「えへへぇ…、弟くんハンバーグおいしい?」
ハンバーグにかぶりつく俺に、何が嬉しいのか満面の笑みで尋ねる音姉。
「ああ、おいしいよ。音姉のつくる料理は最高だよ。」
褒めすぎで逆に褒めてないようにもとれるように言ってしまったが、音姉には十分効果があったみたいだ。
「えへっ、そっかぁ…弟くん、どんどん食べてね」
「………………………………」
んっ?今日もハンバーグか。それにしても、昨日と違い随分形が歪だが?
「や、たまには私も料理でもしてみようかなって思ってさ」
そうか。黒こげの何かを生み出さなくなっただけ由夢の料理のレベルもそれなりに上がってきたらしい。
「頑張ったんだな」
満足そうな由夢と音姉が何やら不満そうにしているのを、視界の端に入れつつ由夢の手料理に目を向ける。
「いただきます」
箸でハンバーグを口元まで運ぶ。何やら由夢が箸のあたりをじっと見つめている。そんなに不安なのだろうか?
「美味いぞ、由夢」
そう言うとパッと向日葵が咲いたような笑顔になる。可愛いやつだ。
「や、ちょっと失敗したから」
失敗?味に何の違和感もなかったが。
「特に変な味はしなかったけど、どんな失敗をしたんだ?」
味におかしいところがないため、逆に自分の体に何らかの症状が出ないか不安になる。
「髪の毛」
へ?
「ハンバーグをこねてる途中に髪の毛が落ちちゃたんだけど、一度こねた後に気付いて慌てて探したんですけど見つからなくて、かったるいのと食材を無駄にできないからそのまま作ったんです。」
それぐらいなら別に気にならない。音姉の料理もたまに髪の毛が入っていることがある。
「それだけじゃないんです、後から気付いたんですけど玉ねぎを切ってる途中で指切っちゃたみたいでそのままこねちゃたんです。」
ということは、このハンバーグは血が入っているのか。ハンバーグがよく焼けているようなので問題ないだろ。家族だから気にする必要がないし。
「初心者なんだからそれぐらいあるだろ、気にするな」
由夢は安心したのかとても嬉しそうだ。
「ありがと、兄さん」
何やら音姉が青い顔して俺のハンバーグと笑顔の由夢を交互に見て口をパクパクとさせている。どうしたんだ、音姉?
「弟くん!!ハンバーグなら明日、お姉ちゃんがもっと美味しいの作ってあげるから、ね」
明日もハンバーグですか?
翌日、音姉が作ったハンバーグはちょっとしょっぱかった。