ある日のこと、Tシャツにトランクス一枚というだらしのない格好をして、
自室のベッドで雑誌を眺めていた純一は、不意に何かがベッドの上にあがってくる気配を感じた。
「にゃあ〜」
「・・・うたまるか」
近くにさくらでもいるのだろうか。なんにせよ単体でやってくるなんて珍しい。
それにしても、いつ見ても不思議な奴だ と純一は思った。
その外見からして、どう考えても普通の猫とは思えない。
ふっと、うたまると目があったので、純一は思わずこう訪ねていた。
「疑問なんだが・・・おまえ、いつも何食ってるんだ?」
ずっと気になっていたことだ。第一、奴には口というものが見あたらない。
・・・しかし。
「ははは、猫のお前に聞いても、しょうがねえよな・・・
今度、さくらにでも聞いとくよ。はは、何言ってんだろ俺・・・」
そういって仰向けに寝っ転がると、また雑誌を読み始めた純一に、
うたまるはそろそろ・・・っと近づいてきた。
「ん・・・?」
「にゃあ・・・」
少し驚いた表情を浮かべた純一にうたまるは一瞥をくれると、
おもむろに純一の股間の方へと近づき、今まで見たことのない大口をあけ、
純一のトランクスの隙間からだらしなく覗く陽物に食らいついた。
「・・・っ!?」
一瞬、純一は「食われる!?」と思ったが、一物に歯が立てられる感覚はなかった。
それどころかうたまるの口腔とその舌は、その亀頭を優しく、暖かく包み込み、
まるで蕩かすかのように官能的に愛撫していく。
「ぁんっ、んにゃっ、ん、ん・・・」
「はあぁ・・・っ・・・女の子に、してもらうのって、こんな感じかな・・・」
思わず、純一は声を漏らしていた。
「・・・ってッ!!」
実技経験のない純一は、ことの異常さに気づくのに少々の時間を要した。
猫にくわえられるなぞ、あっていいわけがない。
「・・・や、やめっ、うたまる・・・いい加減に・・・
ッ!?あれっ、あれっ・・・!?」
どういう訳か、純一は体を動かせないでいた。
まるで催眠術にでもかけられたかの如く、何故体が動かないのかわからない。そんな感じだった。
純一がそのことに戸惑う間にも、うたまるは一物を頬張るのを止めない。
生々しい音をあげ、容赦なく舌を蠢かし、裂け目を弄ぶ。
慰み者にされるそれだけは、どういうわけかこの状況下も何故か普段通りの反応を見せる。
「んちゃっ、ん、ん・・・にゃあ」
「やめ、おねがぃ、やめて、はあぁ、はあぁっ・・・!」
やがて先走るものを、一物は吐き出す。
そしてそれをも、うたまるの舌は余すことなく吸い上げていく。
「・・・そいや、お前って雌だっけ、雄だっけ・・・?」
「ん・・・んにゃ、ん、っん・・・」
「って、そうじゃない、そうじゃないぃッ・・・」
性別はどうあれ、禁忌であることには間違いないのだ。
「くぅっ、やめ、やめろってばぁ、あぁっ」
純一は既に限界であった。もう、堪えきれない。
「・・・こんなのって・・・・・・こんなのってえええッッッ!!!!!!!!」
混みあがってきたもの全てをうたまるの口に吐き出しながら、純一は半ば気を失う形で
その身をベッドに沈めていった。
「・・・さん、兄さん」
「・・・はっ!?」
目を覚ますと、目の前には音夢がいた。体が動く。
「・・・音夢・・・!?」
「大丈夫、兄さん?ずいぶん険しい顔をして寝てましたけど・・・
なんか怖い夢でも見てたんですか?」
夢・・・そうか、あれは夢、か。それなら、体が動かなかったのも納得がいく。
救われた、と、純一は思った。
「・・・そうみたいだな・・・でも大丈夫。平気平気」
・・・しかし、夢とはいえ、うたまるに口でされる夢を見るなんて・・・どうにかしているな。
と、そう思った矢先、純一は下半身に幸福感が残っているのに気づいた。
くそ、あんな夢で、夢精したか。
「兄さん?」
「い、い、いや、なんでもないよ」
どうごまかそう・・・と、布団の下の自分を触ってみると・・・
ない。自分の体や衣服にくっついているはずの自分の精液が、どこにもくっついていない。
何故・・・と純一が思った矢先、ベッドの下から、
「にゃあ〜」
という、間延びした猫の鳴き声がした。
「あれ、うたまる?昨日は兄さんのところで寝たの?」
「にゃあ」
「・・・・・・」
「ん、兄さん?どうしたの?」
うたまるは首をかしげる音夢の手から離れると、純一の目の前に腰を下ろして、
「んにゃあ?」
と、顔をのぞき込んできた。
「あれ、ずいぶんと兄さんに懐いてるのね」
「う、う・・・」
「兄さん・・・?」
「うわあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
やがて、二種の悲鳴が渦巻きはじめた部屋の様子を横目に、
さくらは屋根の上で青空を見上げると、はぁとため息をついた。
「お兄ちゃん・・・
せっかく気持ちよく起こしてあげようと思ったのに、ちっとも起きないんだもんなあ」
了