「あー、映画面白かったねぇ・・・」  
映画館から出た後ことりは屈託の無い笑顔を浮かべながら純一に言った。  
「え・・・あ、あぁ。」少し照れながら純一は答えた。  
――もうすぐ春休みが終わりだな、と純一は思った。  
学校が始まれば休みの間の様にこうやって頻繁にデートも重ねる事も出来ないだろう。  
別に急ぐ必要も無いが、純一はある決心を固めていた。  
――もう十分仲も深まっているんだし・・・きっと大丈夫だろ  
純一はことりともう一段階進もうと考えている。  
家に音夢は居ないし、誘うなら今しかないだろう。  
そう考えている内にいつもの分かれ道に到着していた。  
これを逃せばチャンスを失ってしまうだろう。純一は覚悟を決めた。  
「あのさ、ことり。今誰も家に居ないんだ・・・」  
「・・・?」  
「だから、家に・・・来ない?」  
「え・・・!?」  
勿論ことりは純一の言っている事の意味は理解していた。  
別に好きな人だから承諾しても良いだろう、だがことりは躊躇した。  
男が考えている以上に女は処女というものを重要視している。  
ことりの場合はそれが特に強く、どうしてもOKの返事が出てこない。  
迷った末にことりが出した決断は―――  
 
「ゴ、ごめん・・・。あ・・・あの今日お姉ちゃんの結婚相手の人がきてて・・・それで・・・」  
白々しい言い訳だとことりは言った後に後悔した。  
素直に断れば良いのに言い訳をする自分がひどく嫌な女に思えてくる。  
「あ、そ・・そうなの、じゃあしょうがないよな・・・うん・・・」  
酷く落胆しながら純一は言った。  
まぁこれからいくらだって機会があるのだから無理に誘う必要も無いだろう。  
「あ、変なこと言ってゴメンな、じゃあまた」  
「わ・・・私こそゴメン、じ・・・じゃあね」  
何となく気まずい雰囲気で二人はそのまま分かれた。  
“まぁいきなり切り出したからな、断るのも無理ないよな・・・”  
と純一の心の声が聞こえる。相手の心の声が聞こえる能力はこういった時は非常に便利だ。  
あきらかにバレバレの言い訳で断ったので  
ことりは純一が怒っているのではないかと内心不安だったのだ。  
とりあえず純一が怒っていない事が分かり一安心である。  
 
――ちゃんと決心がついたら私から言おう  
そう思いつつ彼女は帰路についた、この後待ち受けている悲劇も知らずに・・・・  
 
空はすっかり暗くなってきた。  
ことりの家までの帰り道は街灯が少ない所為かより暗く感じられるのである。  
その為最近では物騒な事件が起こったり、変質者も出没したりしているという噂である。  
殆どの人は大通りから迂回し、なるべくこの道は通らないようにしていた。  
だがことりは別だった。  
――別にそんなに遅い訳じゃないし大丈夫だよね・・・  
現に事件が起こるのはもっと深夜なのである。そういった事実もあったし、  
何より自分が事件に遭う筈が無いと考えていた。  
 
通りに普段は見慣れない車が一台止まっている事にことりは気付いた。  
まぁ大して気にする事では無いしそのまま通り過ぎようとする。  
その時、いきなり後ろから肩を叩かれて話し掛けられた。  
「あ、ちょっと良いかな。ここから大通りに行きたいんだけど・・・」  
いきなり話掛けられたという事もあり、ことりは驚いて身構えた。  
だが相手は見た感じ20そこそこの明るそうな青年である。  
――まぁこんな明るそうな人が変質者な訳無いよね  
と思いことりも警戒心を解く。  
「あ、大通りまでだったらそこの道を・・・」  
と言っていたその時、不意に頭の中に声が響いた。  
 
“へぇ、今回の女はかなり上玉だな・・・ッククク”  
『え・・・・?』  
どう考えても目の前の人の心の声であろう。勿論男が何を考えているか位分かる。  
ことりは恐ろしくなって咄嗟に逃げ出した。  
「あ、てめぇ逃げるんじゃねぇ!!」  
先程の男の声とは想像出来ない位の怒声が聞こえる。だがそんなのは関係ない。  
逃げなきゃ捕まるのだ、勿論捕まった後の事など想像するだけで恐ろしい。  
だが逃げられるという考えが甘かった。目の前の車の中から男が数人飛び出してくる。  
挟み撃ちにされたのだから当然逃げ場など無い。ことりは敢え無く男達に捕まってしまった。  
「チッ、手間かけさせやがって」男の一人が舌打ちをした。  
ことりはコンクリートの上でうつ伏せの状態で押さえつけられていた。  
「おい、早い所車に乗せないと人が来るだろ・・・」と他の男が言った。  
――車に乗せられる!?  
そう思ったことりは大声で叫んだ。  
「誰か・・・誰か助けてくだ・・・ゴフッ、ゴホッ・・ゴホッ」  
「大声出すんじゃねぇ!!」大柄な男がことりの腹を思いっきり蹴り上げ叫んだ。  
「早く!急がないと気付かれるぞ!!」今度は焦った様子で言う。  
「オラッ、早く車に乗れ」  
男はことりの髪を引っ張りながら命令した、髪が数本抜けるがそんなのは男には関係無い  
「んーーー、んーー!」口を塞がれているので助けを呼ぶことは最早不可能である。  
ことりは抵抗するも出来ずに、そのまま強制的に車の中に押し込まれた。  
 

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