「嘘」  
 確信を持った音姉の声。まるで信じていないのが声色からでもわかる。  
「嘘じゃない!俺は由夢と…」  
 淡々とした音姉の表情に自分の気持ちが全否定されたような気がして、つい声を荒げてしまう。  
「嘘だよ。お姉ちゃん、弟のことなら何でも分かるもん。今ならまだ許して上げるから早くその出来の悪い冗談取り消して」  
 音姉の顔は笑っているけど、目は全く笑っていない。それでも俺は…  
   
「嘘じゃない」  
「取り消して」  
「嘘じゃないんだよ、音姉」  
「取り消しなさい」  
 音姉の声がだんだん冷たくなっていく。大して大きな声でも怒鳴られているわけでもないのに、俺は何よりもそれを恐ろしく感じた。  
   
「嘘じゃない!俺の本当の「弟君」  
 俺の声を遮る声は冷たいなどという生暖かいものではなかった。  
「……お姉ちゃんの言うことが聞けないの?」  
 見るんじゃなかった。音姉の表情は仮面の方が表情豊かだと思わせる程の全くの無表情。瞳にはあらゆる感情が抜け、ただ俺を見つめている。  
 そんな音姉に俺は……  
 

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