「はぁっ、ああっ………ひゃうんっ!」  
義之に獣のように後ろから貫かれながら、杏はなすがままに躰を弄ばれていた。  
「ぅあああっ……!  
いやぁっ、もぅ……もうやめてぇ………」  
幼さが残る胸を揉みしだかれ、首筋を強く吸われ、秘豆を弾かれ、さらには不浄の穴を責められ………。  
愛撫と言うには荒々しすぎるその行為を受けるたび、杏の首に繋がれた鎖がジャラジャラと音を上げる。  
清楚さと愛らしさを引き立てるはずのメイド服は杏の愛液と義之の精液に濡れ、責め苦を受けることによりしわを寄せていた。  
普段結っている髪はメイド服に合わせる形で下ろしていたが、その髪もよがり狂ううちに乱れてしまっている。  
そんな風に躰中をなぶられながらも、杏は高みに達しようとしていた。  
「もう……だめぇ……。  
おかしく……おかしくなっちゃうよぉ………!」  
義之はただ激しく腰を叩きつけているように見えて、それでいて確実に杏が最も感じる部分を責め続けている。  
当人達以外には、その行為に愛を感じる事など出来はしないだろう。  
だが、涙と唾液に濡れた杏の顔は、微かずつ歓喜の色に染められつつあった。  
 
もっとも洗練された仮面は素顔である。  
それは一体誰の言葉だっただろうか?  
 
 
それはいつもと変わらぬ昼休みの一コマ。  
 
「なんかさぁ、義之君ってなんだかんだで杏ちゃんにベッタリになってるよねー」  
「うんうん、義之ってば何かにつけて杏、杏って、杏のことばっかり気にかけてたりするし」  
小恋も茜と同意見のようである。  
「そうかしら?  
私はそこまでベタベタしてるつもりなんてないんだけど」  
「同じく。  
これぐらいは普通じゃないか?」  
「ケッ、自覚のないバカップルめ」  
渉のひがみをさらりと無視して杏は続けた。  
「最近は朝までずっと一緒にいるけど、恋人同士ならそれも当たり前だし」  
『!?』  
「ちょ、杏!?」  
「いいじゃない。  
どうせなら、見せつけてやるぐらい熱くやりましょう?」  
杏は小悪魔っぽい笑みを浮かべて、隣に座る義之の腕を抱き寄せた。  
「大人だ………」  
「なんだか杏が遠い存在に思えるよ………」  
ため息まじりに言う二人を余所に、渉は一人キレていた。  
「そいつは挑戦だな!?  
年齢=彼女いない歴の俺に対する宣戦布告だな!?」  
「お、落ち着いてよ渉くん……」  
「落ち着いてなんぞいられるか!  
イチャイチャしやがって、チキショー!」  
小恋の苦言にも耳を貸さず、渉は義之と杏の弁当を指さした。  
「特にその弁当!  
二人おそろいってのはどういう了見だ!?  
もう愛妻弁当作ってもらうような関係にまでなったのか義之!?」  
「愛妻弁当?  
義之が作ってくれたのよ、これは」  
 
「え、そうなの?」  
「ええ」  
こともなげな杏の一言に、渉だけでなく小恋や茜も目を丸くした。  
それだけ意外だったのだろう。  
「このプリティなタコさんウィンナーを義之が?」  
「ああ」  
「このラブリーなウサ耳リンゴも義之くんが?」  
「ああ」  
「このご飯の上のピンクのハートマーク&杏LOVEも義之がか!?」  
「…………ああ。  
だがハートマークに関しては杏のリクエストで仕方なくだな……」  
「あら、義之もけっこう乗り気じゃなかった?」  
「まあ、な。  
料理は嫌いじゃないし」  
なにより杏が楽しみにしてくれているから、とは義之は口が裂けても言わないだろう。  
恥ずかしいから。  
「そんな真似して恥ずかしくないのか義之!?」  
「………ツッコミが入ると確かに恥ずかしいな、これは」  
「ふふっ、愛情を目に見える形で、ってやつね」  
「普通逆じゃね?  
こういうのは女の子の方が作ってくるもんだろ?  
そんで『はい、あーん』とかってやるもんじゃないのか?」  
「義之、はい、あーん」  
「あ、あーん」  
これみよがしに卵焼きを差し出す杏に、それでいいのかと思いつつ、義之は半ば条件反射的に応じていた。  
杏の好みに合わせて砂糖で味付けした卵焼き。  
口の中に広がるとろみと甘味に、義之は満足気に微笑んだ。  
それを見て、杏も小さく微笑を返す。  
「言ってるそばからやるな!」  
「いいじゃない。  
恋人同士の通過儀礼よ、これは」  
 
そんな彼らのやりとりを見て、茜と小恋は意外そうにしていた。  
「義之くんてば結構尽くす男だったんだねー」  
「てっきり杏にいろいろやらせてるかと思ってたけど、そうじゃなかったんだね」  
「そうね……。  
考えてみれば、義之にはいつも世話になりっぱなしよね……。  
義之は亭主関白の方が萌える?」  
小首を傾げてたずねる杏に、義之は思ったままのことを伝えた。  
「萌えるうんぬんは分からんが………。  
俺としては杏と二人で何かするっていうのが楽しいからな。  
杏の和風料理とかいろいろ教えて欲しいし」  
「さらっと恥ずかしい事を言えるというのもある意味才能だよな」  
渉にしては冷めた一言を無視しつつ、義之は続けた。  
「それにさ。  
その、杏もいろいろ大変だったりするからさ。  
俺としてはやっぱり少しでも支えてあげられたらなー、なんて」  
「うわ、ラブラブだ………」  
「愛を感じるよね…………。  
………妬ましいほどに」  
「こ、小恋ちゃん………?」  
何故か黒いオーラのようなものを出している小恋を置いといて、杏は嬉しそうに、でも控えめに微笑んだ。  
「ありがとう……。  
そんな義之だから………好き」  
「杏……」  
「うがああぁぁぁっ、見せつけんな!  
背中がかゆくなるわ!」  
「でも………。  
たまには私も義之に何かしてあげたいな……」  
 
「別にそういう事に気をつかう必要なんてないぞ。  
お互い様なんだから」  
「でも、それだとなんか私らしくないって感じが、ね。  
夜だって義之にリードされてばっかりだし」  
「そういう爆弾発言はやめれ……」  
「杏ちゃんの華奢でひかえめな躰を夜毎むさぼる義之くん………。  
まあ、なんて鬼畜なの!?」  
「鬼畜言うな!」  
「義之のロリコン!ペドフィリア!」  
「こ、小恋まで……?  
なんかいじられ役が変わってないか?」  
「幸せの対価と思えばやすいもんでしょ?」  
「キャラの位置づけが変わってない、というか変わりようがない俺はどうなるよ!?  
おまけにさっきから無視されまくってるんですけどね!?」  
 
友人達と楽しげに語らう二人。  
そこに嘘偽りはない。  
ただ、それは義之と杏の昼の顔にすぎないということ。  
そして夜の顔はまた別物であるということ。  
ただそれだけのことである。  
 
 
「イくっ………イっちゃうよぉっ……!」  
杏が女の喜びに身を焦がす直前。  
義之はあっさりと腰の動きを止めてしまった。  
「ど、どうして………?  
どうしてやめちゃうの……?」  
杏は困惑気に義之の方を振り返る。  
「あうっ!?」  
義之は杏の首に繋がれていた鎖を引っ張り、押しつけるように顔を近づけた。  
「誰が勝手にイっていいと言ったんだ?」  
「ご、ごめんなさい……ごめんなさい……!」  
普段からは想像も付かない義之の冷たい声に、杏は文字どおり躰を震わせた。  
「イキたいときにはどう言えって教えたっけ?」  
「ぁ……う……」  
本当のところ、義之はそんな台詞など教えてはいなかった。  
記憶力という杏の弱みを利用しているだけである。  
「ほら、杏?」  
「はあんっ!」  
急かすように腰を突き挿れられながらも、杏は必死になって知りもしない台詞を思い出そうとしていた。  
「早く言わないと……」  
「ま、待って……おねが……」  
「駄目。時間切れ」  
「そんなっ……っぐっ!?」  
懇願を気にもかけず、義之は杏から己の分身を引き抜くと、彼女にギャグを噛ませ、後ろ手に組ませた腕と両足首に拘束具を付け、躰の自由を完全に奪い去った。  
「一人で反省会だな、杏」  
最後に杏の秘裂を優しく撫でさすり、彼女を残したまま一人部屋を後にする。  
扉の閉まる音が、杏の心を鷲掴みにした。  
 
(やだっ……怖いよっ……!)  
(一人にしないで……!  
嫌いにならないで……!)  
(義之………義之っ……!)  
声にならぬ彼女の叫びが、涙に形を変えて頬を流れ落ちる。  
絶頂を迎える直前に放置されたことによる躰の疼きと、孤独への恐怖が肉体と精神の両面からじわじわと杏を責め立てる。  
だが、それだけでは済まなかった。  
ドクンッ。  
(え、っ………?)  
義之が去り際に愛撫していった秘裂が、急激に熱を帯び始めた。  
(や、やだっ……何、これ……?)  
そう思った時には既に手遅れだった。  
秘所を中心に、躰がとろ火で焼かれているかのような状態になってしまっていた。  
明らかに媚薬を塗られたことによる反応だった。  
秘所ははしたなく愛液を垂れ流し、シーツへと染みを作る。  
せめて自分で慰めることが出来れば、という思いは、拘束具があっさりと打ち砕いた。  
(……もうダメぇ……限界だよぉ……)  
(義之……義之……)  
わずか10分ほどだったが、杏には一晩にも等しい時間が過ぎた。  
「ちゃんと反省してたかな、杏?」  
「………!……っ!……んっ!」  
ギャグに阻まれ声にならない声をあげる杏に、いつのまにか部屋に戻ってきた義之が、奇妙なまでに優しい声で問いかけた。  
こくこくと必死に首を上下に振って応える杏の頭を、頬を、義之はいとおしげに撫でさする。  
「ほら、どうして欲しいのか、言ってごらん?」  
ギャグの止め具を外し、耳元でくすぐるように義之は囁いた。  
「よ、義之ので………私のを……ぐちゃぐちゃに……。  
……ぐちゃぐちゃに……いじめて……ください……!」  
途絶え途絶えになりながらも懇願する杏に、義之はよく出来ましたと言わんばかりに微笑み、彼女の頭をくしゃくしゃに撫でた。  
 
「ああ………」  
褒められた嬉しさとこれからの行為への期待とで、杏の頬は紅く染まっていった。  
いつのまにか解かれた拘束具とともに、杏の羞恥心もとうに失せていた。  
自ら尻を突き出して、義之が入ってくるのを待ちわびる。  
そんな杏の痴態に唇を歪めた義之は、彼女の細い腰を引き寄せて、一気に最奥まで貫いた。  
「っあああぁぁんっ!  
ああんっ、はあんっ!」  
さんざん焦らされていたためだろう。  
少し前後されただけで、杏は気をやってしまいそうだった。  
そんな彼女の様子に気を良くしたのか、義之はさらに奥へと突き込んだ。  
「いいっ、いいよぉっ!  
奥まで……奥まできてるのぉっ!」  
「はしたないな、杏は」  
「義之にっ!義之にされてるからなのぉっ!」  
「へぇ……俺のせいにするのか……。  
そんな娘には……やっぱりお仕置きかな?」  
唇を笑みの形につり上げた義之は、どこからか取り出した極太のバイブを愛液で充分に濡らすと、杏のもう一つの穴へと押し当てた。  
「は、あっ……?」  
ありえない部分への感触に振り向いた杏は、その光景に瞳を見開いた。  
「や、止めて!  
そんなの入れちゃ……!」  
哀願はあっさりと無視された。  
「ぁぁあああぁっ!」  
前の穴と同様に一気に奥まで貫かれ、押し出されるように息を吐いた。  
「くぁっ………はっ……。  
こ、こわれちゃう……こわれちゃうよ……!」  
杏は苦しげに身をよじるが、義之は構わず腰を動かし続けた。  
「あぐぅっ、ぅああんっ!やぁんっ!」  
嫌がっていても躰は正直に反応するものである。  
間もなくして、杏は二穴責めの快楽に溺れていった。  
「こわして………こわしてぇぇっ!」  
圧迫により締め付けが増していたためか、義之は限界を迎えつつあった。  
 
「このまま……出すぞ」  
その言葉が、杏の瞳にわずかに理性を取り戻させた。  
「あ、だ、だめ………!  
あかちゃん……赤ちゃん……できちゃうよぉ……!」  
嗜虐心をそそらせるその台詞を聞きながら、義之は杏の奥深くに熱いたぎりをそぞぎ込んだ。  
「ぅああああああああああぁぁんっ!」  
胎内を熱く、そして白く灼かれながら、杏もまた絶頂を迎える。  
言葉とは裏腹に、義之の迸りを逃すまいと強く強く締め上げる。  
「…ぁ……あ……なかに……熱いの……あふれちゃう……」  
全てを出し切って杏の胎内から引き抜く。  
後ろの穴のバイブを外してやると、前の穴からとろとろと白濁した液体が流れ出し、シーツに染みを作った。  
「あ……はぁっ……ぁあっ……」  
「ほら、終わった後はどうするんだ?」  
「ぅあ……」  
焦点の定まらない彼女の鼻先に、自身と彼女の体液で濡れたモノを突き出した。  
「ほら、杏?」  
「……は…ぃ……」  
小さく水音を立てながら、杏は仔猫のようにその汚れを嘗め取っていった。  
頭を撫でる義之の手の温もりと優しさに、うっとりと目を細めながら………。  
 
 
 
「こんな小説を書いてみたんだけど、どう、小恋ちゃん?」  
「ど、どうって?」  
「今夜のオ・カ・ズに」  
「ふえっ!?  
だ、ダメだよそんなの!」  
「あらん、どうして?」  
「友達でそんなことするなんて絶対ダメー!  
もう杏のことまともに見られないよー!」  
「じゃあ、杏ちゃんを小恋ちゃんと入れ替えてみたら?」  
「…………………。  
だ、だめだめ!それでもだめぇ!」  
「小恋ちゃん、今それいいなって思ったでしょ?」  
「そ、そんなことないもん!絶対ないもん!  
もう、茜のばかーっ!」  
 
 

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