「あらあら……音夢さんばっかり見てこんなに固くして。妬けちゃいますよ……。んん、んむぅ」
そうおちょくりながら、ことりは純一の下半身を責め続ける。
「ううっ……音夢……!!」
怒りでことりの揶揄など耳に入っていない純一は、しかしミラー越しの音夢の痴態から目を背けることが出来なかった。
全身を拘束されているのも、もちろんあったが、それ以上に音夢がされていることから逃げるのは純一には許せなかった。
「いやぁ! 兄さん、にいさん!!」
手を伸ばせば届く位にいる妹が、そうとも知らずに―知っていてもどうにかなるものでは無いが―自分の名を、助けを呼び続けるのがスピーカーから聞こえる。しかし、自分の声はミラーに完全に阻まれ、声をかけてやることすら出来ない。
純一の指は気づかぬうちに手のひらに深い爪痕を残していた。
「ふふっ、そんなに音夢さんと会いたいんですか? お互いにこんな状態で。んっ……。
だったらわたしと純一君の仲の良さ……見せつけちゃいましょうか、音夢さんに?」
「あのぉ、どうせなら私の『しかえし』を手伝ってもらえませんか?」
桜公園の夜道、背後から襲ってやろうと近づいた、今思えば奇妙な(美人でもあったが)少女に逆に声をかけられたのが数日前。仲間と指定された部屋に指定された少女を拉致してきたのがついさっき。
男はそんなことを思い返しながら、ベッドの上で震える半裸の獲物にありつこうとしていた。
近づく度に彼女の動きを制限している手錠がかちゃかちゃと震える。そしてその手錠は、さあ使えとばかりにこの部屋に置いてあったグッズのひとつだった。
男はそれらを仲間と物色しながら、哀れな獲物に話しかける。
「あんたもよっぽど嫌われたなあ。ま、俺には関係ないことだが」
「う、うぅ……ひくっ……」
「げ、こんなのまであるのか……」
唸りながら仲間が取り出したのは、一見点鼻薬以外の何物でもなかった。
「何だそれ?」
「『幻覚剤―抵抗されたらどうぞ』、だと」付箋を読み上げ、腰を上げる仲間。
「じゃあ、始めるか」
「あ、ああぁ……」
音夢は、歯の根が噛み合わないのも気付かずに怯えるしかなかった。
泣き虫な自分を守ってくれた兄は、ここにはいないのだ。
「こいつ打って楽になっちまうか? お嬢ちゃんよお」
男二人がしゃがれ声で詰め寄る。
耐えられず音夢は、不自由ながらベッドから飛び降り……いとも簡単に部屋の反対側に追いつめられた。
背後には自分の悲惨な姿を写す鏡しかない。
「ベッドの方がいいと思うぜ?
床は痛いからな……」
音夢の肩を男が掴む。
「いやぁ、兄さん! にいさん!」