「こ、こんなのって…こんなのって…」  
落ち着きを取り戻した時には、全てが終わっていた。悪夢のような出来事。私にされた事、私にそれをした人。全てが悪夢だ。  
「どうしてなの…弟く…」  
唇を塞がれた。夢にまでみた相手の唇ななのに、嬉しいはずなのに。また泣きそうになった。  
「音姉がいつまでも弟としか見てくれないからいけないんだ…こうでもしなきゃ、絶対に音姉は俺のモノにならなかった」  
「違う!弟くんが望めば、私は弟くんのモノになってたの!」  
「もういいんだ。音姉。今はもう俺の事嫌いだろ?なら…」  
「あ…」  
「俺の好きにする」  
私の体に、指が侵入していた。  
 
「音姉っ!」  
「あっ…」  
何度目かわからない射精。処女を失った痛みも忘れかけていた。何度も、私を想っていた人が私を犯す。  
今の彼は傷ついていた。自分のした事で。勿論、私も傷ついている。だから、押し倒している彼の体を。  
「え…」  
抱き締めた。  
 
「え…え?」  
「気持ち良かった?」  
「お、おと…」  
「ごめん…ね。私のせいだよね。私がはっきりしなかったから、弟くん沢山悩んだんだよね」  
体を起こして、彼を胡座させる。私は自分からそこに腰を落とし、振ってみせた。  
「ほ、ほら。好きにしていいんだよ」  
私の涙は隠せていなかった。それでも、精一杯笑って見せた。  
「もう…音姉じゃないよ。朝倉音姫が桜内義之と…エッチしてるの」  
自分でも訳がわからない。でもこれが、私の伝えられる精一杯。  
「ほら、私は無理やりされてるんじゃないんだから…好きにして…いいよ」  
「…」  
私は懸命に、彼を楽しませようとした。それだけだ。彼が望んだ時、彼の相手になる事。それだけだった。  
「音姉?」  
「ん…な…に?」  
「…キスして」  
「いいよ…甘えん坊の…弟くん」  
今度のキスは、違っていた。舌が絡んで来て、私が返して、唾液なんかがこぼれ落ちて、何度も、何度も。  
「くっ…」  
「あっ…あっ…」  
私の体も反応する。もう、達しそうだ。  
「お、音姉!」  
「来て…出して」  
 
 
それから。  
私達の生活に少しだけ変化が起きた。  
私は毎晩、桜内家に泊まっている。そして  
「音姉?」  
「うん?」  
「音姉が欲しい」  
「いいよ。後でね…」  
こんな会話が有るようになった。私は桜内義之の…  
 
 
 
完  
 

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