「音姫先輩・・・あの、ちょっといいっすか?」  
「板橋くん・・・? っ! その怪我どうしたの!?」  
「え? あぁ、こんなのはどうでもいいんですよ・・・」  
「どうでもよくなんてないよ!  
そんなに痣だらけになって、それどう見ても殴られた痕じゃない!」  
「別に・・・ただ、本校生と戦りあっただけですよ  
相手は三人だったし、ちょっとキツかったんすけどね」  
「なっ・・・ど、どうしてそんなこと!?」  
「アイツらが音姫先輩への悪質な中傷をしてたから、我慢できなかったんですよ」  
「悪質な・・・中傷?」  
「ええ。音姫先輩は誰とでも寝る女で、自分達も便所として使ったって」  
「っ!!!!!」  
「ね? 酷い作り話でしょ? あんまり腹が立ったんで全員殴りとばしてきましたよ」  
「・・・」  
「でも、アイツらもマメだよな・・・  
わざわざこんな小細工まで用意してるんだから」  
「・・・」  
「アイコラ・・・でしたっけ?  
科学の進歩ってすげえな・・・  
エロ本と音姫先輩の写真を合わせただけなのに、まるで本物みたいなんだから」  
「・・・」  
「・・・ねぇ、音姫先輩。なんでさっきから黙ったままなんすか?  
は、ははは・・・やだなぁ、冗談キツいっすよ。  
そんな態度取られたら、俺単純だから信じちゃうじゃないですか・・・  
ねぇ、音姫先輩っ! お願いだから何とか言って下さいよ!!」  
 
「・・・ごめんね、板橋くん」  
「そ、そんな・・・嘘だ・・・嘘だっ!!」  
「嘘じゃないよ。  
私はもう数えきれないくらいの人に抱かれたの。  
好きでも何でもない人達にね。  
抱きたいって言われたらいくらでも応じたよ。  
あはは・・・それって本当に単なる性欲処理機だよね」  
「どうして・・・どうして!!!  
音姫先輩が何の理由もなくんなことするはずねえ!  
何か訳があるなら俺に話しーーー」  
「もういいよ」  
「・・・音姫先輩?」  
「もう無理して私なんかに構うことないよ。  
心の底ではこんな私のこと軽蔑してるんでしょ?」  
「っ!! そんなこと・・・!!」  
「あ、それとも私のこと抱きたいって思ってるのかな?  
いいよ、私は別に。私ももう慣れちゃったし。  
・・・どうせ板橋くんも、最初からそれが目的だったんでしょ?」  
「・・・」  
 
パンッ!!  
 
「あっ、つぅ・・・」  
「何でなんだよ・・・」  
「板橋くん?」  
 
「何で・・・何でわかって、くれないんだよ・・・  
おれっ、俺は、ただ音姫先輩のことが心配で、力になりたくて・・・  
ただ、それだけっ、なのに・・・何でわかってくれないんだよ!?」  
「板橋くん・・・」  
「お、俺は・・・俺は、ただっ・・・!」  
「・・・」  
「っ! お、音姫先輩?」  
「ありがとう。こんな私のために泣いてくれて。  
ありがとう。こんな私を心配してくれて。  
その気持ちだけで、私は十分だから・・・」  
「音姫先輩・・・」  
 
 
「何してるの・・・?」  
「っ!? つ、月島・・・!?」   
「え・・・あっ」  
「ねぇ、渉くん、何で音姫先輩と抱き合ってるの?  
こんなところで・・・二人きりで何してたの?  
・・・ねぇ、答えてくれないかな?」  
 
 
 
 

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