことりの体を横たえると制服の上からすこし大きめの胸に手を当ててみる。  
「んっ」  
はじめて触ったことりの胸の感触にすこし感動に似たものを感じながら  
そのまま全体を撫でるように手を動かしていく。  
「・・・・んぅっ」  
くすぐったそうに身をよじることり。  
「ことりって、結構胸大きいんだな」  
「え?そ、そうかな?」  
「ああ、普通の娘よりは大きいんじゃない?」  
「う、うん・・・そうかもしれない・・・」  
ことりの胸の感触を味わうようにゆっくり、やさしく揉んでいく。  
ふに、ふに  
やや硬さは残るものの、とても柔らかい。  
「んんっ・・・・あふぅ・・・」  
ことりの口から艶っぽい吐息が漏れる。  
「気持ちいい?」  
「う、うん・・・」  
 
胸を直に触りたくなった俺は、ことりの体を覆っている制服を  
脱がしていく。  
やがて下着だけの姿になったことりの体をまじまじと見つめる。  
「うぅ・・・・恥ずかしいよぉ・・・」  
顔を真っ赤にして体を隠そうとする。  
「大丈夫・・・・きれいだよ・・・ことり」  
優しく隠そうとしている腕をほどくと、胸を覆っている黒のブラジャーを上にずらし、現れた良い形の胸を両手で包み込むように揉んでいく。  
直に触れた胸は驚くほど柔らかかった。  
「んぅっ、ふあぁ、んんっ・・・」  
「んんぅ・・・ふぁっ、ああっ」  
徐々に勃ってきた乳首を口に含み、舌でゆっくりと転がす。  
「あぅっ!ふぁあぅ、あんっ、ああっ、んあっ、はあぁっ」  
「ことりって感じやすいんだな」  
「ふあぁ、あぁぁ、んぁぁ、そ、そんなことないよぅ」  
「そうかな?」  
下着越しにことりの秘所に触れてみる。  
「んんぅ!」  
割れ目に沿ってゆっくりと指を上下させてやると、それだけでねっとりとした粘液が指に絡み付いてくる。  
「ほら、こんなに濡れてる・・・」  
ことりの愛液が絡みついた指を見せてやると、いやいやするように顔を覆ってしまう。  
「そんな、見せないでよぉ・・・」  
「んじゃ、もう少し」  
再び指をゆっくりと往復させる。  
「んんぅっ、ふぁあっ、ああぁっ、んぐっ」  
「あんぅ、はぁぁっ、ああっ、んあっ、はあぁ、ああっ、ひゃぁっ、あぁっ」  
ふと指先に触れた突起のようなものを押してみる。  
「ひゃぅぅっ!はぅっ、あっ、あぁっ、ふぁぁぁ」  
しばらく愛撫を繰り返した後、すっかりびしょびしょになり、役目を果たせなくなった  
下着を脱がす。  
 
「ことり、そろそろ・・・・いいか?」  
そう俺が聞くと、荒い息をしながらもことりはゆっくりと頷いた。  
「うん・・・私も、欲しい・・・」  
俺は素早くベルトを緩めると、ズボンの中から膨れ上がった自分のモノを取り出す。  
「おっきいんだね・・・・」  
初めて目にした異物に目を丸くすることり。  
「じゃあ、いくぞ」  
「うん・・・」  
モノをことりの秘所にあてがうと、ゆっくりと腰を押し出していく。  
「んんぅっ!」  
シーツをギュッと握り締め、挿入の痛みに堪えていることり。  
ことりの中は狭く、思うように進むことができない。  
「ううぅっ、い、いたっ!」  
「くっ!せ、狭い・・・」  
だが、徐々にモノがことりの中に埋没してゆく。  
と、先端がなにかにぶつかる。  
紛れもなく、ことりの処女の証だ。  
 
「朝倉君・・・・来て」  
か細い声で俺に呼びかけてくる。  
「ああ、いくぞっ」  
ことりの腰を両手で掴んだまま、ぐっと押し込むと、膜を破る感触の後、モノが一番奥まで到達した。  
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」  
ことりが破瓜の痛みに絶叫する。  
 
「はあっ、はあっ、はあっ、はあぁぅぅ・・・・・」  
ギュッと目を瞑り、痛みに耐えていることりの頭を撫でてやる。  
「・・・大丈夫か?」  
「すごく痛い・・・・痛いけど、それ以上に嬉しいよ、朝倉君・・・・」  
「そうか・・・」  
幸せそうに微笑むことりに、俺もふと笑みが浮かぶ。  
 
ことりの膣内は先程までの愛撫ですっかりとろとろになり、  
それでいて断続的に俺のモノを締め付けてくる。  
これは・・・あんまり保たないな・・・  
「・・・・ことり、そろそろ動いてもいいか?」  
「うん・・・もっと朝倉君を感じさせて?」  
その言葉が合図となり、できるだけことりが痛くないようにゆっくりと動き出す。  
「うんぁぁぅ、いっ、痛ぁっ、ああっ、うぅぁぅ、ぁぁっ」  
「はあぁぅ、うぁぁっ、はあぁっ、ああぅっ、ふぁぅっ」  
「んぁぁぅ、ああぁっ、はあぁぅっ、ふぁぅっ、はあぁっ、ああぁっ」  
「ことりっ、うっ、うぁぁっ」  
「あ、朝倉くぅんっ、う、嬉しいよぉっ」  
 
徐々に、痛み以外の声が混じりはじめる。  
「ああぁ、はあぁ、ふぁっ、あぁっ、うぁっ、はあっ、あぁっ、ぁぁ」  
捻りを加えたり、角度を変えながら突いたりと、色々試しながら  
必死に挿入を繰り返す。  
「あんっ、ああっ、あっ、あっ、あっ、ああぁっ」  
性器同士がぶつかる音と、息遣い、そして喘ぎ声が部屋に響く。  
いまや結合部は愛液でぐちゃぐちゃに濡れ、卑猥な音を立てる。  
「ああっ、はあっ、ああっ、ああんっ、はあぁっ、ふぁぁっ、んんっ」  
「あああっ、んんぅっ、ああぁっ、あっ、あっ、あっ、ああっ」  
だんだんとことりも感じてきているようだ。  
俺は手を伸ばすと、ことりの豊かに実った果実を揉みしだく。  
「んぁぅっ、ああっ、はあっ、ふぁっ、ひゃぁっ、んんっ」  
「んぁぁぁっ、気持ちいいよぉっ、朝倉くぅんっ」  
「うぁっ、ことりっ、ことりぃっ!」  
性器同士をぶつけ合い、快楽を貪る俺たち。  
そんな中、射精感が込み上げてくる。  
俺はラストスパートとばかりに、限界まで腰の動きを速める。  
「ああああっ、はあぁぁっ、ひゃぁぁぁっ、ふぁぁぅっ!」  
「ああっ、あんっ、あぅっ、あっ、あっ、あっ、あっ」  
「こっ、ことりっ、でるっ!」  
「な、膣内に、お願い、膣内にだしてぇっ!」  
「うっ、うぁぁっ!」  
「ふぁ、ああああああぁぁぁぁぁぁっ」  
 
ビュクッ、ビュッ、ビュッ、ビュッ、ビュッ!  
大量の白濁液がことりの膣内に吐き出された。  
頭の中が真っ白になるほどの開放感の後、ことりの横にどさりと倒れこむ。  
「はあ、はあ、はあ、はあ・・・」  
「ふあぁ、はあ、はあ、はあ・・・・」  
しばらくの間、ふたりとも酸素を求めて喘いでいた。  
 
 
「ことり・・・・」  
「なに・・・?」  
「痛くなかったか・・・?」  
「うん・・・大丈夫・・・・気持ちよかったよ・・・」  
恥ずかしそうに微笑む。  
「そうか・・・・」  
俺も微笑みかける。  
 
窓の外は闇に染まっている。  
ふたりで身を寄せ合いながら、情事の後のけだるい、しかし穏やかな時間が過ぎてゆく。  
「朝倉君・・・」  
「ん・・・・?」  
俺の腕を枕にしていることりの方を見る。  
「・・・・・これからは、私とずっと一緒に居てくれるんだよね」  
どこか真剣な問い掛けに思えた。  
「ああ・・・・・約束するよ」  
「うん・・・・ありがとう・・・」  
そう言ってことりは本当に幸せそうに微笑んだ。  
 
「幸せなんだろうな・・・」  
「そうだね・・・・・」  
「ははは・・・・」  
「あははは・・・・」  
ふたりして笑いあう。  
こんなに幸せでいいのだろうか。  
そう自分に問い掛けたくなるほど幸せだと思えた。  
 
それからしばらく天井を見上げてぼんやりしていた。  
「・・・・・・・・・・・」  
「・・・・・・・・・・・・」  
「あれ・・・・なんか・・・眠くなってきた」  
突然もの凄い睡魔が襲ってくる。  
瞼が重い。  
「寝てもいいよ。私はここにいるから・・・」  
ことりの言葉にどこか違和感のようなものを感じたが、既に正常な思考ができるほど  
脳が働かなかった。  
「・・・こと・・・り」  
なんとか絞り出したその言葉を最後に、俺の意識は夢の世界へと旅立っていった。  
 
「・・・・・・・・・朝倉君・・・・」  
 
「・・・・・私は・・・・・裏切らないからね・・・・・」  
静かに呟かれたその言葉は、眠りに落ちた純一の耳に届く事もなく、消えていった・・・。  
 
 
 

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