「ね、ねえ・・・やっぱり帰ろうよ、弟くん。もし誰かに見られちゃったら・・・・・・」
何度目かの抗議もこれまでと同じく聞き入れられる様子はない。
暫く懇願するような眼差しで目の前の少年を見つめていた彼女も、やがて諦めたらしい。
溜息を一つ吐き、どうか誰にも見つかりませんようにと心中で祈りながら、大人しくついていくの
だった。
夜も随分と更け、もう深夜と呼んでもいいような時間だった。
6月18日。梅雨入りしたこの時期にしては珍しいことに、夜空には雲一つなく、星空と満月が地
上を照らし出している。
けれど辺りには人気はなく、実に勿体無いことに、久々の月夜を楽しむこともなく、町は眠りにつ
いていた。
そんな中、義之と季節外れの分厚いコートを着た音姫が手を繋いで歩いている。
音姫は先程からなるべく義之の背中に隠れるようにしながら、しきりに辺りを見回す。と、彼女が
周囲を見るために首を左右に振る度に、ちりん・・・ちりん・・・と鈴の音が響きわたる。
その音にびくつきながら、顔を真っ赤に染め、消え入るような声で義之にもう帰ろうと繰り返す。
夜の散歩・・にしては音姫の様子はあまりに挙動不審だった。
音姫の不審さの訳は、少し注意深く観察してみればすぐにわかることだ。
まず第一に彼女の頭。いつもの大きなリボンの代わりに、そこには耳が生えていた。無論、本当に
彼女の耳が四つになっているわけではない。彼女の頭にぴょこんと生えているそれは付け耳―――そ
れも尖った三角形の形にふさふさとした毛が生えている、俗に言うネコ耳だった。
そして第二に彼女の首。コートの襟に隠れて見えにくいものの、そこには真っ赤な首輪が付けられ
ている。先の鈴の音は、その首輪に付けられた鈴によるものだ。
第三に彼女のお尻に装着された尻尾。彼女が歩くとふるふる震え、その度にアナルに詰められたビ
ーズが左右に暴れて彼女の息を荒げさせる。
そして何より、彼女はコートの下に何も身につけてはいない、つまりは裸(義之はこのまま歩かせ
たかったようだが、何とかコートを羽織ることだけは許してもらった)だったのだ。
何故こんなことをしているのか。
簡潔に言えば義之が変態であること、そして音姫が弟に対してはどこまでも甘いからであった。
昨日6月17日、音姫の誕生日。あろうことか義之はこのネコさんプレイ道具一式を音姫にプレゼ
ントしたのである。
期待に胸を膨らませつつプレゼントの箱を開けた瞬間、音姫は思わず頭を抱えそうになった・・・が、
弟の趣味と性癖は十分理解していたし、そこは惚れた弱み。付けて付けてと義之にキラキラした笑顔
で言われては断りきれなかったのである。
そしていつの間にか、こんな格好のまま夜の散歩をすることになってしまったという次第だ。
余談だが、後にこれを知った由夢は「兄さんはバカですが、お姉ちゃんも大バカですね」と心底呆
れた風にこぼしたとか。
「ほら音姉、着いたよ」
「えっ・・・着いたって?」
義之に連れてこられた場所は桜並木にある公園だった。こんなところに連れてきて何をしようとい
うのか。音姫には見当もつかなかったが、何となく嫌な予感はしていた。
「やっぱりこんな時間だと誰もいないな・・・ほら、音姉。ここならそんなに恥ずかしくないだろ?」
別に公園だからといって恥ずかしさが消えるわけでもないが、確かに義之の言うとおり、周囲に人
影はなく、また路上を歩くよりも人に会う確率は少なかったため気休めくらいにはなった。
「・・・・・・それで、どうして公園なんかに来たの? もしかしてこのままお散歩でもして帰るの?」
僅かな期待を込めてそう訊ねるも、同時にそんなつもりでわざわざここまで歩いてくるわけもない
と思っていた。
そして音姫の予想を微塵も裏切ることなく、義之は眩しい笑顔で、
「いや、ここならそのコート脱いでも大丈夫でしょ?」
と笑いかけたのだった。
「そ、それは流石に無理だよ・・・だって、誰も来ないって保証はないし・・・・・・」
「大丈夫だって。こんな時間に誰もこんなところにこないよ」
「でも―――」
「ほらっ、音姉は今猫になってるんだから。猫が服を着てるなんておかしいだろ? あ、こら。ちゃ
んと四つん這いにならなきゃ駄目だよ?」
渋る音姫から義之が半ば無理矢理コートを剥ぎ取る。
とうとうその身を隠すものがなくなり、白い裸体を露にする音姫。慌てて胸と秘所を手で隠そうと
するが、義之に制されて四つん這いにさせられる。
「お、弟く〜ん・・・せめてお家に行こうよ。ね? そこならいくらでもしていいから―――」
「音姉、さっきからよく喋るけど、猫は喋ったりしないよね?」
「・・・・・・」
「猫は何て鳴くのかな? ちょっと俺に聞かせてみせてよ」
「・・・・・・に、にゃあ・・・・・・にゃん、にゃあ・・・!」
今更逆らう気力も湧かず、半ばやけになって音姫は鳴いた。
その姿を見て義之はその笑みを深め、そしてよくできましたというように音姫の頭を何度も撫でて
やるのだった。
「にゃ・・・にゃあん・・・・・・」
音姫はそのまま義之が満足するまで彼の足元で鳴き続ける。止めようとすると義之も撫でるのを止
めてしまうためだった。
もっともっと彼に撫でてもらいたい、褒めてもらいたい。その思いが音姫を動かしていた。
(なんだろう・・・恥ずかしいのに、すぐ帰りたいのに、私、どんどん変な気持ちになっていく・・・)
不思議なことに、野外で裸になり、首輪や尻尾を付けながら猫の鳴きまねを続けていると、段々と
音姫は自分が本当に動物になってしまったかのような錯覚を感じて始めていた。
それと同時に先程まであれほど音姫の心を占めていた羞恥心が義之・・・いや、『ご主人様』への愛情
へと置き換わっていった。
「音姉可愛いよ。ふふっ、誰も知らない、俺だけの音姉・・・」
「にゃっ・・・あ、ん・・・ちゅ、んん、くちゅ、ちゅぷ・・・」
まるで本当の子猫であるかのように足に纏わりついていた音姫の顔を向け、愛しそうに口付ける。
音姫は抵抗もせず、ミルクを飲むように舌を出し、彼の口付けに答える。
「んっ・・・おと、ご、ご主人、様・・・・・」
「・・・可愛いね、音姉は」
「ひぅっ!?」
突然走った刺激に音姫の身体がびくんと跳ね上がる。
だが義之の手は気にせず音姫の控えめな乳房を好き放題に蹂躙し、ぷくりと膨れ上がった乳首を遠
慮もなく摘み上げる。
先程までの蕩けるような穏やかな快感からは一変、突然襲い掛かる快感の暴力に、ただ身体を震わ
せるしかない音姫。
「あうっ、くぅん・・・胸、そんなに苛めないで・・・び、敏感になっちゃってるから・・・」
「あははっ、音姉すごい気持ちよさそうだね。やっぱり外でやる方が音姉も感じるんじゃない?」
「ひあぅ・・・! そ、そんなことな・・・・・・」
悪戯っぽく訊ねる義之の問いに対し、顔を真っ赤にしながら弱々しく首を振って否定する。けれど
荒い呼吸を繰り返す音姫の白い裸体が朱に染まっていること、そしてポタポタと何かが地面に落ちる
水音を聞けば、その言葉が形だけの否定であることは明らかだった。
「・・・でも音姉のここ、全然嫌がってないじゃないか」
「んにゃあっ!? そこっ、んああっ・・・!!」
義之が指でそっと秘所を撫でてやると、まるで電流が流れたような激しい反応を音姫が見せる。
すっかりぐちゃぐちゃに蕩けたそこは、義之の指を容易く中へと飲み込んでしまう。熱く潤った膣
内で指を動かせばぐちょりという水音と共に音姫の泣き声が響いた。
「触ってもいないのにこんなに濡れてたなんてね・・・もしかして、歩いてたときから誰かに見られる
かもって興奮してたの?」
「いにゃあ・・・言わないで・・・・・・」
中を掻き回される度に身体が跳ね、首輪の鈴をちりんと鳴らし、尻尾がぶらぶら揺らす。
義之の指に、言葉に、舌に翻弄され、息も絶え絶えに悶える音姫。
その姿は間違いなく、世界で一番淫靡な子猫だった。
「音姉、そろそろ・・・欲しい?」
ズボンのファスナーを開け、限界まで張り詰めた己の分身を取り出す義之。
あれから幾度となく絶頂へと押し上げられ、既にまともな思考力も残っていない音姫は、ただ本能
の命じるままにおねだりの言葉を口にする。
「は、はい・・・ください、ごしゅじ、わたしに、いっぱい・・・」
じっとりと濡れた瞳で大きく反り返った義之のそれを凝視し、媚びるような鳴き声で鳴くその姿に
は、普段の清楚な美少女の面影は残ってなかった。
「じゃあ、その鉄棒に掴まって。それで俺にお尻を向けてごらん」
「にゃん・・・」
へたり込みそうになる体を懸命に起こし、主人の命令に従おうとする音姫。
やがて鉄棒に支えてもらうようにして立ち上がった音姫の可愛らしいお尻が突き出される。
後ろに立った義之からは、月光に照らされきらきら光る秘所が丸見えの格好。
野外で、しかも自分からこんな恥ずかしい格好をしている。そんな意識がますます音姫の快感を高
めていった。
「よくできました。それじゃこれはご褒美―――だ!!」
「ひにゃああああああああっ!!」
暫く焦らすように割れ目の上をなぞっていたかと思うと、いきなり熱くたぎった肉棒が奥まで一気に突き込まれる。
完全に不意をつかれた音姫は予期せぬ快感に悲鳴を上げ、反射的に逃がれようとする。だが前には鉄棒があり、更に義之にがっちり腰を掴まれている状態ではどうすることもできない。
「ん、やっ、あっ、はあん・・・んんん・・・・・・!!」
何とか鉄棒にしがみ付くようにして崩れ落ちるのを防ぐのが精一杯の音姫は、義之が動き出すまで
の僅かな猶予、期待と恐れを胸に抱くことしかできなかった。
とはいえ義之もそれほど余裕があるわけではなかった。
興奮しきった音姫の膣内はぬめぬめとした潤滑油で溢れ、温かな肉襞が群をなしてペニスを撫で回
し、扱き上げるようにざわめいている。
その快感たるや、挿入の瞬間歯を食いしばらなくては暴発してしまうほどだった。
「じゃあ、そろそろ動くよ」
「待って、わた―――はあんっ! ん、はあ、ああ・・・・・・」
快楽の波が収まるのを待っていた義之が遂に動き出した。
膣内で義之のものがずるずると移動する感覚に身悶えする音姫。
「いにゃ、あくっ、あああ―――い、いあっ、はあ、んああああん!!」
義之が無数の襞を掻き分けるように奥まで突き込み、次の瞬間には大きく張ったカリで膣内を擦り
上げるようにして引き抜く。
音姫は涙と涎と流しながら、ただただ義之の肉棒に面白いように翻弄されるのみだった。
「んにゃあああっ!? ら、らめ・・・それつよしゅ、ゃあああああ!!」
「うあっ・・・く、し、締まりがすご・・・」
それは何気なく義之が自分の下で揺れる尻尾を掴んだときだった。いきなり音姫がそれまで以上に
激しい嬌声を上げ、同時に膣内が物凄い勢いで収縮したのだった。
がくがくと膝を揺らす音姫を見て、義之は何か思いついたように、ああと声を上げる。
「そういえば・・・音姉お尻のほうを責められるのって初めてだっけ」
にやり、という擬音が聞こえてきそうな笑みを浮かべる義之。
その笑みは、音姫にこの後に起こるであろうことを明確に告げていた。
「ちょ、待っ―――――」
「それっ!」
慌てて制止の声を上げる音姫だが、その必死の懇願も空しく義之は尻尾を掴むと、躊躇もなくそれ
をグリッと回した。
「ひぐっ・・・ひああああああっ!」
「あっ・・・くあ、お、音姉、気持ちいいよ・・・」
義之の言ったように、これまでの性行為で音姫はアナルセックスどころか、アナルを責められたこ
とすらなかった。
それなのに、いきなり腸内を掻き回される(尻尾の差込口はアナルビーズになっている)のは刺激
が強すぎた。
自分の尻から未知の感覚と同時に、膣内と同じくらいの快感が溢れ返ってくるのがわかる。
腸内に異物を挿入するなど、これまでの彼女からすれば変態でしかないというものだった。が、そ
れ故にこんな玩具でこれほどまでに感じてしまう自分自身に彼女は戸惑い、それが更に快感を高める
燃料になっていた。
「な、なんれ・・・こんなに、す、すごっ・・・はっ、ああ、い、いやぁ・・・駄目なのに、こんなので感じ
たら・・・わ、私、お尻なんかで・・・・・・」
「はぁ・・・音姉、イキそうなんだね? いいよ、俺も・・・っく、そろそろ出そう・・・」
腸内ではビーズが、膣内ではピストンを繰り返す肉棒が、互いに肉一枚隔てた場所で暴れ回る。
これまで経験したこともない快楽に音姫は限界を迎える。
「やぁ、らめ、ごしゅじ、いや・・・イかせちゃ・・・はああんっ!」
「ああっ・・・音姉の中が締まって俺のを搾り取ろうとして・・・・・・俺、もう―――!!!」
歯を食いしばりながら快感を押し殺していた義之にも遂にその時がきたらしく、びくびく震える肉
棒を一際奥まで突きこむ。
そしてその瞬間、
ズルルルルルルルッ!!
意図せずして掴んだ尻尾を思いっきり引き抜いてしまう。
「ひっ―――――い、イッちゃ、はに、ゃあああああああああああああああああ!!!」
勢いよく引き抜かれるビーズ。
そしてそれは抜かれていく際、彼女の腸内をこれでもかというくらいに擦り、抉り、苛めぬいてか
ら外に飛び出していった。
その強すぎる刺激は瞬く間に音姫を絶頂へと押し上げ、同時に彼女の膣内に大量の精液が注ぎ込ま
れた。
「うぅ・・・弟くんのバカあああっ!」
「ごめん! 本当にごめんって」
次の日、(当たり前だが)すっかりご立腹の音姫を前にして義之はひたすら謝っていた。
「音姉があんまり可愛かったからつい調子に乗っちゃって・・・反省してるよ」
「可愛・・・って、駄目だよ、そんな言葉に誤魔化されないからね!?」
そんなやり取りを聞きながら、由夢はまたかといった表情を浮かべ、巻き添えを食わぬよう縁側で
一人茶を啜っていた。
詳しい話は知らないが、それでも何となく予測がついてしまう。どうせ今回も義之の困った悪癖が
原因なのだろう。
「兄さんも趣味趣向の問題さえなければいい人なんですけどね・・・というか、お姉ちゃんもちゃんと
断ればいいのに・・・・・・」
誰ともなしに呟き、煎餅を一口かじる。
さて、そろそろ終わった頃だろうか。
茶を飲み終わり、お代わりでも淹れてこようとした時、少しだけ聞き耳を立ててみる。
「だってさ、あんな格好他の女の子には頼めないだろ? それに、音姉だって俺が他の女の子にあん
なの着けさせたら怒るだろ?」
「あっ、当たり前です!! そんなことしたら、私本気で怒るからね!?」
「だからだよ。大丈夫、俺があんなことをしたいのは音姉だけなんだからさ」
「・・・・・・」
「まだ怒ってる?」
「・・・・・・ちゃんと反省して、もうあんなことしないなら・・・・・・その、許してあげるけど・・・・・・」
「ありがとう、好きだよ、音姉」
「もう・・・・・・うん、私も・・・」
もう何度目になるかの溜息を吐く。
二人で何とかできないのであれば妹である自分が手助けしてもいいが、はてこの場合義之を先に矯
正するべきか、音姫を何とかするべきか、それとも放置が一番なのか。
暫く考えた後、自分の中で一つの結論を下すと由夢は歩き出した。
とりあえず、お茶のお代わりをしてこよう。
end