「………………はぁ」  
 
 桜の大樹。全ての花弁を地に落とし、すっかり季節に似合う姿となってしまっているその大樹の下で。  
 アイシアは独り、息を吐いた。  
 
 この結末は、わかっていた。  
 わかっていたし、覚悟していた。――――けれども。  
 
「やっぱり、悲しい、よね」  
 
 胸が痛い。  
 その中にあるのは、もうここにはいない彼への想い。  
 脳裏に浮かぶのは、もうここにはいない彼の姿。  
 
 アイシアのことをずっと忘れないでいると、ずっといっしょにいると誓った少年は桜の魔法と共に、この世界から消えた。  
 大切な人を護るために。己の存在と引き換えに奇跡を起こしたのだ。  
 それは、つい先ほど。数時間前の出来事。  
 彼の顔も、声も、繋いだ手の感触も。一部と違わず思い出すことができる。  
 
 それから幾ばくかの間、大樹を見つめていたアイシアだったが。  
 
「……行こう」  
 
 そうぽつりと呟き、踵を返した。  
 
「約束、したから……一人でも強く生きていくって」  
 
 彼との最期の言葉。  
 悲しさの中に、決意を秘めて。思い出を胸に、孤独な明日へ。  
 少女が桜の大樹に背を向け、一歩を踏み出そうとし――。  
 
「やっぱり、ここにいたんだね」  
 
 ――ふいにかけられた声に、上げかけた右足を止めた。  
 
「さ……さくらっ!?」  
 
 紅の色の瞳が驚愕に染まる。  
 その驚愕を見つめる碧い瞳。その碧さの中には、なにもこもっていなかった。  
 
 さくらは規則的な足音でアイシアの前に立つ。対峙するかのように、二人の髪が揺れた。  
 
「アイシア。義之くんは?」  
「………………」  
「変なんだよね。義之くんが、この間からずっと家に帰ってこないんだ。もう一週間にもなるんだよ」  
「………………」  
「あちこち探してみたんだけど……どこにもいなくて」  
 
 淡々と。台本を読むかのように。  
 さくらの声は感情のこもっていない一本調子なものだった。  
 やはり、その碧い瞳には何も宿らず感情を読み取ることはできない。  
 
「さくら……義之くんは……」  
「………………」  
「義之くんは……!」  
 
 いつの間にかアイシアの目は涙で濡れていた。  
 思い出すのは辛い。  
 だが、自分が伝えなければいけないことだ。  
 アイシアはそう思い、さくらの方に向き直る――――が、彼女が見たのは息子を失って悲しむ母親の顔ではなかった。  
 
「あっはははははは、あははははっ!」  
「さ、さくら…………?」  
「わかってるよ、わかってるよ。あははは。何があったかなんてね」  
 
 狂気を帯びたさくらの笑いに、思わず圧倒される。  
 アイシアはわけがわからない、という思いで一歩後ずさりするも、さくらはそれを追うように一歩前に出た。  
 
「アイシア。君にはがっかりだよ。君なら義之くんを幸せにしてくれると思っていたのに」  
「なにを言って……」  
「まさか幸せにしてくれるどころか、不幸にしちゃうなんて、ね」  
「…………? さくら?」  
 
 さくらが何を言わんとしているのかが、まるでわからない。  
 かみ合わない会話。それがもたらす未来など、この時のアイシアには想像することすらできなかった。  
 
「君なんでしょ。義之くんに色々と余計なことを教えちゃったのは」  
「え…………?」  
「君が余計なことをしなければ、義之くんは消えたりなんかせずにすんだのに……!」  
 
 違う。  
 さくらは何かを勘違いしている。  
 アイシアは無意識下でそう思うもさくらの初めて見る姿に気圧され呆然としていた。  
 
「やさしい義之くんに桜の木のせいで島全体がおかしくなってるなんて言ったら自分を犠牲にしてでも防ごうとするに決まってるじゃないか! …………許せない」  
 
 今のさくらに何かを言っても果たして聞く耳をもってくれるかどうか。  
 
「許せないよ、アイシア。よくも、ボクの義之くんを死なせちゃったね……。その罪、たーっぷりと償ってもらうよ」  
 
 さくらは黒いマントの中から何かを取り出す。  
 それを見た瞬間、アイシアの表情が凍りついた。  
 
「さ、さくら!それって……」  
「ふふふ、そう。魔法の桜の苗木だよ。 奇跡を起こす魔法の桜の、ね」  
 
 三度、咲いて、三度枯れた魔法の桜。  
 その大元といえる存在が今、再びさくらの手の中にあった。  
 
「もっとも、これは所詮、レプリカのレプリカ……たいした力はないけどね。けど」  
 
 アイシアはさくらの表情が狂気に歪んだのを、たしかに見た。  
 
「君に罪を償ってもらうくらいの力は十分にあるんだ!」  
「っ!?」  
「伊達に何十年も、これの研究をしていたわけじゃないよ。魔法の桜の力の応用、ちょっと見せてあげるよ……!」  
 
 その瞬間、桜の苗木が光を放つ。  
 光は辺り一面を覆わんとばかりに広がっていく。  
 光に飲み込まれていきながら、アイシアの意識は少しずつ闇へと落ちていった。  
 
「う……ん……?」  
 
 冷たい石床の感触にアイシアは目を覚ました。  
 
「あ……あたしはいったい? ここは……」  
 
 起き上がり、きょろきょろと辺りを見回す。  
 しかし、一線の光すら差し込まない暗闇の中。彼女の目には何も映ることはなかった。  
 何故、自分はこのようなところにいるのか。  
 疑問に思い記憶の糸を辿ろうとするも、何も思いだすことができない。記憶全体が靄がかかったかのようにおぼろげだった。  
 その時―――。  
 
「っ!!」  
 
  金属と金属が噛み合う音。  
 それまでまったくの無音だった空間に響いたその音にアイシアの体はびくり、と反応した。  
 ギギギギ――。錆を削る鈍い音と共に暗闇が動く。少しずつ、光が差し込んでくる。  
 眩しそうに目を細めながらアイシアは扉が開いたことを認識した。  
 
「こんばんわ〜」  
「へっへっへ……」  
「どうもどうも」  
 
 ぞろぞろと光を背に入ってきた男たち。その雰囲気に恐怖を覚え、アイシアは後ずさりした。  
 
「だ、誰……? あ、あたしに何か……用ですか……」  
 
 男たちはアイシアの怯えを孕んだ声を聞き、にやりと口を歪ませる。彼女の様子を愉しんでいるかのように。  
 
「もちろん。用があるからきたのさ」  
「アイシアちゃんにね」  
「えっ……?」  
 
 アイシアの胸が恐怖に跳ねた。  
 ――名を知られている。  
 男の一人はたしかに「アイシア」と呼んだ。  
 アイシアは男たちのことを知らない。今初めてあったのだから。  
 しかし、男たちはアイシアのことを知っている。知られてしまっている。  
 
「……どうしてあたしの名前を…、あなたたちはいったい…。それにここはどこ……」  
 
 返事はない。まるでアイシアの言葉などまるで聞こえていないかのように。  
 男たちは下卑た笑いを浮かべ、同じように下卑た目で彼女を眺める。  
 
「ああ、それはな……」  
「うーーん、どこから話せばいいかな?」  
「話す必要なんか別にないだろ」  
 
「そうだな、ちゃっちゃとやっちまおう」  
 
 はっ、と後方に気配を感じ、アイシアは振り向いた。  
 しかし、遅かった。  
 
「な……。は、離して! 離してよ!」  
 
 突然現れた男に後ろから羽交い絞めにされる。  
 髪を乱して暴れるも、女と男。そして子供と大人ほどに体格に差があるのだ。振りほどくことなどできるはずがなかった。  
 
「さっさとこいつに自分の立場をわからせてやろうぜ!」  
 
 アイシアを拘束している男の声が引き金になったかのように、三人の男たちも動いた。  
 その動きは俊敏だった。  
 瞬く間もなく、アイシアの周りに群がり、四人の男に囲まれる形になる。  
 
「や、やめて……っ!」  
 
 獲物に殺到するピラニアの群れのように四人がかりで彼女に襲い掛かる。  
 続きとなっている上衣とスカートを無理やりに奪われた。  
 そして、小さなブラも剥ぎ取られ、その慎ましやかな胸があらわになる。  
 アイシアは両手でそれを隠そうとするが。  
 
「へーー」  
「おいおい、ちっせえ胸だなぁ!」  
「ちゃんと栄養取ってるのか? 偏食はだめだぞ、はははw」  
「くっ……」  
 
 羽交い絞めにされた今の状況ではそれも許されず。男たちの視線を一身に集める形となってしまった。  
 その恥辱に人形のように整った顔が赤く染まる。  
 雪のように白い肌。  
 アイシアの小さな体躯も相まってまるで妖精のように見えた。  
 
「いい加減にしないと……っ!」  
 
 アイシアが怒気を含めた声をあげる。  
 ――――魔法で吹き飛ばす。  
 滅多なことでは使わないようにしていた魔法だったが、今の状態ならば止むを得ない。  
 精神を集中し、力を込める。――――しかし。  
 
「ん?どうしたアイシアちゃん?」  
「威勢のいい声を上げても状況は変わらないよ」  
 
 何も、起きなかった。  
 
「そ、そんな……どうして?」  
 
 信じられない、という風に左右に視線を走らせる。  
 相変わらず、自分を囲み捕らえている男たちの姿。何一つとして変わりはない。  
 男たちは決して背が高いわけではない中肉中背だったが、背が低く、恐怖に震えるアイシアから見れば巨人のように映った。  
 
「ははっ、何をしたかったかは知らないが、無駄だったみたいだな」  
「う……嘘だよ、こんなの……あっ」  
「乳首もちっちゃくてかわいらしいなぁ〜」  
 
 男がその小さな胸の突起を指で摘む。  
 そのまま、右へ左へと弄ぶ。  
 
「や……やめ……、あふ……」  
「ほらほら、これでどうだ?」  
「あ……ううっ……」  
 
 体の中でも特に敏感な箇所を弄ばれ、アイシアの息が荒くなる。  
 好色を含んだものへと変わっていく。  
 
「そら、そら、そら……」  
「ひっ、……あ、ああっ」  
 
 右回転、左回転、さらには指の先で乳頭を突く。  
 その攻勢に晒され、アイシアの雪のような肌が徐々に熱を帯び始めた時。  
 
「おい、いつまで独り占めしてんだ」  
「お前一人だけずりぃぞ」  
 
 俺たちにも触らせろ、と他の男たちもアイシアの体にその卑しい手を伸ばす。  
 最初の男が幼い乳頭を手放そうとしなかったためか、腕や太股へとその手は向かう。  
 
「や……やめて、ひゃっ」  
「おお、触ってみると本当に綺麗だ」  
 
 などと呟きながら各々がその手を素肌の上で走らせた。そうすることで艶肌の感触を存分に味わう。  
 愛撫とは愛好の表現である。  
 その行為には相手に快感を与えるという目的の他に自分がどれだけ相手を愛しているかを伝えるという目的を秘めている。  
 ゆえにこの行為も愛撫に違いはない。それが一方的な愛であれ、相手に快感どころか嫌悪感と恐怖しか与えていないとしても。  
 
「本当に……やめて、きもちわふぅっ」  
 
 乳頭を思いっきり引っ張られた。  
 
「そうだぞ、お前ら。犬や猫じゃないんだから。あんましべたべた触るんじゃねえよ」  
 
 先ほどから胸をいじり続けている男がけらけらと笑う。  
 そして、触るなら俺みたいに気持ちよくさせてやれよ、と付け足した。  
 
(き、気持ちよくなんか……)  
 
 なってない。  
 そう反論しようとして。  
 
「そら、ここはどうだ」  
「ひゃあ!」  
 
 その瞬間にアイシアに与えられた感覚が全てを掻き消した。  
 ずぶり、とショーツごしに男の指が、下腹部の割れ目を突く。  
 そして、そのままゆっくりと時計回りに指でかき回した。  
 
「おいおい、このガキ。これだけで濡れていやがるぜ」  
「えー、ちょっと乳首を弄って、全身を撫でてあげただけなのに……。エッチな娘だなぁ」  
「こら。ガキなんて言ったら失礼だろ」  
 
 くちゃり、くちゃり。  
 男たちの下卑た会話と共に背徳的な音があたりに響く。  
 
「ああ、そういやそうか。見かけはこんなのでも中身は違ったっけか……と!」  
「や…あぁんっ」  
「そうそう。年上には敬意を払わないと。そら」  
「ひ……うっ」  
 
 口を動かしながらもその指の動きを休めはしない。  
 乳首と秘所を同時に弄られて、その快感の本流がアイシアの意識を蝕む。  
 
(ど……どうして、あたし……こんな感じに……)  
 
 心は否定しても、体は少しずつその快楽を受け入れつつあることに気が付き呆然となった。  
 
 
「それじゃ、前置きはこのくらいでいいだろう」  
 
 これまでアイシアを羽交い絞めにしていた男が不機嫌そうに言った。  
 そのまま拘束を解き、アイシアを解放する。  
 しかし、今のアイシアには一人で立つだけの気力はなく。支えを失い、床に仰向けに倒れる形となった。  
 
「最初は俺が入れるぞ。これまで裏方作業だったからな」  
 
 これまでの役目を「裏方作業」と言い切る男。  
 手は出さなかっただけで十分に口で嬲っていた癖に。霞む意識の中、アイシアはそう毒づいた。  
 しかし、他の男たちに異論はないらしく二つ返事で男の提案を了承した。  
 
「へへっ、それではご開帳、ってことで」  
 
 そして、アイシアの体へと目を向ける。体の中でもっとも敏感で、もっとも大事な箇所を守る最後の砦に手を伸ばす。  
 
「おほっ。本当に濡れ濡れだw」  
 
 張りついたショーツをつかみ引っ張ってみると、ぬっとりとした液体が肌とショーツの間で光った。  
 しかし、それは男を興奮させはしても、男の行動を止めることはない。  
 
「はい。お披露目タ〜〜イム」  
 
 両手をアイシアの腰にかけ、一気にショーツを引き降ろす。  
 
「おお……?」  
「ひゅう……ってあれ」  
「これは……」  
 
 しかし、男たちは意外にも訝しげな反応だった。  
 その理由はショーツに包まれ隠されていたあるモノの所為であった。  
 
「あんだよ、毛深いなぁw」  
 
 あらわになった秘所。しかし、その恥部以上に目を引くのはその周囲に生えそろった茂みの方。  
 頭髪と同じ銀色の陰毛は、雑草のように股間一面を埋め尽くし、一瞥しただけでは秘所を見つけることすら困難なほどであった。  
 
「さっき指入れたときに変な感じしたと思ったら……」  
「ショックだ〜〜。アイシアちゃんは下のほうも綺麗なすっぴんだと信じていたのに……」  
「顔も声も胸もロリな癖に、ここだけはばっちり成長してるのかよw」  
「これだけの剛毛はそうそう見られないw」  
 
 外見と不釣合いなその茂みに、男たちは嘲笑を浴びせる。  
 アイシアは、その恥辱に死んでしまいたい、とまで思った。  
 
「なんか、調子削がれるなぁ……まぁ、いいか気を取り直して、と」  
 
 予想外のものの登場に行為を中断していた男だったが、その言葉と共に。  
 
「ひっ……」  
「ははは、そんなに怯えるなって♪」  
 
 ズボンからその一物を取り出した。  
 
「あ……あ……」  
 
 これまでの事態に感覚が麻痺し、危機感を一時的に失っていたアイシアだったが、その目に見える脅威を前に全身の感覚を取り戻した。  
 体中の全ての細胞が逃げろ、と警報を鳴らす。  
 
「それじゃあ、最初は正常位で……」  
「いやぁ……っ!!」  
 
 銀の髪が揺れる。体を180度回転させ、仰向けからうつ伏せの体制になる。そして、そのまま這って逃げ出そうとするが。  
 
「いや? ああ、最初はバックからがいいのか。中々いい趣味してるな」  
 
 逃げられるはずもなかった。  
 ぬっ、と伸びてきた腕に両足をつかまれる。男はアイシアをまたぐように自分の腰を移動させ、少しずつその高度を落とす。  
 
「やだぁ! 離してよ! こんなのは嫌っ」  
「一気にやっちまえ」  
「言われなくてもわかってらぁ。腰を落として……」  
「義之くん! 助けて! 義之くん!!」  
 
 悲痛な叫び声が狭い石牢に響く。  
 恥も外見もなく。体を振り回しなんとか逃れようとする。  
 
 しかし、どれだけ暴れようとも、叫ぼうとも、泣こうともこの悪夢が変わることはなかった。  
 
「一気にどすん!」  
 
 ――――ぶちぃ。  
 嫌な音が石牢の中に響いた。それはアイシアだけが聞こえた音か、それとも。  
 
「あ……あ……ああ! ひ、ぎゃあああああ……痛い!痛いよう!」  
 
 純潔の証を貫いた肉の槍はその勢いを弱めることなく膣内を突き進む。  
 つい先ほどまで処女だったその膣肉が恐ろしい勢いで絡まりつくも、その勢いは止まらず最奥へと進む。  
 纏わり付いた膣肉を掻き分けるその熱感に、男は驚喜の声を上げた。  
 
「うっひゃあ……! こいつはすげえ、外観はあれだが、中身はギチギチムチムチの正真正銘ロリマンコだ!!」  
「ちっ、一番おいしい役を取りやがって」  
 
 結合部から漏れ出るぬるぬるとした液体に混じり、赤い液体が太股をつたり地面に落ちた。  
 それは紛れもなく純潔の証。――いや、今となっては純潔だった証、と言うべきだが。  
 
「う……うぅ、ぬ……抜いて……早く……。痛いよう……」  
 
 激痛を堪えるように唇を噛み、その大きな瞳からは涙を流し、アイシアは必死で懇願した。  
 だが、ここではい、わかりました。と素直に頷くような男ではなく、呻き声も漏らしながら腰を前後させる。  
 男の腰が揺れる度に膣内に侵入した肉槍は生きているかのように蠢き、膣肉と共に踊った。  
 
「へへへ、これはたまらないなっ……」  
「あっ……ああああ……」  
 
 どれだけ腰を動かそうとも、中の肉は男の分身から一分たりとも離れようとしない。びっしりと隙間なく絡みつき、快楽を与えてくる。  
 
「これが、ロリクオリティか! ひゃはあっ!!」  
 
 アイシアの動きがびくりと止まる。  
 自分の中に這入っているモノの質量が増した。一気に膨張したことを膣肉を通して体が感じ取ったからだ。  
 
「や、やめてっ! 抜いて!中で出さないで!!」  
「うぐぐ……あと5秒……4……」  
「お願い……それだけはやめて!許して!どんなことでもするから!」  
「3……2……発射ぁっ!」  
 
 男の肉槍が爆ぜた。  
 白い欲望の塊があふれ出し、それらはアイシアの膣内全体を覆い、そして、その先の生命を育む器官をも浸食せしめた。  
 それでもまだ余りある量の欲望。行き所を失った欲望たちは逆流し、接続部から溢れ銀の茂みや太股を白く塗らした。  
 
「ふう……すっきりした。よっと」  
 
 ようやく満足したのか、男は自分の分身をアイシアから引き抜くと一息ついた。  
 
「う、うぅ……中で、出されちゃった……。あたし、汚れちゃったよ……義之くん……」  
 
 その喪失感と絶望に涙が石畳に落ちた。しかし、休む暇など彼女には許されない。  
 
「おら! 次はオレだ!」  
 
 別の男が先ほどの男を押しのける。  
 
「ひっ……」  
 
 顔だけを動かし、涙に濡れた瞳で肩越しに男を見る。  
 男はルビー色の瞳に向かってにやり、と口元を歪ませると。  
 
「安心しろ。オレは紳士的だからな。 いきなりぶっこみはしないさ」  
 
 そう言い、右手で自分の胸をぽん、と叩いた。  
 しかし、そのまま腕を下にもっていき自分自身のズボンに手をかける。  
 
「まずは……フェラからだよなぁ! やっぱ!」  
「え……あっ!」  
 
 無理やりにアイシアの肩をつかみ彼女を起き上がらせる。  
 そして、その頭を押さえつけ、  
 
「や、やめ……ぐぷっ」  
 
 美しい双唇のなかに、赤く脈打つソレを入れた。  
 
(な、なにこれ……臭い、苦い……こ、こんなの……)  
 
「んーー!んーー!」  
「ほら、さっさと舐めやがれ!」  
「んーーっ! んんーーっ!」  
 
 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!  
 口を塞がれてしまっては言葉を発することもできない。  
 アイシアは顔を振ることで、必死に拒絶の意を示して見せた。  
 
「ああ!? てめえに選択の余地なんてあると思っていやがるのか!?」  
 
 男は苛立ったように舌打ちすると、一旦、ソレをアイシアの口内から引き抜いた。  
 
「げほっ! げほっ! ……はぁっ、はぁっ……」  
 
 咳き込みながらもアイシアは解放された、と胸を撫で下ろした。しかし、直後にそれが誤りだと気付く。  
 
「うえぇぇ……気持ちわ――」  
 
 ――――ドン!  
 鉄拳一発。  
 
「が……は……」  
 
 見事なフックがアイシアの腹へと決まった。  
 なにがおこったのか理解できていないかのように、ルビー色の目を驚愕に染め、アイシアは地面に倒れこんだ。  
 
「おら、立てよ。てめえの立場ってものをたっぷりとわからせてやるぜ」  
 
 男の屈強な肉体から放たれた一撃。容赦も手加減もなにもない。  
 子供のように小さな少女がそんなものを受けてしまえば立ち上がれるはずがなかった。  
 地面に横たわり腹もかかえて呻くことだけが精一杯だった。  
 
「立てって言ってんだよ!」  
 
 だが、男はアイシアの首をつかみ起き上がらせる。いや、宙吊りも同然の状態に持ち上げる。  
 
「あ、が…………」  
 
 そのまま、首を締め付けた。腹部の痛みも消えてない中に酸素の供給を断たれ、アイシアの顔は苦悶に染まる。  
 それはこのまま殺してしまうのではという勢いだった。  
 
「わかったか!自分の立場が! お前はオレたちの言うことを聞いていればいいんだよ!」  
「わ、わ…………」  
「あん!?何だって?」  
「わ……か……た、はな……し……ごほっ」  
 
 男はふん、と軽く鼻をならすと持ち上げたときと同じように、乱暴な動作でアイシアを地面に叩き付けた。  
 
「うぐっ! はぁっ、はぁっ!! はぁ……はぁっ、はーっ、はーっ!」  
「けっ、まったく。年寄りの癖に自分の立場一つわからないとはな」  
 
 生存本能が酸素を求めて、肺と口を動かす。  
 そんなアイシアを男は憮然とした目で見下ろした。  
 
「自分の立場がわかったか? じゃ、さっさと行動で示してみせろ」  
「は……はいっ。 はぁっ、はぁっ」  
 
 アイシアはまだ息を切らせた状態ながらも男は行為に及ぶつもりのようだった。  
 今度はアイシアは逆らおうとはせず、自ら平伏し、男の肉棒をくわえ込む。  
 稚拙な動きながらも舌を出し、肉棒を先からちろり、と舐め始めた。  
 
「おう、そうだそうだ。もっと舌を突き出せ!竿全体をなぞるんだよ!」  
「うっ……ううっ」  
 
「ん?お前なんだそれ?」  
「毛を切るためのナイフさ。ロリっ娘が毛深いなんて認められないから。俺の番がきたらこいつで剃ってあげるんだ」  
「剃毛プレイかよwマニアックだな。そうだな〜、それじゃあ、俺の番には何をしようかな〜」  
 
 結局、この石牢の中が静まることはなく。アイシアは一晩中、男たちに奉仕し続けた。  
 
 
 暗闇の中。  
 ここでは時間すらも判別できない。  
 しかし、アイシアは今が朝であると、何故かわかった。  
 
「なかなか楽しんでいるみたいだね」  
 
 懐かしさすら感じる声が冷たい石牢に響く。  
 その声は一晩の間強姦され続けた疲れから泥のように眠っていたアイシアの意識を引き戻すのには十分だった。  
 
「さ……さくら……」  
「にゃはは♪ おはよ、アイシア」  
 
 変わらない石牢の中。  
 初音島の魔法使いは、いつもと変わらない姿でアイシアの前にいた。  
 一方、アイシアの方は一糸と纏わぬぼろぼろの姿。  
 
 その対比がアイシアにとっては耐え難い屈辱感だった。  
 
「さくら……この世界は……」  
 
 胸を両の手で隠しつつ、さくらに言葉を投げかける。  
 それは質問、というより確認の言葉。  
 
「ふふふ、ボクが教えるまでもなく、アイシアならもう解っているんじゃないかな?」  
「……………………」  
 
 ここまで来るとこの世界がどういうものか、アイシアにも解っていた。  
 この世界は、おそらくはさくらが魔法の桜の力で作った夢――否、悪夢。その悪夢の中に自分は閉じ込められてしまっている。  
 魔法も何も使えない。自力ではなにもできない。ただ、嬲られ犯されるだけ。そういう夢だから。  
 それゆえに、この地獄から抜け出すための方法は一つしかない。  
 
「……お願い、さくら。ここから出して……。痛いの、もう嫌だよ……なんであたしがこんな目に……」  
 
 無理やり見せられる悪夢。無理やり犯される理不尽。  
 現実の中ではないとはいえ、こんな不条理があっていいのだろうか。  
 
「それが人に物を頼む態度なのかな? アイシア」  
「くっ……」  
 
 普段は無垢な輝きを秘めている碧い瞳。しかし、今は氷のように冷たく、アイシアを見下ろしている。  
 一刻も早くこの悪夢から逃げ出したいアイシアにはもう恥も外聞もなかった。さくらの前に跪き、石畳すれすれまで頭を下げる。  
 
「お、お願いします……あたしをここから出してください……」  
 
 思わす目を逸らしたくなるような必死の懇願。  
 しかし、さくらは。  
 
「あはは、無様だね♪ けど、まだ許してあげない。  
 君はもう少しの間、この中から出られないよ」  
 
 そんなアイシアを嘲笑った。  
 
「さくら……!」  
「でも、ボクも鬼じゃないからね。君の真摯な態度に免じて少しだけ期間を短くしてあげる。  
 本来なら100年はここにいてもらうつもりだったけど、特別サービスで50年に短縮! すごいでしょ、半分だよ、半分」  
 
 そう言い右の手を広げて、五本の指をアイシアに示してみせた。  
 屈託のないさくらの笑顔。対照的にアイシアの顔は絶望に凍りつく。  
 昨夜はこれまでの人生の中で一番つらかった。それなりに長く生きてきた自覚はあるが、あれだけの痛みや苦しみを感じたのは初めてだった。  
 それが、あと50年もの間続く……。  
 
「ご……50年間も……」  
「そ、50年。それだけの期間、今みたいに奉仕し続ければここから出してあげる」  
 
 気の遠くなるような時間だった。  
 それだけの時間、自分は人権もなにもなく、ただひたすら男たちを満足させる道具にならないといけないのか。  
 
「じゃあ、ボクはこの辺でね。…………あと49年と359日。頑張ってね、アイシア」  
 
 金髪の魔女はばいばい、と手を振ると光の中へ消えた。  
 
「ま……待って、さくら! ……あっ」  
「さっきから何一人でぶつぶつ言ってやがる!」  
 
 代わりに現れたのは昨日、アイシアを犯した男たちの一人。  
 さくらのことは見えていないのか、一瞥もせずにアイシアのもとへ向かう。  
 
「おら!昨日の続きだ!さっさと股を開け!」  
 
 相変わらず乱雑に。アイシアの体を掴むと、傍に引き寄せる。  
 無理やりに両足を開かせると、一気に肉の槍で彼女を貫いた。  
 
「あ……が……」  
 
 愛撫もなにもない。いきなりの挿入。  
 激痛は当然。しかし、彼女の体を襲った痛みはそれだけではない。  
 
「ぐ、ぎぃ……」  
 
 結合部からは赤い液体がこぼれる。  
 全身に電撃が走ったような痛みは、忘れるはずもない。昨日、処女を破られたときの痛みと同じだった。  
 
「ど……どうして、こんな……」  
「く……やっぱ、処女の膣中はいいなぁ……、ぎしぎし締め付けてくる!」  
 
 破れたはずの処女膜。それがいつの間にか再生していて、もう一度、破られた。  
 その不思議な状況に呆然となる。  
 
「おい!何ぼーっとしてんだ、さっさと腰を動かせ!」  
 
 しかし、今の彼女にそんなことは許されない。  
 見るや、他の男たちも連れ立って部屋の中に入ってくるのが見えた。  
 アイシアは今日も昨日と同じ悪夢が始まったことを知った。  
 
 初音島の魔法の桜。  
 初めてこの島を訪れた者はまずその姿に圧巻されるだろう。  
 四季を通じて咲いているその花びらを下から見上げれば、完全に桜色が空を覆い隠してしまう。  
 
「不思議? にゃははは、夢の中には不思議なんてものはないんだよ。なんたって夢なんだからね。ありとあらゆる手段で君を虐めてあげられるし、何があっても君は死なない」  
 
 それはさながら旧友に送る鎮魂の詩か。  
 
「壊れて逃げるなんてのも許さないからね。もし、壊れたら一度、外に出して桜の魔法で精神を修復してから何度でも、この悪夢を見てもらうよ、アイシア」  
 
 桜の天井の下で、さくらはそうひとりごち、桜の木へと向き直る。  
 レプリカのレプリカを使った無理やりな修復だったが、なんとかうまくいったようだ。  
 以前よりさらに劣化したこの桜の木が、初音島にどんな影響を及ぼすのか。  
 まともな完成の持ち主ならそれが気にならないはずはないのだが、今のさくらにとってはどうでもいいことだった。  
 初音島の桜は、『いつも通り』にその花を咲かせている。  
 そして、この願いで、全てが元通りになる。  
 
「それじゃあ、さっそくお願いするとしますか。『ボクにも家族が欲しいです』……ふふふ」  
 
 
 

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