エリカとフローラたちは変則的ながらも正面に相対して構える。
「王族はその地方最強の盗賊と聞く。エリカ王女の王族の技、とくと拝見させてもらうよ」
「学園長、王族の前に敢えて挑むあの二人。ただ単に2対1で勝負するとは思えません。
いかなる技を用いるとお考えですか」
「そうだね、妥当なところでは最近の"ぷり○ゅあ"じゃないかなぁ」
「さくらさん、最近っていつの話ですか・・・・・・」
「え〜と、何年前だったかな〜」
「・・・50年足してください」
「意外性という点では"ふ○ご姫"もありかもしれません」
「杉並くんも渋いところ突くねぇ〜どう、賭ける?」
「さくらさん、あんた教育者でしょ!」
「我が国の闘争は浅くはない・・・」
「あっ、あなたは・・・・・・」
そうこうしているうちにエリカと、フローラとジェイミーの二人との間はジリジリと歩幅が
詰められていく。先に動いたのはフローラたちの方であった。
「「行きます!南斗双鷹拳!!」」
「むっ、そうきたか!!」
「そうきたかじゃないと思う・・・」
「メイドさん、飛んだぁぁぁぁぁ!!」
「だから、メイドさんじゃないって・・・」
空中高くジャンプしたフローラとジェイミーは二人一体−ジェイミーが前になり、その
左手をフローラが後ろから持ち、エリカを攻撃する。
「くっ!」
空中から攻撃するジェイミーの手刀をなんなく避けるエリカ、外された二人は再度空中に
舞い、攻撃を仕掛ける。
「すまん、杉並・・・」
「なんだ、桜内」
「エリカが攻撃されているのを見て言うのもなんだが・・・
フローラさん、ジェイミーさんの左手を持っているだけとしか見えないんだが・・・・・・
これだったら二人で一気に攻撃したほうがいいような気がするんだけど」
「ジェイミーの手刀および空中殺法はそれだけでも十分な攻撃力を有している。
それにフローラの身体が重石となり、落下時の運動エネルギーを加速させ、
その威力を倍増させているのだ」
「原理説明ありがとうございます、王子」
「てやりゃぁあ!」
エリカを狙ったジェレミーの手刀が外れ、校庭にあった鉄棒に命中、これを寸断させる。
「威力倍増って・・・当たったら死んじゃうでしょ、あれ!」
「うむ、そうだ。だから、二人にはエリカが死んでも責は問わぬと言ってある」
「ちょ・・・いくらなんでも、ありえないでしょ・・・・・・」
「いや、二人は引き受けたが。フローラなんぞ泣いて喜んでいたぞ」
「・・・・・・」
「それに、そのつもりでないとエリカと互角に戦うことすら敵わない・・・・・・」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
校庭ではエリカが気合をこめて闘気を高める。その衝撃に風が逆巻き、校庭の土が舞い
上がらせ、エリカの身体が金色に輝き始めた。
「エリカ・ムラサキ!スーパーサ○ヤ人変化だぁぁぁ!!」
「ちょ・・・渉・・・・・・すいません、おたくの星ってああいう芸当ができるんですか?」
「あれを出来るのはうちの星でもそんなにいない。いや、この星でも出来る人はいる。
たとえば・・・」
「たとえば・・・?」
「生徒会長」
「・・・・・・」
「ん?何話してるの??」
「「いや、何でも」」
「闘気をオーラに変え、光を放つ・・・その技を使えるとは、流石は王家というところか」
「うむ、だが我が王家でも金色に光るレベルの持ち主はそうは出てこない」
「メイドさんチーム、それでも怯まずに攻撃だぁ!」
「元斗白華弾ンンン!!」
「"ツンデレのエリカ"、目にも留まらぬ早業を・・・避けた!?」
エリカの放つ凄まじい闘気の突きを空中から攻撃するジェイミーとフローラが見事に避ける
ことに成功していた。
「空中で機動している!」
「どうやら、後ろの人間は攻撃力の増加だけでなく、空中での機動も担っているようだな。
あれを当てるのが難しい!」
「流石はエリカさま、我々の攻撃が避けるだけでなく攻撃に行うとは!」
「では、こちらも奥義を出さざるを得ません!」
「「奥義、双羽落爪破!!」」
「メイドさんチーム、再び攻撃を開始したぁ!!」
「だから、メイドさんじゃ・・・疾い!!」
ジェイミーとフローラの攻撃速度はそれまでに比べて加速していた。しかも、その威力は
外したジェイミーの手刀が命中した校舎の壁を粉々に砕いたほど凄まじかった。
「おおっと!エリカ選手の胸元が破れています!!」
ほんのわずかで避けそこなったのか、エリカの胸元のリボンが破れ、高級そうなブラが
チラリと見えており、会場を沸かせた。
「避ける速度が若干遅かったらしい、どうやら手刀がかすったようだ」
「あと一瞬避けるのが遅かったら、あの手刀がエリカに・・・・・・」
義之は背筋に冷たいものを感じながら息を呑んだ。
「あと半瞬避けるのが遅かったら、サービスショットだったのに・・・・・・」
渉は脳髄にこみ上げるものを感じながら涙を呑んだ。
「もう一度!」
攻撃を外した二人が再度同じ技でエリカを攻撃しようとする。しかし、今度はエリカも
行動を予測していた。
「奥義、衝の輪!!」
エリカの両手から闘気が大きなリングを作り、ジェイミーとフローラのそれぞれに向けて
投ぜられる。
「これはすごい!エリカ・ムラサキ、八つ裂き光輪だぁ!!」
「ウル○ラマンみたいだね」
「同じ地球人とは思えない技だな」
「どわわわわわわぁ!!!」
「どうした、桜内」
「い・・・いや、何でも・・・・・・」
「なんという見事な攻撃!これは決まったかぁ!!」
「いや、浅い。防御されているよ」
「モーションを盗まれている。その隙にディフェンスされて威力が減じている!
エリカ・・・未熟者め・・・・・・」
「だが、あの二人・・・各々が風見学園十二神将に名を連ねてもおかしくない技量の持ち主。
たった一人で相手にするには荷が克ちすぎるのではないか」
「いやッ!あの二人に致命傷を与えられぬようでは王族の名が泣くッ!!」
「致命傷ってあんた・・・それに風見学園十二神将ってなんだ、杉並・・・・・・」
しかし、威力を減じることができたとはいえ奥義を喰らったフローラとジェイミーはすぐには
動くことはできなかった。だが、この絶好の攻撃の機会にエリカもまた奥義を使用したことで
体力を消耗し、すぐに動くことができなかった。
「エリカ王女、ひざをついたぁ!双方とも動けません!!」
「双方とも消耗したか・・・この好機を活かせなかったこと、長期戦になるかもしれん」
義之は隣にいるリオの方に顔を向けて小声で囁く。
「大将、大将」
「誰が大将だ!第一王位継承者だぞ、こっちは!!」
「じゃあ、田代の王子様」
「放送席じゃなかったら、ジャーマンスープレックスを掛けているところだぞ!」
「謝謝。ところで、こう言ってはなんだけど2対1だから逃げるという選択肢はなし?」
「王族に逃亡などあり得ない!・・・まぁ一応建前はそうなんだが、戦略的転進というのは
ありだが。あくまでもオフレコで、だけどな」
「・・・案外、砕けてるんですね」
「まぁ、きれいごとだけでは生きていけないのが世の常でな・・・・・・
だが、この戦いでエリカは逃げることはしないだろう」
「やはり気性的に・・・・・・」
「それもあるが・・・」
リオがモニターに映る自分の従者に視線を送る。その視線の先を義之も追いかける。
そこには二人の首にかけられている札があり、その枚数は決して少なくなかった。
「あの二人を倒して札を取れれば、二次予選・・・いや本選進出も射程に入る!」
「10時になりました、一次予選終了まであと1時間です。
ゴールされる方は最寄の・・・・・・」
エリカとフローラ&ジェイミーが競い合っているさなか、一次予選も折り返しを迎えたことを
知らせる放送が学園内に流れる。このとき、校庭に一つの異変が起ころうとしていた。
<続く>