桜。  
 星の大河を背景に散り流れ往く桜の情景をぼんやりと眺めていた。  
 桜の花びらは月の光を反射してきらきらと輝いている。  
 ことりもただ一人、佇む姿がつきの表面に照らし出されている。  
 前にひっそりと聳え立つこの巨大な一本の桜の木。これも、ことりには滑稽に思えながら木の  
天辺を見上げた。  
「白河さん・・・」  
 ふと、後ろから誰かが名前を呼ぶ声が聞こえた。  
 ことりがゆっくりと振り向くと、そこには芳野さくらが立っていた。  
 月夜の散歩でもしていたのだろうか、さくらの姿は寝巻き姿で、そして頭にはうたまるが  
乗っかっていた。  
「芳野さん・・・」  
 ぽつりとさくらの名前を呼んだ。珍しい人に会ったものだった。  
「こんばんは」  
 さくらが笑って、夜の挨拶をする。だから、ことりも微笑んでそれに倣った。  
「・・・・こんばんは、芳野さん」  
「白河さん、何していたの」  
「・・・・桜、見てました」  
「桜・・・散って往く桜を?」  
「はい・・・・」  
 ことりは頷いてから、再び空を見上げた。  
 春には似つかわしくない、少し肌寒い風が吹く。  
 その度に月光で輝く桜が空一面に舞っては覆い尽くして、やがて地面に落ちてゆく。  
「綺麗じゃありませんか?」  
 空を見上げながら、さくらに尋ねた。  
「桜が星の様に輝いて、空一面が満開の星の海・・・・そんな感じで・・・」  
「・・・・悲しいだけだよ。そんなの」  
 さくらはことりの顔をじっと見つめている。  
 
「白河さんにとって、桜は何なの」  
「えっ・・・・・」  
 ことりが不思議そうな顔をして、さくらの方を見た。  
「白河さん・・・何処か悲しそうだったから、まるで、桜と同じ様な気がしたから・・・」  
「・・・・・」  
「・・・・聞いてみただけ」  
 さくらはことりから目を逸らして、空を見上げた。  
 ことりも再び空を見上げて、目を瞑った。  
 風のそよぐ音が耳に囁く。その度に桜が舞い散る・・・・  
   
 
 
「・・・・ん・・・・・」  
 ことりがついあまりの気持ちよさに、甘い声を漏らしてしまう。  
 薄暗い部屋の中、ただ光は、窓の外からの光だけ。  
 密閉されたこの空間に、ベットの軋む音さえよく聞こえた。  
「・・・・痛い?」  
 ことりの上に乗っかっていた純一が  
 ことりは首を横に振った。  
「大丈夫・・・大丈夫だから、早く朝倉君が・・・・欲しい」  
 それだけ言った後から、ことりは自分の言葉に顔を赤らめた。  
 純一は少し笑ってから、分かったと答えた。  
 ゆっくりと腰を動かす。ことりも、純一に合わせて腰を動かす。  
「・・・・ん・・・んん・・・あん・・・!!」  
 腰を動かす度に、愛液のいやらしい水音。  
 そしてことりの快楽に塗れた喘ぎ声が部屋の中に響き渡る。  
「ああん!!・・・・も・・・もっと・・・・もっと欲しい」  
ことりのぼんやりとした目が純一を捉える。その瞬間に、ことりは己の欲望が抑え切れなくなる。  
 
「・・・あん・・・もっと、もっと・・・・ん・・・朝倉君が欲しい・・・んああ!!」  
 埋めて。  
 自分の全てが純一で埋まり、満ち溢れたい。純一と、純一だけのただ一つの存在になりたい。  
 ことりは純一の体の後ろに手をまわす。純一と密着させて。  
 絶対に離れないように、離れたくないから。  
「こ、ことり・・・このままじゃ中に・・・」  
「いいよ・・・出して・・・朝倉君の気持ちを出して!!」  
 全てを受け止めたい。体も、想いも、全部を抱きしめたい。  
「出、出るぞ・・・!!」  
 熱いものが込みあがってくるのがわかる。  
「ん!!あああぁぁ!!!・・・あ・・あ・・・」  
 ことりの中に白いものが全て流れ込む。  
 一瞬、あまりの気持ちよさに力が抜けそうになった。  
 それでも、ことりは気を保って、純一に抱きついた。  
 しばらく、息が乱れる。お互い離れないで、しばらくそのままの状態で二人とも横になっていた。  
「・・・はぁ・・・はぁ・・・」  
「・・・・ことり」  
「・・・ん・・・何」  
「気持ちよかった?」  
「・・・うん」  
「・・・そっか」  
 純一がふと微笑んだから、ことりもつられて微笑む。  
「待って・・・今、ここ綺麗にしてあげるから」  
 ことりは起き上がって、純一のあそこに付着している精液を舐め取ろうとする。  
「・・・・」  
「・・・・」  
 暫くして、ことりは舐めるのをやめて純一を見つめた」  
「・・・・どうしたんだ・・・」  
 
「・・・・忘れられませんか?」  
「えっ・・・?」  
「朝倉君・・・・私じゃなくて・・・・何処かを見ている・・・そんな気がしたから」  
 一瞬、朝倉が反応した。  
「・・・何で、そんな事言うんだよ」  
「だって・・・音夢は、大切な人だから・・・ですよね」  
「・・・・・」  
 否定をしなかった。別に心を読んだわけじゃない。  
 大好きだから。  
 本当に好きだからこそ、その気持ちが自分に向けられていないという事が、  
感じでわかったのだ。  
「・・・私じゃ・・・代わりになれませんか・・・やっぱり・・・」  
「そ、そんな事!!・・・ない・・・絶対ない・・・」  
 純一は必死になって否定した。  
 嘘は決してついてないのだ。ことりの事も、本当に好きなのだろう。  
 しかし、音夢に対しての好きとは、また違っている。  
 本当に好きなのは、本当に純一を幸せにできるのは。  
「・・・・かなわないなぁ・・・」  
「・・・えっ」  
 純一が顔を上げた、その時。  
 ことりは純一の頬を引っ叩いた。  
 突然、何が起きたのか純一は呆然とした。いつものことりでは決してしないこの行為に  
驚いていた。  
 ことりはにっこり微笑んだ。  
「私、エッチな事してる時に他の女の子の事考えてる。そんな優柔不断な人、嫌いです」  
「・・・・」  
「・・・・朝倉君は音夢にお返ししますよ・・・お幸せに」  
 
 
 風が静かに吹いた。  
 また、桜が少し散る。  
 私はこの散り往く桜の様。さっき言われた事を、ことりはぼんやりと思い出した。  
「・・・・音夢ちゃんがね」  
 さくらが桜を見ながらぽつりと呟く。  
「以前こんな詩を詠んだんだ」  
「・・・・・」  
「『ボクはこの島の花びらになりたい  
君の髪に、手に、唇に舞い降り、そっと触れる  
一瞬しか咲かないから桜は美しい  
そんな風に言う人もいるけれど、でも、ボクはこの島の桜が好き  
だって、いつも君の側にいて、ずっと咲き続けていたいから』てね・・・・」  
 さくらが詠み終わると、桜に向かって笑った。  
「いい歌だよね」  
 まるで自分の事の様に、さくらは嬉しそうだった。  
「・・・・そうですね、綺麗な歌ですね」  
 ことりも微笑んだ。  
 淀みもなく素直な詩だからこそ、私には相応しくない。ことりは思った。  
「私にとって桜とは、『儚い恋』・・・・そんな様なものです・・・悲しいですよね」  
「・・・でも、悲しいけれど、散ってゆく桜だって、また一つの趣なんだよ」  
「・・・・・」  
「だから・・・そんな悲しい顔しないで」  
「・・・・そうですよね・・・きっと」  
 さくらと話せて、少しだけ楽になれた。そして、ことりは歌った。  
 
 一瞬しか咲かないけれど、私は一瞬であってもいい、  
 最高の生命の輝きを得られたからこそ、私は幸せです・・・  
 
 
 

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