………………。
「ん、あ……?」
目が覚めて、義之が最初に感じたのは圧迫感だった。
体全体がベットに押し付けられているような感覚。急に重力が強くなった錯覚に陥りそうになる。
慌てて体を動かそうと、脳が命令を送る――――――動かない。
仰向けのまま固まった体は指一本たりとて動かせず、辛うじて二つの目玉が動くだけで、全身の筋肉へ向けて放たれた電波が虚しく空回りをする。
しかし、この事で義之は逆に冷静さを取り戻した。
(なんだ、金縛りか)
驚かせやがって。などと心の中で毒づく。
「金縛り」。「睡眠麻痺」とも称されるその症状は、誰もが一度は経験する睡眠時特有の奇異な出来事。
健全な青少年である義之にとっては、何度も体験したことであり、特に驚くべきことでもない。以前は眠るたびに金縛りにあうなんていう時期もあったくらいだ。
もう慣れたもので、微かに不快感こそ覚えるものの、それだけのこと。
(枕元に足のない人影でも立てば話の種になるんだけどな)
それどころか、義之にはこの異質な感覚を楽しんでいる節さえあった。
何度か金縛りを破れないかと試みるも、やはり徒労に終わり、唯一、自由に動く目玉で辺りを見回してみる。
まず始めに天井が。次に、本棚や、カーテンが見えた。
目に映るのは、自分の部屋。見慣れた光景。暗闇に覆われてはいるものの、それは何ら変わりない。そう義之が思った時――――。
(…………?)
見慣れた光景の中に、妖精がいた。
二人の妖精。
――――片や、金色の髪に碧い瞳。
――――片や、銀色の髪に紅い瞳。
好奇と不安の入り混じった瞳で、義之の顔を覗き込んでいた。
「あ……」
言葉が出ない。
やっとの思いで喉から擦り出したそれは、呻き声にしかならず、意志を相手に伝える役目など果たせない。
そういえば、と、今になって気が付く。
自分は何故、眠っているんだろう? ベッドの上で、横になっていたんだろう?
記憶が曖昧で、途切れ途切れになっている。
「……アイシア、やっぱり、やめようよ……」
今日はなんだっけ?
そうだ。たしか、日曜日だってのに生徒会の手伝いで学園に呼び出されたんだ。卒パの準備の手伝い……だったかな。
「今更、なに言ってるのよ。ここまで来たんだから」
まゆき先輩に見張られている上に、音姉も近くにいる以上、サボるわけにもいかず。真面目に仕事をこなして。
「高い薬使ったんだし。もう、後には引けないよ」
荷物を運んだり、杉並の目論見を調査したりして、なんだかんだで仕事を終わらせて。芳乃家に帰って来たんだ。
「……けど、強引すぎるよ」
そしたらアイシアが緑茶を出してくれて。これがまたすこし熱すぎる、けれど雪の降る中を歩いてきた俺には丁度いい温度のもので。そのお茶を飲んだら、何故か、急に眠気が――――あれ。
そこまで考えた途端、義之は急に自分の意識がクリアになるのを感じた。靄のかかったようにぼやけていた感覚が、はっきりと鮮明に感じられる。
正体の分からなかった妖精。その正体も、今なら解る。
「ア、イ……シア。さくら……さん」
パジャマ姿の二人は、義之の体を挟むように、両脇に控えていた。
「よ、義之くん……!」
「あはは……お、おはよう」
碧い瞳が見開かれ、赤い瞳は気まずそうに視線を逸らす。
義之の唇が、何度が開き、声を出そうとするものの、いまだ金縛りの中にいるのか言葉にならない。しかし、唇の動きから二人には義之の意志は読み取れた。
「『な・に・を』か。……え、えーと……こ、これはね、義之くん……」
「ごめんね……だってさくらが言うんだもん」
「…………?」
「正攻法じゃ、絶対断られちゃうから、って」
しかし、返ってきた言葉は義之にとっては理解不能の四文字。
「でもボクはこんなことは! これはアイシアが……」
「む、責任転嫁はやめてよ! 方法を発案したのはあたしだけど、最終的にゴーサインを出したのはさくらなんだから」
何が何だか、わからない。
二人の言葉と自らの記憶から推察するに、自分が今、金縛りに近い症状になっているのは二人の仕業のようだが。
その目的はさっぱりわからない。何故、二人が自分の傍にいるのかすらも――――。
「?!」
唇に柔らかい感触。
「だからさ。二人で義之くんを、襲っちゃおうって、思って」
二人の唇が触れ合っていたのは、数秒にも満たない短い時間。
ルビー色の瞳が、悪戯っぽく、義之に微笑む。
「秘蔵の薬を一つ、盛らせて貰ったんだけど……結構、利いたみたいだね♪」
先ほどの感触を味わうように自身の唇を舐めるアイシア。碧い瞳が、その姿を羨望の目で見ていることに、果たして義之は気が付いたか。
無理やりに腕を動かそうとしても、何も反応しない。
今の義之は自分の体を嫐ろうとする二人に対し、哀れなほどに無力だった。
「ごめん、義之くん。本意じゃないんだけど……」
申し訳なさそうに目を伏せるさくら。熱を帯びた息遣いが届く。
エメラルドの瞳は義之の顔を一瞥するも、すぐに別の箇所へと移った。魔法の効力でほとんど動かない義之の体。その中で例外的に、激しく脈動している所へと。
義之の顔に魅入っていたルビーの瞳もその視線を追う。
「こんな状況でも、ココはやっぱり元気なんだね……」
呆れ半分、驚き半分。という風に、小さな手のひらがやさしく股間の布地を撫でる。敏感な箇所へ急な刺激に、義之の体が震えた。
アイシアは含み笑いと共に、チャックに手をかけ、布地の下にあるものを取り出す。
「あ……」
飛び出したモノに、さくらは思わず息を呑む。そして、まじまじとソレを眺める。
母親に自分の秘部を眺められる。
その羞恥心に体が震え、ペニスが角度を上げた。
「昔はちっちゃな可愛らしいおちんちんだったのに……。今ではこんなに……」
おっかなびっくりに指を伸ばし、ツン、とソレの先端を突く。
「うぁっ」
「大きくなったね……」
「そ、そんなことを」
びくり、と震えたペニスを、熱の籠もった瞳で見られる。
さくらだけではない。アイシアもその様子を興味深そうに観察していた。
(これじゃ、見世物、だ……)
次は何をされるのか。
義之の脳内を不安と微かな興奮が支配していく。
しかし、さくらはそれっきりで、次の行動を起こそうとはしない。……いや、起こせなかった。
これから何をすればいいのか。解る。
頭では解っている。知識は持っている。伊達に長生きをしているわけではない。
けれど、経験がない。経験のなければ自信なんて生まれない。自分の行為に不安を抱き、動けない。
相手は――桜の木が創り出した分身とはいえ――血をわけた我が子。親子の間柄で、これ以上の行為に及んでしまって本当にいいのか。
最後に残っていた理性がストッパーをかける。
しかし、そんな思考をしている隙に、
「なに固まっちゃってるの?さくら」
「ア、アイシア……」
「義之くんが待ちくたびれちゃうよ
銀髪が揺れる。首を突っ込むようにして身を乗り出し、ペニスの先端に軽く口付けをする。歓喜を表すかのようにペニスが跳ね上がり、
「お先に失礼、んっ……」
可憐な唇が、赤黒く脈打つペニスを咥えこんだ。
「んん……ちゅぱ……、ちゅぱ……」
「う……うあっ」
「あ、あ、あ……」
義之が喘ぎ声をあげ、さくらは目を見張る。
碧い瞳は、肉の竿をほおばるアイシアの姿から一瞬たりとも目が放せない。
アイシアは最後にもう一度吸い、口を離した。
「はむ……はむ……ぷはぁ……」
ゆっくりと、唇を開き、頭を引く。
「……ふふ、ちょっと咥えられただけなのに、もう発射寸前って感じだね。早漏……」
「ぐ、アイシア……」
「あはは。寸止めは、嫌? 大丈夫♪」
加虐心に溢れたルビーの瞳が義之の顔を射抜く。
「……さくら、いつまでボーっと見てるのよ」
「え?」
「バトンタッチ♪」
口元にこびり付いた白濁液を、パジャマの裾で吹きながら、さくらに微笑む。
「さ、次はさくらの番」
「ボクの番……」
ちらり、と義之の陰部を見る。
放出直前で寸止めを喰らってしまったソレは欲望を身に肥大化し、吐き出しどころを求めるかのように天を仰ぐ。
「ボクの……」
「さくらさん……?」
あの様子を間近で見ていて、さくらは、自分の中で何か、枷のようなものが外れた気がした。
すっと、伸びた手がそれを掴む。
「これを……えーっと……」
「ぐぅ!?」
両手でしっかりと肉棒を握り、前後に絞る。
そして、左右上下へ。縦横無尽に弄ぶ。
その様子は、さながら初めての玩具で遊ぶ子供のよう。
振られる度に、くちゃり、とペニスから漏れた液体が淫乱な音をたてる。
「さ、くらさ……! やめ……」
「男の子のココって、こんなに硬いの……? 昔の君はもっと……」
完全に勃起し、硬化しているペニスを無理やりに動かされる。稼動範囲のぎりぎりまで動かされる度に微かな痛みと快感が生まれる。
その傍若無人な振る舞いに、抗議しようと、義之は体に力を込めた。金縛りを破り、なんとか起き上がろうと、
「だめだよっ」
「!?」
――――ドン。
音が響く。義之の体は、上半身目掛けダイブしてきたアイシアを受け止め、そのままベッドの上に逆戻りしていた。
胸の上でマウントポジションを取ったアイシアはにやり、と笑う。
「下の面倒はさくらが見るみたいだから、あたしは上の面倒を見るね」
「…………はむ」
さくらがペニスを口に含む。
その触感に思わず喘いだ義之の口。それを塞がんと、アイシアが唇を押し付ける。
「あ……ぐっ……むぐっ」
「ん〜〜、んっ……」
その舌が、口の中に侵入してくる。二人の唇の間に築かれた橋となって、唾液を交わす。
「んっ、んっ、んっ……」
さくらにはテクニックも何もない。
IQ180の頭脳の持ち主でも、桜の魔法を司る魔法使いでも、長き年月を生きた身でも、性に関してはただの未熟な少女。
だから、吸う。ただ、吸う。一心不乱に息子のペニスを吸い続ける。背を丸め、肉棒を頬張ったその姿はとても母親のものとは思えない。稚拙な口使いが興奮を煽る。
「う、む……ぐぁっ」
二人の魔女に徹底的に体を嫐られている。そして、その内の一人は血をわけた母親。
背徳感すらも、興奮の糧となる。
限界を超えた快楽に胸は狂ったように踊り、陰部は大きく膨らみ、あと数回の射精をしても余りあるだけの欲望が溜まっている。
異常すぎる事態に、自分の精神はとっくにおかしくなってしまった、と義之は思った。
「……んんぅん」
アイシアの舌が歯茎をなぞる。好き勝手に蠢く彼女の舌が義之の口を塞ぎ、声が出せない。
――だから、母親に対して、警告の言葉を発することができなかった。
「………………ッ! んぶっ?!ん〜〜、んっ!!」
ついに、爆発。
咥内めがけて。零距離で放たれたスペルマがさくらの口内を蹂躙する。
欲望の具現である白色の濁流は、小さな口の中で渦巻き、喉の先へ到達しようと流れ行く。
その形容しがたい触感、鼻腔をつくような匂いに、さくらの表情が歪む。
「? あ……」
自分の後ろでの変事を察し、アイシアは汗を散らし、振り返る。
ルビー色の瞳に入ったのは、欲望の塊を頬張り、吐き出さないように、と必死に堪えるさくらの姿。目の切れ目からうっすらと涙を浮かべながら。それでも、口を開こうとはしない。
「さ、さくらさん! そんなの飲み込む必要なんて……」
アイシアの肩越しに叫ぶ。
自分の母親にこんなことをさせるなんて、彼の倫理観が耐えられない。
しかし、さくらは。
「………………」
ごくん。
喉が鳴る。少しずつ喉を鳴らして、口内のソレを嚥下していく。
「んぐっ、んぐっ……。むぐ……はぁっ、はぁっ」
一滴たりとも漏らすことなく。全ての欲望を、その体の中に飲み干した。
「ううう、にがぁ〜い……」
全てを終えた後になり、初めて顔をしかめ、碧い瞳を曇らせる。
そんなさくらの顔を見ていると、義之は自分の中に奇妙な感情が芽生えているのを感じた。
――――この人に、甘えたい。
抱きつきたい。抱きついて好き勝手にしたい。そして、好き勝手にしてもらいたい。
それは果たして、可憐な少女を虐めようとする加虐心か、それとも。
「だめ。そうはいかないよ」
アイシアが考えを見透かしたかのように、義之の体を抑える。
上に圧し掛かりつつも、義之を正面から見ていた体制を変える。くるり、と体を180度回転させ、義之の方に小ぶりな尻を向けた。
何を。と思う暇はない。
「さくら一人だけを相手にしようなんて、許さないから」
パジャマのズボンを膝まで下ろし、そのまま、ショーツも下げる。
そして、義之の顔の両脇に膝をつき、顔面の真上に股間をもってくる。自らの顔は義之の腹の上に。
「……?」
「……いつもこっちが奉仕してばかりだから……たまにはね」
義之の眼前に、アイシアの股が迫る。その中央に位置する一筋の境目が迫る。
慎ましやかに震えるその割れ目は、しずくを垂らして、義之の奉仕を待っていた。
「たまには、君があたしに御奉仕してよ」
ああ、そういうことか。頭の中で理解する。
義之は小さく頷くと、首を浮かし、唇を押し当てた。
「ひゃぅ……あ、さくら」
秘所に触れられた感触に悶えながら、ペニス越しにさくらに声をかける。白液を纏い、スペルマ臭の漂うそこを目で示しながら。
「義之くんのここ。こんなに汚れているよ。お掃除してあげたら?」
「へっ……、お……掃除……?」
「そ、お掃除……あっ、そ、そこに舌はやめてっ」
お掃除。その言葉の意味はさくらにも理解できる。
「お、お母さんだったら、子供のためにそれくらいはしてあげないと…ひゃっ?!」
果たして、どんな世界にそんな道理が存在するのか。常識から一脱した言葉でさくらを煽り立てるアイシア。
けれど、さくらはこくりと頷く。
「……舌はやめてってばぁ」
「…………じゃ、歯で」
「……それもダメ。っていうか、喋らないで。その場所で喋られると、吐息がくすぐったいよぉ」
その言葉通りか、義之が息を吐くたびに桃色の割れ目がひくつくのが見えた。
じゃあ、どうすればいいのか。義之が舌の動きを止めた時、
「…………っ!」
再び伝わってくる下半身からの刺激に悶える。
視界はアイシアの股間で覆われて、見えない。けれど、誰が何をしたかは解った。
「さ、くら……さんっ!」
さくらが玉袋から竿までをなぞるように。舌を走らせる。
こびりついた白色の液体を舌でぬぐい、代わりに自分の唾液を擦り付けていく。
「またそんなことを……」
「………………」
「そこで喋らないでってば……きゃうっ」
義之の唇は完全にアイシアの股間の唇とキスをしている状態に。内部より分泌される淫液を掻き分けて舌を奥へと。
ぐにょり。奇妙な音が響いた気がした。
「よ……義之く……あっ、ふぅ……」
秘肉の中で舌を存分に暴れさせる。
溢れる愛液に味覚が反応し、甘美な食感が伝わる。
膣内を舌で掻き回される悦楽に、揺れるルビー色の瞳。
その瞳が捉えたのは自らの正面に位置する肉の濡れ竿だった。
真っ赤に充血し、白色の液体を纏い、天へと伸びたその竿は、さくらの舌が触れる度にビクン、と反応する。
さくらが舌を使い掃除をしている袋の側とは逆の側。彼女と自らの顔で、ソレを挟む込むように、舌をのばした。
「……っ?!」
「アイシア……、今、ボクがやってるのに……」
「えへへ……。挟み撃ち……ってやつかな……んっ」
舌と舌でペニスをサンドイッチにされる。
さくらが舌の上で玉袋を転がし、アイシアの舌が竿から亀頭までをなぞる。
陰毛にこびりついた液体まで念入りに舐め取って、お掃除を遂行する。
一回、二回。二人の舌が動くたびに全身が痺れ、脳裏へと伝達される極上の恍惚。
そして、義之も眼前の割れ目への攻撃をやめようとない。
「うぐっ……うう……」
「ん……んんっ」
「はっ、はっ……」
三人の魔法使いは、ただ浮情に狂う。
その様子はまるで、伝承に聞くサバトのよう。倫理も常識もなく、乱れ、狂い、ただ快楽を享受していた。
◆
それは、何度目の射精だったか。
再び、白い欲望が宙に散る。
「…………」
気が付けば、義之の全身を束縛していた麻痺はほとんど薄れていた。
麻酔を打たれた時のような肌が膨れた錯覚や、酔っ払っている時のようなふらつきこそあるものの、体は動く。
アイシアの姿が視界に入る。気力を使い果たしたのか、シーツに包まったまま動かない。
大股開きになった股座。その中心の唇は、大きく開かれ、内部からこぼれた液体が辺りを濡らす。
そして、さくらは未だに自分の股座にいた。
見目鮮やかな金色の髪を白で汚して、高揚した頬を隠そうともしない。呆然と自らの体に纏わり付いた白濁液を眺め、息を吐く。
「さくらさん。なんで、こんなことを?」
自分の出したモノがさくらを汚し、貶めた。
その事実に胸が痛む。
「え?ああ……義之くん。もう動けるんだ……」
「さくらさん……」
「効果時間短いなぁ……それとも、義之くんだったからあまり利かなかったのかな」
「さくらさん、俺たちは」
お互いの欲望を交し合う。この二人には、そんなことは許されない。
「親子、なんですよ……」
「…………うん。そうだね」
義之の言葉にしゅん、と肩を落とす。
「やっぱり……ダメだよね。こんなことしちゃ」
「……アイシアに、何か言われたんですか?」
そんな憶測が義之の脳裏に浮かぶ。たまに思い込みで暴走しがちなアイシアが強引に事を推し進めたような。
「アイシア? ……ううん。違うよ。この状況を誰よりも望んだのは、ボクだよ」
しかし、その推測は他ならぬさくらによって否定される。
「解っちゃったんだ。ボクが君に抱いている感情は親子の情だけじゃない……って。ボクは君のことが……」
「! 俺は……」
その答えは想像だにしなかったもの。
義之にとって、さくらは母親だ。初めて会ったその時から、今まで。彼女に抱いていた思いは親子のもの。
だから、自分へ向けられていた思いに驚きを隠せない。
「俺は、貴女を……そういう対象として見るなんて」
首を振る。
予想できていた答えだった。解っていた答えだった。それでも、さくらは碧い瞳を曇らせる。
「うん。そうだよね。それが、普通だよね……でも、ボクは。君と色々なことをしたい。色々なことをして、もっと幸せな気持ちになりたい……」
言いながら、ズボンを下げる。
さくらの陰部を覆っていた布地は、さくら自身の手で取り払われ、中身があらわに。
金色の毛が薄っすらと生え茂った割れ目は。純潔をあらわすかのように綺麗な桃色。
自ら、その秘すべき場所に指をかけ、義之にさらけ出す。
「義之くん」
「……さくらさん。それ以上は、ダメです」
「だめ。見て、ボクの……大切なところ」
淡い桃色の門が開く。その中には先への道を封じるかのように薄っすらとした膜が張られていた。
今までずっとさくらが護り続けてきたモノ。否、捨てられなかったモノ。
「処……女……、だったんですか……」
呆然として、義之が言った。
さくらの外見からはその方が自然に思える。むしろ、大多数の人間は彼女のことをそうだと思い、処女でなければ驚かれるくらいだろう。それくらいに、彼女の体は幼い。
でも、それは義之にとっては驚きに値することだった。
「……うーん、やっぱ引かれちゃうか。当たり前だよね……この年になってまで未体験だなんて」
あはは、と。自嘲気味の笑いが響く。
指を割れ目から離し、次に向かうは上着のボタン。
義之が止める間もなく、次から次へとボタンを外し、ついには全てのボタンが外れる。ほとんど膨らみのない小さな丘とその中央に位置する突起が、健気に自己の存在を主張していた。
「お願い、だよ。義之くん。ボクを犯して」
「……できません」
「お願い……ボクを大人の女にさせて……。ボクの純潔を奪って……ボクの処女を、君に捧げるから……」
ぞくり、と。
義之の中の何かが刺激される。
今のさくらの姿を見ていると、自らの最も深いところに押しとどめてきた何かが、溢れてしまう気がしてくる。
「覚悟を決めたら、義之くん?」
アイシアが囁く。
彼女はいつの間にか、義之の肩の上に自身の顎をのせていた。
「女の子にここまで言わせておいて、応えてあげないなんて、男気がなさすぎるよ」
「『女の子』……ね」
その言葉に思わず義之の表情が曖昧に歪む。――――もう一度聞きたい。実際のところ貴女たちはいくつなんですか?
仮にたずねてもお決まりの文句ではぐらかされると解りきっているが。
「………………」
義之は大きく息を吸い、そして、吐いた。
その瞳は意志を定めたかのようにしっかりと。自らの母親を見据えていた。
◆
「本当に、いいんですね……?」
ベッドの上に座り込み、背を向けたさくらに対し、義之は最後の確認をする。
「……うん。お願い、義之くん」
「わかりました……。じゃあ、行きます」
自ら誘ったこと。しかし、さくらは緊張しているのか。手を胸の前で合わせ、荒い呼吸を繰り返している。
本来ならそんなさくらを安心させるのも、義之の役目なのだろうが、今はその役を務めれる人間が別にいた。
「大丈夫……。あたしがついてるよ」
前に回りこんだアイシアが、彼女の両手を取る。
緊張に震えるさくらの唇。そこに、自らの唇を押し当てた。
「んっ?! んん〜〜っ」
深々と。二人の唇があわさる。
突然のことに碧い瞳は驚愕に染まり、赤い瞳に抗議の視線を送る。
「んっ、ん……」
唇と唇の間を繋ぐ唾液の虹が、暗闇の中で煌き、二人の魔女は顔を離した。
「あはは、少しは楽になった……?」
「うぅ……、こんなので緊張がほぐれるわけないよぉ……」
しかし、義之には肩の震えは大分とおさまっているように思えた。
それを合図としたかのように、両手をさくらのパジャマの中に侵入させ、
「きゃ……」
腰からわき腹まで、体のラインに沿ってなぞる。
義之よりも二回りも三回りも小さな細い体。幼すぎる子供の体。
「さくらさん……綺麗な体、してますね」
「そ、そう? ありがとう……」
触るだけでわかる。なめらかな肌。汚れを知らない純潔の体。
その感触に、思わずこぼれる賛美の言葉。
「ま、あたしほどじゃないけどね」
アイシアが自画自賛しながら、さくら以上に真っ白な肌色をした指で、彼女のへそを突く。そのまま指を這わせて、さくらの太股まで撫で下ろす。
「ちょっと……アイシア……! あっ……ひゃぅ」
義之が、小ぶりな丘を両手で揉もうとする。しかし、それはまるで洗濯板のようで。揉めるだけの質量なんてなかった。
「うぅ、これでも、昔は少しは成長してたんだけど……」
丘の頂に指を進ませ、その突起を指でこねくる。
刺激を受けるたびに小さな乳房は振るえ、徐々に張りをましていく。
乳輪は少しずつ、その半径を拡大していき、乳房は真っ直ぐに勃起する。
「いえ。とても素敵だと……思います」
「あっ……はぁん」
二人の指の動きに連動して、汗を振り乱す。
意外と手馴れている。
その事実に、少し驚く。
ずっと、子供だと思っていた。背伸びしたがる年頃で、自分より背も遥かに高くなったけど、それでもまだまだ子供のままだって、考えていた。
でも、このベッドの上では、義之は自分よりもずっと大人で。自分がリードするどころか、リードしてもらうばっかり。
(ちょっとプライドに傷がついた……かも)
自分より数十歳も年下の子にされるがままになる。
照れ臭い。けれど、嫌な気分はしなかった。
「や、ふぅん……」
アイシアの指が、さくらの股間の割れ目を撫で、溢れている愛液と汗を掻き分ける。
性的刺激を受け続けた女性の膣は、奥のほうがどんどん膨張し、逆に入り口は狭まっていく。受け入れた精子を円滑に中へと誘い、外にこぼさないようにするためだ。
びっちりと閉じている、その入り口を、無理やりに指でこじ開ける。
既に十分な湿り気を帯びていたそこは、なんの抵抗もなくアイシアの指を受け入れた。
「あ……あぁぁ……ん」
「あはは、まだまだ若いね、さくら。 すっごい、ぐちょぐちょだよ……♪」
「や、やだ……そんなこと言わないで……」
本来、女性のそれは年齢を重ねるたびに性交の手段として機能を失っていく。愛液を生み出す膣壁の隙間が塞がっていき、最終的に何も漏れ出すことはなくなる。
しかし、さくらの体は例外。
時間が止まっているかのように、幼いまま、ずっと変わらないその体は。その膣は。愛しい人を迎え入れるための準備を着実に整えていく。
「やだぁ……義之くんに触られるのは……ひゃっ……いい、けど、君に弄られるのはいや、だぁ…うぅ」
「え〜。あたしなりの親愛の表現なのに」
不満そうに頬を膨らませつつも、指を引き抜く。同時にぬっとりとした大量の愛液がこぼれ出た。
「もうちょっと前菜を楽しもうかと思ったけど、もう、準備オッケーみたいだよ」
その言葉はさくらではなく、義之に投げかけられたもの。
「熟成された……っていうか、熟成されすぎの熟女のものだけど、たっぷり堪能してあげてね、義之くん♪ ん〜、やっぱりどっちかと言うと熟女っていうより老……」
「……ねえ、アイシア。そのネタは君にとっても諸刃の剣……ひゃっ!?」
義之は指での攻めをやめ、さくらの両脇を抱えて、彼女を立ち上がらせた。
――――軽い。少しの力を込めただけで浮き上がり、少しの力だけでその動きを抑え込める。
「すみません」
「わっ、義之くん……」
「本当に、本当に……。行きますよ、さくらさん」
義之自身も腰を浮かし、高度を合わせる。体に彼女をもたれさせるようにしながら、肉の槍の照準を定める。
天を仰ぎ、欲望の吐き出しどころを求めているペニス。股座を潜らせるように、さくらの股間の割れ目と、ソレをあわせた。
「後ろから、ですけど、いいですか」
「うん。来て、義之くん。……なるべく、痛くないようにね」
「……努力は、します」
最後の確認。
申し訳程度に交わした会話の後。
――――ずぶり。
肉槍は割れ目の中へ吸い込まれていった。
「あ……ぎぃ……あぁぁぁ!!」
半世紀以上にわたって、彼女の純潔を護ってきた膜は、いとも簡単に破れ去る。
「あ、は……ぁ! はははは……よし、ゆき……くぅん」
膣肉が抉られる実感に、全身が痺れる。
侵入してきたモノを感じる。その熱を、その形を。
「よ、よし、ゆき……くん……義之くんが、ボクの中に」
さくらの中で脈動する。ソレが震えるたびに、震えはさくらの全身に伝達し、金の髪を揺らす。未曾有の感覚に身もだえし、汗と涎が飛び散った。
「く……あ、さくらさん……!」
気持ちいいなんてものではない。小さな穴にぎちぎちに詰められた肉の竿。
狭い、細い、小さい。熟しているなんて嘘ばかり。まだまだ未成熟のその膣内。
半世紀以上も異物を入れずに温存されていたそれは、初めて受け入れる異物を、容赦なく攻め立てる。ペニスに喰らいつき、全てを吐き出させるかのように締め付ける。
「あ、あ、あぁぁ……」
さくらの口から涎がこぼれる。痛いのか、気持ちいいのか。それすらも自分ではわからない。
「……さくら、痛い?」
さくらが違和感を感じたのはその時。アイシアの頭が自分の股座にあった。
少しウェーブのかかった銀色の髪がお腹に触れて、くすぐったい。
赤い瞳が二人の男女の接続部を注視する。
義之とさくらの繋がっている部分。肉の槍が肉の唇に突き刺さっているその箇所を。
処女を散らした証である赤い液体と、欲望が生み出した淫液と、そして汗が混じりあい、こびり付き、異臭を発するそこに。舌を伸ばした。
「痛いよね。でも、これで少しは……」
子猫を舐める親猫のように。満遍なく舐め上げる。
「は……はぁぁん……ああああ……!」
さくらには何が何だかわからない。
膣が疼き、その中に差し込まれたモノの鼓動を感じる。さらに外側の部分にも有機的な触感を。全身が電撃でも浴びせられたかのように痺れ、悶える。
言葉を発そうとしても、喉を通っている途中で快楽に飲み込まれて、淫声と化す。
「義之くん……!アイシア……!」
脳細胞が恍惚の波に飲み込まれる。全てが千切れてしまいそうになる。
ふと、自分の中に入っている義之のそれが、一際大きさを増した。
「…………? あ、義之く……」
「……すみません。俺、もう……」
「……うん。ボクも、もう。……いこう、いっしょに」
――ドクン。
アイシアの舌もその鼓動を感じる。
(え? 中で……出しちゃうの?)
さくらを支える腕に力が籠もる。細い体を離さないように、しっかりと押さえつける。股間の槍が、一気に膨張し。
「母さん、イきます……!!」
――――全てを解き放った。
どこかの世界では自分はこの道を通って、この世に生まれ落ちたのか。その道を己の欲望が進む。
「ああぁぁぁぁ……義之くんのが、来る来る、来てるよぉ……!」
放たれた欲望の白濁流は膣内をあっという間に制圧。その奥部に配置された生命を育む機関へと流れ込む。
その二つを完全に満たしても尚、濁流は止まらない。有り余る欲望は、さくらの精子貯蓄量の限界を越え、逆流。入り口へと舞い戻り、外へ。
そして、漏れ出した白濁流は、唇を押し当て待ち構えていたアイシアへと流れ込む。
「じゅる……独り占めは、だめだよね、さくら……」
じゅるる、と音をたてて。濁液を吸っていく。
「はぁっ、はぁっ……はぁっ」
「あああああ…………」
全ての欲望を出し切り、息を吐く義之。
小さな体で、その全てを受け止めたさくらは完全に放心状態になっていた。
時計の針の音が聞こえる。
先ほどまでの興奮が嘘のように、部屋は、静まり返っていた。
そんな折、アイシアが顔を上げ、呆れたよう口を開く。
「あ〜あ、本当に中で出しちゃった」
親子なのに、と。
義之とさくらを見る。心底呆れた瞳で。
その態度が妙に冷たくて。思わず肩を竦めた。
「あれだけ煽っておいて、そう言うかい」
ゆっくりと、さくらの体から自分のペニスを引き抜く。
「許可したのは貫通式までだよ。中で出しちゃダメだったの……」
拗ねるように頬を膨らませるアイシア。
ぐったりと頭を垂らしているさくらの髪を撫でる。
「さくらを弄るのに、夢中になりすぎて、言うの忘れてたよ……」
「ははは……」
「っていうか、義之くんが悪いの。 お母さん襲って、犯っちゃうなんて…………変態」
ぐざり。
部屋の中にそんな擬音が響き渡る。
「なっ!? ……俺は襲われた側だ」
「さくらを無理やりに抑え込んでる時の義之くんの鬼畜フェイス、忘れられないな〜」
「………………」
「これで晴れてマザコンとロリコンの二重苦の変態さんだね♪」
気が付けば、襲われていて、懇願されたのでその通りにすれば、何故か自分はレイプ犯のような扱いを受けている。
もうこうなっては苦笑いしか出てこない。
「あのさ、アイシア」
「マザコンってあたしはあんまり良くないと思うけどな〜……なに?」
このまま延々と罵られるのも中々堪える。一種の属性の人間ならばこういうのが快感なのかもしれないが、生憎と義之はそういう趣向ではない。
事態を解決するためアイシアに尋ねる。言葉は濁さず、単刀直入。野球で言うのならど真ん中ストレート。
「どうしたら、機嫌直してくれる?」
「何を? あたしは別に怒ってなんかいないよ? マザー・アンド・ロリータ・コンプレックスの鬼畜義之くん」
「……アイシア」
真摯な瞳で真っ直ぐに、ルビーの瞳を見る。
「………………」
さすがにいつまでもへそを曲げているのも居心地が悪かったのか。アイシアは、ふん、とかわいく鼻をならし、
「さくらにだけプレゼントしておいて、あたしにはなし?」
義之を誘った。
一瞬、義之は目を丸くするが、すぐに言葉の意味を察して、ため息を吐いた。
「……また、やるのか」
「そ、大トリはあたし。正常位でも騎乗位でも、さっきみたいにバックからでもなんでもいいよ♪」
「………………」
毒喰らわば皿まで。もはや、ここまで来てしまったんだ。あと一回やるくらい、たいして変わらないだろう。
そんなことを義之は考え、同時に、そんな考えに至る今の自分は相当に狂っているとも思った。
「……今日はこれで本当に最後だからな」
己の分身をちらり、と見る。
先ほどの射精で全てを出しつくした、とでもいわんばかりに萎びれて頭をたれたペニス。しかし、行為が始まればまたすぐに立ち上がることだろう。
アイシアが仰向けに寝転がる。
「うん。それじゃ……お願い、義之くん」
その言葉と共に、義之に全てを委ねた。
◆
静けさが、白々しく感じる。
沈黙と暗闇に支配された自分の部屋。
窓から差し込む月光だけが唯一の光源。
「……………………」
天井の電灯が目に入る。
明かりの灯っていない、電灯。暗闇の一部と化したそれは部屋を飾り立てるオブジェクトでしかない。
「…………ああ」
吐く息も、冷たい。
春も近いとはいえ、未だ気温の低い中。暖房も何もつけずに、布団も毛布も被らずに、そして、衣服さえ纏わずベッドで横になっていたのなら、当然のことだが。
不思議と、義之は寒さを感じなかった。熱が体中に染み付いて、離れない。それに。
自分の腕を枕代わりにして、寝息を立てている二人の少女。
身に纏っているものなんて、何もない。
月光の下に晒された妖精のように可憐な体。その所々に白濁の液体がこびり付いている。
「…………散々、やったな」
これ以上ないくらいに欲望を吐き出した。これ以上ないくらいに欲望の限りを尽くした。
冷静になった今では、人間の体って短時間であれだけ沢山の精子が生成されるものなのか。なんて、馬鹿馬鹿しいことを考えてしまう。
(これも桜の魔法のおかげか……なんてな)
また、変な夢を見るかもしれない。
これだけ上記を一脱したことをやったんだ。夢に出てきても、おかしくない。
(……いや)
現実でこれだけやったんだ。夢の中でまでこんなことをしていたら、流石に精力が持たない。
そう考える義之の体は徐々に眠気に支配されつつある。
義之自身もそのことを認識し、目を閉じた。
もう、思考タイムも終わりだろう。今日はとにかく疲れた。
「おやすみ、アイシア。おやすみ、さくらさん」
二人の寝息を子守唄にしながら。
深い夢の中へと、落ちていった。