音姫、高坂まゆき、他の女生徒。  
それと生徒会役員なのだろう、見たことのある顔の男子生徒がチラホラと。  
彼ら彼女らは入れ替わり立ち替わり相手を換え、体位を変え  
誰彼100円、かまわず交わり続ける。  
少し離れた扉の隙間からその様子を伺う義之ところまで淫臭が漂ってきそうだった。  
乱交現場を目撃した義之は、何をしているのだ、と  
音姫やまゆきのところに止めに入ろうと思ったが  
幼い頃から本当の家族のように育った音姫の今までに見たこともないような表情と  
普段絶対上げないような艶のある媚びた声を聞いて  
どうしても扉を開けて中へと踏み込むことができなかった。  
しかたなく、その日は帰ることにする。  
 
次の日、躊躇いながらも生徒会室へと足を向ける。  
机の横には山積みの書類。  
忙しいだろうに、いつもの屈託のない笑顔で音姫は迎えてくれた。  
数日間、夜の学園で繰り広げられていた行為を咎めようと  
せめて理由や話だけでも聞こうと思った義之だったが  
結局の所、彼女のいつもの笑顔の前に何も言えないのだった。  
 
夜、朝倉邸を訪れ由夢に音姫がまだ帰宅していないことを確認すると  
また学園へと出かけることにした。  
義之は思う。  
昨夜までのように、また彼女たちが学園という場所に似つかわしくない行為をしていたら  
はたして自分は、現場に踏み込み止めることができるのか。  
いや、そもそも自分はどうしたいのか。  
答えが出ないまま学園へと到着する。  
門を開ける。  
下足室で靴を履き替える。  
なるべく足音を忍ばせて、3日間連続でいかがわしい行為の現場だった  
付属校舎4階の隅の教室へと向かう。  
緊張した。  
心臓の音が外へと漏れているのではないかと思えるぐらいにドクドク言っていた。  
角を曲がる。  
くだんの教室まで、あと少し。  
あと2部屋。  
1部屋。  
着いた。  
扉に手を掛けた。  
暗くてよく見えないが、たぶん引き戸へとかけた自分の指は震えているだろう。  
 
そこで、義之は気付いた。  
暗くて、よく見えないのだ。  
つまりは電気がついててないのだ。  
昨日までは教室に明かりが灯っていたはず。  
だからこそ、喘ぎ声の主が音姫やまゆきだとわかったのだが  
たけど今日は消えている。  
真っ暗なのだ。  
唯一の明かりは、廊下に等間隔で灯っている2号式の屋内消火栓の赤と  
緑の非常口のランプだけ。  
少しばかり落ち着きを取り戻した指で扉に隙間を作った。  
耳をそばだてる。  
何も聞こえなかった。  
真っ暗我利のなかで行われているという可能性もあったが、どうやら誰もいないみたいだ。  
足から力が抜けて、その場にへたり込みそうになった。  
ホッとしたような、残念だったような。  
ともあれ、音姫たちはここにはいないのだ。  
廊下に座り込んでいても仕方がない。  
それに夜とはいえ、見回りの先生や用務員に見つかりでもしたら  
言い訳が大変そうだ。  
 
義之はちょっぴりガクガクする足を叱咤して立ち上がる。  
そこではたと気付いた。  
夜とはいえ、見回りの先生や用務員ぐらいはいるはずなのだ。  
音姫たちがどれぐらいの周期で、どのぐらいの回数を行っていたのかはわからない。  
だが少なくとも3日は、淫らなことが行われていたはずなのだ。  
しかも電気を煌々と点けて。  
考えながらも、義之は廊下を歩いて階段を下り1階へとやってきた。  
靴を履き替えて外へと出る。  
まったく、この学園のセキュリティはどうなっているのだろうか。  
そんなことを考えながら、グラウンドに出て校舎を振り返る。  
闇に包まれた風見学園。  
年季は入っているものの、修繕や建て直しがきちんとされているため  
あまりボロっちさを感じさせない。  
周囲の真っ暗がりの中、浮き上がるように電気のついた職員室を見る。  
するとそこに音姫がいた。  
外の世界は闇に沈んでいたが、職員室だけは電気が点いているため  
中の様子がものすごくよく見える。  
職員室にある外側の入り口からほど近いところ。  
そこで、音姫は一定のリズムで跳ねるような動作をしていた。  
いま義之がいるグラウンドは、職員室よりも低い位置にある。  
そこからでも見えるということは、彼女は机か何かの上に乗っているのだろう。  
大きなリボンと長い髪を振り乱しながら踊り続けている。  
一心不乱に。  
しかも裸で。  
よくよく目を凝らすと、音姫のすぐ後ろに誰かいるように見える。  
現国のハゲ山だ。  
二人の位置関係からすると、ハゲ山(本名・長谷山忠夫 45歳 妻子持ち)が彼女を膝の上で抱えているようだ。  
そして音姫の動きは見たことがある。  
昨日の夜にドアの隙間から見た、男の上に跨って腰を振る動き。  
騎乗位の動作だ。  
 
教師とセックスをする音姫。  
いったい何がどうなっているのか。  
そう思い、義之は外から職員室をそっと覗き見た。  
すると中では昨夜と同じ光景が、いや、それよりももっとすごい光景が広がっていた。  
昨日の乱交現場は音姫・まゆきを含め、せいぜい10人ちょい。  
ところが今度は、40人あまり。  
しかもその中には教師まで混ざっている。  
確認すると、知っている顔は音姫・まゆき、生徒会の面々。  
そして驚くべきことに、いつも連んでいる板橋渉の姿までもがあった。  
渉も他の生徒達同様全裸で、しかも何故か  
普段からホモだと噂される、髭の濃い体育教師のサブ川(本名 寒川茂実 38歳 独身)にケツを掘られていた。  
いったい何がどうなっているのか。  
先と同じ疑問が頭の中でグルグルと回る。  
 
何かがおかしい。  
義之は自分の頬を引っ張る。  
それなりに痛い。  
つまりは夢ではないということだ。  
とりあえずは音姫を止めよう。  
説得しよう。  
そう決心し、扉を開いた。  
中へと踏み込む。  
とたんに鼻を突く生臭さ。  
男女合わせて40人ほどが発っする噎せ返るような性臭に顔を顰めつつも  
義之は乱交パーティー会場と化した職員室の中を進み、  
チリチリチリチリチリチリチリチリ…  
中を進み、  
チリチリチリチリチリチリチリチリチリチリチリチリチリチリチリチリ……  
そこで、意識が途絶えた  
 
 
気が付くと、自宅のベッドの上だった。  
枕元の時計で時刻を確認する。  
まだ5時を少し回ったばかりだった。  
昨日は寝る前にカーテンを閉め忘れたのか、朝の静かな光の中  
ガラスの向こう側に隣家の瓦屋根が見える。  
朝倉家の屋根だ。  
朝倉家・・・・・・音姫・・・・?  
義之はまだ寝ぼけたままの頭で、昨日の出来事を思い出そうとする。  
何か大事なことがあったような気がする。  
気がするのだが、何故だか思い出せない。  
まあ、いいか。  
大切な用事ならばしばらくすれば思い出すだろう。  
時刻はまだ5時過ぎ。  
おやすみなさい。  
ゴロンと寝返りをうった義之は、2度寝を決め込むことにしたのだった。  
 
 
つづ…かない  
 

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