<一次予選>
「さぁ、いよいよ始まりました第一回桜内義之争奪武闘大会!
この大人数を勝ち抜いて義之をGetするのは果たして誰でしょうか!?」
「ちょっと待て!第一回って、二回目もするんかぁ!!」
「我が非公式新聞部の調査では生徒会長の朝倉音姫、その妹の朝倉由夢、
そして学園のアイドル白河ななかが3強として名が挙がっている」
「おまえら、無視して話を進めるなぁ!!」
地下闘技場の壁面には大きなモニターが据え付けられ、学園各所の様子を画面分割して
映し出されていた。その巨大モニターの対面には放送席が設けられ、渉が実況席に、杉並と
さくらが解説者席に陣取り、義之が景品として檻に入れられていた。
観客席にはこの大会に参加しない生徒たちや外部の客人がモニター越しに一次予選の
様子を渉の実況を聞きながら観戦している。妨害行為をしなければ学園の中にいても構わない
のだが、戦闘に巻き込まれる可能性が大であるため、観戦目的の生徒らの大部分は闘技場に
集まってのモニター越しの観戦を選択していた。
さて、その試合の様子はどうかというと参加者は何人かずつの集団になり、そのまま周りを
見て牽制し合っている状態であった。
「予選が始まってまもなく3分になろうかとしていますが、まだ動きはありません」
「だろうな」
解説する杉並の横で檻に入れられている義之が納得しがたい顔をしつつ首を傾げていた。
「どうした、桜内。何か疑問か」
「試合が動いていないことが疑問なんか?」
「いや、そうじゃない。バトルロイヤルなんかじゃ最初からいきなり全開というのは
あんまりないし、最初はむしろ牽制しながら様子見というのは分かる。
俺もプロレスとか結構見てるし。ただ、所々に集まっているメンバー・・・
これから戦うって組み合わせじゃないような気がして・・・・・・」
「ああ~あれね。たぶん"チーム"じゃないかな~義之くん」
「チーム?」
「どうやら、景品の義之にはこの状況が分かっていない様子。
解説の杉並さん、ご説明願えますか?」
渉に振られた杉並が重々しく口を開く。
「まず、一次予選のルールをもう一度述べておきたい。
参加者各員には3枚の札を渡し、首からぶら下げてもらっている。
一次予選の突破の枠は、この札を多く集めた者上位12名となっている」
「いや、それは分かってるって」
「この札の集め方だが、特にルールでは規定していない。
相手をぶちのめして奪っても良し。隙を狙って盗むも良し。騙し取るのも良し。
交渉して譲ってもらうのも良し。他の誰かに譲渡するのも構わないということだ」
「・・・・・・とても学校行事とは思えないカオスっぷりだな」
「"常在戦場"、それが風見学園のモットーだよ」
「・・・・・・初めて聞きましたよ、さくらさん」
「そして、誰かをぶちのめすのに徒党を組んではいけないなどとはルールには
一言も明記してはいない」
「ロクでもないルールだな・・・あっ、でも・・・・・・」
「なんだ、桜内。まだ何かあるのか」
「いや、チーム内で公平に分け合った時に同じ個数になることがあるんじゃないかな」
「そのときは籤で順番を決める。たとえ、それがシード権・一次予選突破としてもな」
「同じ個数を取っても籤で外れた子は納得するかな」
「桜内よ、運も実力のうちだ」
「それに・・・二次予選以降は敵同士になるからね」
「さて、我らが生徒会長、朝倉音姫先輩はどうしているでしょうか」
5分を過ぎても動きが起きないことに間が持たなくなりつつあった放送担当委員が渉に
サインを送り、なんとか話題を持たせるように指示していた。
モニターには渉の注文どおりの内容が映し出される。そこには生徒会室で一人静かに
寛いでいる音姫の姿があった。
「なんと!くつろいでいます、音姫先輩くつろいでいます!!
優勝候補筆頭の余裕でしょうか?・・・こっ、これは!?」
「どうした、渉?」
「お・・・音姫先輩を中心とした半径50m以内の球に参加者が一人もいない・・・・・・」
「「な、なんだってぇぇぇぇぇ」」
モニターの画像が参加者の居場所を示す光点の表示に変わっていた。所々に混み合った
コロニーはあるが、生徒会室の周囲は中心にポツンと光点が1個あるだけで周辺に存在する
光点は一つもなかった。
「音姫ちゃん、かなりの強豪と見られているね。さすがは三強の一角ってところかな」
「え?」
「音姫ちゃんに一次予選で消えてもらうための作戦の一つだね、これは」
「どういうことですか、さくらさん」
「どういうことでしょうか、学園長」
「板橋、もしお前が参加するとして優勝候補を一次予選で潰すとしたらどういう手段を
使う」
「う~ん・・・一対一で勝てないんだったら、複数で袋にするかな。
確実に倒せそうだし、それに一次予選では認められているから」
「残念ながら外れだ。
なぜなら、この一次予選ではリタイアは本人の自己申請と審判団のドクターストップの
2点しかない。優勝候補を袋にしてもリタイアさせることができなければ意味はない。
仮にそこで叩きのめせても別の場所で多くの札を獲得されたりしたら、それまでだ」
「だから、音姫ちゃんと戦わないことは有効な手の一つかな。
音姫ちゃんがいくら強くても上位12人の中に入ってなければ負けになるから」
「参加者に戦略を授けるとしたら、札を稼がせないという意味からも、優勝候補に
挙げられるメンバー、とりわけ三強と呼ばれる朝倉姉妹と白河ななか・・・・・・」
杉並の解説の途中で状況が変化する。モニターの光点のいくつかが点滅し始めた。
「あっ!状況が動きました、何かあった模様です!!」
いくつかの光点がその色を変える。そして、その色を変えた光点の周りで他の光点が
操られるかのように動き始めた。
「光点について説明します。この黄色い光点は現在参加している全選手を示しています。
黄色い色は初期に渡した3枚の札を持っていることを表しており、この札が4枚以上に
なりますと色が緑に、10枚以上で青に、そして20枚を超えると赤色に変わります。
逆に札を全て失いますと白に変わります」
渉がモニターの光点の説明をしている間にも情勢が刻々と変化していく。風見学園の
各所ではポツポツと黄色から緑に変わる光点が出現し、逆に白くなる光点も現れる。その
中で早々に青く変わった点が2つ出現していた。その一つは威風堂々と周りの光点が避ける
中を行進し、もう一つは校舎の中を全力疾走で駆け抜けていた。
「待て~!!」
「逃げるな~!!」
「いざ尋常に勝負!!」
10人ほどの女子に追われ、ななかは校舎を逃げ回っていた。
「10人いっぺんで来るのはずる~い~」
「チームじゃない!別々よ!!」
その言葉に偽りはなかった。10人の女子は3人・2人・2人で残りは単独で構成されていた。
「じゃあ~そっちでメンバー決めてから~来てよ~」
「いや、まず白河さん!貴女から!!」
「ええぇぇぇ!!」
ななかは目についた開いている窓から外へと逃げ出す。そのななかを追って10人の女子
生徒らも窓から外に出る。
「う~しつこ~い」
依然として追いかけてくる少女たちに辟易としながらも、ななかは開いている窓を見つけ、
今度は校舎の中に逃げ込む。しかし、先ほどと違って今回は中から窓を閉め、周辺の全ての
窓の鍵をかけてまわった。
「くっ!」
「逃げられた!!」
追いかけてきた女子生徒らは鍵を掛けられた窓の前で立ち往生する。学校を試合場にして
いるために故意の器物破損はルール違反である。
「こっちの窓が開いてるわよ!」
一人の生徒が開いている別の教室の窓を発見し、そこから立ち入ろうとする。しかし彼女の後に
続こうとする生徒はおらず、別の生徒が彼女を制止しかけた。
「アラート!アラート!ここは立ち入り禁止区域です!速やかに退出してください」
警告を聞いた生徒は慌てて入ってきた窓から元の場所に戻っていった。
「アレはなんだ、杉並?」
「桜内はルールを読んでいないのか」
「いや・・・携帯は没収されていたし」
「そうか、ならば仕方あるまい。では説明しよう!」
「勿体つけなくていいから・・・・・・」
「今回の一次予選は風見学園の敷地内にある地上部全てである」
「要するに、この地下闘技場以外全てだな」
「そういうことだ。が!しかし、予選運営上どうしても試合会場に含めることができない
場所がある」
「どんな?」
「たとえば地上を管制している放送室や情報処理室、運営本部のある職員室、
負傷者の手当てなどをする保健室。これ以外にも学園長室や理科室、クラブ棟などが
対象となっている。基本的にトイレもな」
「なるほどね」
「そこに立ち入った場合には警告が出され、直ちに出るように勧告される。そして、
それに従わなかった場合は罰則として所持している全ての札が没収されることになる。
何らかの原因で誤って入ってしまった場合は退去までの時間に少し猶予が与えられる。
まっ、要は障害物だな」
「ふ~ん」
巧みに立ち入り禁止区域を利用し、追っ手から距離を置くことに成功したななかであったが、
その逃げた先には別の生徒が待ち構えていた。
「勝負です!白河先輩!!」
「あっちゃ~」
ななかの前に体操服を着た7人の少女が立ちはだかる。
「あら、あなた・・・ユカリちゃん?」
「7人がかりは卑怯かもしれませんが!」
「桜内先輩を手に入れるため!」
「白河先輩!あなたを倒します!!」
「う~ん・・・7人くらいなら問題ないけどね。じゃあ・・・くる?」
「行きます、白河先輩!」
「必殺の!!」
「おおっ~と、少女たちが!複雑な動きを!!」
7人の生徒たちは激しく左右に動き、ななかに的をしぼらせない。
「これではななかは攻撃できない!しかし、少女たちの攻撃しない!?」
「この動きは牽制?いや、違う!!」
生徒らの動きはなおも激しさを増す。そして、やおら別の動きに変わる。
「なんだぁ!?いきなり肩車を、しかも7人全員!?」
「この動きは!あれをやる気か・・・」
「杉並に渉・・・おれに分かるように説明してくれ・・・・・・」
あたかもはしごのように肩車を組んだ生徒たちがななかに攻撃を仕掛ける。
「白河先輩!お覚悟!!」
「少女たちがまるで・・・まるで滝のように天から攻撃する!!」
「これはっ!人間ナイアガラ!!」
「すごい!女の子でこれをするのを初めて見たよ、ボク!!」
「男でも頻繁にやってないですが・・・というか見たことないです、さくらさん」
「まともに喰らえば白河ななかといえ、ダメージは大きい」
滝のように上空から落ちてくる少女たちの激しい攻撃にななかは・・・・・・無傷だった。
「白河ななか、まったくの無傷!ダメージはありません!!」
「まぁ、相手が突っ込んできてくれないと意味がない技だからね・・・・・・」
その場から一歩も動かなかったななかは大きく息を吸い、直線状に並んだユカリたちに
攻撃を仕掛ける。
「ミラクルボイス!ウーヤータァァァァァ!!」
「出た~白河一族必殺の歌エネルギー攻撃!!」
「それ、違うぞ・・・」
ななかのボイス攻撃は校庭に面した校舎のガラスにヒビをいれ、ユカリたちを直撃して
一気に倒す。
「大漁、大漁」
ななかは失神しているユカリたちから札を回収しようとする。その背後で窓が開く。ミラクル
ボイスの音波攻撃により窓はひび割れ、割れた箇所から手を入れて鍵が開かれる。
「白河ななか!尋常に勝負!!」
「男にフラれた恨み、今ここで!!」
「かかってきなさい!!」
「えっ・・・やば!」
開かれた窓から女子生徒たちが続々と侵入してくる。それを見たななかが札の回収も
そこそこにその場から逃げ去る。
「7人倒して、札が3枚か・・・効率が悪いね」
「倒した数なら現在1位だろうな」
「女子にそねまれてるからなぁ~白河は」
「う~ん・・・ななか」
<続く>
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