休日の穏やかな昼下がり。  
少し暖かくなってきたとはいえ、まだまだ寒さの残るこの季節。  
芳乃家ではコタツを囲んでランチタイムの真っ最中であり、  
昼まで寝ていた俺は腹ペコですぐにでも食事をガッつこうと思っていたのだが・・・。  
 
「はい、義之くん。あーーん♪」  
「・・・・・・・・・」  
 
太陽のような明るい笑顔で俺に唐揚げを差し出してくるアイシア。  
俺はそんなアイシアを見ながら固まるしかなかった。  
 
「いや・・・あーんって・・」  
「む?なに、あたしの作ったご飯が食べられないっていうの?」  
「いや、そうじゃなくて・・。てかそれは俺が作ったものだし」  
 
今日のお昼の当番はアイシアだったが、  
今お箸で摘んでる唐揚げは昨日俺が作ったものの残りだ。  
 
「むー、揚げ足とらないでよー」  
「そう言われても・・」  
 
困ったことにどうやらアイシアは学園やさくらパークでの一件で  
すっかり癖になってしまったらしく。食事のたびにこれを強要してくるのだ。  
 
「もう。義之くん、なんで嫌がるかなー」  
 
そう言って頬を膨らませる。そんな顔もかわいい。  
 
「いや…だって」  
 
勘弁してほしい。  
そりゃあ、普段ならちょっと照れ臭いけど断りはしないさ。  
俺も男だ。照れ臭さより嬉しさの方が勝つ。………が。  
 
「あ、ボクのことはお気になさらずに〜。どうぞ、思う存分いちゃついちゃってください  
〜」  
 
俺が視線を向けるとさくらさんが楽しそうに笑った。  
そうはおっしゃいますがね。第三者が見ている中でこれはさすがに……。  
それに赤の他人とかならまだしも、  
家族…しかも母親が見てる中で息子にいちゃつけとおっしゃいますか。  
 
「ほらほら、さくらもああ言ってるし。  
はい、あーん☆」  
 
アイシアは再びおはしで唐揚げを差し出してくる。極上の笑顔で。  
くっそー、かわいいなぁ。頬がにやけないように必死になる。  
最近はアイシアの笑顔を見るたびにやけそうになるのを堪えてる気がする。もう病気だな…これは。  
こうなると俺には白旗をあげる選択肢しか残ってないわけで…。  
 
「…………わかったよ。あーん…」  
「あーーん☆」  
 
ああ、さくらさんがこっちをじーっと見てるよ。にやにやしながら。  
恥ずかしさでとにかく口の中にあるものを噛むことにしか脳が動かない。味を楽しむなんて無理だ。  
無味の唐揚げを飲み込みながら俺は、  
「今度からもうちょっと濃い味付けにしようか」などと見当外れなことを思うのであった。  
 
「アイシア、やっぱりあーんはやめてくれない?」  
 
その日の夜。兼ねてより伝えようと思っていたことを伝えるべくアイシアを部屋に呼んだ俺は、  
お互いにベットの上に腰掛けた後、開口一番にそう言った。  
 
「えーーー?」  
 
部屋の入ったときは輝いていたアイシアの顔が一瞬で曇る。  
そして不機嫌そうに頬を膨らませる。  
 
「どうして、義之くん? ・・・・もしかして、嫌なの?」  
 
拗ねるような瞳で俺を見上げてくるアイシア。  
とくん、と胸が跳ねるのを感じた。  
 
「いや・・嫌ってわけじゃあ、ないけど・・・その、なんていうか・・」  
「だったらどうして?」  
「えーと、だから・・」  
 
その顔を見ていると照れくさくて、思わず視線を逸らしてしまう。  
ええい。なにやってんだ、俺!はっきり言わないとだめだろ!  
心の中で自分を叱咤激励し、アイシアの方を向き直る。  
 
「二人っきりの時なら構わない・・てか、大歓迎なんだけどさ。やっぱり、皆が見てる前では・・・」  
「むーー」  
 
今日みたいなことが続くと色々とまずい。  
今日はさくらさんだけだったからまだよかったが、釘を刺しておかないといずれは他の皆――  
由夢や音姉たち、それに雪月花や渉、杉並といった友人連中の前でもあれをやらされるだろう。  
 
「遊園地のときはもっと多くの人が周りにいたけど。大丈夫だったじゃない」  
「いや、人数の問題じゃなくて・・・」  
 
いじけたようにそっぽを向いてしまう。  
さくらパークのときもそりゃあ恥ずかしかったさ。  
でも、周りに人がいるとはいえ、しょせんは他人。  
こっちにそこまで興味も関心も持ってないし、  
知り合いの前でやるのとは恥ずかしさのレベルが違う。  
 
「あたしは別に誰が見ても気にしないんだけどなー」  
「俺が気にするんだ・・・」  
「あたしは気にしないんだけどなー」  
「だから、」  
「あたしは気にしないんだけどなー」  
「・・・・・・」  
 
膨れっ面のまま同じ言葉を連ねるアイシア。  
うーむ、こうなっちゃうと基本的に俺が折れるしか解決策がないんだよな・・・。  
だが、今度ばかりはそういうわけにはいかない。この提案だけはなんとしても通さなければ。  
 
「頼む!アイシア! 二人っきりのときはあれやっても・・いや、どれだけいちゃついて  
もいいから、皆が見てる前では勘弁してくれ!」  
「・・・・・・・」  
「この通り!」  
 
ベットから降り、床に両手を付き頭を下げる。我ながら完璧な土下座。  
この土下座を見て、日本人なら何かを感じずにはいられまい。あ、アイシア日本人じゃないや・・。  
 
「・・んー、義之くんがそこまで言うなら考えなくもないけど・・・」  
 
だがそんな俺の様子を見て外国人のアイシアでも思うことがあったようだ。  
横目で俺の方を見ながらうーん、と唸っている。あと、一息か・・・?  
 
「頼む!代わりになんでも一つだけ言うこと聞くから! このとおり!」  
「・・・・・・なんでも?」  
「ああ、なんでも一つだけ聞いてあげる!一生のお願い!」  
「・・・・・・・・・」  
 
「代わりに言うことを聞く」「一生のお願い」  
どちらも切羽詰まった人間が相手を説き伏せるために使う定番中の定番の言葉だ。  
その時、俺は深く考えもせずそんな言葉を連ねてなんとか説得しようと必死だった。  
アイシアは少しの間、何かを考え込んだ後――  
 
「もう、しかたがないなー、義之くんは。・・うん、いいよ」  
 
笑顔でそう言った。  
 
「ほ・・・ほんとに?」  
「ほんとだよ。皆が見てる前では自重してあげる」  
「や、やった・・よかったぁ・・」  
 
まさかここまであっさり引き下がってくれるなんて思わなかった。  
今の俺にはアイシアが天使か女神に見えてきたぞ。  
 
「じゃあ・・・・・・しよう」  
 
唐突にアイシアが小声で何かを言ったかと思うと、彼女の視線が泳ぐ。  
ベット、クローゼット、目覚まし時計。俺の部屋の様々な場所に焦点を合わせつつも何故か俺のことを直視しようとしない。  
 
「ん? なんだ」  
 
その不自然な動作に思わず問いかける。  
 
「・・・だから、・・・・だよ」  
「? 悪い。また聞こえなかった。もう一回頼む」  
「むー・・」  
 
きょろきょろと動いていたルビー色の瞳が俺を見据える。その中には紛れもなく怒りの色が含まれていた。  
・・・いや、そんな「空気読んで」みたいな目で見られても。  
本当に声小さすぎて聞こえないんだって。  
 
しばし、お互い無言で見つめあう。  
テレビもラジオもつけていないから無音の室内。時計の秒針の音が妙に大きく感じられた。  
その沈黙に耐え切れなくなり、俺が口を開こうとした時。  
 
「あーーーもう!!」  
 
いきなりアイシアが叫んだ。  
な・・なんだ?いきなり。  
よくよく見ると、アイシアの顔はうっすらと赤くなっている。  
 
「・・・こういうことだよ」  
 
アイシアはぽつりと洩らすと、瞬間、俺の胸に飛び込んできた。  
アッシュブロンドの髪で視界が覆われる。  
俺は呆然としつつも、咄嗟に腕をアイシアの背中にまわし彼女を抱きとめる。少し後ろによろめくも倒れるほどじゃない。  
ぎゅーっと、抱きしめてみてその体を味わう。相変わらずなんて華奢で、いい匂いなんだろう。  
 
久しぶりのハグ。さくらさんの目があるからなかなかこういうことできなかったからな。  
そんなことを冷静に考えている自分に少し驚いた。  
 
「・・・・・・どういうこと?」  
 
さすがにここまでされたら俺でもアイシアがなにを言わんとしたのかはわかっていた。  
わかっていたが、つい悪戯心で聞き返してしまう。  
俺の胸に顔をうずめていたアイシアがルビー色の瞳で俺を見上げる。その顔は傍から見てもわかるくらいに真っ赤に染まっていた。  
アイシアの唇が動く。わかってるくせに、か。  
 
「・・・けど、アイシア。一階にさくらさんが・・」  
「なんでも言うこと聞いてあげる、って」  
「それは、そうだけど・・・」  
「二人っきりのときはどれだけいちゃついてもいい・・」  
「あー、うん。たしかに・・それも言いました・・」  
「・・・・最近、義之くんそっけないんだもん。色々と欲求不満なんだよ」  
 
別にそっけなくなったつもりはない。  
・・ただ、アイシアが芳乃家に居候するようになってからは  
周りの目が厳しくて色々と自重していたのだ。  
相変わらず由夢と音姉はちょくちょくこっちに来るし、  
桜の木の管理をする必要がなくなったことでさくらさんはほぼ毎日家に帰ってくるようになったし。  
おまけに純一さんまで懐かしい顔を見たくなった、とか言って来ることがあるし。  
それがなければ俺だってもっとアイシアと触れ合いたい。  
つまるところ、俺も欲求不満なのだ。  
そのことを考えるとこれは天が与えてくれた絶好の機なのかもしれない。  
今日は来訪者はなく、今はさくらさんも毎週欠かさず見ているTVの時代劇に夢中だろう。  
しばらくはこっちに来ることはないはずだ。  
・・・・・・・・・・・・・。  
 
「ねえ、義之く――んっ」  
 
アイシアが何かを言おうと唇を開いたとき、俺はその唇を奪っていた。  
 
「んー、むっ・・」  
 
少しの間、アイシアの唇を堪能する。  
 
「ふぅ・・。乗り気じゃないようなこと言っておいて、いきなり、なの?」  
 
羞恥一色に染まっていたアイシアの顔にはいつの間にか歓喜の色が混ざっていた。でも赤くなった肌は戻らず、それがなんともそそる。  
 
「別に乗り気じゃなかったわけじゃない」  
 
もう一度、キスをしようとすると俺が頭を下げる前にアイシアの方が顔を突き出してきた。  
 
「ん・・」  
「お、おう」  
 
二度目のキス。  
今回はゆっくりと味わおう、そう思い恍惚の気分に身を任せていると  
俺の唇を上下に割り、何かが入ってくる。これは、舌・・・?  
んぐ・・ディープキスか・・。  
アイシアとは何度かキスしたが、ディープキスは初めてだった。  
どうすればよいのかわからず呆然としていると、  
アイシアの舌はところ狭しと蠢き、歯を、歯茎を、舌を舐める。唾液を擦り付ける。  
 
「んんっ。んー・・」  
 
俺も舌を動かしアイシアの舌と絡ませる。  
アイシアの舌の動きになんとか合わせようと必死になる。  
二つの舌は狭い口腔で踊り、暴れる。  
やがてどちらともなく舌を引っ込め、離れる。  
 
「・・・ぷはぁっ・・・、いきなり・・ベロ突っ込んでくるなよ。っていうかディープキスって」  
 
俺は興奮を無理やりに押さえ込み、務めて冷静に聞こえるようにそう言った。  
 
「んっ、はぁっ・・はぁっ。あたしの方が・・お姉さん、だからね。リードしてあげないと、って・・」  
 
アイシアも余裕ぶっているがその瞳は恍惚に染まっている。  
 
「ふーん・・なるほど・・、けどリードされっ放しってのはなんか・・・」  
 
納得がいかない。  
俺も男だ、勝手な考えだがこういう時はやっぱり自分がリードしたい。  
そんなことを思い、興奮も冷めやらぬままアイシアをベットに押し倒す。  
 
「あっ・・」  
「・・・もう我慢できそうにないんだ、・・いいよな?」  
 
アイシアは一瞬だけ体をこわばらせるも、  
 
「うん・・あたしは義之くんの奥さんだから、ね・・。何をやってもいいよ・・」  
 
次の瞬間には体中の力を抜き、全てを俺に委ねた。  
 
互いに一糸纏わぬ姿となり、ベットに横たわる。  
 
「・・・・・・・・・」  
 
アイシアの姿に思わず見惚れる。  
アッシュブロンドの髪に雪のように白い肌、そしてルビー色に輝く瞳。本当にお人形みたいだ。  
その白い体に右腕を伸ばし手、肩、頬と目に付いた部分から撫でていく。  
 
「んっ。・・んんっ」  
 
アイシアの反応に俺の分身が疼く。欲望の赴くまま愛撫という名の奉仕を続ける。  
徐々に距離も近くなっていき、お腹や腰、足などきわどい部分に手をあてがう。  
首の後ろに腕を回しもう一度、キスをし、そのまま背中を撫でる。  
 
「あぅ、・・・よ、義之くん・・」  
「ん・・・?」  
「じ、焦らさないで・・ひとおもいにやって・・・」  
 
・・・あれ、やる前はたっぷり愛撫してから、とか渉のやつが豪語していたから  
それに従ってみたんだが、もういいのか・・?  
正直、俺の息子もこの段階でビンビンに立っていてもう抑えが聞かないところまできていた。  
だからアイシアの方から準備OKといってくれるのなら望むところなんだが・・。  
 
「わ、わかった。それじゃ・・いくぞ」  
「う・・・うん、来て」  
 
アイシアの上に跨る。ちらりと見たその秘所からはぬっちょりと愛液が流れていた。  
荒い息を噛み殺し、狙いを定める。  
腰を落とし、己の分身でその陰唇を突き抉る。  
 
「あぅっ! よ、義之くんっ!!」  
「ぐぅ・・、はぁっ、はっ・・!アイシア・・アイシア・・!」  
 
挿入もあの日以来、だ。  
慣れない快感に全身が支配される。灼い。痺れる。  
快感は体だけでなく脳をも支配する。頭の中が真っ白になり、何も考えられない。  
 
ただ―――目の前の少女が愛しい、と。それだけを思った。  
 
 
「いやはや、お盛んですねー」  
「ふふ・・まったくだな」  
 
そんな二人の情事を、居間で時代劇を見ながら聞いていた者たちがいた。  
芳乃家の家主・芳乃さくらと、隣の朝倉家の家主で遊びに来ていた朝倉純一である。  
 
「しかし、この家もだいぶぼろくなったなさくら。色々とまる聞こえじゃないか」  
「んー、そうだね〜。そろそろリフォームしたほうがいいかも」  
 
TVの時代劇はまさにクライマックス。大量の武士たちが主君の仇の屋敷に押し入り、彼奴はどこだ、と走り回っている。  
 
「ほぅ。リフォーム、か」  
 
茶を啜りながら、いいんじゃないか。と返す。  
 
「うん。家族が一人増えたし、それにもっと増えるかもしれないし・・ね☆」  
 
そう言い、さくらは幸せそうな笑みを浮かべるのだった。  
 

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