杉並の誘いに多少魅力を感じたものの  
結局はかったるい、と断った。  
これでは良く知るどこかの妹キャラだな、と笑い  
淡い色の花弁舞い踊る学園までの道のりをゆっくりと歩いた。  
 
夕方。  
保護者であるさくらはここしばらく出張中なので、コンビニへ買い出しに行く。  
生活費にはまだ余裕があるので、奮発して焼き肉弁当にした。  
その帰り道。  
兄さん。  
背中から声がかけられる。  
義之のことをそのように呼ぶのは、この世で一人しかいない。  
振り返ると、やはりというかなんというか予想通りの人物がそこにいた。  
 
コンビニからの短い道のりを由夢と話しながら帰る。  
ここのところ、ずっと音姫の帰りが遅い。  
はて、いつだったか聞いた気もするが。  
なので今日は、差し入れを持って行くのだと由夢が言う。  
もちろん彼女の手作りだそうだ。  
色々な意味で止めた方がいいと、やんわりと言い聞かせようとしたのだが  
兄さんはそんなに叫びたいんですか、と笑顔で凄まれたので  
それなら胃薬も一緒に持っていかないとな、と笑って返した。  
 
 
夜。  
どうしてこうなってしまったのか。  
学園にいる姉に弁当を届けようと歩く由夢の隣。  
何故だか義之が並んでいた。  
夜道の女の子の一人歩きは危険なんですよ。  
兄さんは私が襲われてもいいんですか?  
いつものことといえばいつものことだが、そのように言い切られ  
仕方なく妹のエスコート役をするはめになったのだ。  
「〜♪」  
理由はわからないが、妙にご機嫌な義妹。  
お礼として、兄さんにも明日のお昼にお弁当を作ってあげますから。  
まだ死にたくなかったので、その申し出は丁重に断った。  
 
正門は閉まっているかもしれないので、裏手にある通用門から入ることにした。  
携帯はマナーモードに。  
夜とはいえ、学園内で着信音が鳴るのは気が引ける。  
それに辺りか静まり返っているので、かなり響くだろうし。  
ぺた、ぺた、ぺた、ぺた  
下足室には鍵が掛かっていた。  
しかたがないので来客用の玄関口から校舎内に入る。  
ゆえに今二人が履いているのは、上履きではなくスリッパである。  
ペタペタと足音をさせながら階段を登り、音姫がいるであろう生徒会室へ。  
到着して扉に手を掛けると、鍵がかかっていた。  
それに真っ暗。  
あちゃあ、入れ違いか。  
由夢は溜息をついて義之を見上げ。  
戻ろっか、と困った笑顔を作って見せた。  
 
 
二人で夜の学園を出る。  
息が白かった。  
年中桜が咲き乱れているとはいえ、この島の気候が常夏というわけではない。  
もうあと一月もすれば、花弁と共に雪も舞う。  
 
木枯らしとだえて、さゆる空より。  
地上に降りしく、奇しき光よ。  
頭上には冬の星座。  
吹きつける北風が由夢の髪とスカートを揺らし、地面に落ちた小さな桜色の欠片を舞い上がらせる。  
もうそろそろコートやマフラーを出すべきだろうかと話しながら  
義之と由夢は帰路へとついた。  
 
 
 
翌日。  
由夢が校舎の上から飛び降りて死亡していることを義之が知ったのは  
自分のクラスに着いてからのことだった。  
死亡推定時刻は昨晩の8時半から9時頃と断定。  
 
 「お礼として、兄さんにも明日のお昼にお弁当を作ってあげますから」  
 
笑いながらそう言っていた由夢。  
だけど、もう二度と食べることはできそうになかった。  
 
 
BADEND 2(由夢)  
(選択枝が追加されました)  
 
 
 
   
 インターミッション  
由夢「まったく、困った兄さんですね。  
   もう少し、あとほんのちょっぴりだけ注意力があったなら  
   この悲劇は回避できたかもしれませんよ?  
   正解率1%未満の惨劇に挑め、なんて言いませんから  
   よかったらまたチャレンジしてみて下さい」  
 
 
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しおり1  08/11/09 21:37  
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