「あれ……私……」
いつの間に眠ってしまったのだろう?
頭がぼやけて思考が追い付かない。
横たわった身体は鉛のように重たくて、力が入らない。
それでも頬に触れる畳の感触や見慣れた調度品から、ここが義之の家の居間だというのは分かった。
確か、義之に呼ばれて家に来たけど、誰も出なかったから合い鍵を使って中で待たせてもらってたはず。
でも居間に入ったら急に目眩がして……。
「おはよ、杏ちゃん。
もう待ちくたびれちゃったよ」
「さくら……さん?」
何故か目の前には恋人の保護者がいた。
しゃがみ込んでこちらを見つめるその笑顔に、何か危険なものを杏は感じ取った。
「あの、これは一体……」
「ひどいなあ、杏ちゃんは。
ボクの義之くんをたぶらかそうとするなんて、本当にひどい」
杏の問いかけなどあっさり無視して、さくらは続けた。
「義之くんはね、ボクのたった一人の、大事な大事な家族なんだよ?
義之くんを手に入れるために、ボクがどれだけ時間と労力をかけたかわかる?
まあ、杏ちゃんには想像も出来ないだろうけど」
そう、お兄ちゃんと別れてからずっと一人だったボクに、やっと出来た大事な大事な家族。
それを簡単に奪われてたまるものか。
胸の奥のどす黒いものを吐き出すようなその口調に、杏は寒気すら覚えた。
「だから、そんな横紙破りの泥棒ネコさんには、たーっぷりお仕置きしてあげなくちゃね」
ぱちんっ、とさくらが指を鳴らすと、襖を開けて全裸の男が入ってきた。
「よ、義之…?」
顔は確かに義之だった。
だが、その顔に張り付いた白痴めいた表情が、似て非なるものであると語っていた。
「んー、半分当たりで半分外れってとこかな。
これはね、義之くんの失敗作。
消しちゃうのが忍びないから保管しておいたんだけど、こんな風に使えるとは思わなかったな」
さくらが顎で杏を指すと、失敗作は杏の服に手をかけ、あっさりと破り捨てた。
「……っ!?」
悲鳴を上げることも出来ぬうちに、ショーツまで引きちぎられた。
露わになった杏の秘処に、無遠慮に舌を這わせ、貪りつく失敗作。
愛撫などとは呼べぬその行為に感じるはずもなく、ただ嫌悪感ばかりがいや増してゆく。
一向に濡れる様子を見せない杏に焦れたのか、失敗作は己のモノを杏の秘処にあてがおうとする。
「い、いやっ……やめっ……」
満足にいうことを聞かない身体で必死に抵抗するが、あっさりと組み敷かれ、捻じ込まれた。
「っ、いたいっ、痛いっ……!」
そのまま叩きつけるように腰が振られ、杏は身体と心の痛みに涙を流した。
「あぐっ……、ひっ……、ぅあ……」
引き抜かれ、突き込まれるたび、杏の口からは押し殺した悲鳴が漏れる。
常人なら目を背けたくなるその光景を、さくらはにこやかに見守っていた。
その青い瞳に暗い焔を灯しながら。
「くぁっ、やぁっ……、は、ぁ……!?」
胎内にあるモノが膨らみ、腰のスピードが一段と激しさを増す。
その行為が意味するものに、杏は顔を青くする。
「やだっ、……なかは、膣内だけは……やめ…て……っ!」
懇願など無駄だった。
最奥に突っ込まれた瞬間、熱い塊が膣内を白く灼き染めた。
「……ぁっ……ぁ…ぃやぁっ……」
義之にされたときの、心身共に満たされる幸せなど感じるはずもなく、膣中に溢れる気色悪さと妊娠の恐怖が、杏の肩を震わせる。
「もっと頑張ってくれないとつまんないよ、杏ちゃん。
まだまだ終わりじゃないんだからね」
「……えっ………?」
さくらの言う通りだった。彼女の背後には、いつの間にかあの失敗作がずらりと並んでいた。
その数、30体以上。
「ぅ……ぁ…ぁ………」
「これぐらいの人数、杏ちゃんなら大丈夫だよね。
お楽しみは、これから、だよ」
「……ぃやああああぁぁぁっっ!」
杏の悲鳴を合図として、さらなる狂宴が幕を開けた。
一斉に群がってくる失敗作に、杏は為す術もなかった。
「いやぁっ、もうやめ……っ!?」
口に押し込まれたモノにより、悲鳴を上げることすら許されない。
「っ、ぐぅっ、ぅうっ、ふくっ!」
モノが再び秘処に潜り込み、膣内をかき回す。
「んぅぅっ、んくぅぁっ!」
両手にも無理矢理握らされ、奉仕を強要される。
「んっ、くぅっ、ふ、ぅあっ!」
ほどなくして吐き出されたものが、杏の肌を、喉を、そして膣内を白く汚してゆく。
「んっ、んううううぅぅぅぅっっ!」
再び流し込まれた精液の熱さが、望まぬ妊娠の恐怖を煽る。
「もうやだぁ……なかに……膣内に出さないでぇ………」
涙と精液に濡れた顔で懇願するが、さくらはそれを鼻先で笑い飛ばした。
「あはははっ、それじゃお仕置きにならないよ、杏ちゃん。
ほら、まだまだ後がつっかえてるんだから、効率よくいかないと」
さくらのその言葉に従ってか、失敗作達は前後の穴にモノをあてがった。
「ひっ……や、ぃや………」
ありえない場所にありえないモノを挿れられる。
まだ義之にもされたことがないのに……。
そんな杏の思いなど無視して、遠慮なく両方の穴にモノが叩き込まれた。
「―――――っ!かっ、は―――!」
肉を裂く痛みと不快極まる異物感、圧迫感で呼吸すらままならない。
そんな状態の彼女にすら、モノを口にくわえさせ、握らせようと群がる失敗作たち。
別に問題は無かった。
最初から杏を壊してしまうことが目的だったのだから。
現に杏は、もはやなすがままにされるだけの肉人形に成り果てている。
「くっ、くくっ……」
そう、とても単純なことだったのだ。
邪魔をするものはみんな壊してしまえばよかったのだ。
どうしてこんな簡単な事に気付かなかったのだろう?
そう、もっと前に気付いていれば、お兄ちゃんだって………。
「あはは………」
いや、今からでも遅くない。
でも、それにはあの正義漢きどりの魔法使いが邪魔だ。
いっそついでに、妹の方も壊してしまおう。あの女の若い頃によく似た顔が苦痛に歪む様を想像するだけで、笑いがこみ上げてくる。
「あはっ、あははっ………!」
待っててね、お兄ちゃん。義之くん。
すぐに邪魔者を消して迎えにいくから。
邪魔者が消えたその後は、親子三人で、仲良く暮らそうね。
「あはははははははははははははははははははっ!」
さくらが物思いに耽っている間にも、杏は犯され続けていた。
その瞳からはすでに光が消えかかっている。
さくらの調子の外れた哄笑すらも耳に届いてはいなかった。
その小さな身体はとっくに受け入れられる限界を超えていたのだから、当然といえば当然だった。
薄れゆく意識の中、杏は想った。
(ごめんね、義之………)